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中途採用を行うベストな時期とは、「採用のしやすさ」だけで考えると、求人数が少なく求職者数が多い時期だといえます。なぜなら、採用上のライバルとなる企業が少ないほど、求職者を複数の企業で取り合うようなケースを減らすことができるからです。また、求職者が多いほどたくさんの応募者を獲得できる可能性が高まり、自社で活躍できる優秀な人材に出会える確率も上がります。
ただし、求人数や求職者数は絶えず変動しており、景気や社会情勢にも左右されます。職種によって求人が出やすい時期や求職者が動きやすい時期の傾向は異なるため、「中途採用は○月がベスト」といった、いつでも通用する鉄則はありません。適切な採用スケジュールを立てるには採用環境を見極める力が求められるといえます。
新卒採用とは異なり、中途採用は通年採用が一般的です。そのため転職市場全体で見ると、年間を通じて大きな変動はなくなってしまうようです。ただし、クリスマスや年末年始が繁忙期となる飲食業や学生の進級・進学に影響を受ける教育関連企業など、特有の年間スケジュールが影響する職種・業種もあります。職種によっては有効求人倍率が特定の時期に上下することがあり、この動きを考慮した方が採用を有利に進めやすい場合があります。
中途採用についてベストな時期や求人数・求職者が大幅に増減する時期はないものの、求人数・求職者の動向には時期によって傾向があると筆者は考えます。これまで接してきたさまざまな業界の採用担当者などの意見も含めて、一般にいわれている採用市場の動きについて紹介します。
1年で最も中途採用が活発化するのは1月~3月といわれています。理由はさまざまですが、求職者の視点で考えると「冬季賞与支給後であり、転職活動を行う経済的ゆとりが生まれる」「年末のうちに前職での年末調整が終了し、事務手続きが終わっている」「年末・年度末をきっかけに心機一転がんばりたいといった気持ちが高まる」「次の年度(4月)開始前に転職を決め、新しい年度から新しい職場でスタートしたい」といった気持ちから、転職への意識が高まることが考えられます。
6月〜7月は、企業で夏季賞与が支給される時期になります。賞与支給後に転職を考える人は多いようです。また、新卒採用で4月から働き始めた人が、ミスマッチなどを理由に転職に動き出すのも、この時期の特徴といえるでしょう。
9月〜10月は、年度の中間期であり、上期と下期の境目に相当します。このような節目の時期に新天地を求める人は多く、徐々に転職活動が活発化していきます。
中途採用が活発な時期があるように、落ち着く時期もあります。求人数は3月をピークに減り始め、5~6月は比較的少なくなるようです。また、繁忙期となる業界の多い12月も、企業の採用活動が落ち着く印象です。
求人数を反映して求職者数も4月をピークとしてその後減少し、12月には転職活動を行う人は少ない印象があります。
これらはあくまで転職活動の時期の傾向を示しているにすぎませんが、企業もこのような傾向をある程度イメージしつつ採用に動く必要があるかもしれません。
中途採用を行うにあたって重要なポイントの1つは、採用計画を綿密に立てることです。まず自社に必要な人材像を明確にし、どこにターゲットを設定するかを決定します。その際、ゴールから逆算して計画を立てることが大切です。「いつまでに、どのような人を、何人採用するか」という採用目標を設定し、具体的な募集要項に落とし込みます。
自社に必要な人材像やターゲットの設定をしたあとは、自社の魅力について振り返ることが重要です。自社のアピールポイントの洗い出しは、人事だけでなく従業員も巻き込んで考えるとよいでしょう。勤務条件や自社の雰囲気など自社の強みやメリットと思われることをリストアップしていきます。
採用手法には「ハローワーク」「転職サイト」「エージェントの活用」などさまざまなものがあります。転職サイトに関しては、総合型サイトと特化型サイトが存在します。若年層であれば「SNS」や「ミートアップ」などの手法が有効かもしれません。最近ではリファラル採用も活用されています。採用手法の選定は、求める人材像やターゲットの状況などによって使い分けることを検討しましょう。
