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採用とは?言葉の定義や採用用語を詳しく解説

採用とは

“採用”という言葉そのものは、「適切であると思われる人物・意見・方法などを、選択肢の中から選び、用いること」という意味です。
本章では、上記意味を持つ“採用”という言葉について、下記3つの観点から解説します。

  • 企業が行う「人材採用」とは
  • 採用を行う目的
  • 目的別採用のイメージ例

企業が行う「人材採用」とは

企業が行う「人材採用」とは、自社にとって「どのような人材が必要か」を明確にして、候補者の中から、適切な人材を採用(雇用)する事業活動のことを指します。
企業が事業活動を推進する上では、4大経営資源と呼ばれる「ヒト・モノ・カネ・情報」が必要と言われています。人材採用は、経営資源の1つである「ヒト」を、企業の成長に向けて増やしていくための活動でもあると言えるでしょう。

採用を行う目的

採用を行う目的は、「もし、人材採用を行わなかったらどのようなことで困るのか」と、逆説的に考えると明確になります。
採用を行わなかった場合、例えば下記のような懸念やリスクが生じると考えられます。

  • 定年退職や自己都合退職に伴う人員不足が発生すると、業務の円滑な遂行に支障をきたす可能性がある
  • 人手不足の状態が恒常的になると既存の従業員に過度な負荷がかかり、結果としてパフォーマンスの低下や離職リスクの増加を招く恐れが生じる
  • 組織内の人材が固定化され、変化に乏しい状態が続くと、新しいアイデアやイノベーションの創出が停滞するリスクがある
  • 将来のリーダー候補が不在の場合、組織の成長および継続性が危ぶまれる可能性がある

これらを解消する手段の1つとして「採用」が行われていると言えるでしょう。

目的別採用のイメージ例

企業活動を滞らせないために、そして、次なる発展のために人材を増やしていくことが人材採用の目的です。人材採用では、単に採用数を増やせばいいのではなく、「なんのために、どのような人材が必要なのか」を明確にすることが必要です。
主な目的別採用イメージの例を挙げます。

欠員補充を目的にした採用

従来5人で行っていた業務において、1名の欠員(退職や異動等)が生じた場合、残された4人の負荷が大きくなることで、業務の生産性や品質が低下し、それを補うための残業が増えるなどの悪影響が生じるかもしれません。そのため、欠員補充の場合は、退職(もしくは異動)した人と同等か、それ以上のスキルを持つ人材を採用する必要があるでしょう。

課題解決を目的にした採用

例えば、小売業を営む企業が売上向上の施策としてECサイトを強化したい場合、自社にそのノウハウが不足しているケースも少なくありません。このような状況では、既存社員にEC関連のスキルを習得させるよりも、既にその分野で実績を持つ人材を新たに採用することで、施策の実施までにかかる時間を短縮し、教育にかかるコストを抑えることが期待できるでしょう。

新規事業・新拠点への対応を目的にした採用

新規事業や新拠点が立ち上がり、新規事業や新拠点での活動を推進する人材が新たに必要になった場合、採用活動を開始するケースもあります。
組織が拡大するに伴い、チームをまとめるリーダーや業務を推進するスタッフなど、必要な人員を適切に増員が必要になることもあるでしょう。これは前述の課題解決にもつながりますが、新しい組織に求められる人材像によって、採用の条件や難易度は大きく異なります。例えば、新規分野へ進出する際には、関連業務の知識や経験を持つ人材を確保することが重要です。

5年先10年先のリーダー・幹部候補の採用

経営者は常に組織の5年先10年先を考え、将来のビジョンを明確に示していくことが重要です。その時に、創業者や経営者の思いを引き継げる、あるいは、経営層に新たな発想を持ち込める人材が必要になると考えられます。自社の人材に次代を任せられればよいですが、必ずしも適当な人材が自社内にいるとは限りません。そのようなケースにおいては、幹部候補の採用が必要になります。

対象者別採用の種類

ここでは、企業の採用活動の対象者を下記4種に分けて解説します。

  • 新卒採用
  • 中途採用
  • ポテンシャル(第二新卒)採用
  • パート・アルバイト採用

種類1:新卒採用

新卒採用とは、高校生や大学生など就業経験のない学生が対象となる採用のことです。卒業予定の学生に対して一斉に求人内容を公開し、ほぼ足並みをそろえて説明会や選考試験を行い、卒業してすぐ入社するのが一般的です。
日本独自の採用手法と言われ、長く人材採用の主要な方法の1つとされてきました。特に大手企業を中心に従業員の半数以上、企業の中には従業員のほとんどが新卒採用の社員というところもあるようです。

