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人材マネジメントとは、企業の戦略や目標を実現させるために人材活用の最適化を図るためのマネジメントの仕組みです。
人事労務管理とは、従業員の雇用に関連して発生する事務手続きを執り行うことです。入社・退社時の諸手続きや給与計算、就業規則の運用などが該当します。
人材マネジメントでは、人材の確保、成長、能力の発揮、定着などに関して、経営的な観点より、最適化するための戦略を考え、実行します。そして、それにより生じた雇用に対して必要な手続きや事務を行うのが、人事労務管理です。
※労務に関しては、以下の記事をご参照ください
労務の仕事とは?人事との違いや役割など必要なスキルをわかりやすく解説
現在、多くの企業で人材マネジメントが求められているのは、主に次の3つのような理由があると考えられます。
それぞれについて以下で詳しく説明します。
企業は事業競争上の優位性を確保するために、戦略を策定し、必要な体制を構築します。競争優位性を確保できるかどうかは、戦略の実行に関わる人材が適切に行動できるかどうかがカギとなります。
そのため、戦略に対して人材が的確に対応できるようにするためのマネジメントが必要となります。
少子高齢化の進展により生産年齢人口(15~64歳の総人口)が減少の一途をたどっています(※)。これにより、今後の企業の人材確保が難しくなることが想定されています。
こうした背景のもと企業が継続的に生産性を高めていくためには、限られた人的資源を最大限に活用することが求められます。人材の質を高めるマネジメントが、ますます求められているのです。
ダイバーシティや働き方改革が進んだことで、従業員の働き方に関する価値観が多様化しています。勤務地や時間に縛られない働き方も増えてきました。
そのため多くの企業において、多様化した働き方に対応できる人材活用の仕組みづくりが急務となっています。
※ダイバーシティに関しては、以下の記事をご参照ください
ダイバーシティとは?意味や日本企業が重視すべき理由、企業の推進施策例を紹介
※働き方改革に関しては、以下の記事をご参照ください
【社労士監修】働き方改革とは?企業別対応方法と実態調査を紹介
人材マネジメントは、「採用」「教育」「評価」「報酬」「配置・異動」「休職・復職」の6つの分野を対象として行います。
「採用」とは、自社の経営に必要な人材を新たに雇い入れることです。事業の遂行に必要となる人材要件(どのような能力やスキル、経験を有した人材が、何人必要になるのか)を明らかにし、現在保有する人材の情報と照らし合わせて新たな雇い入れを行い、不足を解消します。
職務遂行に必要な能力やスキルを習得させるため、従業員に対して教育を提供します。
教育方法には、現場での職務遂行を通じたOJTのほか、外部の教育システムを活用する方法やOFF-JT、自己啓発支援などがあります。
※OJTについては、以下の記事をご参照ください
【人事必見】OJTとは?意味やメリット・デメリットと導入するポイントを解説
※OFF-JTについては、以下の記事をご参照ください
【人事必見】OFF-JTとは?OJTとの違い、成功させるポイントを紹介
仕事の成果や能力・意識の向上などを適正に評価し、個人の成長度合いや実績、今後への期待などを明らかにします。
その内容を従業員一人ひとりと共有することで、各人が自己の成長や今後への期待を認識し、モチベーションを向上させることができます。さらに、新たな教育ニーズを明らかにすることもできます。
評価に基づいて、昇給、昇格、インセンティブの付与などの報酬を決定します。報酬が決定される仕組みを明確にし、社内にオープンにすることで、評価と報酬に対する納得性が高まります。
「配置・異動」とは、業務の最適化を実現するために、従業員一人ひとりの適性に合った職務を与えることです(適材適所の配置)。
新たに雇い入れた即戦力人材を本人の能力やスキル、経験を活用することが期待できる現場に配置し最適な職務を与える、今後の成長が期待できる人材に新たな職務を与える、といった対応を行います。
このような適材適所の配置を行うことで、個人の能力とやる気が強化されるほか、組織の生産性向上などの効果が得られます。
