目次
KJ法とは、情報を整理する手法のひとつです。たくさんの情報を、種類や内容、対象など関連性のあるもの同士でグループ化し、グループ間での相関関係や因果関係を明らかにしていきます。発明者である人類学者の川喜田二郎氏の名前を取ってKJ法と名付けられました。
KJ法を用いることで、例えば消費者の需要とマッチしたモノやサービスを創造するときのロジック(論理の道筋)などを明らかにすることができます。
kj法を活用するためには、最初にたくさんの情報を集める必要があります。
それに関する代表的な手法として、ブレインストーミングがあります。
ブレインストーミングとは、複数の人間が会議形式で、一定のルールのもと、共通のテーマに則した意見やアイデアを出し合い、課題の解決に活かす対応のことです。
ブレインストーミングは、たくさんの意見やアイデアを集めたうえで特定の結論を見出すことを目的としています。
そのことを実現するためには、いくつかのルールが存在します。ここで代表的な例をご紹介します。
「何についての結論を見出すために、何についての意見やアイデアを出し合いたい」という会議の目的を、参加者に明確に伝える必要があります。
そうすることにより、参加者の発言の方向性がぶれることがなくなり、意見やアイデアをまとめやすくなります。
たくさんの意見やアイデアを集めるためには、参加者全員が均等に発言することが効果的です。
そのために、参加者が順番に発言していきます。
発言者は、他の参加者が発言した意見やアイデアを繰り返すことなく、自由な発想で、自らが思い付いたことを発言します。
ブレインストーミングは、特定の意見やアイデアを深掘りして結論を見出すのではなく、たくさんの意見やアイデアを複合的に分析することで的を射た結論を見出すことを目的としています。
よって、集める意見やアイデアは、質より量を重視します。
たくさんの意見やアイデアを集めるためには、参加者全員が、他の参加者に遠慮することなく自由に発言できる状況が必要です。
そのため、他人の意見やアイデアを批判することは厳禁です。
批判をすることで、批判された人が自由に発言できなくなってしまうからです。
それぞれの人の意見やアイデアをすべて肯定的に受け止めることが鉄則です。
集めた意見やアイデアは最終的には特定の方向にまとめていきますが、発言段階で価値を判断することをしてはいけません。
単体では価値の低いものに思えても、他の内容と結びつくことで価値の高い方向性を見出すことへとつながるケースもあるからです。
ブレインストーミングは、一例として次のようなやり方で行うことで、着実に進行できるでしょう。
すべての参加者が入り乱れながら発言を行うよりも、参加者が一人ずつ順番に発言し発言内容を記録することで、集まる意見やアイデアの数を増やすことができます。
そのため、会議の進行を取り仕切る司会進行役をあらかじめ決定し、その人の進行に基づいて参加者が発言していきます。
司会進行役は、参加者が発言を始める前に、会議の目的や発言の制限時間などをすべての参加者に伝える必要があります。
司会進行役の指示に基づいて、参加者が順番に発言を行います。
その際、一人一人の発言を付箋紙などに記録し、模造紙やホワイトボードに貼り付けるといった方法で表示します。
記録や表示の作業は、会議の進行が滞ることを防ぐために、司会進行役とは別の人間が務めることが望ましいでしょう。
発言者以外の参加者が、発言の理由や意図など背景にあるものを明らかにするための質問を行います。
このとき、決して批判する言葉を口にしてはいけません。そのようなことをしてしまうと、その後の参加者が発言しづらくなってしまうからです。
理由や意図が確認できたら、それらも発言内容の記録に付け加えます。また、確認を行った際に反対意見が出てきた場合は、同様に理由や意図と一緒に記録して表示します。
会議の中で発言されたすべての意見やアイデアをまとめていきます。
まとめ方は、発言の理由や意図などをもとにして、関連性のある内容ごとにグループ化する形で行います。
このときに、全体的な視点から意見やアイデアをまとめながら関連性を明らかにしていくやり方としてkj法が応用できます。kj法のやり方は後述します。
kj法には、多種多様な情報を整理したうえでまとめていくという特性から生じるメリットとデメリットが存在します。
さまざまなメリットが存在しますが、中でも、次の4つが企業の活動に役立つでしょう。
たくさんの情報を関連性のあるもの同士でグループ化し、そのうえでグループ間での相関関係や因果関係を明らかにしていくことで、テーマ(課題)に関連することの全体像が可視化されます。それにより、本質がどこにあって問題の解決を図るうえで鍵を握るものが何なのかが見えやすくなります。
そうなることで、問題解決がしやすくなります。
