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採用活動は、企業の事業戦略などによって求める人材が変わってきます。いわゆる即戦力がほしいのか、じっくり育成することを目的にポテンシャル層がほしいのか、その戦略はさまざまです。最初に中途採用の特徴について、一般的にいわれているポイントについて著者の見解をもとに整理していきます。
中途採用の求職者には在職中の人も含まれます。現職の状況を鑑みて転職活動をする人が多いことから、「よい人がいればそのタイミングで採用しよう」といった姿勢で、門戸をいつでも開けておく「通年採用」が一般的です。
通年採用をうまく進めるためには、自社の人材状況を常に把握しておく必要があります。仮に現在人材が充足している部署であったとしても、今後増員を計画しているかもしれません。あるいは、退職者が出る可能性もあります。部門長やリーダーなどに定期的に部門の状況を確認するなど、自社の状況にアンテナを張っておくことが求められます。
新卒採用では、企業によっては半年ほどかけて選考するのに対して、こちらは著者の見解になりますが、中途採用では1週間~1カ月程度で選考する企業が多いようです。新卒人材は社会人経験がないことから、グループディスカッションなどで仕事の適性を判断する場合や、面接を3~4回ほど重ねることも珍しくありません。逆に中途採用の場合、候補者はある程度の社会人経験を備えていることから、面接等の選考に加え職務経歴書などで今までの実績も確認したうえで選考ができるため新卒採用と比較して選考期間は短くなる傾向にあります。
中途採用の手法は多種多様です。かつては「求人広告を出して応募を待つ」のが定石だったかもしれませんが、SNSなどが普及した現在では企業側からアプローチすることも珍しくなくなってきました。昨今では、「待ち」ではなく、「攻め」の採用をしていくことも必要となっています。中途採用の手法については後述しますので、そちらも参考にしてみてください。
中途採用を行うといっても、ただ漠然と広告を出して応募を待つだけでは、採用できなかった場合、コストも時間も無駄にかかってしまうことになる可能性もあります。そのため採用計画をしっかり立て、コストをより意識して進めることが求められます。
まず中途採用に必要なことは、採用計画を立てることです。どの部署でどのような人材が不足しているのか、退職予測はできているのかなど、採用担当者が把握すべき事項は多岐に渡ります。また、自社全体の事業計画も踏まえて、計画を立てていかなければなりません。コスト面も意識した採用計画を立てることで、企業全体の利益に寄与することができるのです。
採用の重要なプロセスの一つに「母集団形成」があります。母集団形成とは、選考を受けてくれる候補者を集めることです。募集を出しても応募がない場合、募集方法のどこかに原因がある可能性があります。「このご時世だから・・・」と諦める前に、自社の魅力が伝わっているのか、そもそも募集手段が合っているのかなど原因を追究していくことが大切です。候補者がいなければ選考することもできません。まずは、この母集団形成をすることで、候補者を増やしていくことが肝となります。
※母集団形成に関しては、以下の記事をご参照ください
母集団形成とは?手法とポイント、注意点を解説
応募があったら選考を進めていきます。スムーズに選考するためには、選考プロセスを整理し、担当者を決めておくなどの準備が不可欠です。選考基準作り、面接での質問事項、応募書類や面接で重点的に確認するポイント、応募者への一次対応の手順や担当者、内定・入社までのプロセスなど、決めておくべき項目は多数あります。事業部門や経営層の参画が必要となる事柄も多いため、事前の打ち合わせやすり合わせが重要です。
選考では、応募者も企業を選定していることを忘れてはなりません。複数の企業に応募している応募者も多く、応募者は企業の対応をしっかり確認しています。面接官の態度なども重要です。内定を出したあとのフォローもしっかり行っていかなければ、内定辞退につながりかねません。応募者、内定者の不安を払拭できるよう、選考や入社までのスケジュールをきちんと伝えるほか、適宜コミュニケーションをとるなどのフォローの手順を決めておきましょう。
インターネットやSNSなどの発展によって、中途採用でもさまざまな手法が利用できるようになりました。まず定番の手法を紹介します。
求人広告に求人を掲載する方法です。昨今ではパソコンやスマートフォンが普及し、多くの転職希望者が求人広告を利用しています。求人広告は非常に数多く存在しているため、自社の希望する人材の要件と求人媒体の特徴を鑑みて、求める人材が多く登録しているサービスを選択していくことが必要です。
人材紹介会社に紹介を依頼する方法です。人材紹介会社は人材の情報を持っているため、タイミングや求人内容によっては人材がすぐに見つかることもあります。また、企業によってどの業界や職種を専門としているか特徴があるため、自社の求人内容に合った人材紹介会社を見つけることが重要です。ただし、紹介手数料を「理論年収の30~50%」としているところが多く見受けられます。採用コストと見合うのかどうかの判断も必要です。