従業員が出産、育児、介護などのライフステージの変化や病気やケガなどにより、一時的に職務が遂行できなくなることがあります。そのような従業員が離職してしまうと、採用や教育など、その人材にかけた時間的・金銭的コストが無駄になるだけではなく、新たな雇い入れや教育にかかわるコストが発生します。
このようなリスクを防止するために、必要な期間、職務の遂行を免除し、フォロー体制を整えることで、職務への復帰のスピードを早めます。
人材マネジメントの実際のプロセスと進め方について、一般的な対応をご紹介します。PDCAサイクルに基づき、適宜改善しながら進めていきましょう。
経営に影響を与えるような人材面での課題を経営層が認識します。
たとえば「売り上げを向上したいが、営業力が不足している」「事業を拡大したいが、組織をマネジメントできる人材が不足している」「中長期的な戦略を実行していきたいが、人材の定着性が低い」などです。
人材面での課題を明らかにしたら、課題解決に必要となる人材対応を検討します。たとえば営業力や組織のマネジメント力不足が課題であるなら、どのような能力やスキル、経験を有した人材が何人必要なのかを明らかにします。
従業員の定着率が低いという課題であれば、定着性が低い原因を認識した上で、社内のコミュニケーションを最適化する、個人のキャリアアップを会社が支援できる仕組みを構築するなどの定着性を高めるための方策を明らかにします。
人材対応について検討したら、実施計画を立てます。採用に関する計画であれば、どのような時期に、どのような人材を、何人確保し、どのように配置するか計画を立てます。
人材の育成に関する計画であれば、教育を行う時期、対象者、教育の方法、成長目標について計画を立てます。
計画は該当する部門のマネージャーや対象となる従業員と共有します。
立案した計画を実行します。実行は現場任せにするのではなく、進捗状況を適宜確認しましょう。経営層も関わりを持ちます。
定期的に計画の実行状況と成果を評価します。着実にゴールに近づけているのか、あるいは必要とする時期にゴールに到達できたのか(必要な成果が得られたのか)を確認します。順調に進んでいない場合は、原因を明らかにし、適宜計画の見直しを行います。
効果的な人材マネジメントを行うためのポイントについて、例として以下の4つを取り上げてご紹介します。
現在では人材マネジメントに関して、他社事例などのさまざまな情報をインターネットなどを通じて簡単に入手することができます。また、時々にトレンドとなる人材施策や手法も生まれています。
しかし、他社で成功した手法をそのまま取り入れたとしても、自社で機能するとは限りません。それぞれが抱えている課題や経営を取り巻く環境が異なるからです。
効果的に人材マネジメントを行うには、自社の経営の方向性と合致した施策や手法を取捨選択する必要があります。
企業の経営を取り巻く環境は、常に変化しています。したがって、それまで行ってきた人材マネジメントが、今後も適しているとは限りません。
経営課題など、人材に関わる重要な前提条件が変化したのであれば、変化した課題を解決できる人材マネジメントを考え、中身を変化させていく必要があります。
人材マネジメントは、それに関わる計画や戦略を立てた側だけではなく、従業員がそのことを理解していなければ、取り組みをスムーズに進めることができません。
そのため、人材マネジメントの目的や施策、成果(ゴールの姿)などを分かりやすく従業員に説明し、共有しましょう。
人材マネジメントは、従業員を成長させながら活用し、適正な評価を行うことで、従業員のモチベーションを高める仕組みです。
従業員は目標や計画を一方的に与えられると、「上から指示を受けた」と感じ、モチベーションの向上や個人の成長につながらなくなってしまいます。このような事態を避けるためには、従業員自身に社内で成長し、活躍するための目標を設定させ、事業への参画意識を高めていく必要があります。
人材マネジメントは人材活用を継続的に最適化することで、企業の成長に貢献しています。しかしその成果は目に見えにくいため、適切に人材が活用されているか随時把握する必要があります。そのため人事部門は、人材施策に関する現場での状況を把握し、定期的に経営層に報告します。