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人材紹介サービスにかかる料金形態は、今回解説する完全成功報酬型以外のものもあり、算出方法もさまざまです。
完全成功報酬型の紹介手数料とは、人材紹介サービスを利用して人材を紹介され、その人材の採用が確定した場合に支払う報酬のことを指します。
採用の決定を相手が受諾し、入社が確定した段階で、あらかじめ人材紹介契約の中で定められていた成果報酬を支払う形式が一般的です。
一般的に人材紹介サービスの紹介手数料は、「理論年収×料率(%)」で決定されます。
料率に関しては、求人企業が求めるスキルや経験などに基づく人材紹介の難易度によって変化します。経営層などのハイクラス人材になるほど手数料が高額になります。
理論年収とは、採用者が求人企業に入社後1年間勤務した場合に得られる想定の年収総額のことです。
毎月必ず支給される基本給や諸手当の合計額に、前年度の支給実績に応じた賞与額を加えた金額が理論年収となります。
理論年収を計算するうえで、通勤手当は含みません。
残業代は、毎月固定した金額を支給する場合は理論年収に含め、実残業時間に応じた金額を支給する場合は理論年収には含みません。
・採用者の基本給40万円、家族手当2万円、住宅手当3万円、役職手当5万円
・採用者と同等の等級者の前年度の年間賞与支給実績(平均額)が120万円
・固定残業代なし
・紹介手数料は理論年収の30%
この場合、理論年収額と紹介手数料額の計算は、以下になります。
理論年収額=(40万円+2万円+3万円+5万円)×12カ月+120万円=720万円
紹介手数料額=720万円×30%=216万円
人材を採用する企業にとっては、入社した人材が早期退職してしまうと、採用コストなどが無駄になります。そのリスクを低減するため、早期退職に対する返戻金を設定するケースが多く見られます。
返戻金とは、入社後何カ月以内(保証期間)に紹介した人材が退職した場合、紹介手数料の一定割合を求人企業に返還するものです。
たとえばリクルートエージェントでは、3カ月以内の自己都合退職について適用し、紹介1カ月以内の退職については報酬の80%を、1カ月を超え3カ月以内の退職については報酬の50%を、3カ月を超え6カ月以内の退職については10%を返金することになっています (2023年11月時点)。返戻金に関する詳細は、契約時にご確認ください。
人材紹介サービスが企業からの依頼を受けて、求める人材要件にマッチした人材を一から探す場合、着手金が発生することがあります。着手金とは、契約に基づくサービスの対応を開始する段階で支払われる報酬のことであり、採用ができなかった場合でも返還されないのが一般的です。
着手金の金額は、採用の難易度や採用保証の有無などによって決定されます。
次に、人材紹介サービスを利用することによるメリットとデメリットを解説します。
人材紹介サービスを利用することによる主なメリットとして、以下があります。
企業が独自で行う採用では、求職者の申告に基づく職歴や面談の印象などで採用を決定することになります。基本的には自ら応募してきた人の中から要件に見合う人材を探すため、どうしても選択肢は少なくなり、採用後のミスマッチが生じてしまうリスクが高まります。
一方、人材紹介サービスを利用した場合、人材紹介サービスが持っている人材データベースの中から、企業が求める要件にマッチした人材を抽出し紹介します。多くの候補者の中から人材を探すことができるため、ミスマッチが生じるリスクが低くなります。
企業が独自で行う採用では、募集方法を決定したあとに求人募集を開始し、応募者を募って応募の管理や面談、選考を行っていきます。そのため、採用するまでの期間が長くなり、それにともない必要な工数や人手も増加してしまいます。
一方で人材紹介サービスを利用した場合は、人材紹介サービスの人材データベースの中から適した人材をピンポイントで紹介するため、面談までに要する時間が短くなり、それにより採用するまでの時間や工数を短縮することができます。
求人広告などを使って人材募集を行う場合、従業員や競合他社に人材募集を行っていることを知られてしまうリスクがあります。たとえば、従業員が求人の内容を目にし、自分自身の労働条件と比較することで採用に関して不必要な憶測を呼び、混乱を招く可能性もあるでしょう。また、競合他社に求人の内容からその後の事業方針などを知られてしまい、事業競争上の不利益が生じてしまうリスクも考えられます。
一方、人材紹介サービスを利用すれば非公開で人材募集を行うことができるため、従業員や競合他社に求人の内容を知られてしまうリスクを回避することができます。
人材紹介サービスを利用することによる主なデメリットとして、以下があります。
