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ここでは、キャリア採用とはどのような採用なのか概要をお伝えする他、中途採用・経験者採用など他の採用との違いを解説します。
キャリア採用とは、一般的にスキルや経験を持つ即戦力人材を採用する場合に使用されることの多い言葉です。企業の事業やサービス特性に即した人材、専門的知識や経験の豊富な人材を確保することを主眼に置いた採用活動といえるでしょう。
中途採用のひとつとして、キャリア採用や経験者採用が位置するという考えもあります。
中途採用は、一般的に就業経験者全般を対象にした採用を指します。採用の現場では、採用基準を明確にするため、スキルや実績を持つ人材が採用対象になる場合、キャリア採用という言葉が使用されることがあります。
また経験者採用とキャリア採用は、ほぼ同義として扱われているケースが大半です。 なお、新卒採用は、ターゲットが社会人経験がない、もしくは一定年数以内の人材であり、ポテンシャルを重視する傾向にある点がキャリア採用との違いです。
ここでは、キャリア採用の注意点を3つ紹介します。
キャリア採用は中途採用の中でも、スキル・経験を重視する傾向にあるため、万が一、計画通りの採用が実現しなかった場合、事業活動に影響を及ぼす懸念が考えられます。
例えば新規事業立ち上げに際し、求める人材の採用が叶わなかった場合、事業の核となって推進できる人材がいない状態になってしまう可能性があります。その結果、新規事業のスタートが遅れたり、企画が見送られてしまったりする事態も起こり得るでしょう。
経験者や特定のスキルを持つ技術者などをターゲットにするキャリア採用では、そもそもターゲットとなる人材の母数が少ない点が特徴として挙げられます。加えて採用活動では、少ない母数の中でさらに転職活動に取り組んでいる人材に対象が絞られます。また、採用競合もアプローチすることから、未経験者や経験が短い人材が対象となる採用と比較すると採用の難易度が高いと感じられてしまう可能性もあるでしょう。
キャリア採用で採用された社員と既存社員との間で組織内摩擦が発生する懸念がある点も、キャリア採用の注意点です。
前職で一定のスキルや経験を培ってきたキャリア人材は、自分の考えや業務に対する価値観にこだわるケースもあります。場合によっては既存社員と仕事の推進方法や考え方、仕事観などについて互いに譲り合ったり、認め合ったりできず、衝突する事態に発展する可能性も考えられます。
採用活動では、経験やスキルだけではなく、人柄やビジョンの共感性を測ることも大切です。
キャリア採用を実施することで得られるメリットは、主に次の3つです。
キャリア採用に限ることではないですが、新たに人材を採用することで組織に多様化をもたらすこともあります。
キャリア採用は、スキルや経験を重視する採用であることから、既存社員にはないバックボーンや人間性、価値観を持つ人材を採用することも考えられるでしょう。時には組織全体に刺激を与え、社内の活性化につながったり、新しい価値観が介入することで事業にイノベーションがもたらされたりするケースもあります。
経験やスキルを持つ人材の採用に取り組むキャリア採用では、自社に新しいノウハウが蓄積されることが期待できる点もメリットといえるでしょう。
既に自社に蓄積されているノウハウでも、違う文化や土壌で経験を積んだキャリア人材は自社にはない観点を持っている可能性もあります。自社にはなかった観点や視座からの新たなノウハウを得ることで、事業はより強固なものになるでしょう。また新規事業にアサインするキャリア人材を採用できた場合は、外部のナレッジを自社に取り込むことができるでしょう。
採用した人材によっては、自社の競争力を短期間で高められるケースもあるでしょう。特に事業の中核を担う人材を採用できた場合、自社の競争力が大幅に向上する場合もあります。
例えば、従業員1人ひとりの能力が事業運営に影響を及ぼしやすいベンチャー企業やスタートアップ企業では、経営者層や幹部候補、技術責任者クラスの人材の採用が実現すれば、組織力が飛躍的に高まり、事業運営における競争力も大幅に向上するでしょう。
キャリア採用を実施する際は、次の5つのステップを踏みます。
まずは「いつまでに」「どのような人材」を採用するのか設定しましょう。なお、スケジュールとターゲットを設定する際は、事業計画や現場の状況を踏まえることが大切です。経営者層の意見を取り入れることはもちろん、内定者が配属される予定の現場担当者の声も反映しましょう。
次に採用手法と媒体を選定します。キャリア採用で用いられることの多い採用手法は次の通りです。
ターゲットや自社のリソースなどに合った手法・媒体を選定しましょう。
続いて求人情報を作成し、公開します。
求人情報を作成・公開する際は、採用競合の情報や市場動向を確認しましょう。
採用競合よりも給与や福利厚生など条件面に劣る場合は、文化やカルチャー、仕事へのやりがいといった観点からの動機づけが必要です。競合企業に勝る自社の魅力を洗い出し、「入社したい」と思わせるような魅力訴求を意識しましょう。
