目次
CSRとは、「Corporate Social Responsibility」の略で、日本語にすると「企業の社会的責任」となります。
サステナビリティとは「持続可能性」のことです。将来にわたって環境や社会などが適切に維持されることを意味します。
一方、CSRは企業に関する社会的責任です。ここ数年は、企業活動による著しい環境破壊と自然、資源そのものが持続可能でなくなることに厳しい目が向けられています。
SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。
CSRは企業の社会的責任ですが、SDGsの策定によって、企業が果たすべき役割も大きくなっています。「我が社は知りません」ではなく、どのような活動ができるか考えたいものです。
2000年代、食品偽装問題や食肉偽装問題、耐震偽装問題などが発覚し、当該業者は廃業や倒産、生活者は企業に対し不信感を募らせたのです。
相次ぐ企業の不祥事の後、2009年に、弁護士会がCSRのガイドラインを発表しています。
参考:日本弁護士連合会「企業の社会的責任(CSR)ガイドライン2009年度版」(2010年3月18日)
さらに2015年に経済産業省がCSRガイドラインを作成しました。
参考:経済産業省 経済産業政策局 企業会計室「CSRについて」(2015年9月)
アーチー・B・キャロルによれば、企業の社会的責任は4段階に分けることができるといいます。キャロルによる「CSRのピラミッド」と呼ばれるもので、以下の4段階で構成されます。
第1段階の経済的責務とは、誰もがイメージできる企業が仕入れて売る、あるいは作って売る営業行為です。第2段階の法的責務は先程ふれたように、法人として法令を守ることです。第3段階の倫理的責務は、例えばフェアトレードなど法律に定められてはいない倫理的な取り組みです。第4段階の裁量的責務とは、裁量が各企業に委ねられ実施しなくとも非倫理的とはみなされない社会貢献事業をいいます。
わかりやすく「守りのCSR」と「攻めのCSR」として考えると、おおむね第1、第2段階までが「守りのCSR」、第3,第4段階が「攻めのCSR」といえるでしょう。
おおむね、としたのは「倫理的責任」が曖昧なためです。日本における法的規制がないとしても、時代の流れのなかで倫理の内容が変わる場合があるのです。
CSRのメリットとデメリットについて説明します。
CSRのメリットは、会社を持続可能にすることだといえます。この場合の持続可能とは自然やエネルギーの持続可能ではなく「自社の持続可能」です。
SDGsなど時代の要請もあり、「環境、人権に配慮する取り組みに積極的な企業が、より良い企業」と取引先、顧客からみなされる傾向にあります。
CSRに取り組み企業の社会的責任を果たすことで、結果的に社会の中での信頼が高まり、自社を持続可能な状態に導くといえるでしょう。
CSRには大きなデメリットはないといえます。企業が必ず取り組まなければならないことです。
ただし多少なりともコストがかかるという点は避けられません。コストのかけ方は、企業の規模にもよりますし大小あります。大きな予算をかけられないなら、社長や役員自身がしっかり勉強して社員を教育するという方法もあります。
また、企業内のCSR活動という側面から見たときにデメリットとしてあり得るのは、社内における認識の齟齬です。例えば「ゴミの減量」の取り組みに対して総務部が「営業部は真剣さが足りない」と苦言を呈するなど、些末な要因で社内がギクシャクした、といった話も聞こえてきます。
CSRの取り組み事例をご紹介します。
富士フイルムグループはCSRを「誠実かつ公正な事業活動を通じて企業理念を実践することにより、社会の持続可能な発展に貢献すること」と位置づけ、「環境」「健康」「生活」「働き方」を重点課題として取り組んでいます。
2030年度までにグループによるCO2排出を30%削減(2013年度比)という重点課題を、2019年度に達成したため、より高い目標を設定しました。健康分野では、メディカルシステム事業の医療AI技術を活用した製品・サービスを世界中に提供することで医療アクセスの向上という社会課題の解決に貢献する目標を掲げています。
また働き方の分野では、ビジネスパーソンのリモートワークを支援する個室型ワークスペース「CoCoDesk」提供開始、クラウドサービス「Smart WorkStream」の機能を強化し、企業間のセキュアな文書共有を実現するなど、働き方改革をサポートしています。
参考:富士フイルムホールディングス株式会社「サスティナビリティ」
事例を見ても、いざ自社で取り組むとなるとどのような活動をすればよいか、何から手をつけてよいか悩むかもしれません。
ここからはCSRに取り組む際のポイントの一例をご紹介します。
まずは会社の守りを固めることを意識しましょう。守りのCSRとは「法令遵守(ほうれいじゅんしゅ)」です。コンプライアンスともいいます。
消費者に対する法令遵守はもちろんのこと、従業員に対して法を守ることも重要です。
現在は匿名で利用できるSNSが当たり前になっているため、社員(アルバイト、派遣社員を含む)が、悪い評判を書き込む恐れもあります。こういった情報がインターネット上に拡散されると会社の信用は傷つき、取引に影響が出たり、採用がしにくくなったりといった影響もあり得ます。
そういったリスクを踏まえ、自社の守りを固める必要があるのです。たとえばサービス残業が常態化していないかなど、社内もしっかりと見ておく必要があります。
対策の例として、内部通報窓口を設置するという方法があります。
筆者の知る例ですが、ある会社は内部通報制度を重んじて外部機関に委託し、匿名で気軽に利用できるホットラインを社内に掲出したとのことです。場合によっては取引先にもホットラインをお知らせし、経営者の見えないところで自社社員が立場の弱い取引先などに圧力をかけていないかなど、言いにくいことを通報してもらうということです。
内部通報の件数をランキングで公表している企業もあり、内部通報が多いことが透明性高く良い会社だという評価につながっているといいます。
※コンプライアンスに関しては、以下の記事をご参照ください
【弁護士監修】コンプライアンスとは?意味や法令遵守するための対策を紹介
守りが十分に固められたら、次に攻めのCSRに進みます。
CSV(Creating Shared Value)という言葉が使われることもあります。CSVとは共有価値創造のことで、経営学者マイケル・ポーターが提唱しました。
「共有価値」とは、自然、社会、もう少し狭く範囲を設定すると地域にとって価値があるという意味です。そして「共有価値の創造」とは、経済的な利益追求と同時に、社会を良くすることを目指す行為のことです。
こうした一歩進んだCSRの形は、良いブランディングになる可能性があります。なぜなら、生活者のなかには昨今「消費は投票」と考える人も一定数いますし、また投資家のなかでも環境への配慮をする企業を応援する人たちが目立ってきているからです。
こういった考え方から、CSVは攻めのCSRと考えられるのです。
CSVの取り組み事例をご紹介します。
ネスレ日本では、共通価値の創造(CSV)という、事業を通じて社会問題を解決し社会と企業の双方に価値を創り出すことを目指しています。共通価値の創造はネスレのパーパス(存在意義)「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」を達成するための中核に位置付け、社会や地球に対しても有益となるような意思決定に基づいて、事業アプローチを構築することを目指してきました。
グローバルの取り組みとして、再生農業、農業従事者の生活、児童労働リスクの改善や支援、そして森林や自然生態系の保全・再生を目指す「フォレストポジティブ戦略」や、水資源に関する「ネスレ ウォーターズ プレッジ(誓約)」などの行動指針に基づき、活動を進めています。
参考:ネスレ日本株式会社「サステナビリティ」
地球規模の環境課題が山積するなか、企業がCSRに注力し経済活動と社会的課題の解決を同時に行うことが、ブランディングにつながる時流になっています。ぜひ取り組み
を検討してみましょう。