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採用フローとは「採用の流れ」のことで、採用フローを作ることは採用活動の流れを決めて可視化することを意味します。
近年、採用活動をひとつのプロジェクトと捉える考え方が広がってきました。採用活動もプロジェクトだとすれば、着実に工程を積み上げ、スケジュールを進めることが重要です。採用活動においても採用フローを設計することで、適切に管理し、成功に導くことができるといえます。
採用フローを考える際には、前提として採用計画が必要になります。事業計画に基づき、いつまでにどのポジションで何名の採用が必要かという採用計画を立て、採用活動の流れを設計します。
※採用計画に関しては、以下の記事をご参照ください
失敗しない採用計画の立て方とは?具体的な手順と求める人材を採用するためのコツ
採用フローを明確にせず採用活動を進めてしまうと、採用活動は失敗しかねません。採用をプロジェクトという観点で考えると、プロジェクトに関わる関係者(採用担当者、採用活動に関わる選考官や役員)全員が採用活動におけるゴールと目標(採用人数・KGI・KPI)、スケジュール、工程(採用フロー)を認識しておく必要があります。
採用フローを作り可視化することで、プロジェクトメンバーの認識を揃え、ゴールに向かって進んでいくことができます。また採用活動の過程で出てくる課題や問題についても、工程ごとに分析し改善を図っていくことができます。
新卒採用・中途採用とも採用フローにおいては「集める(募集フェーズ)」「選考する(選考フェーズ)」「フォローする(フォローフェーズ)」の3つのフェーズがあります。
募集フェーズは、「母集団形成」(自社への応募者を募るための広報活動/求人媒体掲載、人材会社広報、説明会開催など)を行っていく段階です。
近年の募集フェーズにおいては、求める人材像を明確にしたうえで、応募を募りたいターゲットに訴求できる広報活動を目指す傾向があります。
選考フェーズは、応募者を選考していく段階になります。近年では、募集フェーズ同様に事前に「求める人材像」を明確にしたうえで選考基準を定め、面接官と目線を共有し、選考を進めていく傾向があります。選考に関わる関係者の間で選考基準のズレがないことが採用成功へのポイントになります。
フォローフェーズとは採用したい人材への直接的なアプローチをしていく段階になります。応募者に働きかけて入社への動機づけをするなど、不安点・懸念点の解消のために個別フォローをしていきます。
以前は最終面接から内定者前後のフォローが中心でしたが、近年は採用市場の活況から内定辞退も珍しくないため、より早い選考段階からの応募者フォローの必要性が注目されています。書類選考合格した一次面接前後のフェーズから、選考状況の把握や不安点の払しょくなど、こまめに応募者とやり取りをしながら進めていく必要があります。
新卒採用と中途採用の採用フローの違いについても解説します。
新卒採用は一般的に入社タイミングと採用活動の時期が年間でほぼ決まっており、それに合わせて採用活動を行います。そのため「募集活動→会社説明会→書類選考→筆記試験・面接→内定」における年間スケジュールを組み応募者を一斉に募集・選考と進めていきます。応募者も就職活動解禁に合わせて活動をスタートするため、採用活動のピーク時は応募者の対応など、かなりの工数がかかります。したがって、採用担当者を配置し採用担当者主導で進めていく必要があります。
※新卒採用スケジュールに関しては、以下の記事をご参照ください
一方、中途採用は採用時期が配属先や募集ポジションにより異なるため、ポジションごとに「募集活動→(個別会社説明会)→書類選考→筆記試験・面接→内定」と進めていくことが多いです。中途採用の場合、配属先の人員ひっ迫度にも関わるため、現場主導で採用活動を進めていくケースもあります。
※中途採用の募集時期に関しては、以下の記事をご参照ください
ここでは、新卒採用のフローにおける基本型とアレンジ型の2つのパターンについてご紹介します。
求人媒体などを通じて行われる最初のエントリーは、「プレエントリー」ともよばれるもので、学生からの「興味がある」という意思表示です。エントリーのあった学生に対し、会社説明会の案内をする流れになります。
求める人材像や求める要件に合わせて、選考内容を各企業でアレンジするパターンもあります。
