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「リテラシー」とは、もともと「読み書きの能力」を意味する言葉ですが、現在の使われ方としては「ある分野に関する知識や能力を活用する力」を指すことがほとんどです。
ビジネスの場では「情報を適切に理解、解釈して活用すること」というニュアンスで使われることが大半となっています。
リテラシーという言葉はさまざまな言葉とつなげて使われる傾向にありますが、よく使われるものとしては以下のような言葉が挙げられます。
ITリテラシーは、特に昨今のビジネスの中で重要視されているものです。IT全般に関する活用能力を指して使われることが多いでしょう。
ITリテラシーの中には、たとえばインターネットから適切な情報を収集して活用することができる「ネットリテラシー」、パソコンやスマートフォンなどの情報機器で、システムやアプリケーションの設定、操作など、機器を適切に使うための知識や能力を指す「コンピューターリテラシー」、ITツールを利用する際に発生する恐れがあるウイルス感染や情報漏洩、その他セキュリティ問題を予防、回避することができる「セキュリティリテラシー」などが含まれます。
目的に応じた情報検索や収集を行い、適切な情報を取得、取捨選択して活用する能力をいいます。
今は多くの情報がインターネットなどを介してやり取りされるためITリテラシー(ネットリテラシー)と同義で使われることもありますが、人を介した伝聞といったアナログ情報の収集まで含めた、より幅広い対象を指しています。
新聞やテレビ、インターネット、その他さまざまなメディアを介して得られる情報から、適切な情報を選択して活用できる能力をいいます。近年は情報源としてインターネットが中心となっているため「ITリテラシー」と似た使い方がされることがありますが、メディアリテラシーは単なる情報収集、処理能力だけにとどまらず、テレビ、新聞、雑誌などの従来型のメディアも含めて、それぞれのメディア特性を理解したうえで、発信される情報やメッセージを鵜呑みにせずその意図を主体的、批判的に読み解く能力をいいます。
インターネットの普及にともなってアクセスできる情報量は膨大になっていますが、その中には真偽不明の情報も多数含まれており、これらを見極めて取捨選択する能力が重要になっています。
金融や投資、資産形成など、主にお金に関する知識や判断能力を指しています。
日常の家計管理をはじめ、金融商品に関する知識、金利やローンといった資金借り入れに関する知識などが含まれます。詐欺的な投資勧誘などの金融トラブルを避けるためにも、必要な能力といえるでしょう。
会話や文章の中で「リテラシー」が使われるときは、「高い・低い」「あり・なし」「持っている・いない」という表現をされることがほとんどです。
例文としては、以下のような使い方があります。
昨今のビジネス環境においては、その変化の大きさや速さに対応していくことが必須となっていますが、その低下につながる要因の一つに「ITリテラシー」の低さがあります。
ITリテラシーが低いことによって起こる問題やデメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
業務の効率化や生産性向上のためには、IT化、デジタル化が有効な打ち手の一つとなっていますが、社員や企業全体のITリテラシーが低いと、この取り組みがなかなか進展しません。昨今はコロナ禍をきっかけにしたテレワークの導入が進み、新たな働き方を取り入れる企業が増えてきましたが、ITリテラシーの低さがその導入を阻害しているケースも見受けられます。
ITリテラシーが低いことでペーパーレス化やシステムによる情報共有、既存システムの活用といった基本的な業務改善も停滞しがちになります。また業務分担の固定化や属人化、形骸化した書面のやり取りなどの改善も進まず、生産性が向上しないばかりか、逆に低下していくことが懸念されます。
多くの業務では関係者同士のコミュニケーションが必須ですが、ITリテラシーが低いことによって、口頭や電話、紙ベースなど旧来のコミュニケーション手法に固執しがちになり、コミュニケーションの機会を逸したり情報共有が遅れたりすることがあります。メールやチャット、ビデオ会議といった本来であれば効率化のために有効なツールの特性や操作方法がITリテラシーの不足で理解できないなど、コミュニケーションや情報共有において不足や遅延が発生する懸念があります。
主に企業のマーケティングや採用活動で、SNSを利用することは一般的になってきていますが、SNSへの投稿など企業が行う情報発信の中で、不適切な内容から炎上につながってしまうケースが散見されます。また、社員の個人的な投稿やネット上に公開された情報から、所属企業が特定されて非難を受けることもあります。これらの事象もITリテラシーが欠如していることによって起こりうる問題であり、企業としての対策が必要になります。