テーマ(課題)に関連することの全体像が可視化されることで、日常的に直面していることへの固定概念に縛られることなく、視野を広げながら全体像を俯瞰して物事を考えることができるようになります。
そうなることで、新しいアイデアを生み出しやすくなります。
複数の人間で発言し合った情報や意見を、kj法を活用しながら整理することで、すべての発言を参加者の前で可視化することができ、情報の共有化が行いやすくなります。
また、情報や意見を整理し論点を明らかにすることで、今後の対応に必要な考え方などについての認識合わせがしやすくなります。
通常の会議だと少数意見が排除され多数意見に焦点を絞った議論がされがちですが、kj法の場合は、すべての参加者に平等に発言機会が与えられ、それにより集まった情報や意見の全体をまとめていくため、少数意見を活用しやすくなります。
一方でkj法にはデメリットも存在します。例えば、参加者同士の人間関係によって情報や意見が偏ることがあります。
同じようなコミュニティに属し、あるいは環境下にいる人間同士が情報や意見を出し合う場合は、内容が偏り、まとめた結果から課題の本質を明らかにすることが難しくなることがあります。
またkj法を効果的に活用するためには、参加者が自由に発言できなければなりません。これに関して、参加者間に上下関係などのパワーバランスが存在することで、影響を持つ人の顔色を窺い自由に発言できなくなる参加者が現れることがあります。そうなると、情報や意見が偏ることによる弊害が生じてしまいます。
kj法は、主に次のようなやり方で進めていきます。
前述のようにブレインストーミングを行い、一つ一つの発言を付箋紙などに記入し、模造紙やホワイトボードに貼り付けるなどして、すべての参加者の前で見える化します。
情報や意見、アイデアがすべて出そろった後に、意味合いの似た内容のものをグループ化します。
その際、グループ化した理由となった意味合いを、グループのタイトルとして表示します。
すべての情報や意見、アイデアのグループ化が終了した後に、グループ同士の関連性を明らかにします。
「Aグループの〇〇が、Bグループの〇〇に対して、〇〇の面で影響を及ぼしている」といったようなことを、矢印などを用いて明らかにしていきます。
その過程で、関連性の強いグループ同士を統合していきます。
グループの統合が終了した後に、全体の結果を俯瞰しながらテーマ(課題)の全体像を文章化します。
「〇〇に関して、〇〇という原因で、〇〇という結果が生じている」というような形で文章化し、それを足掛かりに物事の本質や問題の解決を図るうえで鍵を握るものを明らかにして、的を射た対応を行うためのアイデア作りへとつなげていきます。
kj法は、広い視野で物事の関連性を明らかにすることで本質的なことを知り、それにより新しいアイデアを生み出していく手法です。
そのことが、商品の開発や業務の改善などを行う上でのヒントとなるのは間違いないことですが、アイデアは、あくまでも仮説にすぎないということも忘れてはなりません。
kj法の実施をビジネスで活かすためには、アイデアを生み出した後に、的を射た認識であるのかどうかを確認するための調査を行い、結果を振り返り、必要に応じてアイデアを修正することで、結果の精度を高めていく必要があります。
kj法は、単に情報を整理するだけではなく、テーマ(課題)の本質を明らかにすることが目的です。
そのため、たとえば次のようなことに注意をする必要があります。
kj法ではすべての情報や意見を表示したうえでまとめていきますが、一つ一つの情報や意見を表示するとき、表面上の言葉(単語)だけを書くのではなく意味も具体的に書くことが重要です。
同じ言葉(単語)であっても、導き出された論拠が異なる場合、正反対の意味を表す情報や意見になることがあるからです。
集めた情報や意見をまとめるときに、始めから大きく分類してしまうと、その段階で方向性が決まってしまい、テーマ(課題)の本質や新しい発見を見逃してしまうことが起こります。
情報や意見をまとめるときは、始めは小さく分類し、相互の関連性を基準にして大きな分類にグループ化していくことが重要です。
特定の参加者のペースで集めた情報や意見をまとめてしまうと、視野を広げて全体像を俯瞰しながらテーマ(課題)の本質を明らかにするというkj法のメリットを得ることが難しくなってしまいます。
全員の同意を確認しながら情報や意見をまとめていくことが重要です。
kj法は、たくさんの人の意見やアイデアを集めることで、物事の構造や関連性などを広い視野で見ることができるようになり、さらにその内容を可視化することもできるようになります。
そうすることにより、今までにはなかった斬新な発想が生まれ、ヒット商品の開発や業務の改善などへとつながっていきます。
それに関する効果的な手法としてkj法やブレインストーミングが存在し、多くの企業で活用されているのです。