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ここでは、採用活動における『スカウト』について、次の3つの観点から解説します。
転職サービスにおけるスカウトとは、転職サービスに登録している求職者が、求人企業の採用担当者もしくは転職エージェントの担当者から特定の求人案件への応募に対するスカウトを受け取ることのできる仕組みです。
スカウトされた求職者が正式に応募し、面談や選考を行います。選考を通過し内定となった場合には、労働条件などのすり合わせを行い、応募者が入社の意思を示せば採用が実現します。
なお、採用代行(RPO)の事業者を介してスカウトを行う際に、募集や選考および採用通知の連絡など、採用に関するすべての業務を依頼するなど、最終的に委託先で採用業務を完結させる場合は「委託募集」に該当します。この場合、職業安定法の定めに基づいて、求人企業と採用代行事業者の双方が厚生労働大臣や都道府県労働局長の許可を得ていなければならないことに注意が必要です。
企業からのスカウトと転職エージェントからのスカウトの一番の違いは、スカウトを受け取った求職者のその後の導線です。
企業からのスカウトの場合は、スカウトへの返信後そのまま企業の面談や選考が開始されます。また、以降のやり取りは、求職者と企業の担当者が直接連絡を取り合います。
一方、転職エージェントからのスカウトは、そのまま選考につながるわけではありません。スカウト返信の後は、転職エージェントに登録し、担当者との面談を経て、担当者が選定した企業の求人に応募する流れになるのが一般的です。
企業からのスカウトは、スカウト返信後に直接企業の採用担当者とのやりとりが開始するのに対して、転職エージェントからのスカウトは、最初に転職エージェントへの登録や転職エージェントの担当者との面談などのステップを踏むことになります。
企業からのスカウト | 転職エージェントからのスカウト | |
スカウトの出し手 | 企業の採用担当者 | 転職エージェントに在籍する担当者 |
スカウト内容 | 選考への誘致 | 転職エージェントへの登録促進 |
次のステップ | 書類選考もしくはカジュアル面談 (一部書類選考免除や説明会参加の場合あり) | 転職エージェントへの登録 |
スカウトとオファーの違いは、誘致(勧誘)なのか、提案(お知らせ)なのか、という点です。
スカウトは、企業や転職エージェントが登録者のレジュメを確認し、特定の人材に対して自社の選考を受ける(自社のサービスに登録する)よう直接コンタクトを図る行為を指します。
一方オファーは、求人の募集要項に近い属性情報や職務経歴、希望条件を記載している求職者に対して、勧めたい求人情報を知らせる行為を言います。募集条件に合う人材に対し、自社の求人情報を広める手法です。
しかしサービスによっては、双方同じ意味合いで使用しているケースや使い分けの事例が異なる場合もあるため注意しましょう。
スカウト | オファー | |
情報の出し手 (情報の発信元) | ・企業の採用担当者 ・転職エージェント | ・企業の採用担当者 ・転職エージェント |
情報の受け手 | ・企業の定める採用ペルソナに近い特定の人材(ある程度絞り込む) | ・求人企業の求めるスキル ・経歴にマッチする不特定多数求職者(一般的に、絞り込みの度合いはスカウトより広範囲であることが多い) |
仕組み | 企業の採用担当者が登録者のレジュメを確認し、採用ペルソナに近い人材に対して選考を受けるよう直接コンタクトを図る手法。(転職エージェントの場合:自社サービスへの登録や面談を直接打診する手法) | 募集要項に近い属性情報や職務経歴、希望条件を記載している求職者に対して、求人情報を知らせる手法。(転職エージェントの場合:自社サービスの認知を高めたり、取扱っている求人に応募してもらうために広く案内する手法) |
採用活動時にスカウト機能を利用するメリットとしては、次の4点が挙げられます。
スカウト機能を利用することで、転職サービスに登録した人材の中から求人企業の求める人材要件にマッチした人、すなわち求人企業の欲しい人材に対して直接アプローチできます。
スカウト機能を利用することで、転職活動をまだ本格的に開始していない人材に対してもアプローチできます。
