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「ニューノーマル」とは、「新しい(New)」と「通常、標準(Normal)」を組み合わせた造語で、日本語では「新しい日常」「新しい生活様式」などと呼ばれています。
社会や経済において、それまでの常識や一般論が通じなくなるような大きな変化が起こったときに、「変化が起こる以前には戻らない」という認識で変化への対応が必要だというニュアンスを含むこともあります。
ビジネスにおける「ニューノーマル」での大きな変化は、人が対面したり、集まったり、移動したりすることに対する制約です。
この変化のために、たとえば、それまで顧客訪問や対面で行っていた商談をリモート会議で実施するようになったり、人を集めて実施していたセミナーや展示会、その他イベントをオンライン上で行うなどの動きが盛んになっています。
こうした取り組みを通じて、従来のやり方では非効率だった部分や、逆に必要不可欠な部分が明らかになり、この使い分けが進められています。
ニューノーマルにおける働き方の変化としては、主に以下の3つが挙げられます。
人との接触機会を減らす必要性から、多くの業務でオンラインやリモートへの切り替えが行われました。
総務省が実施した「令和2年通信利用動向調査」によると、テレワーク導入企業は前回調査の2019年の20.2%から2020年の47.5%と1年で2倍以上増えており、急速に導入が進んでいることがわかります。
また、導入企業のうち「非常に効果があった」「ある程度、効果があった」との回答が74.6%で、働き方として肯定的にとらえられている様子がうかがえます。
※リモートワークに関しては、以下の記事をご参照ください
リモートワークとは?テレワークと在宅勤務の違いや個人の満足度調査を紹介
テレワークの普及に合わせて、それまで対面で行っていた商談やミーティングなどのコミュニケーションも、オンライン上で進められるようになりました。
特に営業活動では、メールや電話、リモート会議などを活用しながら、直接訪問はせずに顧客とコミュニケーションを図る「インサイドセールス」と呼ばれる手法で行われる様子が見られます。
移動時間が不要で会議室などの場所を用意する必要がなく、効率的に活動できるメリットがある一方、相手の表情がわかりづらい、雑談がしにくい、周辺情報が集めづらいなど、コミュニケーションや情報収集の問題があります。
「令和2年通信利用動向調査」では、「テレワークをしたことがある」と回答した個人の割合が19.1%にとどまっており、実施しない理由としては「適した仕事がない」「制度がない」が上位を占めています。今後の推進にあたり、IT化などでの実施可能業務の拡大と制度の確立、実施状況の検証と方法の見直しなどの対策が必要になると思われます。
※出典:総務省「令和2年通信利用動向調査」
対人接触を避けるため、たとえばECシステムによる販売活動のオンライン化など、DX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれるテクノロジーを活用した業務やサービスの変革が注目されています。新たなビジネスモデルの開発など、各企業での取り組みが進められるようになりました。
また社内業務においても各種データ管理やシステム化が進み、それらを利用するための環境作りやルール策定も合わせて進められています。これらを有効に使って働くことが求められています。
この流れが今後も変わることは考えにくく、すべての場面でさまざまなITツールを活用して仕事を進めていく働き方が、ごく一般的になるでしょう。
以前と同じ形には戻らないとされるニューノーマルの時代において、仕事をするうえで高めておきたいビジネススキルにはどのようなものが考えられるか、3点挙げてみます。
在宅勤務やテレワークを行うには、基本的なパソコン操作スキルだけでなく、さまざまなITツールを使いこなしながら業務を進めることが必要です。
新たなシステムやツールにすぐに順応できるスキルや、パソコンやネットワークのトラブルに自力で対応できる能力なども求められます。
ニューノーマルの時代では、ITリテラシーを活用するためのスキルが、これまで以上に重要になるでしょう。
テレワークで仕事をする際には、チャットやメールなどテキストベースのやり取りが多くなるため、簡略な文章でコミュニケーションするスキルが重要です。
