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リファラル採用を解説!トラブルを避けるコツや報酬費用の目安を紹介

リファラル採用とは

ここでは、 “リファラル採用”という言葉を耳にしたことがあるだけの採用担当者や、何となく分かるけど改めて基本を知りたいといった採用担当者に向け、リファラル採用とはどのような手法なのか次の2つの項目に分けて具体的に解説します。

  • リファラル採用とはどのような採用手法なのか
  • なぜリファラル採用が注目されているのか

リファラル採用とは何か

リファラル採用とは、自社の社員に人材を紹介・推薦してもらうことにより、採用につなげる手法のことです。
自社をよく理解している社員から紹介を受けた候補者は、応募前に企業の内情を聞き、企業理解を深めた上で応募に至ると考えられます。そのため、他の採用手法と比較してミスマッチが起きにくい手法と言えるでしょう。また求人広告や人材紹介などの外部の採用支援サービスを利用しないため、採用コストを抑えられるなどの利点が考えられます。

人材を紹介する社員は、アルバイトやパートなど、正社員以外の従業員を含むケースもあります。また新卒採用においては、内定者が紹介者になる場合もあります。
一般的には、他の候補者と同じように試験や面接を受けるため、採用基準に満たない場合は、不採用になることもあるでしょう。なお、人材を紹介した社員に対しては、報奨金などのインセンティブが支給される場合もあります。

なぜリファラル採用が注目されているのか

リファラル採用が注目されるようになった理由は、少子高齢化に伴い生産年齢人口が減少しているからと考えられます。
生産年齢人口が減少し、人材獲得競争が激化する昨今においては、求人広告や人材紹介などの求職者から応募を待つ手法では優秀な人材の獲得は困難になりつつあります。

出典:総務省『平成25年版 情報通信白書』(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h25/html/nc123120.html

その点、リファラル採用は、転職活動中ではない人材とも接点を持てる手法です。採用競合との接触を持たない人材に対し独占的にアプローチできる場合もあるでしょう。
このように従来の手法にはない利点があり、社会変化に則した手法であることから注目が高まっていると考えられます。

リファラル採用に取り組む3つのメリット

リファラル採用に取り組むことで得られるメリットは、主に次の3点です。

  • 採用コスト削減につながる
  • 社員のエンゲージメント向上に寄与する
  • 認知度やブランド力の影響を受けにくい

メリット1: 採用コスト削減につながる

リファラル採用は、自社のリソースだけで採用を完結できるため、他の手法と比較して採用コストを抑えられるといった利点が考えられます。
求人情報サイトや人材紹介といった外部の採用支援サービスや、ダイレクトリクルーティングのように人材データベースを利用しないため、サービスやツールの利用料、導入費、成功報酬などがかかりません。
発生するコストは、紹介社員へのインセンティブや紹介を促す交際費などです。リファラル採用が活性化すれば、大幅な採用コスト削減も叶えられるかもしれません。

メリット2:社員のエンゲージメント向上に寄与する

リファラル採用は、社員のエンゲージメント向上にも寄与する手法ともいえます。友人や知人に自社を紹介するためには、自社についての理解を深めておくと、より他者に対して紹介しやすくなるでしょう。自社への理解が深まることで、これまで気付かなかった自社の魅力や良さが見えてくることもあると考えられます。
またリファラル採用は、会社の採用の一端を担うことになります。改めて自分が会社の一員であることを自覚するキッカケにもなり、組織の一員として自分がどのように貢献できるのか考える機会も増えるでしょう。

メリット3:認知度やブランド力の影響を受けにくい

認知度やブランド力の影響を受けにくい点もリファラル採用のメリットと言えるでしょう。
その理由としてリファラル採用は、自社の社員からの口コミによって自社の魅力を訴求する手法だからです。社員が自社の魅力を友人・知人に伝えてくれるため、認知度やブランド力が高くない企業でも、入社意欲を醸成したり、興味・関心を喚起できたりするでしょう。
また事前に自社の社員から社風・風土、募集ポジションなどを聞いてから応募に至るため、条件や待遇面で比較されにくい可能性がある点もリファラル採用のメリットと言えるでしょう。

