鶴岡 瑞恵
コンサルタント
エージェント事業本部 ハイキャリア統括部
関西ハイキャリア・グローバルコンサルティング部
【プロフィール】
大学卒業後、都市銀行にて個人顧客向けの資産運用提案を経験。
2018年株式会社リクルートキャリアに入社。
キャリアアドバイザーとして首都圏の求職者の転職支援に携わった後、現在は関西拠点にてハイキャリア専任コンサルタントとして活動。
企業の変革を支える「戦略人事」のニーズが高まる
近年、「人事」に期待される役割が変わってきました。「管理」から「戦略」を担うポジションへ、人事の存在意義が高まっています。
デジタルテクノロジーの進化、さらにはコロナ禍の影響により、歴史ある大手企業といえどもビジネスモデルを大きく転換しなければならない時代。
いかに優れた経営戦略を立てても、「実行するのは人」という意識が高まっています。新たな経営方針に沿う行動をした人が評価される人事制度や優秀な人材を獲得するための報酬制度といった「仕組み」づくり、あるいは戦略を推進できる人材の採用などが、人事に求められています。
これまで大手メーカーなどでは、管理部門の存在感が薄く、製造現場が強い傾向がありました。しかし現在は、そうした企業でも、会社の業績に影響力を及ぼす「戦略人事」を求めており、採用に乗り出している状況。人事経験者の皆さんには、経営陣から期待され、経営にインパクトを与える仕事ができるチャンスが広がっているのです。
そうした社会の変化を察知し、転職を検討する方も増えています。
歴史ある大手企業の人事職の方が、「社会がこんなに変わってきているのに、今の会社でルーティンを回しているだけでいいのか」と疑問を抱き、相談に訪れるケースが増えてきました。
実際、そんな想いで転職活動を始めた大手メーカーの30代の方が、事業変革に取り組む通信や流通などの「戦略人事」の求人で選考に進んでいます。
「変革にチャレンジしたい」という企業と求職者の想いが一致すれば、採用・転職が成立する環境です。
ご本人が気付いていない「やりがい」「価値観」を言語化
私が求職者の皆さんとの面談で強く意識していること。それは、「価値観を言語化する」です。
これは、私自身の転職経験にもとづいています。私の前職はメガバンクの営業職です。待遇は良く、業績もそれなりに挙げられ、大きな不満はありませんでした。けれど、何となく物足りなさを感じていたのです。モヤモヤした気分のまま続けていくより、外にはどんな可能性があるか探ってみよう……と、リクルートエージェントに登録しました。
そこでキャリアアドバイザーと対話したことで、「私はこんなことにやりがいを感じるんだ」「こんな価値観を持っているんだ」と気付いたのです。その結果、「自分に向いている」と実感を持って取り組める今の仕事に出会うことができました。
だから私に相談してくださる皆さんに対しても、ご自身の考えを整理し、本当に大切にしたい価値観に気付けるように、対話の相手になることを心がけています。
30代前半の人事職・Aさんの転職活動をお手伝いしたときのことです。初回面談でAさんが希望したのは、「採用業務で、残業が少ない会社」でした。採用の仕事にやりがいを感じながらも、多忙のあまり疲弊し、「長く勤務していけない」と、転職を決意されたのです。
しかし私は、「これから長いキャリアを歩んでいかれるのに、言われた条件に合う求人を紹介するだけでいいのか?」と思い、Aさんの「やりがい」「価値観」に注目してじっくりお話を伺ってみました。
すると、AさんはもともとITエンジニアであり、自社が事業構造を変えて拡大していく中で、「技術を理解している人間が採用を行う必要がある」と感じ、自ら志望して人事職に転換したことがわかりました。
「Aさんは、自社が変革を図るフェーズで、経営に貢献したいのではないですか」――そう投げかけてみると、「まさにそれだ」と。本来やりたいことを見据え、一段視座が高まり、将来のキャリアも描かれました。
そして、私から複数の選択肢を提示させていただいた結果、DX(デジタルトランスフォーメーション)に力を入れているメーカーに転職。「事業変革への貢献」と「労働時間削減」を同時に叶えたのです。
「価値観に寄り添えた」と実感できた事例の一つです。
先々のキャリアに向けて、どんなルートがあるかをお伝えする
「転職の意思が明確になっていなければ、エージェントに相談するべきではない」とお考えの方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。「転職活動」と「転職」は別物です。転職活動の結果、「現職の良さに気付いたから転職はやめる」という選択をされたとしても、その方が納得できたのであれば「良かった」と思います。
先ほど、私自身が転職活動をした際、「自分のやりがい」に気付いた……というお話をしました。
それは、「将来の見通しに対し、道筋をアドバイスする」こと。銀行勤務時代、私は投資信託や保険の販売をしていました。形がない商品であり、ご本人は先々のメリットを自身でイメージしづらい。そんな商品を扱う中で、その人の人生にとって最適なプランを考えることにやりがいを感じていたのです。
「キャリア」もまた、形がなく、長期にわたるものです。ご本人が気づいていないキャリアの強みをどう活かせば、次のキャリアを展開していけるのか。このルートを歩んでいけばどんなキャリアにたどり着くのか。こちらのルートを選んだ場合はどうか……そんな気付きや選択肢を提案できるのが、転職エージェントとしてのやりがいだと感じています。
「地図をお渡しする」。そんな気持ちで伴走してまいります。