また、オンラインでの会議や打ち合わせでは、ともすれば特定の人が一方的に話しがちになっていたり、表情などから反応を見ることが難しいため内容が理解されているのかがわかりづらかったりするなど、対面でのコミュニケーションとは異なる点があります。意図的に発言を求めたり、理解度をお互いに言葉で確認し合ったりするなど、オンラインならではの配慮が必要でしょう。
オンラインを通じても円滑なやり取りができるようなコミュニケーションスキルは、今後さらに重要視されるようになるでしょう。
在宅勤務をはじめとしたテレワークでは、基本的に自分一人で仕事をするため、周囲から自分の仕事ぶりが見えづらくなり、集中できずにだらだらと仕事をしたり、やる気を失ってついついサボってしまうこともあり得ます。
また、ちょっとした雑談ができる相手がいないため、気分転換が難しく、軽い相談ができないために仕事が滞ることもあります。
そのような状況でもやるべき仕事をきちんとこなしていくには、出勤して仕事をするとき以上に、自分を律して自己管理をすることが重要です。
また、仕事上で発生した課題について、自分で方法を考えて解決する自己解決スキルも必要です。今まで以上に責任感を持ち、自律的に仕事を進める自己管理スキルが大切です。
急激な変化に対応するのは、確かに大変なことですが、そこから見えてくる新たな可能性もあります。
ニューノーマルの時代に活躍するためのポイントとして、最も重要なのは「変化を恐れず前向きにとらえること」です。
自分が経験していない知らないことは誰でも不安な気持ちになりますが、その変化に向き合って対応することは、自分の視野や経験を広げるチャンスになることがあります。変化することを当たり前ととらえ、あえてそれを楽しむような姿勢は、これからの時代では大切になってくるでしょう。
もう一つは「知識よりも知恵を身につけること」です。
今のような情報過多の時代では、ネット検索でほとんどのことは調べることができます。しかしそれはバラバラの単なる知識であり、それを組み合わせて活用するには、自分なりに考えて答えを導き出す知恵が必要になります。
多くの情報から必要なものだけを探し出して活用することが、これからの時代では重要になってくるでしょう。
ニューノーマルの環境下では、これまでの働き方の常識を大きく変えることが求められますが、変革が大きければ大きいほど、トラブルが起こる懸念は高まります。自社のビジネスをニューノーマル化する上で、注意を要する点を4つ挙げます。
従来であれば、職場ではお互いが常に顔を合わせており、会話や面談などで直接コミュニケーションをすることができました。しかしテレワークではそれらの機会が基本的にありません。
社員の表情や様子が見えないことで、孤独感などのストレス、体調、労働時間や作業負荷の状況などを観察して見極めることが難しくなっています。
この対策として、オンラインを通じたコミュニケーション機会をできるだけ増やし、業務状況についても、聞き取りの機会を増やす、管理ツールを活用するなど、適切な状況把握と管理が必要になります。
特に上司の立場からは、意図的にコミュニケーション機会を増やす配慮が必要でしょう。
テレワークでは必要に応じて電話やメール、チャットでやり取りをすることになりますが、気軽に声をかけあうことができたときと比べてどうしてもコミュニケーション不足が起こりがちです。そのことが確認不足や自分勝手な自己判断につながり、結果として生産性やチーム力の低下、トラブルにつながってしまうことがあります。
この防止のためには、会話に近い形でのやり取りがしやすいビジネスチャットのようなツールの導入や、雑談的な会話などお互いの接点を増やすことが重要になります。オンラインミーティングやオンライン面談などを定期的に行うことも必要でしょう。
テレワークでは、コミュニケーション不足、孤独感、オンオフの切り替えがうまくできないなど、さまざまな理由で仕事のモチベーションを低下させる社員が出てきます。周囲の目がないことでのサボりなど、仕事のモラル低下の懸念もあります。
主に上司が、日々の業務で適切な目標設定と検証をすることや、雑過ぎず細か過ぎない適度なコミュニケーションを意図時に取ることなどで、個々人のモチベーションとモラルの維持向上に努めることが必要でしょう。
テレワークでは、パソコンなどの情報機器を使って各自の自宅などさまざまな作業場所で仕事をすることになりますが、中には重要情報を扱う場合もあるため、セキュリティ対策はこれまで以上に強化することが必要です。
パソコン自体にセキュリティ対策をすることはもちろん、社員に対する研修や、社内のセキュリティに関するルール作りも必要になります。
システム上の物理的な対策と、社員のリテラシー向上などの人的な対策の両面が必要でしょう。
※リテラシーに関しては、以下の記事をご参照ください。