リファラル採用の注意点・避けたいトラブル3選

本項目では、リファラル採用の注意点・避けたい主なトラブルを3つ紹介します。

  • 人材に偏りが生じる可能性がある
  • 紹介者と候補者の人間関係に配慮が求められる
  • 大量採用が難しい

注意点1:人材に偏りが生じる可能性がある

リファラル採用は、候補者や採用した人材に偏りが生じる可能性がある手法です。個人的なつながりを採用に活用するため、人材が同質化したり、偏った人材が集まりやすくなったりする懸念もあります。
また、特定の社員の知り合いが複数集まることで、紹介者を中心としたグループや派閥ができ、組織運営に悪影響を及ぼすこともあるかもしれません。
人材の偏りが極端にならないよう、他の採用手法と組み合わせることも意識しましょう。

注意点2:紹介者と候補者の人間関係に配慮が求められる

紹介者と候補者の人間関係への配慮が必須になる点は、他の採用手法と大きく異なる点です。特に不採用となった場合は、候補者に応募してくれたことへの謝意と不採用の理由を丁寧に伝えるとともに、紹介者に対しても状況に応じて配慮ある対応を心掛けましょう。
また入社に至った場合でも、配属先などに配慮が求められるケースもあります。紹介者・候補者ともに適宜面談を行い、不安や不満が生じない環境を用意しましょう。

注意点3:大量採用が難しい

一度に多くの人材採用を目標に掲げる場合、社員からの紹介だけでは十分な候補者を募ることは難しいでしょう。新卒採用や新設部署の人員補充のように一度に多くの人材を採用する場合は、他の採用手法と併用するようにしましょう。

リファラル採用にかかる費用の相場

リファラル採用を導入するにあたっては、おおよその費用についても理解を深め、導入・運営予算を立てておくといいでしょう。
ここでは、リファラル採用の費用相場に関する下記3つの項目について解説します。

  • 運用総額の目安
  • 運用費用の内訳
  • 費用シミュレーション
インセンティブ1~10万円/1人
活動費交通費:実費(もしくは1,000円程度) 会食費:3,000円~5,000円/1回
外部サービスの利用料金導入サービスによる
リファラル採用費用の総額目安3~15万円前後+外部サービス利用費

リファラル採用費用の総額の目安

リファラル採用に取り組む場合、インセンティブが採用コストの大半を占めることが多いです。加えて、交通費や食事代などの交際費がリファラル採用運用コストに含まれます。
インセンティブに関しては、1人あたりの採用成功に対し1~10万円程度の金額を設定する企業が多いようです。インセンティブを設ける場合のリファラル採用費用の総額は、交通費や食事代などを含め3~15万円/1人になるでしょう。インセンティブを設けない場合は、1~5万円/1人になると考えられます。

厚生労働省が公表した『採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書』によると、主な採用手法の1件あたりの正社員採用コストの相場は、次の通りです。

  • 民間職業紹介事業者(紹介会社):平均 85.1 万円
  • 求人情報サイト:平均 28.5 万円
  • スカウトサービス:平均 91.4万円

他の主流となっている採用手法と比較し、リファラル採用は1人あたりの採用単価を抑えられる手法であることが分かります。

出典:厚生労働省『採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書』(https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000956216.pdf

リファラル採用にかかる費用の内訳

リファラル採用にかかる費用には、次のような項目があります。

  • インセンティブ
  • 活動費
  • 外部サービスの利用料金

インセンティブ

インセンティブは候補者を紹介してくれた社員に対して支払う報酬であり、1~10万円程度が相場です。なお、インセンティブが支払われるタイミングは、紹介時や候補者が採用に至った時など様々です。
また、インセンティブを設ける時は、「有料職業紹介」とみなされないように注意が必要です。ケースによっては国の認可が必要な「職業紹介業」にあたる行為とみなされ、状況によっては企業・社員の違法性を指摘されるおそれがあります。そのため、社労士や労務担当と相談の上、法に則った形でインセンティブの支給について就業規則に盛り込むようにしましょう。

