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紹介料(紹介手数料)とは、一般的に人材紹介サービスから採用ターゲットにマッチする人材を紹介してもらい、紹介された人材が入社に至った場合に支払う報酬のことを指します。紹介料(紹介手数料)が発生するサービスの多くは、サービス自体無料で利用でき、入社が確定して初めて費用が発生します。このような人材紹介サービスを“成功報酬型”と呼称することもあります。
ただし、成功報酬型以外の料金形態を採用している人材紹介サービスもあります。
紹介料は、一般的に「理論年収×料率(%)」で算出します。
本章では、紹介料を算出する際に用いられる「理論年収」と「料率」、「返戻金」や「着手金」が発生する場合について解説します。
理論年収とは、採用者が求人企業に入社し、1年間勤務した場合に得られる想定の年収総額のことです。毎月必ず支給される基本給や諸手当の合計額に、前年度の支給実績に応じた賞与額を加えた金額が理論年収となります。
理論年収を計算する上で、通勤手当は含みません。残業代は、毎月固定した金額を支給する場合は理論年収に含め、実残業時間に応じた金額を支給する場合は理論年収には含みません。
料率とは、紹介料を算出する際に用いる増減の基準になる割合のことを指します。
料率は、紹介を希望する人材要件などによって変動することがあります。例えば、管理職経験を持つ人材や希少性の高いスキルを持つ人材の紹介を希望する場合、料率が高くなることもあります。
返戻金とは、入社後何カ月以内(保証期間)に紹介した人材が退職した場合、紹介手数料の一定割合を求人企業に返還するものです。
人材を採用する企業にとっては、入社した人材が早期退職してしまうと、紹介手数料が損失になってしまいます。そのため人材紹介サービスによっては、早期退職に対する返戻金を設定しているケースがあります。
例えば、入社1カ月以内の退職については80%、1カ月を超え3カ月以内の退職について50%、3カ月を超え6カ月以内の退職については10%など、在籍期間に応じて定められていることが多いようです。
人材紹介サービスが企業からの依頼を受けて、求める人材要件にマッチした人材を一から探す場合、紹介手数料とは別に、着手金が発生することがあります。着手金とは、契約に基づくサービスの対応を開始する段階で支払われる報酬のことであり、一般的に採用に至らなかった場合でも返還されません。
着手金の金額は、採用の難易度や採用保証の有無などによって決定されます。
本章では、人材紹介サービスの紹介料をシミュレーションした例を紹介します。
理論年収720万円の人を1人採用する場合の紹介料は、216万円になります。
理論年収500万円の人を5人採用する場合の紹介料は、750万円になります。
理論年収900万円の人を3人採用し、うち1人が2カ月で早期退職した場合の紹介料は、675万円になります。
人材紹介サービスの利用にあたって「紹介料を支払ってまで利用する価値があるのか」「コストと結果が結びつくのか」などの疑問を持つ採用担当者もいるかと思います。
確かに人材紹介サービスには手数料が発生しますが、それを上回るメリットも多数あります。
本章では、人材紹介サービスの利用に向いている企業の特徴とその理由を解説します。人材紹介サービスの利用に比較的向いていると考えられる企業例は以下です。
採用のミスマッチを減らしたい企業は、人材紹介サービスを利用することでミスマッチを低減できるかもしれません。
企業が自社のみで採用活動を行う場合、応募書類や面接など限られた機会の中で応募者とのマッチ度を見極めなければなりません。応募者を見極める機会が限定されていることから、採用後のミスマッチが生じてしまうリスクが高まる可能性があります。
一方、人材紹介サービスを利用した場合、企業は人材紹介サービスが持っているデータベースの中から求める要件にマッチした人材を絞り込みます。そのため自社だけで採用活動に取り組む場合と比較して、ミスマッチが生じるリスクを低減する効果が期待できるでしょう。
採用までの期間を短縮して採用したい企業も人材紹介サービスの利用が比較的向いているといえるでしょう。
企業が独自で採用活動を行う場合、募集方法の選定や求人情報の公開準備など、選考までに工数や時間がかかる場合があります。求人情報を公開した後も、求職者からの応募が来るのを待たなくてはなりません。
その点、人材紹介サービスならすでに保有している転職希望者のデータベースの中から、適した人材を探します。すぐに人材を紹介してもらうことができれば選考までに要する期間や、採用に至るまでの期間を短縮できるかもしれません。
非公開で採用したい企業も人材紹介サービスを利用することで、採用情報を公開することなく採用活動を進められるでしょう。人材紹介サービスの場合は、採用情報を公にすることなく採用活動を進められるため、従業員や競合他社に求人内容や採用活動の動向を知られないようにすることも可能でしょう。
人材紹介サービスを利用する時に留意したいポイントは、次の2つです。
早期離職が発生した場合、コスト面で損失が生じる可能性があることを理解しておく必要があります。
人材紹介サービスでは、一般的に紹介を受けた人材が早期離職した場合、紹介料の一部が返戻される場合があります。しかし、すべてのサービスにおいて必ずしも「返戻金」が設定されているわけではなく、支払った紹介料も全額が返戻されるわけではありません。
また、面談・選考に要した採用担当者の人件費や入社後の教育にかかった費用も損失になる可能性があります。
人材紹介サービスを利用して大人数を採用した場合、結果的に採用コストが高騰する懸念があります。
人材紹介サービスは「理論年収×料率(%)」で算出された紹介料が発生します。採用した人数分の紹介料が発生するため、ほかの採用手法と比較して1人あたりの採用単価や採用にかかった総額が高くなる懸念もあります。
アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。