人材育成

ビジネス力を高める「傾聴」とは?効果や種類など傾聴力を高めるトレーニング方法

傾聴とは

傾聴とは、相手の話に丁寧に耳と目と心を傾けて、真摯な姿勢で相手の話を「聴く」会話の技術です。もともとカウンセリングで活用されてきたコミュニケーション技法の一つでしたが、現在では信頼関係構築にもつながる実践的なテクニックとしてビジネスの場面でも応用されています。

傾聴の目的

傾聴の目的は、相手を理解することにあります。

傾聴は、音や声が耳に入ってくる「聞く」ではなく、理解しようと進んで耳を傾ける「聴く」の漢字が使われています。相手の話を深く聴き、話し方や表情、姿勢、しぐさといった言葉以外の部分に注意を払うことで、相手への理解を深め、相手自身が納得できる結論に導くことができます。

傾聴のメリット

傾聴を取り入れることでさまざまなメリットがあります。

相手を深いレベルで理解できるようになる

傾聴するほど相手の心が徐々に開かれていき、一歩踏み込んだ深いレベルで相手を理解することができます。たとえば自身のコンプレックスや苦手意識を持っている部分について、自ら最初から進んで話してくれる人は少ないものです。けれど、傾聴によって相手に「この人は受け入れてくれる」と感じてもらうことで、徐々に相手の深いレベルのところまで話を聴くことができる可能性が高まります。

相手と信頼関係を構築しやすくなる

傾聴を心がけていくことで、相手の話を真摯に受け止められる人になります。相手にもそれが伝わると、職場やプライベートでの良好な人間関係の構築がしやすくなります。たとえば職場の部下に対して、自分の一方的な価値観を押し付けるようなことはしていませんか。それでは信頼関係はなかなか築けません。傾聴することで相手の気持ちに寄り添い、話しやすい雰囲気作りや受け止める姿勢を見せることで「この人に相談したい」という信頼関係が生まれます。社内だけでなく、顧客に対しても同様の効果があります。

会話を通して自分自身も客観的に理解できる

傾聴力が高くなると、相手の話を相手の立場で聴くことができるようになるので、自分の立場から見たことと相手の立場から見えることの違いに気付けるようになります。自分としては問題がないと思っていたことでも、相手から見たらストレスになっていることもあるかもしれません。傾聴によってこうした客観性を磨いていくことで、自分の感情や行動をコントロールできるようになり、人間関係をより良好に、深いものに変えていくきっかけにもなります。

傾聴の手法/トレーニング方法

傾聴の手法には、受動的傾聴、反映的傾聴、積極的傾聴の3つのステップがあり、段階的に実施していくことが効果的です。

まず受動的傾聴は、相手の話を真摯に受け止めて、耳を傾けるという最も基本的な方法。大切なのは、聴き手の関心ではなく、相手が心の内を伝えやすいように気持ちを汲み取りながら聴くことです。次に反映的傾聴は、鏡のように相手に反応を返しながら聴く方法です。この後のトレーニング方法で詳しく説明しますが、ミラーリングというコミュニケーション技法が効果的です。そして3つ目が積極的傾聴で、話し手の発言に言葉を添えたり質問をしたりして、より思考を促す聴き方です。ただし、聴き手の意図する回答に誘導するような質問の仕方をしないよう意識する必要があります。

では傾聴力を高めるために、どのようなことを意識して実践していけばいいのでしょうか。普段から取り入れられるトレーニング方法をご紹介します。

相槌や頷きを返す

傾聴に慣れないうちは、相手の話に対してつい質問をしたくなりますが、受動的傾聴の基本である「受け止め」から始めましょう。じっと聴くだけでなく、相手の話を聴いていることを伝えるためにも頷いたり、「うん、うん」「へ〜」「そうなんですね」といった相槌を挟んだりすることで、相手も話がしやすくなります。ただし、あまりやりすぎると逆効果になることもあるので、注意が必要です。

アイコンタクトで反応する

目を見て話を聴くことで、相手の話を真剣に受け止めている姿勢が伝わりやすくなります。目を合わせるのが苦手という方は、まずは相手の眉間のあたりを見るように意識することで、自然なアイコンタクトができるようになります。

ミラーリングをする

ミラーリングとは、相手の言葉をそのまま返すという簡単な傾聴スキルですから、ぜひ日常生活に取り入れてください。ミラーリングには、相手の言った事実や感情をそのまま切り取って返す方法の他、似た言葉を使って言い換える方法もあり、より自然な印象の会話になり、話が膨らみやすくなります。聴き手が共感していることが伝わるため、話し手もより深く自己対話でき、より深く心を開きやすくなります。

ミラーリングとは、相手と同じ表情、姿勢、ジェスチャーを返すことで、こちらも日常的に取り入れやすい方法です。相手が笑ったら笑う、飲み物を飲んだら自分も飲むといったように自然に真似をしてみましょう。相手は自分に対して好感や親近感を持ちやすくなり、話しやすい雰囲気につながります。

沈黙に慣れる

沈黙に焦って自分から話してしまうと、傾聴ができなくなります。間や沈黙は、相手が自己との対話や葛藤をしている時間になりますので、最初は気まずく感じるかもしれませんが、この時間を恐れず、相手が話すまで待ってみるというのも一つのトレーニングです。

自己開示する

傾聴というと、相手の話を聴くだけというイメージもありますが、時には聴き手自身も自己開示していくことで会話が膨らみ、相手がさらに話しやすくなります。取り入れやすい方法としては、相手の話に対して、まずはミラーリングで受け止めてから自分についての話をします。具体的には「●●出身です」という話がでたら、「●●出身なんですね。ちなみに私は●●出身で、〜」とつなげていくと自然に自己開示しやすくなります。

答えやすい質問を投げかける

傾聴力があがってきたら、積極的傾聴フェーズへ。「具体的にはどういうことですか」「もっと詳しく教えてください」などの相手の答えやすい質問を投げるかけることで、徐々に話を掘り下げていきます。「5W1H」の質問も簡単に取り入れられるテクニックの一つです。「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」などの質問を返すことで、より情報が深まっていきます、

傾聴の実践例

傾聴力は、さまざまなビジネスシーンで活かすことができます。

顧客の真のニーズを掴む

営業など顧客とのコミュニケーションを行う職種の場合、相手が本当に求めているものをつかむ必要がありますが、そこで重要な役割を担うのが傾聴力です。ただ顧客の言葉に傾聴するだけでも信頼関係の構築につながりますし、そこから真のニーズを把握し、適切なソリューションを提供することができれば、顧客満足度の向上にも繋がります。

チームの活性化

チームで仕事を進める場合も信頼関係の構築が欠かせません。中には、話すことが苦手なメンバーもいるかもしれませんが、そんなときにも傾聴力は役立ちます。チーム内での深いコミュニケーションを実現していければ、お互いの信頼関係を強固なものにし、チームの活性化につながります。

人材育成

管理職のスタッフが部下とコミュニケーションを取るときはもちろん、人事部門のスタッフが面談・面接を行うときにも傾聴力が役立ちます。傾聴を通して、部下の可能性を引き出して成長させたり、課題を把握して解決やサポートを行ったりすることも可能です。また、人事として面接で求職者への理解を深める手段として活用したり、社員の本音を引き出して改善につなげたりと従業員満足度を高めていく効果もあります。

ビジネスにおいても、通常の人間関係においても、非常に効果のある傾聴力について説明してきました。簡単に取り入れられる方法がたくさんありますので、まずは実践しながら、その効果を感じてみていただければと思います。