活動費

リファラル採用における活動費には、次のような項目があります。

  • 食事代などの交際費
  • イベントに参加するための交通費

食事代は、ランチの場合1,000円/1回、会食の場合3,000円~5,000円/1回が相場であり、イベントに参加するための交通費は、実費支給が多いようです。
なお、活動費に関してもインセンティブ同様に支給義務はありません。そのため支給の有無や支給金額は、企業の判断に委ねられます。とは言え、交際費や交通費を支給することにより、リファラル採用が活性化しやすくなる側面もあるため、社員の参加状況やリファラル採用の運用状況を加味しながら支給の有無や支給額を決めるのも1つの方法です。

外部サービスの利用料金

リファラル採用を運営するにあたって外部のサービスを利用する場合、利用費や導入費がかかります。リファラル採用の外部サービスには、次のようなものが挙げられます。

  • 採用コンサルティング
  • 採用代行
  • プラットフォーム

リファラル採用運用時に適したアドバイスを提供してくれるコンサルティングや、リファラル採用の運用を代わりに担ってくれる採用代行、リファラル採用の運用をサポートするプラットフォームなど、様々な外部サービスがあります。
依頼する工数や範囲、導入サービスによって費用は大きく変動するため、予算と自社の運用状況に合ったサービスを選択しましょう。

リファラル採用にかかる費用のシミュレーション

リファラル採用にかかる費用をシミュレーションした場合、次のような採用単価になると予想できます。

【リファラル採用費用例】
1年間で10名の紹介があり、3名の採用に成功した場合
※インセンティブは、紹介時に5,000円/1人、採用成功時に50,000円/1人、支給する。
※食事代は、会食1回あたり5,000円支給。(会食は、1年間で7回開催された)

・採用に至らなかった7名にかかったインセンティブ費用:7名×5,000円=35,000円
・採用に至った3名にかかったインセンティブ費用:3名×55,000円=165,000円
・会食費:7回×5,000円=35,000円

合計:235,000円

リファラル採用の進め方

ここではリファラル採用の進め方を紹介します。
リファラル採用を導入するにあたっては、次の6つの手順を踏みます。

  1. リファラル採用運用メンバーを決める
  2. 採用目標(KGI)を策定する
  3. 各工程における目標(KPI)を設定する
  4. リファラル採用のルールを策定する
  5. 運用メンバーもしくは小規模な運営から開始する
  6. 全社に展開する

STEP1:リファラル採用運用メンバーを決める

まずは、リファラル採用を運用する中心メンバーを選定します。
メンバーを選定する際は、自社愛の強い社員や過去に友人・知人を紹介した経験を持つ人材が好ましいでしょう。

STEP2:採用目標(KGI)を策定する

続いて、採用目標(KGI)を策定します。
採用目標を策定する際は、次の項目をメンバー間ですり合わせましょう。

  • 採用したい人物像
  • 目標期日
  • リファラル採用経由で採用する人数

目標がズレないよう、どのような人物を、いつまでに、何名採用したいのか、参加メンバー同士しっかり認識を合わせることが重要です。特に採用したい人物像は、抽象的にならないようペルソナを定めることをおすすめします。
性格・保有スキルなど、パーソナリティまで細かく設定し、イメージの祖語が生じないようにしておきましょう。

STEP3:各工程における目標(KPI)を設定する

KGIを設定した後は、各工程における目標(KPI)を決めます。
リファラル採用では、主に次の工程でKPIを設定します。

  • アプローチ数
  • 紹介数
  • 選考参加人数(率)
  • 内定人数(率)
  • 内定承諾数(率)

KPIを定める時は、先に定めたKGIの期日までに達成可能な数値を設定しましょう。またKPIの達成度を都度可視化できるよう、リアルタイムに数値を管理できる項目が好ましいでしょう。

STEP4:リファラル採用のルールを策定する

続いて、リファラル採用のルールを策定します。
下記項目は、運用前にルールを定めておきましょう。

  • 募集要項
  • 採用基準
  • 会食費の補助の有無や内容・条件
  • インセンティブ額
  • インセンティブの支払い条件

リファラル採用は、自社の社員も運用に参加する採用手法です。運用時に混乱を招かないよう、細かくルールを設定しましょう。
特に募集要項や採用基準は、時期や対象によって変わることもあるでしょう。リファラル採用の運用が不公平感や不満を生み出してしまうことのないよう、「営業職の場合は○○な人」「管理職の採用基準は○○」などのように、採用対象ごとに募集要項や採用基準を明確に定めておきます。