また市場動向を把握することで、採用市場における自社の立ち位置が見えてくるでしょう。売り手市場傾向や賃上げの機運が高まるキャリア採用においては、条件面・カルチャーともに求職者にとって魅力的に映らなくなっている可能性も考えられます。
今の転職市場の状況を鑑みながら求職者に選ばれる求人情報を作成することが大切です。
募集要項を公開し、応募が来たら選考を実施します。キャリア採用の選考で注意・意識したいポイントは、下記2点です。
キャリア採用の対象となる人材は、多くが自分の思い描くキャリア実現の手段として転職を選択することが考えられます。一方企業は組織の成長に向けて、有能な人材を採用したいと考えています。選考では、この求職者のキャリア志向と自社の意向のマッチ度を見極めることがポイントとなるでしょう。
求職者が自社の求める人物像に該当する人材であったとしても、求職者の思い描くキャリアの実現が難しい環境の場合、入社に至ったとしても高い確率で早期離職に至る可能性があります。反対に自社の求める人物像と求職者のキャリア志向が合致していれば、互いに求めるものを還元し合える関係になるため、組織も求職者も実現したい成長を叶えられるでしょう。
またキャリア採用のターゲットになる人材の多くは、他の企業も求めている可能性が高く、選考に時間を要していると、他社に内定を決めてしまう可能性があります。選考の回数を減らす、同日に複数プロセスの選考を実施できるスケジュールを組む、選考から合否連絡までの時間を短縮するなどの取り組みを意識的に行い、内定までの期間が必要以上に長期化しないよう努めましょう。
内定出しをした後は、内定後フォローを実施します。
入社日まで定期的に連絡を取ることはもちろん、経営者や配属予定部署の上長・先輩と面談機会を設け、内定者の不安払しょくに努めましょう。また複数の内定者がいる場合は、内定者同士が交流できる場を設けるのも一つです。
内定後フォローは内定者の不安を払しょくするだけでなく、入社に向けたマインドを醸成する効果も期待できます。
ここでは、キャリア採用に取り組む際に意識したいポイントを紹介します。
募集要項は、多くの求職者が注目する項目です。そのため、単に条件だけではなく、仕事内容やポジションの魅力も交えて伝えることが大切です。
仕事内容の紹介では、日々の業務まで明記し、求職者に対して働くイメージを訴求しましょう。またポジションの魅力を紹介する際は、やりがいや楽しさを伝える他、仕事の難しさや求められる能力についても言及できるとなお良いでしょう。そうすることで、求職者はポジションの魅力を理解するとともに、求める人物像についても具体的なイメージを描けるでしょう。
また募集要項を、MUST・WANTに分け記載するもポイントです。
最低限必須となるMUST条件を明記することで、スキルや経験のミスマッチを防ぎます。またWANT条件を加えることで応募敷居を高めることなく、ターゲットにマッチする人材に対して、興味・関心を喚起できることもあるでしょう。
求職者が自分の経験にマッチする職業にエントリーできるよう、採用ページを工夫するのも一つの方法です。
キャリア人材は、これまで培ってきた経験やスキルを活かしたいと考える傾向を持つため、採用ページを持つ企業は、求職者が採用ページから応募したい職種にすぐたどり着ける導線設計を意識しましょう。募集職種が複数ある場合は、職種ごとに大別しておくと、求職者は応募したい職種の詳細にすぐたどり着けるでしょう。また求職者に対して入社後の働くイメージを醸成してもらう一助として、職種ごとに社員のインタビュー記事を公開する方法もあります。求職者は誰とどのような業務に就くのか、具体的にイメージできるようになるため、興味を抱きやすくなるでしょう。
加えて、人事制度を目に留まりやすい位置に設置するのもおすすめです。キャリア人材の多くは転職によって更なる成長を実現したいと考えています。人事制度を分かりやすく伝えることで、求職者は入社後どのような成長サポートを受けられるのか理解を深められるでしょう。
キャリア登録ページの設置も、キャリア採用で導入されることのある施策の一つです。キャリア採用では、退職などによって欠員が発生した時に人員を募集するケースが多く、優秀な人材から興味を持ってもらえたとしてもポジションに空きがないこともあります。
そこでキャリア登録ページを設け、求職者のキャリアや希望する職種などをあらかじめ登録してもらうことで、「応募したい職種がない」「今すぐの転職は考えていない」という人材に対しても、欠員が発生した時に該当職種に関する情報や適したポジションの案内ができるようになるでしょう。タレントプールが構築された状態になるため、質の高い母集団を形成しやすくなるといった利点が生まれる他、優秀人材を逃してしまうリスクも低減できる可能性が高まります。
アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。