※リファラル採用に関しては、以下の記事をご参照ください
リファラル採用が失敗する、ありがちな理由。成功させるポイントを紹介
応募があった求職者への対応についてもしっかり考える必要があります。その際に重要なポイントは「求職者の目線に立って対応する」ことです。人手不足の現在、いかにして求職者の目線に立って採用活動を行っていくかがカギとなります。
企業によっては、ウエルカムボードを用意したりメッセージカードを渡したりするところもあるようです。このように、求職者に対して「歓迎の目」を向けることで求職者の自社に対する印象が変わっていくことが期待できます。
面接はお互いの考えを確認する絶好のチャンスであるため、求職者の考えを踏まえて自社の魅力をアピールするようにしましょう。人事担当者が求職者の話にしっかり耳を傾け、話しやすい雰囲気を作り出すことも重要です。
面接後は早めに選考し、結果を求職者に伝えましょう。特に内定を通知する場合は注意が必要です。求職者は他企業にも応募しており、複数企業から内定を得ているケースもあります。そのため、求職者に自社を選択してもらえるようなフォローを行う必要があります。
内定辞退を抑止する方法としては、内定後の面談や食事会の開催などが考えられます。ここでも求職者に寄り添い、求職者の意向を汲むための努力を重ねることで、信頼関係を構築することにつながります。
※採用計画に関しては、下記の記事をご参照ください
失敗しない採用計画の立て方とは?具体的な手順と求める人材を採用するためのコツ
冒頭で述べた通り、中途採用を行うベストな時期に100%の正解はありません。どの時期にも一長一短はあります。しかし、以下のような時期ごとの特性を自社の採用戦略に活かし、採用確度を高めていくことは可能です。
・求職者数が多く、応募数や面接数を確保しやすい
・年度が切り替わる時期(4月)を見据えた転職活動が多く、スケジュールが明確な分、求職者の意思決定スピードが速い
・求人数が多く、自社の求人情報が求職者に届きにくい
・一人の候補者を他社と取り合う構造になりやすく、選考中や内定後に辞退されやすい
・採用競合が少なく、自社の求人情報を発見してもらいやすい。選考辞退リスクも低い
・ゴールデンウイークや夏休み、冬休みなどと重なるため、普段は忙しくて転職活動ができない優秀な人材に出会える可能性が高まる
・求職者数が少なく、母集団形成の難易度が上がる
・「良いところがあれば転職したい」と転職時期を明確に定めていない求職者も多く、選考スケジュールが長期化、途中離脱しやすい
このように、採用の繁忙期と閑散期ではメリット・デメリットがちょうど裏返しになるような構造にあり、一概にどちらが有利とはいえません。特徴を理解して採用を進めることが大切です。
中途採用が活発な時期に成果を上げるポイントとしては、選考スピードを早めることが挙げられます。この時期は自社だけでなく、他社も同様に採用活動を行っています。また前述の通り、求職者も複数の企業に応募しているケースがあります。そのため、自社が求職者に選択してもらうためにはスピード感を持つことが大切です。こうしたスピード感を持つためにも採用計画を早めに立てることが重要です。
採用活動が落ち着いている時期を「チャンス」と捉え他社に先駆けて採用活動をすることが重要です。こうした時期にも積極的に採用活動を行うことでよい人材に巡り合える場合もあるでしょう。
業界によっては、1年を通して採用活動を行っている企業もあるでしょう。その際に留意すべき点は、採用情報を定期的に更新することです。転職サイトや自社サイト、SNSなどを活用するにしても、情報が更新されないままでは変わり映えしないものになってしまい、求職者の目に留まりにくくなってしまうからです。サイト上位を目指す意味でも、採用情報はできるだけこまめに更新することは重要といえるでしょう。
以上、中途採用に効果的な時期や留意点について紹介しました。
中途採用を行う時期によって、注意すべきポイントも変わってきます。自社が求める人材像を明確にし、適切な採用手法を駆使して採用活動を行うことが重要です。今回の記事が中途採用活動に少しでも役に立てば幸いです。