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新型コロナウイルス感染拡大という不測の事態に、世の中が大きく変化した2020年。業績見通しや採用計画の変更、テレワークの推進、時差通勤、休業要請など、企業と働く人々に大きな影響がでました。急速にビジネスのオンライン化が進み、働く場所に制限がなくなってきたこともあり副業へのハードルが下がり、個人のキャリア観も変化が起きています。テレワークに際しての業務管理、評価基準の見直しなど、新たな課題も生まれてきました。
リクルートエージェントの利用企業2,013社に聞いた2020年6月時点の採用活動調査では、緊急事態宣言後も依然継続・一度停止したが再開した企業の合計が約8割と、コロナ収束後を見越して、採用を継続する企業が多数を占めています。2021年度もこの傾向は続いていくと予想されます。
依然として先行きが不透明な状況ですが、2021年度の中途採用は、どのように変化していくのでしょうか。新型コロナウイルス禍による緊急事態宣言の発出もあり観光業、飲食業など影響を受けている業種や職種がある一方で、インフラを支える物流・運輸、EC関連、ビジネスのオンライン化で注目されている「DX」「セキュリティ」に象徴されるようIT企業は採用意欲が高くなっています。
2020年12月23日リクルートキャリアのレポート「2021年 転職市場の展望」によると、2021年転職市場のキーワードは『事業戦略別の採用』。『事業戦略別での守りと攻めの採用戦略の併存こそ、コロナ禍の転職市場の実相である。「○○業は買い手市場」と粗い粒度で語る言説は、実態を見誤ることになるだろう。』と分析しています。業界や職種に限定した傾向がつかみづらく、各社の採用がより多様化することが予想されます。
コロナ禍で変化しているのは、採用手法として、WEB面接をメインにしている企業が増えていること。「緊急事態宣言下の中途採用活動、64.8%が継続(Web 面接を実施した企業は 66.6%)。宣言解除後の採用手法に変化の兆しも88.8%が Web 面接を引き続き実施(リクルートキャリアによるアンケート)」という結果になっています。オンラインを使った選考をいかにスムーズに効果的に取り入れていくかも、採用成功のカギとなっていくでしょう。
「今まで新卒採用中心だったが、ビジネス環境の変化に対応していくため、即戦力である中途採用を強化したい」、「DXの推進に必要な人材を急ぎ採用したい」など、中途採用を人材獲得の重要戦略と位置づけている企業が増えています。ますます企業の事業戦略上、重要になってくる中途採用のメリットを改めて整理してみます。
就業経験のない新卒採用と違い、すでに社会人としての経験を積んだ人材のため、選考の段階で自社が求める経験・スキルを有しているか見極められ、入社後すぐに戦力化できます。
新卒採用は4月一括入社の企業がほとんどですが、中途採用は通年で採用することができ、選考のスピードも新卒採用と比較して速くなることが多いのが特長です。場合によっては、応募から数週間で内定・入社というケースもあります。欠員補充または新規事業や組織改革などのタイミングに合わせて、募集することが可能です。
新卒採用では入社後、ビジネスマナーやビジネススキルの基礎を習得させ、戦力化するまで一定の期間とコストがかかります。すでに社会人経験を持つ中途入社者は、基礎的な教育は不要な場合が多いです。もちろん仕事の進め方、協業していく社内の関連部署などの説明は必要となりますが、すでにその領域での実績やノウハウを有している人材なので教育にかける時間やコストが削減できます。
自社に新たな文化・価値観を持つ人材が加わることで、既存の社員の大きな刺激となり、今までなかった新しい企画・発想が生まれやすくなります。また、他社での経験やスキルを社内に発信してもらうことで業務改善や新しいサービスが生まれたり、既存の社員では当たり前すぎて気づけなかった自社の長所・短所を改めて認識するチャンスにもなります。
事業拡大にともなう増員、自社にない専門スキルの獲得など採用目的や人数などの目標を設定。次に人材要件(職務を遂行するうえで必要な能力)を考えていきます。経験・スキル・知識とタイプ(志向性)に分け、それぞれMUSTとWANTの優先順位をつけ整理。人材要件は選考基準を設定する上でも重要な指針となるものです。