種類2:中途採用

中途採用とは、過去に就業経験がある人材を対象とした採用のことです。欠員が出た場合や、新規事業立ち上げ時の人員が明らかに不足している場合、事業の推進にあたり、ある特定の経験やスキルや資格を持つ人材が必要な場合に行われます。

新卒・中途採用の特徴(メリット・デメリット)を以下にまとめました。

作成:編集部

種類3:ポテンシャル(第二新卒)採用

「第二新卒」として扱われる期間は、各企業が独自の定義を持っている場合、その定義に従います。もしなければ、学校(高校・専門・短大・高専・大学・大学院)を卒業してからおおむね3年以内の人(学校卒業後すぐに就職する新卒者は除く。また、職務経験の有無は問わない) を指します。(「第二新卒」は学校等を卒業後に一度就職したが、短期間のうちに転職を志す人材を指します。よって、第二新卒採用と中途採用は区別されることが多いです。)

種類4:パート・アルバイト採用

パート・アルバイト採用は、「1週間の所定労働時間が同じ事業所に雇用される正社員に比べて短い人材」を採用するための活動を指します。応募者は、通常、時給制で採用されることが多く、業務の範囲や責任は、同等経験・スキルを持つ正社員よりも狭いケースが一般的です。
また、正社員とは異なり、採用の際は雇用期限を設けることもあります。

参考:厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1e.html)

採用の手法

人材を採用する手法としては、主に次のような手法があります。

  • 人材紹介
  • 求人媒体(Webサイト)
  • ダイレクト・ソーシング(ダイレクトリクルーティング)
  • 人材派遣
  • 自社ホームページ、採用ページ(採用サイト)
  • ソーシャルリクルーティング
  • 検索エンジン
  • 採用イベント
  • 求人チラシ・ポスティング
  • リファラル採用
  • タレントプール
  • ハローワーク

ここでは、上記12種の手法について概要や特徴を解説します。

手法1:人材紹介

人材紹介とは、人材紹介会社が企業と求職者の間に入り、企業が求める人材要件に合った求職者を紹介する採用手法です。

手法2:求人媒体(Webサイト)

求人媒体とは、インターネット上に公開されている求人サイトに自社の求人情報を掲載して応募者を募る採用手法です。

手法3:ダイレクト・ソーシング(ダイレクトリクルーティング)

ダイレクト・ソーシング(ダイレクトリクルーティング)とは、採用ターゲットに近い求職者に対して企業自らオファーやスカウトを送付し、直接自社の魅力をアピールしたり、求人情報を伝えたりする採用手法です。

手法4:人材派遣

人材派遣とは、従事予定の業務内容や必要スキルを伝え、派遣会社に登録している求職者の中から要件にマッチする人材を一定期間派遣してもらう採用手法です。

手法5:自社ホームページ、採用ページ(採用サイト)

自社ホームページは、自社の採用ページを作成し、自社の魅力や求人情報を発信する採用手法です。具体的には、自社の企業ホームページ内などに採用ページを設け、求人情報や企業文化、社員の働く様子などの情報を掲載し、自社への興味喚起や理解を促します。

手法6:ソーシャルリクルーティング

ソーシャルリクルーティングとは、採用活動にSNSを用いる採用手法のことを言います。企業用のSNSアカウントを作成し、SNSを通じて自社の求人情報や魅力などを発信します。

手法7:検索エンジン

検索エンジンとは、さまざまな求人サイトに掲載された求人情報を1つのサービスから一括検索できる採用手法を指します。

手法8:採用イベント

採用イベントとは、合同企業説明会など、求職者と接点を持つイベントを開催し、イベントに訪れた求職者に対して直接アプローチする採用手法です。

手法9:求人チラシ・ポスティング

求人チラシ・ポスティングとは、求人情報を記載したチラシやポスターを作成し、近郊エリアに配布する採用手法です。また、ポスターであれば店頭や店内に掲示することもあります。

