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人事システムとは、一般的に人事業務で使用されるシステムのことを指します。人事の業務は、採用、育成・教育、人事評価、勤怠管理、異動・退職、給与計算など多岐にわたり、それらをIT活用によって管理するのが人事システムです。
人事業務には、給与計算や勤怠管理などの定型業務があり、システム化することで業務効率化やコスト削減を図ることができます。また、人材獲得競争が激化する採用分野においては、煩雑な採用業務を一括管理システムで効率化することで選考スピードをあげていくことも重要な要素です。また、業務効率化によって人事のリソースを採用課題解決や採用力強化のためのコア業務に注ぐことが可能になります。
人事や労務は、給与計算や年末調整など細かい数字を扱う業務が多く、税金や法律とも密接に絡むため、細心の注意が必要になります。そこでシステムを導入することで、手作業や手入力による人的ミスを防止し、リスクを減らすことにつながります。
人事の取り扱うデータは、従業員の個人情報や査定評価などセキュリティレベルの高いものが多く含まれます。こうした企業の機密情報を守るためにも、人事システムによってセキュリティを強化していく取り組みが大切です。
昨今注目を集めているのが戦略人事の分野で、その代表的なものが「タレントマネジメントシステム」です。従業員のスキルや能力を重要な経営資源と捉えて、採用、育成、適正配置に活用していくことで、従業員と組織のパフォーマンスを最大化することを目指す人材マネジメントシステムの一つです。たとえば、マネジメントポジションへの登用や新規事業の立ち上げなどの際に、タレントマネジメントシステムを用いて高精度な分析をし、より戦略的な人材配置を実施していきます。
※タレントマネジメントシステムについては、以下の記事をご参照ください。
タレントマネジメントシステムとは?メリット、選び方と選ぶ際のポイントを紹介
人事システムの種類は、まず業務によって大きく2つに分けられます。
主に採用や育成、タレントマネジメントなどに関わる人事が使用するシステムで、従業員のスキルや能力をデータ管理し、経営に役立てていくことが可能です。
主なシステムとしては以下があります。
応募者データや選考状況などを一元管理し、採用活動をスムーズに進めるためのシステムです。
従業員ごとの目標、業績、人事評価などを一元管理し、査定や人材配置に活かすシステムです。
従業員の能力や特性、経験などを管理し、最適な人材配置や育成に活かすためのシステムです。
主に労務担当の人事が使用するシステムで、勤務する従業員の勤怠管理や給与計算などの業務をサポートします。
主なシステムとしては以下があります。
従業員の出退勤や休日休暇などを管理するシステムです。
従業員の給与、社会保険、税金、年金、年末調整などを一括管理するシステムです。
従業員の個人情報のほか、福利厚生や制度の利用に関する申請・手続きなどを管理するシステムです。
また、システムの導入方法や運用方法としてもいくつかの種類があります。
パッケージ化されたシステムを利用する導入方法です。低コストかつ短期間での導入が可能で、導入手順もマニュアル化されていることが多いため、システムの知識が乏しい方でもスムーズに導入や利用ができるというメリットがあります。一方で他のシステムとの連携やカスタマイズがしにくい、導入後はライセンス料などのランニングコストがかさむ可能性もあります。
自社の業務に最適なシステムをオーダーメイドで構築していく導入方法です。独自性の高い業務にも対応でき、より自社の希望する形で設計ができるという利点があります。導入にあたってはパッケージ型と比較するとコストと時間がかかりますが、将来的な機能拡張やシステム改善にもフレキシブルに対応できてコストを抑えられることもあります。
クラウド(インターネットを通じてサービスを利用する形態)でデータを管理する運用方法です。低コストですぐに利用でき、ウェブ上で自社に合わせたスペック変更などが可能です。セキュリティはサービス提供側によるため、データの種類などによって使い分けをしていくことが重要です。
自社でサーバやネットワークを構築し、管理していく運用方法です。クラウド型と比較して初期費用がかかりますが、より自社に合わせたカスタマイズやセキュリティに対応することができます。
人事システムの導入にあたっては、初期費用だけでなく、将来的なコストも含めて検討することが重要です。パッケージ型やクラウド型の場合は、初期費用を抑えて導入できますが、利用する期間に応じてランニングコストがかかっていきます。また、法改正に伴うカスタマイズや機能拡張で追加コストがかかることも想定されますので、将来を見据えた予算の検討が重要になります。
人事システムはそれ一つで運用するのではなく、勤怠管理と給与計算、タレントマネジメントと人材育成などのように、それぞれのシステムを連携させることでデータとしての価値をより発揮していきます。システムの連携ができるのか互換性を確認しておきましょう。
人事システムを導入することでセキュリティを強化できる一方で、ネットワークに接続して管理するシステムの場合は、情報漏えいのリスクもゼロではありません。自社の求めるセキュリティポリシーをクリアするシステムであるかどうかを確認し、必要に応じてより高度なセキュリティ対策を行っていきましょう。
まずは何のために人事システムを導入するのか、どのような課題を解決したいのか、導入目的を明確にしましょう。業務効率化、コスト削減、戦略人事など、目的の優先順位によっても、最適なシステムの選定基準が変わってきます。
人事システムは数多くありますので、上記の導入目的に合った機能を持ち、料金プランやサポート体制などが自社にあったものを比較検討していきます。無料体験などができるシステムもありますので、実際に使ってみて操作性や機能性、サポートサービスなどを体験してみるのもオススメです。使いやすさなどの他、導入目的が達成できるのか、将来起こりうる変更にも対応できるのかといった視点でも判断していきましょう。
システムの導入が決まったら、過去のシステムや紙の書類などから、データの移管や入力を進めていきます。人事システムで管理するデータは膨大で、導入作業だけでも数ヶ月を要する場合もありますので、中長期的な視野で導入の計画を立てていきましょう。
人事業務の特徴として様々な法律が絡み、法改正による制度の変更も生じます。また将来的に新たな人事制度や育成研修を導入することも想定されます。一度導入したシステムはこの先も長く利用していくことを考え、機能の拡張性や変更に対応する柔軟性を持ったシステムを選びましょう。
多機能であればよいというものではなく、機能が複雑になると使いづらく、逆に少なければ導入目的を達成できないということもあります。必要なカスタマイズや他のシステムとの連携なども考慮し、自社に合った機能を持った人事システムを選ぶことが重要です。
また、システムの種類によっては人事部だけでなく、他部署の従業員や経営層が使用するケースもありますので、利用者にとって使いやすいシステムであることが大切です。昨今ではリモートワークの導入が進む中、オンラインでの勤怠管理や労務管理をするケースも増えていますので、そうした企業の場合はマルチデバイスに対応したシステムがおすすめです。
人事システムを導入することで、業務の効率化だけでなく、経営判断の材料としても活用でき、人材の育成や適正配置、次世代リーダーの抜擢などに活かしていくことができます。自社の組織力や採用力を向上させていくためにも、ぜひ人事システムを最大限に活用していってください。