次に、転職市場マーケットに自社が求める人材がどれくらいいるのか、採用競合になるのはどの企業か、全体の求人倍率はどうなっているのかなど相場を把握。現実的に人材獲得が難しいと感じたら、人材要件の見直しも行います。対象となる人材を効率的に集められる採用手法を選択するのに合わせ、選考フロー、スケジュールの設定、面接官のスケジュール確保など社内体制を整えていきます。
求職者にとってアピールできる自社の魅力を整理し、募集要項など条件面を確定。求人媒体への広告掲載や、人材紹介会社に求人票を依頼するなど、様々な手段で母集団を形成します。より質の高い母集団を形成することが、採用成功へとつながります。
リクナビNEXTのアンケート結果では、転職成功者の応募数の平均は7.5社。併願している求職者を採用するためには、選考スピードも重要です。採用成功した企業の平均所要時間は書類選考から書類合格まで2日、書類合格から一次面接まで7日、一次面接から内定まで11日となっています(営業日換算、リクナビNEXT編集部調べ、2019年10月23日時点)。
面接では、選考と同時に自社に入社したいと思わせる動機付けも必要です。事前に応募書類を読み込み、候補者の本音を引き出しながら、自社の魅力、仕事のやりがいなどを伝え、入社後の定着・活躍につなげていきましょう。候補者が魅力を感じる面接を実施することで、たとえ今回は採用にいたらなくても、自社のファンを増やすことにつながります。
内定はただの条件提示ではなく、入社後の期待を伝えることが大切です。入社意思を固めた後も、退職交渉や引き継ぎなどで候補者にとって負担の大きい時期が続きます。候補者の不安を解消し、安心して入社を決められるよう定期的に接点を持ちフォローしていきましょう。
他社で経験があるとはいえ、まったく新しい環境です。中途採用者がいち早く職場に慣れるよう、人事と配属部門で細かくサポートすることで、力を発揮してもらいやすくなります。
ハローワーク(公共職業安定所)の利用からSNSを利用したソーシャルリクルーティングまで、中途採用の手法は多様化しています。コスト、応募数やマッチングの精度、人事の工数削減など多角的に検討し、自社の募集に最適な方法を選びましょう。ここでは代表的な13の採用チャネルをご紹介します。
全国544カ所(2017年7月時点)のネットワークを持つハローワーク(公共職業安定所)。無料で、「求人票」やWEBサイトへ自社の求人情報を掲載できます。
求人サイト(リクナビNEXT、マイナビ転職、doda、エン転職など)に求人情報を掲載し、応募者を集める方法です。スマホやパソコンで時間や場所を問わず検索でき、24時間応募することが可能ですので、多くの求職者にアプローチできます。
新聞、折り込みチラシ、フリーペーパーなどへ求人情報を掲載する方法です。フリーペーパーは駅、コンビニなど人の目につきやすいところにラックが設置されており、手軽に手にとってもらえるメディア。地域限定版を発行している場合が多く、狙った層へ情報を届けることが可能です。
一括でWEB上の求人情報を検索できる求人情報専門の検索エンジン(Indeedなど)を利用する手法です。複数のサイトを利用しなくても、多くの求職者に情報を届けられます。
求職者は興味のある企業のホームページを閲覧し、情報収集しています。求人媒体では伝えきれなかった社員のインタビューや職場の雰囲気、沿革や企業理念など魅力を掲載することで、より応募意欲やマッチングの精度を高めることができます。
Facebook、Twitter、Instagramなどを採用に活用していくソーシャルリクルーティングと呼ばれる方法です。求職者とタイムリーに、より親密で気軽なコミュニケーションができ、多くの求職者との接点を持てます。拡散や口コミといった効果も期待できます。
厚生労働大臣の認可をうけて職業紹介を行っている民間の「転職エージェント」と呼ばれる人材紹介会社に、自社が希望する職種、スキルなどを伝え、条件にマッチする人材を紹介してもらう方法です。紹介してもらった人を採用した場合に料金が発生する成果報酬型の企業が多く、その場合、初期費用は0円です。
