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最適な人員配置とは?成功させるポイントや手順を徹底解説

人員配置とは?

人員配置とは人事マネジメントのひとつであり、個々の従業員の能力やスキル、業務経験、適性、モチベーションなどを基に最適な人員の配置を明らかにし、企業の経営目標や経営計画の達成を目指すものです。異動、昇進昇格などを通じて行うことが一般的です。

人員配置を最適化する目的

人員配置を最適化することで、経営目標や経営計画の達成、組織の改革、人材育成、従業員のモチベーション向上などを実現することができます。人員配置を変更する際には、これらの目的のいずれか、あるいは複数の目的を達成することを想定しているのが一般的です。

経営目標や経営計画の達成

企業は、経営目標や経営計画を達成するために必要な組織や、組織の方針・戦略、業務の内容について明らかにしたうえで、事業計画を策定します。

それを踏まえて、各々の組織が事業計画を達成できるよう、必要な能力やスキル、業務経験、適性などを有した人員を配置します。

組織の改革

企業が存続し成長を遂げていくためには、社内の組織が、経営目標や経営計画の達成に貢献し続ける“体質”を身に付け、経営の環境に応じて柔軟に変化することが必要です。

そのために組織間で人員を入れ替える異動や、新たな人員を投入する採用などを通じて、組織の変革を促す人員を各々の組織に配属していきます。

人材育成

企業の業績を向上させるためには、従業員が業務を通じて自身の能力やスキル、適性を高め、一人ひとりのパフォーマンスを拡大していくことが不可欠です。そのため、従業員の能力向上を目的として、戦略的に特定の組織や業務に人員を配置することがあります。

※育成に関しては、以下の記事をご参照ください

部下育成に悩んだら!育成を成功させるポイント、失敗する4つの原因を解説

従業員のモチベーション管理

従業員のモチベーションは、従業員の成長速度や能力の発揮、ひいては企業の業績向上に密接に関係しています。従業員が社内での仕事を通じて成長したい、自社の業績向上に貢献したい、自社から評価されたいといった気持ちを強く持つことで、成長し能力を発揮することへの意欲が高まり、個人の成長速度が増す可能性があります。

こうしたパフォーマンス向上を後押しするため、従業員のモチベーション向上を目的とした人員の配置を行います。

人員配置のメリット・デメリット

人員配置のメリット・デメリットを解説します。

人員配置のメリット

適切な人員配置を行う主なメリットは以下の通りです。

生産性が向上する

業務に必要な能力を有し、適性のある人員を組織に配置し、個々の従業員が高いパフォーマンスを発揮できるよう後押しすることで、生産性を向上することが可能です。

適切な人員配置は短時間で高い業績を上げていくうえで、不可欠といえるでしょう。

従業員のモチベーションが向上する

企業は、従業員が能力を発揮し活躍できる場を与えるために人員配置を行います。

こうした人員配置は、対象となった従業員が業務を通じて自身の成長や自社からの評価を感じるきっかけとなり、モチベーションの向上が期待できます。

人件費が最適化される

業務への適性や能力のある従業員を配置することで、最小限の人員数、最小限の稼働時間で組織の業務を遂行することが期待できます。こうした人員配置は、人件費の最適化につながっていきます。

人員配置のデメリット

適切な人員配置が行われない場合、組織に生じる弊害には、以下のようなものがあります。

従業員の成長の速度が鈍化する

特定の業務への経験を深めることで、従業員はその業務に関連した能力やスキルのレベルや経験値を高めることができます。一方で配置転換が早すぎたり、あるいは遅すぎたりといった不適切な人員配置が行われた場合、従業員の成長が中途半端になる、あるいは新たに習得した能力やスキルを磨く機会が失われてしまう、成長の速度が鈍化してしまうといった弊害が生じます。

従業員に不安を感じさせる

配置転換が行われることで、従業員の環境が変化します。配置転換された従業員は新たな組織で一から人間関係を構築する必要があります。場合によっては転勤や単身赴任など、大きな生活環境の変化をともなう場合もあるでしょう。従業員にとっては、配置転換は多かれ少なかれ不安を感じるため、適切なフォローが必要です。

一時的に業務のパフォーマンスが低下する

配置転換を行った場合、従業員は配置後に新たな業務を一から覚える必要があります。異動元の組織でも業務の引継ぎが必要であり、どちらの組織においても配置転換を行ったあとは一時的に業務のパフォーマンスが低下します。

人員配置の現状と課題

人手不足を背景に、企業は採用による外部からの人材調達に加え、社内人材の配置転換、再教育と再配置、多能工化の推進、非正社員の活用推進などの施策を通じて、人員配置の最適化を積極的に進める必要に迫られています。