選考は面接のほか、グループディスカッション・ディベートなどを導入する企業もあります。また筆記試験や面接・ディスカッションをどの選考タイミングに持ってくるかなども企業ごとに異なります。必要なタイミング・必要な選考内容を検討し、設計していきます。
次に中途採用のフローにおける基本型、アレンジ型、複数採用型の3つのパターンについて紹介します。第二新卒や経験不問で複数名の採用を行うケースを複数採用型として解説します。
中途採用は通年採用が多くポジションごとに募集から選考を進めていくため、基本的には応募があったタイミングで随時選考を進めていきます。
新卒採用で行うエントリー(プレエントリー)や会社説明会などのステップは基本的にはなく、応募受付後応募者の書類選考を進めていきます。
中途採用の場合は、ポジションの難易度や応募者の経歴・マッチ度に応じて応募者ごとの個別の選考フローを用意するケースがあります。
たとえばIT人材などは応募につながらないケースも多いため、まずは選考ではなくポジションの説明や個別に話す場(カジュアル面談)を設定し、応募ハードルを下げるフローを追加する場合もあります。
また書類選考での評価が高い候補者は1次面接より現場のトップが出て直接話すなど、優秀な人材獲得に向けた採用フローを用意するケースもあります。ポジション・応募者に応じた個別対応がポイントとなります。
同ポジションで5名以上の採用を同時タイミングで行いたい場合(入社時期も同時期を希望)、新卒のフローに近い会社説明会の開催などを行うケースがあります。主に経験をほとんど問わないケースの場合で、実施される手法です。
採用フローを設計しておくことで、採用の課題の振り返り・分析がしやすくなります。各フェーズのKPIを定め、数字を基に振り返りを行うとよいでしょう。
たとえば募集の段階では採用ツールごとの応募数を比較する、そのあとの選考フェーズにおける応募数の推移や通過率などをウォッチし、採用における課題を特定し改善を図っていきます。このように採用フローを用いることで、採用におけるPDCAを回すことが可能となります。
採用がうまく進まない場合、「募集フェーズ」「選考フェーズ」「フォローフェーズ」のどのフェーズに課題があるかを明確にしましょう。
以下に、各フェーズに課題がある場合、どのような問題が生じるのかと、その改善のヒントについて解説します。
募集フェーズに問題がある場合、応募者が集まらない、応募はあるがマッチする応募者がいないなどといったケースが多く、この場合は募集ツールと募集内容の見直しが必要になります(求人媒体、人材紹介会社、採用ブランディング内容などの見直し)。
※採用ブランディングに関しては、以下の記事をご参照ください
【人事必読】採用ブランディングとは?手順、メリット・デメリットを徹底解説
選考フェーズに問題がある場合、面接通過率が低い、面接官内で選考基準がズレている・一致していない、面接官の面接スキルが低い、選考スピードが遅いなどが課題としてあげられます。
まずは、問題となっている課題を明確化し、対応を考える必要があります。たとえば通過率が低い場合は、母集団形成の段階に立ち戻り、ほしい人材像の定義を見直すとよいでしょう。面接官の面接スキル不足や面接官の目線のすり合わせが不足している場合には、面接官研修を実施するなど、面接力をあげていく必要があります。
※面接の心構えに関しては、以下の記事をご参照ください
面接官必見の事前準備、気をつけるポイント、心構えをわかりやすく解説
フォローフェーズに問題がある場合、選考段階や内定段階での辞退が相次ぐなどの問題が多く発生します。これらはフォロー不足が原因の一つと考えられます。
近年、採用活動は、ほしい人材が自ら入社を希望するよう促していくような選考方法に変わりつつあります。そのなかで、自社を志望する人だけを採用するのではなく、自社を志望してもらえるように自社の魅力を伝えるための細やかな個別フォローも重要になっています。
近年の採用活動では、企業に採用する力があるかといった、企業側の採用力が問われるようになっています。
そのため採用活動はルーティン業務として行うものではなく、採用活動における課題を分析し改善を図って採用力を高めていくことが必要です。
採用フローの設計はその過程において必要不可欠なものであり、採用の課題を見つけ改善を図っていくうえでも拠りどころとなります。ぜひ採用の成功に向けて採用フローを作ることからスタートしてみてはいかがでしょうか。
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