一般的な求人では転職活動を本格的に開始している人からの応募が多い傾向がありますが、スカウト機能を利用することで、転職活動をまだ本格的に開始していない人からも応募を得ることができる可能性があります。
スカウト機能を利用することで、求人企業の求める人材要件にマッチした層の人たちに対して自社の認知度を高めることができます。
一般的な求人では特定の層の人材に向けた求人を届けることが難しく、自社のアピールに関しても抽象的な内容になりがちです。しかしスカウト機能を利用することで、求人企業の求める人材に対して自社のアピールを行うことが可能になります。仮に応募につながらなかったとしても、前述した層の人たちに対する自社の認知度を向上させることができます。
スカウト機能を利用することで、求人企業の採用活動における作業量を削減することができます。一般的な求人では、求める人材要件に合致していない応募者からの応募もいったんは受け取り、その中から面接する人を選考する必要があります。
しかしスカウト機能を利用することで、特定の人たちに絞ったアプローチが可能になり、選考にかかる時間が短縮され、採用業務が効率化されます。
スカウト機能を利用する際に課題化しやすいポイントとしては、次の4点が挙げられます。
スカウト機能を利用する場合、欲しい人材に自社への応募動機を高めるためのメッセージを送る必要があります。
魅力的に感じる要素は人によって異なるため、スカウトした人材の経歴などから興味を惹く内容を考えたうえで、適切なスカウト文章を作成することが求められます。
また、応募につなげるためにはスカウトメールの送信のタイミングや内容についての対応力も求人企業に求められます。
スカウトした人材から返信があった場合、そのあとの対応をタイムリーに行う必要があります。
対応が間延びしてしまった場合、求人企業への関心が薄れ、あるいは不誠実に思われることが応募意欲を低下させる可能性があります。
スカウトした人材からの返信には迅速に対応できる体制を構築することが求められます。
昨今、スカウトサービスの有用性が企業に認知され、サービスを利用する企業の数も増えています。それにより、優秀な人材に大量のスカウトメールが届くという現象も生じています。ほかの求人企業との間で差別化を図れるような、自社の魅力や条件などを表現することが求人企業に求められます。
スカウト機能を利用する場合、サービスによっては転職希望者が登録しているデータベースを利用するためのシステム利用料金やメール送信に対する料金などが必要となる場合があります。これらに関しては、採用が実現されたかどうかに関係なく発生します。また、スカウト人材の選定やスカウト文章の作成、スカウトメールの送信、スカウト結果の分析などに関してサポートを受ける場合、別途費用が必要となる場合があります。そのため、求人広告や自社サイトなどでの求人方法と比較してコストが増える可能性が高くなります。
採用コストに関しては、以下の記事をご参照ください。
スカウト機能を利用する際は、次に紹介する4つの手順を踏みます。
自社の採用目的に適したスカウトサービスを選定します。
具体的には、インターネットで情報を収集し、関心のあるスカウトサービスに資料請求や問い合わせを行います。そして、担当者から詳しい説明を受けたうえで、どのサービスを利用するのかを決定します。
サービスを利用するスカウトサービスからの人材データベースの共有を受けたあとに、スカウトしたい人材を選定し、スカウトメールを送信します。
スカウトメールに対する返信があった場合、応募につなげるためのやり取りを行い、応募後に選考を行います。
スカウトを行ったことによる結果を分析し、スカウトメールの内容や応募者への対応などへの改善点を見出すことで、今後の応募や採用に対する成果を高めることにつなげていきます。
スカウト機能が使えるサービスを選ぶには、次の2点を意識しましょう。
スカウト機能が使えるサービスにはそれぞれ特徴や強みがあり、次の特徴に大別できます。
総合型は、職種・ポジション・年齢問わず幅広い層を対象にしているサービスであり、多様な求職者と接触を図れる利点があります。職種・業種特化型は、特定の業種や職種に特化したサービスであり、採用職種が決まっている場合に有効だと筆者は考えます。またハイクラス・エグゼクティブ職種限定型や若手・未経験に向けたサービスの場合、ターゲット像が明確な場合に高い効果を期待できるサービスと言えるでしょう。