そのようななか、人員配置に関する以下の課題が浮き彫りになっています。

  • 職種ごとの専門性が高いため配置転換が進みづらい
  • 職種や処遇、労働条件の変更に対する労働者からの同意が得られにくいため配置転換が進みづらい

さらに、経営環境変化のスピードが速まっていることと相まって、「中長期的な経営改革の視点での人員配置が行われにくい」「一部のハイパフォーマー人材に業務を集中させる人員配置が行われがちである」という傾向も見受けられます。

参考:厚生労働省「平成28年労働経済白書」

最適な人員配置を実施するステップ

人員配置は、以下のステップで実施することで最適化していくことが可能です。

理想とする組織の形を明らかにする

経営の目標や計画を達成するために、各々の組織が業務やミッション、各々の組織において必要な能力やスキル、業務経験、人員を配置するポジション、人数、業務内容などについて明らかにします。

理想とする組織とのギャップを明らかにする

各々の組織において、現在どのポジションに、どのような能力やスキル、業務経験などを有した人員が、どの程度配置されているのかを確認したうえで、各組織が理想とする組織とのギャップを明らかにします。

人員を調査する

理想とする組織とのギャップ解消に貢献できそうな人員が社内にどの程度存在するのか調査します。これに関しては、必要とする能力やスキル、業務経験などの有無を確認するのはもちろんのこと、新たな業務に就くことによって自身が成長したいといったモチベーションについても確認する必要があります。社内の人員ではギャップを解消できない場合には、社外の求人市場に今後必要とする人材がどの程度存在するのか、どの程度採用できそうなのか調査を行います。

人員配置のシミュレーションを行う

人員の調査結果をもとにして、理想とする組織をつくるための人員配置のシミュレーションを行います。社内の人事異動で人員配置を行う場合、人員の配置先のポジションや立場(職位)、異動前の組織の穴を埋めるための対応について明らかにします。また、人員配置を行ったあとに育成する場合には、育成期間中や育成終了後の業務内容についても明らかにします。

採用によって外部から調達した人員を配置する場合も、配置先のポジションや立場(職位)を明らかにします。これらのシミュレーションを積み重ねたうえで、理想とする組織に合致する人員配置図を完成させます。

人員配置計画を作成する

人員配置図を完成させたあとは、現在の組織の状況などを確認したうえで、人員配置によるリスクを最小化し、新たな組織の稼働を最適化するための人員配置計画を作成します。計画の中で、どの時期に、どの人員をどこに異動させるのか、あるいは、どのような人材をどの程度採用するのか、異動や採用後にどのようなフォローを行うのかなどを明らかにします。

人員配置を実行する

作成した計画に基づいて、人員配置を実行します。ポイントは、必要に応じて柔軟に計画を見直すことです。

経営環境の変化などによって重大な課題やリスクが明らかになった場合、人員配置計画の見直しを行いその時点でベストな人員配置図を再作成します。

また、計画通りの採用を行うことが難しい場合にも同様に人員配置計画の見直しを行います。

適切な人員配置を行うポイント

最適な人員配置を行うためのポイントとしては、以下の3点が挙げられます。

人材情報を一元管理する

従業員一人ひとりについて、現在保有する能力やスキルのレベル、業務経験、自身のキャリアアップに対する意識などの情報を確認し、一元管理します。これにより、適切な人員配置の計画を立てやすくなります。これに関しては、人員配置に関するシステム(ソフト)を活用することが効果的です。

すべての従業員を対象とする

一部のハイパフォーマー人材だけを人員配置の対象にするのではなく、非正規社員も含めたすべての従業員を人員配置の対象にすることで、人員配置の選択肢が広がり、柔軟な運用を行うことが可能になります。すなわち、過去の実績や雇用の形態などに関係なく個々の従業員の能力や適性を活かした適材適所の配置を行うという考え方を持つことです。

従業員が立候補する道をつくる

適切な人員配置を行うことに対してよい影響を与える施策として、従業員が自ら立候補し新たなポジションに就く制度の運用が挙げられます。この制度のメリットは、従業員のモチベーションが大きく向上することです。

モチベーションの高い人員を配置することで能力が最大限に発揮され、配置後に育成を行う場合もスムーズに進めることが期待できます。

人員配置とは、従業員一人ひとりの能力や適性を最大限に活用していくために組織体制を考え、戦略的に実践していくことにほかなりません。

少子高齢化が進み、外部からの人材調達も思うように進まない現在、在籍する従業員一人ひとりの能力や適性を最大限に活用し、個人のパフォーマンスを向上させることは、どのような企業にとっても重要な経営課題の一つであるといえます。限られた人員のなかで、経営目標や計画達成を目指すためにも、適切な人員配置を行っていきましょう。