小紫 佑子
シニアコンサルタント(製薬/DX担当)
エージェント事業本部 ハイキャリア統括部
ハイキャリア・グローバルコンサルティング2部
【プロフィール】
2007年4月大手金融機関の投資銀行部門に入社。2012年4月にリクルートエージェント(現リクルート)へ入社後、一貫して医薬品業界を担当。現在はハイキャリア層の方々を担当しているスカウト部門にて、医薬専門職(臨床開発、MSL/学術、研究開発、品質関連、薬事、マーケティング等)のマッチングを手がけるほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を担うデータサイエンティストなどの採用・転職にも注力する。
医薬品業界では、新しい職種・ポジションのニーズが高まる
医薬品業界担当として、専門職の皆さんの転職をはじめ、近年はDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する製薬企業とIT人材をつなぐお手伝いをしています。
医薬分野では、最近、採用ニーズに新たなトレンドが見られます。厚生労働省との交渉などを手がける「ガバメントアフェアーズ」の役割が、コロナ禍の影響も受け、さらに重要に。積極採用する企業が増えています。また、企業財務に大きく影響する「薬価戦略」の採用強化を図る動きも目立ちます。
こうした職種は経験者が少ないため、異職種からの転身も可能。「ガバメントアフェアーズ」の採用では、HEOR・HTAなど医療経済・政策学に携わってきた方や、交渉・ロビー活動を得意とする方、「薬価戦略」では、開発や薬事の経験者をはじめ、ファイナンスに強い人材やコンサルティングファーム出身者なども採用対象となっています。
「経営」にインパクトを与えるという点でやりがいが感じられ、かつ人材としての市場価値も高められると言えるでしょう。
なお、研究開発職の方が新たなステージを探る場合、「事業開発」という選択肢も出てきました。製薬企業では、バイオベンチャーなどとのアライアンスに注力するため事業開発部門を強化する動きがあります。そこで、研究開発職の「シーズを見極める目」が活かせるのです。
一方、臨床開発の方は、先ほど挙げた「薬価戦略」や「育薬」の分野へのキャリアチェンジのチャンスがあります。
今後は、ゲノム医療の進展に伴う「個別化医療」にも注目したいところです。個々の遺伝子に応じた治療法の開発も徐々に進んでいますので、今後はこの領域の採用も増えていくと予測しています。バイオマーカー探索やコンパニオン診断薬などに携わる方のニーズが高まると思われますので、市場動向にアンテナを張っておくことをお勧めします。
このように、医薬品業界では新たな職種のニーズが高まっています。一方、数年前までニーズが高かった職種でも、市場の変化に伴いニーズが減少している職種も見られます。
これからの時代、1領域だけの専門性を突き詰めていくよりも、複数領域での経験・スキルを得て、それらの掛け合わせによってキャリアを築いていくほうが得策といえます。
皆さんが将来の選択肢を広げられるように、「どの方向で新たな経験を積むか」について一緒に可能性を探っていきたいと考えています。
さらなる社会貢献へ――製薬企業の「DX」推進を支援
私は医薬専門職のキャリア相談にお応えする一方、製薬企業のDX推進もお手伝いしています。近年、大手企業が続々とDXへの取り組みを開始しており、今後さらに活発化していきそうです。
そこで、データサイエンティストやデータベースエンジニアの皆さんともお会いし、「医薬品業界でDXに取り組む魅力」をお伝えしています。例えば、大手電機メーカーでビッグデータ解析部門の立ち上げに携わった方が製薬会社に入社されるなど、「越境」転職をお手伝いする機会が増えています。
製薬業界は膨大なデータを蓄積していますが、その多くは手付かずの状態。創薬シーズ探索、臨床開発における個人情報管理、MR活動など、データを活用できる範囲は多く、活用が進むことで人々の健康や生命への貢献度が高まるでしょう。そんな製薬企業の取り組みの支援にも、現在力を入れています。
実は、私の母は看護師でした。しかし学生時代の私は医療業界に興味を持つことはなく、大手金融機関に就職。
投資銀行部門でがむしゃらに働きました。けれどその職場での成長に限界を感じ、リクルートに転職。当初は企業向けに採用コンサルティングを行う営業職に就きました。
入社時に担当業界の希望を聞かれ、私は「金融以外」と答えました。せっかくチャレンジするために転職したのに、金融業界には人脈があるので、それに甘えてしまうかもしれないと考えたからです。
こうして医薬品業界の担当に。専門職の皆さんと対話する中で、「私たちの薬で患者さんの容態が好転した」などのエピソードをお聴きするうちに、人の命や社会に貢献する仕事の尊さを実感しました。「私の母は素晴らしい仕事をしているんだな」とも。
だからこそ私は、医薬品業界がより社会に貢献するためのチャレンジを支援し、イノベーションを起こせる人材との橋渡し役を務めたいと願っています。
「新たな気付き」と「幅広い選択肢」をご提供したい
私が求職者の方との面談で心がけているのは、新しい気付きを一つでも持ち帰っていただくこと。
ご本人が意識されていないこと、あるいは忘れてしまっていることを掘り起こすために、過去にさかのぼってお話をお聴きしています。「なぜこの学部・領域を選んだのですか」「どんな研究に熱中しましたか」「なぜその会社に就職したのですか」――など。
「原点」に立ち返ることで、「今」にどうつながっているのか、本当にやりたいことができているのか、できていないならどこで実現できるのか、を一緒に考えています。
そして、「こうした方がいい」とは言わないようにしています。ご自身で考えて決断してこそ、転職後に納得感を持って働くことができますし、新しい環境で壁にぶつかっても踏ん張れると思うからです。
私は、ご自身で決断ができるよう、選択肢と情報をなるべく多く提供します。「このキャリアを選ぶと、その先にはこんなキャリアステップがある」など、長期的視点でメリット・デメリットをお伝えしています。ご本人のお考えをお聴きした上で、求人を出していない企業にアプローチしてご紹介することもあります。
「意外な道だけど、面白そう」――そんな可能性に気付いていただき、転職後に活躍されることが、コンサルタントとしての何よりの喜びです。