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RPOとは、「Recruitment Process Outsourcing」の略語で、採用プロセスの一部を外部の専門チームに委託すること。採用アウトソーシング・採用代行といった呼ばれ方もしています。
代表的なRPO例は、応募者受付~面接日程の調整までの業務を切り出して外部に委託することや、募集ポジションの管理(採用オープン・クローズに伴う関係各所とのやりとり、職務要件・人材要件の管理など)です。専門のスキルやノウハウを持つ外部のパートナーに任せることで、効率化や質の向上を図り、採用担当者は別の業務に集中できるようになります。
近年RPOを活用する企業が増加している背景には、2つの変化が関連しています。
1つ目は、採用環境が激化していることです。厚生労働省が発表している有効求人倍率は、2009年度が0.47倍だったのに対し、2018年度には1.62倍に上昇。右肩上がりで上昇を続けてきました。2020年度は新型コロナウイルスによる影響で倍率が低下したものの、1.10倍。引き続き一人の求職者を複数の企業が取り合う傾向にあり、採用業務に費やす時間や費用が増加しやすいことを意味しています。
また、採用の数だけでなく自社に適した人材を追い求めようとすれば、より戦略的に採用を行う必要があります。人事は、コストを抑えながら人材の数と優秀さを担保することを強く求められるようになってきており、外部の知見を借りる動きが増えています。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年8月分について)」
※採用コストに関しては、以下の記事もご参照ください。
・採用コストの平均は?新卒・中途の一人当たりの金額と削減方法を紹介
もう1つの変化は、採用業務だけでなく人事が担っている役割の全体が高度化してきていることです。近年は、テクノロジーの急速な進化や新型コロナウイルスの感染拡大など、社会全体で非連続な変化が次々と起こっており、企業は対応を迫られています。そのため、人事には変化の激しい時代に対応できる人材の採用や育成、および変化に強い組織づくりが求められるようになり、オペレーティブな実務よりも人事戦略の企画・立案・検討に、より時間を使わねばならなくなっています。こうした動きから、採用実務を外部の専門家に委託する動きが加速しています。
人事戦略の立て方に関しては以下の記事もご覧ください
・人事戦略の立て方とは?進め方やメリットなど成功させる方法を解説
実務を外部のチームに任せるため、人事担当者の採用工数を減らせるのが直接的な効果です。また、専門的な知見・スキルを持つ人が担当することで、内部で行うよりも効率的かつ質の高いオペレーションにできる可能性があり、生産性の向上や採用成功につながることも期待できます。結果として、人事が割いてきたリソースを、人事戦略策定や組織開発・制度設計などのコア業務にシフトさせることも可能です。
RPOの料金はアウトソースする業務の内容やボリュームに大きく左右され、単価もプレイヤーによってさまざまです。一概にコストを下げられるとも限らないので、自社の状況に合わせた活用が必要になります。また、外部の企業に委託する以上、細かく業務を定義する必要があり、自社で対応するよりも臨機応変な対応がしづらい場合があります。なお、業務をアウトソースすると採用の知見が蓄積されづらくなるリスクがあるため、任せっぱなしにするのではなく、業務改善の検討など場面に応じて関与していくと良いでしょう。
現在、RPOを行っている企業は多岐にわたり、採用におけるさまざまなプロセスを代行することが可能です。なかには、採用業務の上流工程である採用計画・戦略の立案から支援している(採用コンサルティングからトータルに手掛けている)企業も存在しますが、ここでは一般的な採用アウトソーシングで扱っている業務内容を紹介します。
なお、採用コンサルティングに関しては以下の記事もご参照ください
・採用コンサルタントとは?メリットとデメリットや選び方など注意点を紹介
たとえばRPOの応募者管理代行は、「人事担当者が多忙のため応募者との連絡が滞りがちで、選考途中で離脱する人が多い」といった採用課題を抱えている場合に効果を発揮しやすいです。こうした前提を踏まえず、RPOをやみくもに利用しても思ったような成果を出すことができません。「自社の採用戦略において肝となるプロセスは何か」「ボトルネックとなっている課題は何か」といった内容を明確にした上で、RPOがマッチすれば活用すべきですし、しないのであれば別の手段を検討した方が良いでしょう。
RPOは、自社従業員の業務を代替する手段として、派遣スタッフの活用と比較されることが多くあります。派遣スタッフとRPOの大きな違いは、業務の任せ方にあります。RPOは業務の指揮命令から任せられるため、手離れが良いのが利点です。ただし、だからといって任せっぱなしにしていると、委託先と認識の齟齬が起きても気づけず、採用に不具合が起きるリスクがあります。定期的に目線合わせの機会を持ち、何か起きたときには素早く連絡・相談できるようなコミュニケーションルートをつくっておくと良いでしょう。
上記に関連して、RPOは会社によってカバーしている業務範囲が異なり、得意分野もそれぞれの特色があります。また、RPOは応募者の個人情報に触れる業務が多く、採用情報には自社の機密情報が含まれている場合もあるため、情報管理体制も非常に重要です。安易に価格だけで委託先を選定すると期待した成果にならないばかりか、重大なトラブルが起きる危険性も潜んでいます。コスト・品質・コンプライアンスなど、多面的な観点で委託先を評価・選定しましょう。