たとえば、USBメモリーを介したウイルス感染、操作ミスによるデータ破壊や不注意によるデータ紛失、メールの誤送信、フィッシング詐欺、その他システムへの不正侵入や情報漏洩につながってしまう脅威は数多くありますが、ITリテラシーの低さによる知識不足は、セキュリティ問題の発生につながりやすくなります。セキュリティ問題は企業の対外的な信用を大きく損ね、個人情報漏洩などでは損害賠償にまでつながってしまうこともありえます。情報の重要性の認識、不正を疑う知識やスキル、慎重な情報管理が実施できる知識は、情報漏洩やセキュリティ問題の防止に欠かせないITリテラシーの要素のひとつです。
ITリテラシーを向上させることのメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
各社員または全社的なITリテラシーを高めることは、業務効率化や生産性を向上するうえで非常に効果的です。これは新たなシステム導入というような大きな改革ばかりではありません。たとえばアプリケーションを使用した文書作成などの日常業務においても、ショートカットなどちょっとした効率的な操作方法を知るだけで作業効率は上がります。ITリテラシーが高まることによる効果は大小さまざまなことが考えられ、その積み重ねが全社的な生産性の向上につながっていきます。
※労働生産性については、以下の記事をご参照ください。
【事例付き】労働生産性を向上させるには?計算方法や業界ごとの違いを解説
ITリテラシーが高まることによって、関係者のセキュリティに関する重要性が認識されるようになれば、会社全体のセキュリティ強化とその促進、関連するトラブルや不祥事、その他問題発生の防止に直接つながります。
セキュリティは一部の関係者だけでなく、システムを利用するすべての社員に関わる問題であり、全社的なリテラシー向上が重要です。
近年は「DX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術を活用したビジネスや社会の変革)」など、IT活用の取り組みが各所で進められています。
DXは単なる業務効率化だけでなく、ビジネスモデルの変革まで含めた幅広い取り組みを志向していることから、企業内でも部門や業務範囲にこだわらない全社横断的な取り組みが求められます。そのためコミュニケーションツールを使いこなし情報共有に長けたITリテラシーを持つ人材が各所で必要になり、ITリテラシーが高い人材の充実を図ることによって、社内の横断的な連携がスムーズに行われ、DXの推進をより加速することができるでしょう。
これからのビジネス環境におけるデジタル化の進展を考えても、全社的なITリテラシーの向上は、さらに重要性を増していくでしょう。
実際に社員のITリテラシーを高めていくための方法としては、以下の3つが考えられます。
ITリテラシーを高めるための研修カリキュラムを、すべての社員に受講させることは、多くの企業でよく実施される方法です。内容としてはネット利用に関するマナーや注意点、セキュリティなどに関する正しい知識を得るための座学中心のプログラムと、システムやアプリケーションの実際の操作方法や手順などを学ぶ実技に関するものの、大きく二つに分けられます。
実施方法としては、主に座学の部分ではオンラインによるeラーニングやウェビナーなど、場所や時間を問わずに受講しやすい形が取られることも増えています。
※eラーニングについては、下記の記事をご参照ください
LMSとは?eラーニングに必要な学習管理システムのメリットや役割を解説
ITを活用した業務が実施できる環境作りを行って、従来の手作業やアナログによる仕事の進め方を脱却し、実際の日常業務を通じてシステムを使い込んでいくことは、社員のITリテラシーの向上のためには重要なことです。
クラウドなどアクセスしやすい環境が整備され、パソコンやスマートフォン、その他さまざまなデバイスを使用して業務を行うことができるなど、システム環境を整備することは、社員のITリテラシーを高めて業務を効率化するためにも必須の取り組みといってよいでしょう。
IT関連の資格は、公的なものから民間が実施しているものまで、さまざまなものがあります。知識やノウハウを習得するための自己啓発の一環として、対象資格を決めてそれらの取得を推奨する制度を実施し、ITリテラシーを高める一助としている企業があります。資格取得を希望する者への受験費用補助、合格者への報奨金や手当を支給する形での支援が見られます。
ITリテラシーの向上は、これからのビジネス環境を考えれば、企業として重要な必須の取り組みの一つと見ることができます。計画に基づいた継続的な取り組みを進めていくことが必要です。