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オンライン面接とは、Web会議システムなどのツールを利用して求職者と面接を行う採用手法のことをいいます。新型コロナウイルス感染症の影響により、面接担当者や求職者の方の安全確保のため、需要が高まり続けているオンライン面接。株式会社リクルートが企業の採用担当者を対象に行った調査※では、2020年3月の時点で導入を検討している企業が既に54.6%と半数以上を占めており、今後も多くの企業がオンライン面接を継続していくことが予想されます。
オンライン面接を導入した企業の中では、コミュニケーションの難しさなどの声も上がっていますが、物理的な距離という制約がなくなることは、さらなる母集団獲得や選考のスピードアップを推し進めるチャンスともいえます。ぜひオンライン面接をうまく取り入れることで、自社の採用力向上につなげていってください。
出典:株式会社リクルート「採用担当者に聞く、オンライン面接の導入状況」(2020年5月14日)
最大のメリットは、移動時間や交通費がかからないという点にあります。特に居住地と面接地が離れている地方に住んでいる学生やUIターン希望者にとって、物理的な距離がこれまで大きな負担となってきました。しかし、オンライン面接の導入によって時間とお金を削減できるため、応募先の選択肢をより広げることが可能になります。新卒採用の場合、地方に住んでいる学生、留学中の学生、研究で多忙な理系学生など、対面が困難な学生も、オンラインであれば面接を実施しやすくなります。それぞれの学生の状況に合わせて柔軟な選考を行うことで応募のハードルをさげ、応募数を拡大させられる可能性があります。
また、企業にとっては、社内の会議室の空き状況や面接の場所を気にする必要がなくなるのも大きなメリットです。採用成功に向けて選考スピードが重視される中、日程を調整しやすいオンライン面接を導入することは、選考辞退の防止にも有効といえるでしょう。
オンライン面接は画面越しのため、お互いの細かな表情の変化などが読み取りにくく、ジェスチャーやアイコンタクト、会話中のアクセントなど非言語コミュニケーションが少なくなるのも特徴です。そのため、初対面でのラポールの形成が難しく相手の緊張感が拭えなかったり、求職者の雰囲気や人物像をつかみにくくなったりするケースも多く、面接官にとっては求職者を多面的に見極めることが難しくなる場合があります。その場合は、全ての面接をオンラインで実施するのではなく、オンライン面接と対面面接を使い分けると良いかもしれません。
また、インターネット環境によっては音声や映像に問題が起きるケースもありますので、電波状況の確認やWi-Fi環境の準備など、事前に注意喚起をしておくことをおすすめします。
オンライン面接が対面での面接と大きく異なる点は、パソコン(またはタブレット、スマートフォン)で応募者と面接官が対峙するところです。そのためには事前準備が必要です。
通信環境は安定した環境が良いです。モバイルWi-Fiルーターやスマートフォンのテザリング機能などは、通信が不安定になる可能性があるため避けた方が無難です。
また、パソコンの性能にも注意が必要です。面接にはカメラとマイクが必須なので、CPUの性能が低いと、動画や音声の処理が遅くなる可能性もあります。古いパソコンの場合は注意しましょう。
オンライン面接に使用するツールは企業側で指定することが多いでしょう。ツールとしてはZoom、Microsoft Teams、Skypeなどが一般的ですが、オンライン面接専用ツールも多種あります。オンライン面接ツールの場合、スケジュール管理機能やリマインダー機能、録画機能といった便利な機能がついていることが多いので、特長や料金などを考慮の上、こういったツールを使う方法もあります。
オンライン面接では、面接官の声がマイクを通じて相手に届くことが必須です。周りの音が入らない静かな環境を選びましょう。また、面接官の表情が応募者に分かるように明るい場所で実施するとよいでしょう。
なお、社外秘の情報や個人情報など、周囲の状況が画面の背景に映らないよう注意することも必要です。
カメラが目線よりも下に設置されていると、相手と視線が合っているように思えても、相手からは面接官に上から目線で話されていると感じてしまいます。
上から目線にならないよう、カメラの配置を「目線と水平か、少し上気味の位置」になるように調整しましょう。
オンライン面接の前に、カメラが問題なく映り、マイクで音が送受信されているか確認しましょう。
オンライン面接では、面接官として注意する項目は通常の面接と異なるところもあります。ここでは4つの例を解説していきます。
面接官は、オンライン面接が始まる前に待機しましょう。時間になっても接続が開始されなければ、応募者に不安を与えてしまいます。応募者がリラックスして面接に臨むためにも、時間前に待機しておく配慮が必要です。
面接官は基本的にはカメラを見ながら話をしてください。画面上の応募者の顔だけを見て話していると、応募者と視線があっているように思いがちですが、応募者は面接官が目を合わせてくれないと感じてしまいます。なるべく必要な時だけ画面を確認するようにしましょう。
オンライン面接の場合、ネット環境によっては音声が途切れたり、画面がフリーズしたりする場合もあります。音声が聞こえているか、資料が見えているかなどを応募者に定期的に問いかけるとよいでしょう。
オンラインでのやり取りでは、対面よりも相手の表情や反応が見えにくいことがあります。面接官の反応が判り難いことから応募者が萎縮することもあるかもしれません。応募者の話に反応して、普段よりもリアクションを大きめに取ることを心掛けてください。たとえばあいづちを多めに打ったり意識的に笑顔を作ることだけでも、応募者は話しやすくなるでしょう。
最後に、オンライン面接で面接官が応募者に良い印象を与えるコツについて、2つご紹介します。
オンライン面接ではマイクを通じて会話するので対面面接よりも声の聞き取りやすさが重要となります。トーンや滑舌、スピード、抑揚にも気を遣って、ハキハキと話すことに気を配るとよいでしょう。
話すスピードに関しても、通信環境によって音声と映像にわずかなタイムラグが生じることも想定して、対面時よりもゆっくりと落ち着いて話したり、間を入れたりすることを心掛けましょう。
オンライン面接では緊張感がゆるみやすくなることもあるため、質問事項についてはより注意が必要です。
厚生労働省では、「採用選考時に配慮すべき事項」として以下を挙げています。
「本人に責任のない事項の把握」
「本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握)」
引用:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
これらは対面面接でも同様ではありますが、あらためて確認し、留意しましょう。