人材紹介サービスに関しては、一般的に返戻金という制度が設けられていますが、企業が支払った紹介手数料の全額が返還されるわけではありません。
そのため、早期離職が発生した場合、返戻金との差額が求人企業の損失となります。
加えて、紹介された人材との面談などに要した人事担当者の人件費、入社後の教育などに費やされた人件費なども損失となる可能性があります。
人材紹介サービスとのコミュニケーションが不足している場合、人材紹介サービスが企業の求める人材要件についての理解が不足し、人材のミスマッチが起こる可能性があります。求める人材が紹介されない、あるいは採用した人材が早期退職してしまうなどの場合は、人材紹介サービスとのコミュニケーションが十分にできているか見直してみましょう。
※ミスマッチに関しては、以下の記事をご参照ください
採用ミスマッチが起きる理由とは?防止策、定着方法を解説
人材紹介サービスに関しては「理論年収×料率(%)」で計算された紹介手数料が発生します。そのため大人数の採用に対して人材紹介サービスを利用した場合、採用人数分の紹介手数料が発生します。
そうなることで、求人企業のトータルでの採用コストが高くなってしまいます。
以下に、人材紹介と人材派遣、求人広告、自社サイト、ハローワークの特徴や料金の比較を行います。
採用方法 | 特徴 |
人材紹介 | 必要な人材を短期間で採用できる |
人材派遣 | 業務に必要なスキルや経験を有する人材に必要な期間働いてもらうことができる |
求人広告 | 自社が自在に求人媒体の選定や募集条件の設定を行うことができる |
自社サイト | ターゲット人材に対して自社の魅力を具体的に伝えやすくなる |
ハローワーク | 求職者の中にターゲット人材が存在する場合、採用に対するコストパフォーマンスがよくなる |
人材紹介には、自社が求める人材要件にマッチした人材を短期間で採用することができる可能性が高いという特徴があります。
人材派遣には、自社の業務に必要なスキルや経験を有する人材に必要とする期間働いてもらうことができるという特徴があります。
求人広告は自在に写真の掲載や記載文言の設定を行うことができるため、自由度が高いといえます。
自社の魅力が求職者により伝わるよう工夫することが可能です。
自社サイトには、ターゲット人材に対して自社の魅力を具体的に伝えやすくなるという特徴があります。
反面、自社の知名度が低い場合、自社サイト(求人ページ)へのアクセスが少ないことで、採用の効果が発揮されなくなることもあります。
ハローワークには、求職者の中にターゲット人材が存在する場合、募集費用が発生しないことにより採用に対するコストパフォーマンスがよくなるという特徴があります。
反面、求職者の中にターゲット人材が存在しなかった場合、採用が難しくなります。
採用方法 | 費用 | 発生頻度 |
人材紹介 | 紹介手数料(着手金が発生する場合もあります) | 採用時に一度だけ |
人材派遣 | 派遣手数料(派遣単価×稼働時間) | 派遣期間中の各月ごと |
求人広告 | 所定の掲載料金 | 掲載期間ごと |
自社サイト | 採用ページの制作・更新費用 | 制作・更新を行う都度 |
ハローワーク | 募集に関する費用は発生しない |
人材紹介の場合は、一から求める人材を探してもらう形でない限りは、採用時の理論年収から算出される紹介手数料が費用負担となります。また場合によっては着手金が発生することがあります。
人材派遣の場合は、派遣期間中の各月ごとに派遣単価×稼働時間分の派遣手数料が発生します。派遣単価は、職種や地域によって異なりますが、時間当たり2000円台から3000円台であることが一般的です。なお、人材派遣は派遣元との間で雇用関係があるため、社会保険料負担は発生しません。
求人広告の場合は、広告主が設定した掲載料金が発生します。
広告媒体によって料金が異なりますが、4週間程度の掲載期間に対して20万円から50万円程度の料金が発生することが一般的です。
自社サイトの場合は、採用ページを制作、あるいは掲載内容を更新するための費用が発生します。すべて自社で賄う場合は担当者の人件費が費用となり、外部業者に委託する場合は数万円から数十万円程度の料金が発生することが一般的です。
ハローワークの場合は、募集に関する費用は発生しません。
企業が経営環境の変化に対応し、経営戦略、事業戦略を実現していくためには、最適な人材をタイムリーに配置することが必要です。このような人材マネジメントを実現するうえで、人材紹介は有力な手助けとなりえます。採用する人材に関して、一定の質を担保しつつ、採用期間の短縮を図ることが可能だからです。本稿で紹介した費用や特徴などを踏まえて、活用を検討してはいかがでしょうか。