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「プロパー」というのは、「適切な」「本来の」といった意味を持つ英語の「proper」が元になった和製英語で、正式名称もそのまま「プロパー」です。
プロパー社員とは、企業によってさまざまな定義がありますが、主に「中途社員に対して、新卒入社の社員のこと」「派遣社員や契約社員に対して、正社員(正規雇用)のこと」「出向社員や協力会社など外部からのスタッフに対して、自社のスタッフのこと」の3つの意味で使われるケースが多いです。
プロパーは、さまざまな場面で使われており、使用される分野によって意味が異なります。人事用語での「プロパー社員」以外にも、学問の分野では「その分野に精通している専門家」を指して「〇〇学プロパー」といった使い方をします。また、各業界でも使われており、ファッション業界ではバーゲンではなく正規価格で販売する商品のことを「プロパー商品」、金融業界では銀行が保証協会を利用せずに融資する方法を「プロパー融資」、信販会社では国際ブランドが直接発行するクレジットカードを「プロパーカード」と呼び、いずれの場合も正規や独自などの意味で使われています。
上記に述べたとおり、プロパー社員にはさまざまな定義がありますが、この言葉が使われる意図は「本来の」といった意味を強調するケースが多いようです。あえて「プロパー社員」という呼び方をする理由は、その企業が働く人の雇用形態や入社歴、所属企業などが多様であるため、区別する場面があることが想定されます。こうした環境の中でプロパーとして働く社員は、いくつかの特徴を持っているケースもあります。一概にはいえませんので、ご注意ください。
社会人の一歩目として育ててもらった環境であること、他の環境を知らずに自社の理念やビジョンを吸収してきたこと、長く勤めることで組織や会社への愛着が生まれていくことなどから、帰属意識が高まるという声もあります。
プロパー社員として自社に属する期間が長いほど、社内での人脈やネットワークが広がります。新卒入社の場合、各部門に同期入社の仲間やお世話になった上司・先輩がいるケースもあり、他部署でも協力を得られやすいといった利点があります。一方で、新卒社員を中心とした人間関係が強固な場合、中途社員が馴染みにくいといったマイナス面もありますので、注意が必要です。
プロパー社員となる新入社員を多く採用する企業で、年功序列制度を導入している場合、年齢や在籍年数によって昇給・昇格していきます。また、在籍年数によって支給額が決まることの多い退職金の面でもメリットがあります。
新卒社員の場合、一つの会社で育っているため、帰属意識の強さがある一方で、会社の従来のやり方以外の方法を受け入れにくく柔軟性に欠ける場合もあります。新しい発想が生まれにくい状態にもつながってしまうため、中途社員や外部の考え方も取り入れながら、視野を広げていく工夫が必要です。
会社への愛着が強いプロパー社員の場合は、会社からの評価を重要視する傾向があります。会社の方針に素直に従うという良い面もありますが、会社が重視しないものについては保守的で新しいチャレンジをしたがらないというような面もあり、狭い価値観で行動する人材になってしまう可能性もあります。
中途社員と区別する目的で「プロパー社員」と表現する場合は、新卒からずっとその企業で勤務している「生え抜きの社員」を指しています。日本企業では、年齢や在籍年数に比例して給与があがる仕組みが根強く残っているところもあり、新卒社員(プロパー社員)と中途社員では、経験スキルとは別の基準で給与や退職金の金額に差が出るケースがあります。
派遣社員、契約社員、アルバイトなど、有期雇用で働く社員と区別して「プロパー社員」と表現する場合は、正規雇用の「正社員」を指しています。この場合は、雇用形態での区別となりますので、新卒採用も中途採用も関係なく正社員全般を指します。雇用形態のほか、仕事内容によって労働条件も異なる場合があり、たとえば派遣社員やアルバイトの場合はボーナスがない、あるいはプロパー社員と比較して福利厚生が劣るなどの場合があります。
協力会社など外部から業務に関わる社員や、関連会社などからの出向社員と区別して「プロパー社員」と表現する場合は、「自社で雇用されたスタッフ」を指しています。この場合のプロパー社員は、新卒社員、中途社員、派遣社員、契約社員、アルバイトなどをすべて含めた自社のスタッフ全般を指します。違いは一概にはいえませんが、業務における重要な決定や指示命令などはプロパー社員が担うことが多いようです。
前段でも説明した通り、日本企業では、年齢や在籍年数に比例して給与があがる仕組みが根強く残っているところもあり、プロパー社員と他社員の間には見えない溝が生じてしまうこともあります。そのような時には会社の礎となるビジョン浸透の徹底からはじめ、コミュニケーションが取りやすい環境整備やチームでの課題解決など交流を増やすことも効果的でしょう。また、公平性を保つためにもプロパー社員と他社員を同じ基準で見ることも重要で、評価基準を今一度見直すことも有効でしょう。
業界や場面によって多くの使われ方をされている言葉で、複数の意味があります。誤解を生んだり、間違った認識を与えてしまったりする可能性があります。また、区別する言葉のため、受け止める側によっては不快に感じるリスクもありますので、社内外でこの言葉を使う際には、予め意味を定義づけしておくといいでしょう。