派遣会社と労働派遣契約を結び、自社が求めるスキルを持つ人材を派遣してもらい、時給×実働時間を派遣料金として支払います。必要な期間だけ、必要なスキルを持つ人材を確保できます。
第二新卒向け、UIターンを狙ったもの、エンジニア限定など職種を絞ったものなど様々なイベントが開催されています。会場に訪れた求職者に直接、貴社の魅力、仕事のやりがいなどを伝えることができます。
求人のチラシやポスターを作成し、飲食店などであれば店内に掲示したり、店頭で配ったりするなどして募集する方法です。コストを抑えられる反面、効果は限定的です。
社員の知人・友人を紹介してもらう手法です。自社の仕事や企業文化、候補者の人柄を理解している社員が紹介するためマッチングの精度が高く、離職率も低い傾向にあります。
タレントプールとは、今まで接点を持った候補者を管理するデータベースのこと。様々な理由で採用見合わせになった候補者のデータベースを作成し、定期的にコミュニケーションをとることで、再びニーズが発生したときに採用につなげやすくなります。
企業が直接、データベースから採用候補者を探し、その人の経歴などに合わせ、仕事内容や自社の魅力を伝えるスカウトメールを送信し採用へつなげていく手法です。
採用手法が多様化しているということは、求職者側も様々なチャネルを使って転職活動を行っているということです。複数の手法を組み合わせて、求職者との接点を増やしていくことをおすすめします。採用難易度(今回求める人材が転職市場にどれくらいいるのか)、採用費用、人事のマンパワー、求人倍率や競合他社の採用状況などの外部要因を考え合わせ、選択していきましょう。いくつかのケースをご紹介いたします。
求人媒体(WEB)+転職イベント
若手との親和性が高い総合型WEB求人媒体をメインに、営業職のメンバー層に特化した採用イベントへの出展。経験・スキルよりも人物タイプを重視した採用となる場合は、できるだけ多くの母集団を形成し、人物タイプを見極めていけばミスマッチが少なく採用できると思います。
人材紹介+スカウトメール
経験・スキルを優先してのマッチングとなりますので、多くの母集団を形成するよりも、ピンポイントでアプローチしていく方が効率的です。その分野を得意とする人材紹介会社へ依頼するとともに、経歴を確認してオファーできるダイレクトスカウトを利用し、求めるスキルを持つターゲットにアプローチします。
人材紹介
管理職採用ですので、経験・スキルはもちろんですが、メンバーから信頼される人柄か、自社の組織・風土になじみ、能力を発揮してもらえる人物かをじっくり見極めたいものです。人材紹介会社には、幅広い職種を網羅している大手と、専門領域に特化した会社がありますので、大手+管理職領域に特化した人材紹介会社に依頼し、選考に時間をかけていきましょう。
転職イベント(UIターン)+求人媒体(WEB・紙)
コロナ禍でテレワークが進み、地方へ移住する動きがでてきました。求人媒体を使って幅広い地域の求職者にアプローチするとともに、UIターンに興味を持っている層が集まるイベントへ参加。求人媒体もUIターン特集などを企画していますので、ぜひ、利用したいものです。
採用する際の基準となる、どんな人を採用するのかを言語化したものが「人材要件」です。会社の経営理念・ビジョン、現場からヒアリングした必要な経験・スキル、職場にマッチする人物タイプをあわせ、MUST、WANTなど優先順位をつけていきます。できるだけ人による解釈の違いがないよう、具体的な言葉に落とし込んでいきましょう。
求人媒体の広告制作、人材紹介での求人情報、そして面接など選考過程で、自社の強み・魅力を候補者にわかりやすく伝えることが大切です。そのためには、企業力、組織・風土、仕事などに分けて、それぞれの魅力を言語化し、採用に携わるすべての人が共有していくことが大切になってきます。改めて言語化することで社員が、自社の魅力を認識する良い機会ともなります。求人媒体、人材紹介会社、SNSなど、採用手法は違っても、確実にターゲットに響く自社の魅力を、一貫性をもって伝えていきましょう。
採用は、人事や経営層だけでなく、全社で取り組むべきテーマ。リファラル採用を取り入れる企業も増え、採用に全社員で取り組む動きも進んでいます。全社で取り組むことで、自分たちで選んだ仲間という意識が芽生え、入社後の定着、活躍にもつながります。