中には、転職サイトと機能が統合したサービスも登場しています。登録者に対しスカウト送付できる一方で、求人情報を見た求職者から応募を受け付けることも可能です。
さらに、自社の採用目的や予算にあったサービスを選ぶことも大切です。
スカウトサービスには、以下のようなサービス形態があります。
(1)特定のデータベース内の人材に対して一斉にスカウトメールを送信する
(2)AIによる自動マッチング機能を使ってスカウトメールを送信する
(3)企業の採用担当者が個別にスカウトメールを送信する
(4)転職エージェントが求人企業に代わってスカウトメールを送信する
求人企業の人材要件が細かく設定されておらず、あるいは大人数を採用したい場合などは、(1)や(2)のサービス形態のほうが適していることが想定されます。一方、求人企業の人材要件が詳細に設定されており、限定された人数の採用を行いたい場合などは、(3)や(4)のサービス形態のほうが適していることが想定されます。
このように、自社の採用目的に適した内容のサービス形態を選ぶことが効果的です。
スカウトサービスには、以下のような料金体系があります。
(1)採用者1名当たりの成功報酬のみ(システム利用料金・メール送信料金不要)
(2)初期費用+採用者1名当たりの成功報酬
(3)月額でのシステム利用料金+メール1通ごとの送信料金
(4)半年、1年間などの一定期間に対するシステム利用料金(メール送信料金不要)
採用予定人数が少人数であり、かつ採用の難易度が高くない場合は(1)または(2)が合理的になることが想定されます。また、採用活動期間が長期にわたることが想定される場合や大人数を採用したい場合は(3)が合理的になる可能性が高く、採用の難易度が高い場合は(4)が合理的になる可能性もあります。
このように、自社の採用目的に対して合理的な料金体系を選ぶことが効果的です。
スカウト機能を使う際は、次に挙げる2つの注意点に留意しましょう。
スカウトサービスを利用する場合、求人企業内に、スカウトする人材とのメッセージのやり取りや応募者への対応を行うための体制を構築する必要があります。それらの業務に従事する担当者は、本来の業務と並行してスカウト業務を担当する必要があります。
これに関して無理が生じてしまった場合、スカウトする人材への対応が中途半端になりスカウトサービスを利用する成果が得られなくなってしまうリスクがあります。そのため無理なく対応を行える体制を構築する必要があります。
転職エージェントのスカウトサービスにはさまざまな種類があります。まずは自社でできることを確認し、自社にノウハウがないことに関しては、必要に応じて転職エージェントのサービスを利用することが効果的です。
企業が環境変化に対応しながら成長を続けるためには、戦略の実現を担う人材を迅速かつ確実に配置する必要があります。社内の採用リソースにかかわらず、効率的に人材を確保するうえで、スカウトサービスは効果的です。社内での育成や社員の紹介など、時間のかかる長期プランと、このような短期的に一定の成果を出せる手法をうまく組み合わせ、自社に必要な人材の確保を目指しましょう。
求める人材にスカウトで応募してもらうためには、スカウトを送付する際、次に紹介する3つのコツを意識しましょう。
スカウトのメッセージが送られてきた場合、求人企業の採用目的が明確であることが応募意欲を高めることにつながります。
採用目的とは、以下のような内容のことです。
前述したとおり、スカウトした人材からの返信に対する求人企業の対応が間延びしてしまうと応募意欲の低下につながる可能性があります。
反面、レスポンスをよくすることで、求人企業の本気度やスカウトした人材への関心度の高さが伝わり、応募意欲の向上につながる場合があります。
スカウトをするということは、求人企業のほうからスカウトした人材に対して自社に応募してくれるようにお願いをするということです。
相手の心を動かし、相手からの関心を高めるためにも、求人企業から積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。
アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。