また、人材紹介の料金形態として「完全成功報酬型」があります。完全成功報酬型は、実際に人材の採用に至った場合に料金が発生する仕組みのため、人材を採用できなかった場合には、人材紹介会社に支払う費用は発生しません。
自社の採用担当などが転職フェアや説明会に参加する手法です。こうしたフェアや説明会には多数の求職者が参加するため、自社の魅力を多くの人に直接アピールすることが可能です。しかし、多様な業種・職種の企業が参加するため、参加する求職者が必ずしも自社の業種・職種に興味があるとはいえず、アプローチできる人材が求めている人材と合致しているかは不明瞭です。逆にいえば、自社の業種・職種に興味のない層にも自社の魅力を伝えるチャンスとも捉えることができるでしょう。
無料で求人を掲載できるのが特徴です。こちらは著者の見解になりますが、ハローワークは公的な機関のため、正社員として働きたい人以外にも失業者、アルバイトを探している人など、さまざまな人材が集まりやすい傾向があります。
デメリットは掲載料が無料のため数多くの企業が求人を出していることから、自社の求人が埋もれてしまう可能性もある点です。
自社のホームページに採用情報を掲載して募集を行います。自社ホームページのため、採用情報と同時に自社の魅力をダイレクトに伝えることができます。
デメリットは企業ホームページのアクセス数が求人閲覧数に影響する可能性があることです。ただし応募があった際には、応募者が自社のホームページを探して応募してきたことがわかります。この点に関して、応募者の志望度が高い可能性があると判断できることはメリットだといえるでしょう。また求人広告やハローワークなどを利用している求職者の場合には、ほかの媒体を通じて自社を知った際にホームページにアクセスし、どのような企業か調べる人がほとんどです。そのため自社ホームページを魅力的にして、情報発信していくことも重要な採用活動の一環といえるでしょう。
他社に在職中の人に対してスカウトを行う手法です。経営者や役員クラス、ハイクラス層の採用にあたって活用されるケースが多い傾向があります。ヘッドハンティングを専門に行っている人材企業があるほか、自社の持つ独自の人脈からヘッドハンティングを行うケースもあります。将来のヘッドハンティングも想定し、日頃から同業界での情報交換なども意識して行っていくことも大事にしたいところです。
定番手法に加え、現在ではさまざまな採用手法が存在します。ここでは、その最新の手法についてご紹介します。
求人広告などで求人を発信して応募を「待つ」だけでなく、企業から求職者に対して積極的にアプローチを行う「攻め」の手法です。採用活動において母集団形成を行う(候補者を集める)ことはその手段の1つであり、企業側からアプローチしていくことで、求職者のモチベーションが上がる1つの要因になっていると考えられます。ただ、数打てば当たるといったものではないので、ある程度条件などを絞った形で行うことが適切といえます。
※ダイレクトリクルーティングに関しては、以下の記事をご参照ください
ダイレクトリクルーティングとは?導入メリットや成功事例を紹介
FacebookやX(旧:Twitter)、InstagramなどのSNSを活用した採用手法です。自社の情報をSNSを通じて発信することで、フォローやリダイレクトをしてくれた人に企業から直接アプローチすることも可能です。「直接アプローチ」が可能という点では、ダイレクトリクルーティングの一種ともいえます。逆に、企業に関心を持った人が直接企業にアプローチすることもできるため、双方にとってメリットがある手法といえるでしょう。
自社の従業員などをはじめ、社内外問わず信頼できる人から人材を紹介してもらう採用手法です。仲介する人は企業のこともその人材のことも知っているため、ミスマッチが少なくなる可能性が高い点はメリットです。ただ、そう頻繁に紹介があるわけではないため、採用手法としては長期的な視点を持つことが必要です。
※リファラル採用に関しては、以下の記事をご参照ください
リファラル採用が失敗する、ありがちな理由。成功させるポイントを紹介
緊張感漂う通常の「面接」と異なり、カジュアルな雰囲気で「面談」を行うスタイルです。面接となると、応募者も身構えて面接用の回答を用意してくる可能性があります。採否を判断するというよりも、相互理解を深め、企業理念や組織文化とマッチするかどうかを互いに確認する場といえるでしょう。スーツではない服装などで実施することや、食事をともにしながら実施することもあります。
昨今では人手不足といわれ、採用活動が難航する企業も多く見受けられますが、だからこそ、自社の採用ノウハウを蓄積するチャンスだと捉えなおすこともできます。本稿をヒントに、どの手法が自社に合っているのか、コストを抑えることはできるのかなどを試行錯誤し、採用力を高める機会につなげていただければ幸いです。