手法10:リファラル採用

リファラル採用とは、在籍する社員から友人や知人を紹介してもらい、採用につなげる採用手法です。

手法11:タレントプール

タレントプールとは、これまでの採用活動などで接点を持った人材のデータベースを作成し、定期的にコミュニケーションを取り関係を継続する採用手法です。採用ニーズが発生した時に作成したデータベースの人材にアプローチし、採用につなげます。

手法12:ハローワーク

ハローワークは、厚生労働省が運営する総合的雇用サービスを利用した採用手法です。ハローワークに自社の求人情報を掲示してもらい、応募者を募ります。

「〇〇採用」を一挙に紹介

本章では、企業の採用活動において、「〇〇採用」と呼称される次の言葉について、一般的な概要や定義について解説します。

  • 通年採用
  • 臨時採用
  • ジョブ型採用

通年採用

通年採用とは、企業が1年を通して特定の時期を定めず採用を行うことです。新卒採用の場合、従来は日本の高校生や大学生が3月に学校を卒業して翌月の4月に一括入社するため、採用活動のスケジュールが固定化していました。しかし近年は、通年採用を実施する企業もあります。リクルートが発表している「就職白書2024」の調査によると、新卒採用において通年採用を実施している企業は全体の30.9%でした。

出典:株式会社リクルート「『就職白書2024』データ集」(2024年)

臨時採用

臨時採用とは、雇用契約期間を限定した採用のことです。産前産後休業や療養などで社員や職員が一定期間出勤できない場合、その期間に限り、代わりの人材を採用することを目的の一つとしています。教員免許など特定の資格者を対象とするケースで多くみられます。

ジョブ型採用

ジョブ型採用は、従業員のジョブ(職務)をベースにした雇用形態を指し、欧米では一般的です。企業が従業員に対し、職務の内容(ジョブ)を職務記述書(ジョブディスクリプション)に明記し、職務・勤務地・労働時間など労働条件を明確にした契約を交わして雇用します。

採用活動でよく出てくる用語とその意味について

本章では、採用活動でよく出てくる用語とその意味について紹介します。

採用マーケティング

どのような人材が必要か、どのような採用活動を実施していくかという一連の業務において、商品やサービスを売っていく時に行うマーケティングの手法を取り入れることを、採用マーケティングと言います。求める人材のニーズを把握した上で、効率的に採用活動を行うことができます。

採用ブランディング

採用活動において、自社の個性や魅力、信頼性を高め、企業価値を向上させる活動を指します。「この企業に就職したい」「このような企業なら働き甲斐がありそう」と思ってもらえる人を増やしていくことが目的です。

母集団形成

求人媒体などを通して求人情報を発信し、自社に興味を持っている学生(新卒採用)や求職者(中途採用)の数を集めることを言います。大きな母集団を形成できれば、よりよい人材が集まる可能性もある反面、数が多いゆえ、選考に多くのリソースを割く必要が生じます。適切な母集団形成が採用活動には重要です。

ターゲット

ターゲットとは直訳すると「標的」や「まと」の意味を持ちますが、採用の文脈では、採用したい人材要件を持つ集団のことを言います。母集団形成のために、自社が求める人材の要件、スキル、特性などを絞り込むプロセスをターゲティングと呼びます。
採用方法、仕事内容、事業内容、働く人などの中で、その企業の魅力をもっとも表す言葉やコンセプトを策定し、採用活動で多くの人の印象に残るようなブランドを構築していきます。

ペルソナ

マーケティング用語で、「サービス・商品の典型的なユーザー像」を指します。採用の場合は、「求める人材要件を満たす架空の特定人物像」になります。採用マーケティングの手法として活用されており、年齢や性別、経験や志向、行動やプライベートの過ごし方などまで細かく人物像を想定し、その内容にそって採用活動を進めます。この点、採用選考の場面においては、公正な採用選考の基本に基づき、年齢や性別などではなく、適性や能力で判断する必要があることは留意しておきましょう。

ジョブカフェ

主に都道府県が主体となって運営する、職場体験や職業紹介、就職セミナーなどのサービスを提供する支援施設です。若者の能力向上・就職促進を目的としていて、さまざまなサービスを無料で体験できます。このサービスの中高年者向け支援の場所が、ジョブサロンです。

アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。