ハイキャリアコンサルタント
安来 裕爾
1997年新卒で大手通信会社入社。営業、サービス企画、ソリューション推進部門を経験。2001年に大手人材紹介会社に転職。IT領域の転職支援に従事。2006年より現職。IT領域キャリアアドバイザー、再就職支援業務を経て、2011年より、IT領域で求人・ご年収800万円以上の求人・個人担当として、大手・ベンチャーの情報システム部、デジタル・ITサービス企画ポジションをはじめ、コンサル、SI、外資ベンダーなど、累計約300社を担当。約6,000名様の転職相談を担当
求人サイトで面白そうな企業を見つけた。あるいは興味がある企業の採用ページを見てみた。
しかし、自分は求める応募要件を満たしていないため応募を断念した――そんな経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
実際のところ、採用ページや求人票などに書かれている応募要件は必ずしも必須ではないケースも多いものです。「意欲があるなら、そのスキルは入社後に身に付けてくれればいい」と考えている企業は、実は少なくありません。
メーカー系SIerに勤務していたAさん(30代後半)も、企業側が求める経験・スキル要件が一部欠けていながら、意欲の高さで採用を勝ち取った一人です。
Aさんが転職を決意した理由・目的は大きく3つ。
1.顧客の要望に応じてシステム開発を行う立場から、「何をつくるかを自分で考える」立場に移りたい
2.これまではBtoBのシステムを手がけてきたが、BtoCビジネスに移り、自分が手がけたサービスが世の中で活用されているのを実感したい
3.グローバルなビジネスに携わりたい
このご要望にマッチする選択肢として、リクルートエージェントからご提案したのは、グローバル展開にも積極的な大手SPA(製造小売)企業・X社です。
前職ではプロジェクトリーダーも経験し、主体的に考えて行動していたAさん。X社でプロジェクトの推進者になれる素養は備えていると見受けられました。また、BtoCの経験はないものの、大規模システムの経験が活かせます。
すぐに「面白そう」と興味を抱いたAさん。しかし、求人票を見る中で不安が浮かびました。
「求める英語力のレベルに、自分は達していない」
Aさんは学生時代に英語を学んだ経験があり、TOEICスコアは中級レベル。しかし、前の会社では英語を使う機会がなく、独自に英語力のブラッシュアップを続けてきたわけでもなく、X社の求人票で条件とされているTOEICスコアを満たしていなかったのです。
それでもAさんの、「グローバルビジネスに携わりたい」という意志は強いものでした。
SIerに勤務する間、担当した開発案件は国内のものばかりでしたが、顧客企業はいずれも海外に打って出ています。そんな顧客のビジネス展開を眺めながら、「自分もチャレンジしたい」という想いを募らせていたのです。
私たちエージェントは、X社が求人票に記載しているTOEICスコアは「必須」ではなく、それ以上に意欲を重視していることを把握していました。ですから、Aさんの英語力は「入社後に学ぶ」という意欲を示すことでクリアできるはず……と考え、Aさんの背中を押しました。
その予想どおり、X社は「英語力不足」そして「BtoCビジネス未経験」という点をマイナス評価することはありませんでした。それらのハンディキャップは、入社後にキャッチアップしようとする意欲やチャレンジ精神でカバーすることができたのです。
今回のAさんの事例のように、「英語力」に限らず、企業サイトの採用情報や求人票などに記載されている要件は、意外と柔軟なものであるケースは多いものです。
応募条件が「必須」なのか「尚可」なのか。不足している場合、どの程度のレベルであれば許容範囲なのか…私たちは求人企業側から聞いている情報、あるいは過去の採用者の事例などをもとに判断することができます。興味ある企業への「合格可能性」を知りたい場合も、ぜひエージェントの情報を活用していただければと思います。
また応募要件に満たない場合は、それ以外の強みや意欲をしっかりアピールすることが大切です。相手企業がどんなポイントを重視しているかを踏まえ、効果的な面接対策もアドバイスさせていただきます。