STEP5:運用メンバーもしくは小規模な運営から開始する

リファラル採用の運用ルールを策定した後は、小規模な運営から開始しましょう。最初から全社員で運用すると、ズレや課題が多発する可能性があります。
小規模運営でも多くの課題や改善ポイントが見つかるでしょう。都度、ルールや目標を見直しながら改善に努めましょう。
また実際に運用することでノウハウも貯まるでしょう。全社展開の際に社員に共有できるよう、効果のあったアプローチ方法などをまとめておくと良いでしょう。

STEP6:全社に展開する

小規模運営を経てリファラル採用運用の基盤が固まった後は、全社に展開します。
しかし全社に展開したからといってリファラル採用の運用が軌道に乗るわけではありません。活動を形骸化させないためにも、次に紹介する取り組みを意識的に実施しましょう。

  • 社内報や会議などでリファラル採用の運用状況を社員に共有する
  • 経営陣からメッセージを発してもらう
  • 紹介人数が多い部署を表彰するなどの制度を設ける
  • 定期的にリファラル採用についてアナウンスする

リファラル採用に関するよくある質問

リファラル採用に関するよくある質問を紹介します。
本項目で紹介する質問と回答に目を通すことで、よりリファラル採用への理解が深まるでしょう。

Q.リファラル採用の導入に向いている企業の特徴は?

A.下記特徴に該当する企業は、リファラル採用と親和性が高く利点や強みを活かしやすいでしょう。

  • これまでに社員から人材の紹介があった企業
  • 採用広報に注力している企業
  • ソーシャルリクルーティングを実施している企業

リファラル採用を本格的に運用する前から社員の紹介による採用が行われている企業の場合、既に社員のエンゲージメントが高い状態にあると考えられます。リファラル採用を制度化することで、さらに紹介が増えることも期待できるでしょう。
また既に採用広報に注力している企業やソーシャルリクルーティングを実施している企業もリファラル採用導入をおすすめします。情報発信に意欲的に取り組んでいる企業の場合、候補者は紹介者以外からも企業情報をキャッチアップできるようになります。また紹介者も自社をアピールするツールが増えるため、自社の魅力を伝えやすくなるでしょう。

Q.縁故採用との違いは?

A.リファラル採用は、自社の社員からの紹介であっても採用基準に満たない場合、不採用になります。一方、縁故採用は紹介者との関係が重視されることが多く、スキルや経験が問われない場合もあります。そのため、実力や経験が伴わない人材でも入社に至るケースも珍しくありません。

Q.リファラル採用は新卒採用にも活用できますか?

A.リファラル採用を新卒採用に導入する企業も増えつつあります。
中には内定者から紹介を募るケースもあり、その場合内定者の入社意欲醸成や企業理解を深める一助にもなっています。

Q.リファラル採用のインセンティブの代替案は?

A.リファラル採用でインセンティブを設定しない場合、次のような代替案があると考えられます。

  • 全社会議・イベントで表彰
  • 紹介者と候補者での会食費を負担
  • 社長や、役員との食事会の機会
  • 人事評価に組み込む

このように、リファラル採用には必ずしもインセンティブの導入が必須になるわけではありません。自社のカルチャーなどに合わせてインセンティブ以外の報酬を取り入れるのも1つです。

Q.リファラル採用を促進する方法とは?

A.インセンティブの金額を高く設定してもリファラル採用の運用は促進されるとは限りません。大切なことは、社員が一丸となって採用に取り組む風土を醸成することです。
先に紹介した、全社に展開する際に意識的に取り組みたい施策を継続的に実施し、リファラル採用の文化を根付かせていきましょう。
また友人や知人に紹介したくなる企業づくりを目指すことを念頭に入れておくこといいでしょう。社員が自社のことを魅力的に感じている会社であれば、リファラル採用の運用も軌道に乗りやすいでしょう。

アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。