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ワークエンゲージメントとは?社員の「熱意・没頭・活力」の測定方法、高め方を解説

ワークエンゲージメントとは?

ワークエンゲージメント(Work Engagement)とは、オランダのユトレヒト大学のシャウフェリ教授らによって確立された、仕事に対するポジティブな態度や心理状態を表す概念です。

厚生労働省の令和元年版「労働経済の分析」にて、日本の課題である人手不足の働き方を変えるための方策の一つに、ワークエンゲージメントの活用について言及されています。

参考:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」

3つの要素

ワークエンゲージメントには次の3つの下位要素が存在しており、これらの要素すべてが満たされた状態がワークエンゲージメントとされます。

「ワーク・エンゲイジメント」とは、オランダのユトレヒト大学の Schaufeli 教授らが提唱した概念であり、島津(2014)99 によると、「仕事に誇りや、やりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)

引用:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」

の3つが揃った状態として定義されています。

ワークエンゲージメントと関連する概念

厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析」には、ワークエンゲージメントと関連する概念として、「バーンアウト(燃え尽き)」の概念が紹介されています。

関連の概念ではあるものの、ワークエンゲージメントとバーンアウトは対概念と位置づけられています。
このことより、バーンアウトは一つの物事に没頭し、心身の疲労により燃え尽きたように意欲を失い社会に適応できなくなった状態を、一方ワークエンゲージメントは夢中になりつつも心の健康を維持する状態であることが推察されます。

そのほか、ビジネスの世界で注目されているもう一つのエンゲージメントの概念に「従業員エンゲージメント」があります。ワークエンゲージメントが仕事内容に対する個人の関わり合いを表すのに対して、従業員エンゲージメントは企業や組織と個々の社員の双方での関わり合いのことを表しています。

ワークエンゲージメントとESの違い

またワークエンゲージメントと混同されやすい概念として「ES(従業員満足度)」があります。

両者の大きな違いは、社員との関わりが想定されている「対象」です。
ワークエンゲージメントが「仕事の内容」との関わりについての概念であるのに対して、ESが対象としているのは仕事内容、報酬、職場環境などを含めた「企業」との関わりです。

またESは、同じく企業との関わりの概念である「従業員エンゲージメント」とも異なります。ESは社員側からの企業評価(満足度)により成り立っているのに対して、従業員エンゲージメントでは社員の「自発的な貢献意欲」という主体的な視点が欠かせないでしょう。

※従業員エンゲージメントについては、以下の記事をご参照ください。
エンゲージメントとは?高めるポイント、調査方法、向上させる施策を紹介
※ESについては、以下の記事をご参照ください。
ES(従業員満足度)とは?向上のメリット、高めるための具体的な方法を解説

ESなどに代わる新しい概念

ワークエンゲージメントは、社員の職業生活の充実度やメンタルヘルスなどの向上に役立つだけでなく、企業にとっても業績向上につながることが統計により示唆されています。
このため従来の従業員満足度などに代わる概念として、積極的な導入が期待されています。

ワークエンゲージメントの尺度と測定方法

ワークエンゲージメントの尺度は、国際比較が容易などの理由からユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(UWES)が広く普及しているようです。

UWES」は、社員に対して前述しているワークエンゲージメントの3つの下位要素「活力」「熱意」「没頭」に関する質問を行い、ワークエンゲージメントの高さをスコア化して測定する方法です。

引用:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」

ワークエンゲージメントを高めるメリット・効果

ワークエンゲージメントを高めるメリットとして次の項目が挙げられます。

  • 労働生産性の向上
  • 社員の精神的ストレスや疲労度の軽減
  • 社員の職業人生の充実度の高まり(可能な限り長く働きたい人の割合が増加)

参考:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」

ワークエンゲージメントが高まると、総じて仕事への意欲が高まるとともに社内の人間関係も良好となると考えられます。

ワークエンゲージメントを高めるポイント

ワークエンゲージメントを高めるポイントについてですが、こちらについては研究者によって改善案が異なり、また成功例についても実施策が各社で異なっています。
こうした事態が生じるのも、ワークエンゲージメントを高めるために主体性が高い人々が知恵を出し合った結果、各社の事情に即したさまざまなアイディアが生まれるのではないかと推測されています。

ここではワークエンゲージメントを高める2つのポイントをご紹介します。

主体性が高い人を採用する

ワークエンゲージメントを高めるためには、他社の成功事例や特定の研究者による方法論をそのまま実践するよりも、前述のワークエンゲージメントの定義にも含まれている「主体的に仕事に取り組む」ことができるような人の採用に力を入れることがより重要ではないかと考えられます。

ツールを活用する

既存社員のワークエンゲージメントを高めるにあたっては、ワークエンゲージメントを測定できるツール(エンゲージメントサーベイツール)などを活用することもできます。

これらのツールの特徴は、ドライバーと呼ばれる「各社独自の調査結果に基づくワークエンゲージメントに影響を与える要素」が質問内容に反映されているため、利用する企業はワークエンゲージメントについて改善すべき領域を素早く見つけ出すことができることです。

参考までに、各ツールに共通して見られたドライバーをあげます。

  • 自己成長の機会が設けられ、そのための適切なサポートが受けられる
  • チーム内や部門間の協力体制が築かれ、職務に関する必要な支援が受けられる
  • 互いの仕事ぶりを承認しあえる関係ができている
  • 企業の理念や事業内容に社員が納得・共感している
  • 給与や福利厚生、社内環境に社員が満足している

これらのツールで収集したデータから、課題を発見し、施策を考えるなどPDCAを回すことでワークエンゲージメントの向上につながるでしょう。

ワークエンゲージメントを高める具体的な方法

次にワークエンゲージメントを高める具体的な方法として、採用時の応募者における主体性の有無の判断基準について、筆者なりの考えをお伝えします。

エントリーシートや面接で主体性を判断する

応募者の主体性の有無は、エントリーシートの内容や面接での態度などから推測することが可能と思われます。

これは主体性が高い人からは、自分の考えを相手に伝えようとする意思が感じられたり、あるいは想定外の質問に対してもその場で回答を考える素振りが見られたりするでしょう。
一方、主体性が乏しい人は既述のように物事の判断基準をもっぱら外部に求めるため、他者の考えをコピー&ペーストするなどしてそのまま取り入れてしまう傾向があると考えられるためです。

既存社員のワークエンゲージメントを高める具体策

続いて既存社員のワークエンゲージメントを高める具体策についてですが、こちらは前述のように、決まった正解があるわけではありません。
ここでは成功事例からいくつかピックアップしてご紹介します。

  • わかりやすく、心に響くビジョンを策定する
  • 勤務時間の一定割合を自分が熱中できるプロジェクトに自由に充てられる制度を設ける
  • 役職の撤廃によるフラットな関係の構築を目指す
  • 同僚同士の「貢献度」による評価を設ける
  • 全社員へ経営情報を常時開示する

他社の成功事例を取り入れることを検討してみるのも一つの方法といえるでしょう。