細見 真一
コンサルタント
エージェント事業本部 ハイキャリア統括部
関西ハイキャリア・グローバルコンサルティング部
【プロフィール】
大学卒業後、株式会社リクルート入社。企業の採用支援に10年以上携わったのち、2003年に現在のエージェントサービス部門へ異動。キャリアアドバイザーとして200人以上の方の転職を実現。
その後、関西・東京・横浜・埼玉・宇都宮の組織長として勤務。現在は、主にミドル・シニア世代のエンジニアを担当。モノづくりに関わる、機械・電気・生産系の方々を幅広く支援している。
「ミドル・シニア世代の転職は、一昔前よりもチャンスが拡大へ
私は50代を中心に、ミドル・シニア世代の転職をお手伝いしています。主に機械・電気・生産系のエンジニアの方々、一部は管理部門長クラスの方々も担当しています。
50代での転職というと、一昔前は希望通りの転職実現が難しいケースもありました。しかし、昨今は状況が変わっています。
「人生100年時代」を迎え、多くの企業が定年延長へ。中小企業では定年すら設けない。今後、70代の方が現役で働くのが当たり前の時代となれば、50代はまだまだ1チャンスも2チャンスもつかめる世代と言えます。その追い風が、今、吹き始めていると感じています。
実際、大手企業で役職定年を迎えた方が「今後も裁量権を持って働きたい」と希望し、中堅・中小企業のマネジメントポジションに転職して活躍し続けるケースが多く見られます。中堅・中小企業側からも、「大手で培った知見を活かし、組織整備、人材育成をお任せしたい」というニーズが多く寄せられています。
特に、生産管理・品質管理など、モノづくりの現場ではベテランの知見・スキルを求めています。これらのポジションでは、「基本思想」「ISOの知識・経験」などが重宝されるため、業界の枠を越えた転職が可能。実際、総合電機メーカーの生産関連職の方が、機械メーカーの工場長や金属部品メーカーの工場長の相談役などに転職された事例があります。
コロナ禍を機に、海外にあった生産拠点を日本国内に移そうという計画も、あちらこちらで持ち上がっています。コロナで在宅時間が増えたのを背景に業績を伸ばした食品メーカーなども、生産体制強化のための採用に意欲を見せています。
ミドル・シニア世代のエンジニアの皆さんには、今増えつつあるチャンスの可能性を知っていただきたいと思います。
「影響力を発揮したい」「後進を育てたい」-それぞれの自己実現を支援
私は求職者の皆さんの転職を支援する一方、企業の採用支援も行っています。
企業を訪問し、「その企業が描く事業戦略を成し遂げられるのはどんな人材なのか」にフォーカスしてヒアリングを行います。
あるメーカーでは、70代のオーナー経営者から「いずれ息子へ事業を引き継ぎたい。それまでに課題を解決し、基盤を整えておきたい」とお聞きしました。そこで、5~10年スパン、10年~20年スパンで目指す会社の姿を描き、直近の課題となる「生産数アップ・効率アップ」のためにどんな人材が必要かを定義。結果、大手電機メーカーを定年退職された60歳の方をご紹介し、採用に至りました。
私がキャリアコンサルタントをしていて、もっともやりがい・喜びを感じるのは、私を介して入社した方が、その企業に影響を与える活躍をされていると聞いたときです。
ミドル・シニア世代の皆さんから最初にご相談を受けるときは、「早期退職」や「役職定年」、あるいは「所属企業の業績不振や事業撤退・縮小」といった事情を抱え、セカンドキャリアに不安感をお持ちです。
しかし、「何がやりたいのですか」とお聞きしていくと、さまざまな志向や価値観が語られます。
「自分が積み上げてきた経験を活かし続けたい」「生涯、第一線で、裁量権を持って働きたい」「組織作りで影響力を発揮したい」「後進の育成に貢献したい」――私は、単なる「転職」ではなく、そうした「自己実現」をお手伝いしたいと考えています。
転職された方々が、経営者のパートナー的存在となり、事業の発展に貢献されている姿をイメージしながら、企業と求職者様のマッチングに臨んでいます。
チャレンジする覚悟があれば、経験を活かせる場に出会える
転職にはリスクがつきものです。特にミドル・シニア世代の場合、「安定」を求めるなら、現状維持のほうがいいケースが多いと思います。
ミドル・シニア世代で転職に成功している方々を見ていると、「リスクを取ってでも、新たなセカンドキャリアを築く」という意思を持ってチャレンジされていますし、企業側もそうした気概を持った人を歓迎します。
強く印象に残っているのが、Aさん(50代)の事例です。
大手食品メーカーで品質管理を務めていたAさんは、担当部門の不振により退職を決意。当初は、「食品の知見を活かせば、安定している食品メーカーに転職できるのでは」と考えていらっしゃいました。
確かに中堅メーカーの品質管理職に応募する道もありました。本当は何を望んでいるかを知りたいと思い、これまでのご経歴をくわしくお聞きしてみました。
すると、品質管理を担当する前には原材料の研究職を務めておられ、その頃の自分が一番輝いていた…と語られたのです。
そこで、私から選択肢の一つとしてご提案したのは、ある中小食品メーカーの求人案件です。新たに健康食品事業を立ち上げるに際しての、研究開発部長のポジション。事業の先行きは不透明で、転居も伴う転職です。
リスクがあるものの、Aさんはチャレンジを決意しました。安定よりも、もう一度「研究」に携わり、ワクワク感を持って働く道を選んだのです。
ご入社後は、役員会議に参加するまでの待遇を受け、会社の未来を創る新規事業に取り組んでいらっしゃいます。
こうした事例を見てきたからこそ、私はミドル・シニアの求職者の皆さんに問いかけています。
「チャレンジしてみませんか」と。
チャレンジする覚悟を持てば、経験を活かし、生き生きと活躍できる場に出会える可能性がある…それをメッセージとしてお伝えしていきたいと思います。