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「オブザーバー」とは、会議の進行や内容を実りあるものにするために置かれる重要なポジションです。会議中は話し合いの当事者としてではなく、議題の内容的側面に意識を向けて関わると同時に、話し合いをしている人たちに起こったことを記録したり、求められれば当事者へフィードバックをしたりする役割ももちます。ここではオブザーバーとはなにか、どうして会議に必要なのかを解説していきます。
オブザーバーの日本語的意味は、英語の「observer」が語源であることから考えると「立会人」「傍聴人」「観察者」などになります。しかし、会議のときのオブザーバーは、話し合いの決定権や議決権をもつ当事者とは異なり、あくまで話し合いの場から離れた客観的な立場で関わることを求められ、会議の際には進行に対して傍聴し観察するという役割となります。この役割から考えると「陪席」という意味が日本語的意味として適しているといえます。
オブザーバーと似た言葉には、コメンテーターや評者、評論家などがあります。
コメンテーターを英語で表記すると「commentator」であり、日本語では「注釈者」です。注釈者は論評や解説を加える人であり、テレビやラジオ放送におけるニュース番組の解説者が代表的な例となります。
また、評者を英語で表記すると「reviewer」となり、批評をする人、批評を加える人を意味します。さらに評論家を英語で表記すると「critic」となり、マスメディア等で批評し、論じることを仕事にしている人となります。
オブザーバーには、当事者同士の意見が激しくぶつかったり熱くなりすぎたりしないよう、冷静に会議を進めるための客観的な視点を保ち、会議をスムーズに進行させる役割があります。会議中の当事者はどうしても自分の意見だけに意識が向きがちになるので、冷静に話を聞いているオブザーバーという第三者がいるだけでも会議の過熱を抑止することができます。
また話し合いに参加している全員の意見を公平に聞くオブザーバーがいることで、参加者はオブザーバーのことを意識しながら発言することとなり、一方的な会議とはならず、全員が発言しやすい雰囲気を作る役割を果たすことができるようになります。
他にも、企業によっては新入社員や異動者に対して、主要な会議へ陪席してもらうことで業務の理解を深めてもらうという教育的側面をもつ役割として会議に参加する場合があります。
オブザーバーには第三者として客観的な立場から観察をする役割があるので、仕事で交わされる発言にも第三者の監視が無意識的に働き、各自が業務で発言する内容に責任をもたせることができるようになります。その結果、日ごろから自分の意見をしっかりと考えられるようにもなります。
特に会議の際には適度な緊張感のもとで全員が能動的に参加できるようになるため、意見の幅と深みが増し、生産性の向上とチームでの取り組みに効果を発揮します。
会議の参加者は自分の業務を止めて出席するため、会議が長引けば長引くほど長時間労働を誘発する可能性が高まります。会議の回数を減らしたり短時間で終わらせたりすることは、労働時間を短縮し従業員の健康を守ることにもつながります。ここでは、オブザーバーを入れることで効果が上がる会議の例をとりあげていきます。
社内会議は参加者が社員で構成されるため、議題に関連する過去の事柄や参加者の横やりによって話題がそれてしまったりすると、それだけで時間をロスしてしまう場合があります。特に定期的に開催される会議では、馴れ合いが生じてしまったり、開催すること自体が惰性となっていたり、無駄な話が飛び出してしまうこともあります。
社内会議に外部者をオブザーバーとして招くとそれだけでも抑止力となり、時間の浪費を減らすことにもなり得ます。
全社員に伝える必要がある場合や参加人数が多い会議の場合、会社組織の上部の参加者も多くなるため、ひとりひとりの発言が積み重なり、結果として連絡事項の量は少ないが時間としては長時間にわたってしまう場合があります。参加人数が多くなればなるほどその分の仕事が止まり、労働生産性が下がることになります。
会議を実施する場合にオブザーバーを招いておくと、会議に参加している人たちがオブザーバーを意識して進行をするようになるので、無駄を省く抑止力につながります。
解決が困難な問題が発生したとき、困難だからといって何回も同じ議題で会議をすると、そのたびに参加者は自身の仕事の都合を調整する必要がでてくるため、仕事が効率よく進められず労働生産性も上がらなくなってしまいます。
このような場合に主催者の意識を高め、会議を少しでも進展させるためには、時間制限を設けてオブザーバーを招き、実施することが効果的です。
会議を実施するのに資料はつきものですが、大量の資料をめくりながら進めていくのは効率が悪く、時間の無駄につながります。会議参加者の貴重な時間を節約するためにも計画的な会議の開催を実行するか、事前配付をすることで検討事項をあらかじめとりまとめておくとよいでしょう。そのうえでオブザーバーを招き報告会の形にすると効率的です。
オブザーバーは会議などの話し合いの場で決定権や議決権をもちません。話し合いの場から離れた客観的な立場から関わることで第三者として場を監視し、話し合いの過熱を防いだり、スムーズな進行を促したりします。
一方、アドバイザーは自身が身につけてきた経験や専門的な知識をベースとして、会議などの参加者に向けた助言や忠告など、主観的な意見を述べることができる立場であるところに違いがあります。
アドバイザーは専門的な知識や経験をベースとした発言を求められるため、会議では積極的な意見や助言が求められます。そのため、的確なアドバイスを参加者に対してすることが役割となります。言い換えれば、アドバイザーは課題に対して参加者とともに議論を重ね、主体的に方向性を決定していくという位置づけとなります。
アドバイザーには外部コンサルタントが選ばれることが多く、信頼できる専門知識が豊富であるかどうかが選任される重要な基準のひとつです。アドバイザーとなり得る専門家の例を紹介します。
労働者の職業選択やキャリアプランニング、職業能力の開発と向上に関する助言や指導を行う専門家です。人材に関わる組織開発にも携わることがあります。
企業の経営上の問題解決をサポートする役目です。業務は戦略、人事、総務、財務、ITなど多岐にわたり、関連する分野の専門家と連携をとりながらコンサルティングを進めていきます。経営コンサルタントには中小企業診断士など資格保持者もいます。
企業の社会保険や雇用保険に関することや年金、給与、入社・退社に関する手続き、解雇に関する相談など労務関連の問題を社会保険労務士としての専門的な知識で解決、指導する労務専門のコンサルタントです。労働災害に関する問題を扱うときもあります。
※労務に関しては、以下の記事をご参照ください
労務の仕事とは?人事との違いや役割など必要なスキルをわかりやすく解説
企業における事業運営で発生する法律上の問題への対応や指導、契約の起案や交渉、株主総会・取締役会に関する事務、コンプライアンス、知的財産権などに関わる業務を行います。
企業の財務問題を解決するよう指導します。業務は資金調達の見直しや節税に関すること、投資戦略の立案やM&Aなどの企業の財務全般に関わるコンサルタントを行います。事業再生を支援することもあります。
オブザーバーは第三者的な立場で会議に出席し、基本的に意見や提案をしません。このことからしっかりと役割意識をもって会議に臨む必要があります。会議の進行をスムーズに展開するにはどうしたらよいか、どのようにふるまえばよいのかがわからない場合には、事前に会議の主催者やすでにオブザーバーを経験している人などに聞いておきましょう。
また、開催される会議でオブザーバーが必要とされる意図や目的を事前に把握することで、目的意識も持ちながら役割が果たせるように心がけましょう。