転職活動を始めようと思ったとき、さまざまな手段があります。転職活動を支援するサービスの代表格である「転職エージェント」と「ハローワーク」について、「併用した方がいいのか」「どちらを使えばいいか」と迷う人もいるようです。転職エージェントとハローワークの違い、それぞれの利用方法、併用のポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職エージェントとハローワークとは
民間の人材サービス企業である転職エージェントと公共機関であるハローワークについて、まずはそれぞれの特徴・仕組みを理解しておきましょう。
転職エージェントとは
「転職エージェント」とは、転職を検討している求職者と人材を採用したい企業の間に立ち、両者をマッチングするサービスを指します。
企業が転職エージェントから紹介を受けた人を採用すると、企業から転職エージェントに成果報酬を支払う仕組みとなっており、求職者側は転職エージェントのサービスを基本的に無料で利用することができます。
ハローワークとは
「ハローワーク(=公共職業安定所)」は、国(厚生労働省)が運営する総合的雇用サービス機関として、仕事を探している人や人材を採用したい企業に対してさまざまなサービスを無償提供しています。
全国に500カ所以上の拠点を展開しており、「子育て中の人向け」「就職氷河期世代向け」「おおむね35歳未満」「シニア世代向け」「地方へのUIJターン」など、多様な専門窓口が用意されています。
また、ハローワークでは「基本手当(失業給付)の手続き」や「職業訓練(ハロートレーニング)」も手がけています。会社を退職し、基本手当(失業給付)を受けながら転職活動を行う場合は、ハローワークに来所する必要があります。
転職エージェントとハローワークの違い
転職エージェントとハローワークの違いについて、さまざまな角度からご紹介します。
取り扱う求人の内容
転職エージェントの場合、企業は採用成立時に成果報酬を支払うため、人材採用に積極的な企業に多く活用されています。大手企業の求人や、経営幹部などハイキャリア層の求人も多数あります。一般公募されていない「非公開求人」も多く取り扱っています。
また、「専門型エージェント」の場合は、特定の業界・職種・分野などに特化した求人のみを取り扱っています。
ハローワークの場合、企業は無料で求人を出すことができます。そのため幅広い業種・規模の企業の、多様な職種の求人があります。
求人情報の詳しさ
ハローワークの求人情報を閲覧すると、求人区分(フルタイム/パートタイム)・仕事内容・雇用形態・就業場所・試用期間・賃金・賃金形態・通勤手当・昇給/賞与・就業時間・休日・加入保険・事業内容・育児休業取得実績などを確認することができます。
詳しく知りたいことがあれば、相談員から情報を得たり、相談員から企業に問い合わせてもらったりすることも可能です。
転職エージェントの場合、上記の基本情報に加え、企業から採用の背景・求める人材像・期待する役割・職場環境・風土・カルチャーなどについてヒアリングを行っています。求職者はそうした情報を得ることで、応募するかどうかの判断や面接対策に役立てることができるでしょう。
求人の探し方・応募
転職エージェントの場合、転職先に求める条件を担当キャリアアドバイザーに伝えることで、マッチする求人案件の紹介を受けられます。応募を決意したら転職エージェントを介して応募します。
また、転職エージェントのサイトに記載されている求人情報を閲覧し、応募したい企業があれば担当キャリアアドバイザーに相談したうえで、転職エージェント経由で応募することも可能です。
ハローワークの場合は、ハローワーク内に設置されているPCで求人情報を閲覧し、応募したい求人が見つかったら、窓口で申し込み手続きを行います。職員から応募企業へ連絡し、書類選考を経て面接日が決定したら「紹介状」を受け取り、面接に臨みます。
また、自宅のPCで「ハローワークインターネットサービス」にアクセスし、求人情報を検索することも可能です。「オンライン自主応募」の受付が可となっている求人については、アカウント登録を行えば、求職者マイページから直接応募することができます。
転職サポートの内容
転職エージェントは、業界ごとの採用動向や転職事例に精通した専門のキャリアアドバイザーが担当につき、転職活動全般のサポートを受けられるでしょう。面談で求職者の経験・スキルや希望条件を確認し、まず転職の方向性を明確にします。迷っている求職者に対しては「キャリアの棚卸し」を手伝うこともあります。
転職の方向性が決まったら、マッチする求人を紹介し、面接の日程調整など企業とのやりとりをサポートします。応募書類の作成方法や面接対策、在籍企業への退職交渉のアドバイスなど、転職活動を進めるにあたっての不明点や悩みについて相談に対応します。
ハローワークでは、履歴書など応募書類の作り方、面接の受け方などについて、職員が個別相談に応じてアドバイスします。面接対策・応募書類の作成方法・仕事探しのヒント・ビジネスマナー・業界研究など、多様なテーマでのセミナーも無料で実施しています。
再就職に必要な知識や技能を身に付けたい人に対しては、職業訓練(ハロートレーニング)への受講のあっせんを行っています。
利用可能な日時
ハローワークの利用可能時間(開庁時間)は、原則8:30~17:15(平日)です。職業相談サービスについて、一部の施設では平日夜間や土曜日の利用も可能です。
転職エージェントの利用可能日時は、企業によって異なります。平日夜間や土日祝日にも相談に対応してもらえるケースもあります。オンラインや電話での面談も可能であるため、仕事の休憩時間などを活用して相談することもできます。
転職エージェント | ハローワーク | |
取り扱う求人の内容 | 大手企業の求人、ハイキャリア層の求人など、非公開求人が多数 | 幅広い業種・規模の企業の多様な職種の求人 |
求人情報の詳しさ | 採用の背景・求める人材像・期待する役割・職場環境・風土・カルチャーなどの情報を提供することも | 募集条件の基本情報をもとに、職員が補足情報を提供 |
求人の探し方・応募 | 転職エージェントに希望条件を伝え、求人の紹介を受ける。サイトで求人情報の閲覧も可能。転職エージェントを通じて応募 | ハローワーク設置のPCあるいはインターネットサービスで求人を検索し、職員を通じて応募 |
転職サポートの内容 | キャリアの棚卸し、企業とのやりとりのサポート、書類作成・面接対策へのアドバイスなど、転職活動全般をサポート | 書類作成・面接対策へのアドバイス、セミナー開催、職業訓練(ハロートレーニング)への受講のあっせんなど |
利用可能な日時 | 企業により異なる。平日夜間・土日祝日に面談に対応するケースもあり | 原則8:30~17:15(平日)。 一部の施設では平日夜間や土曜日の利用も可能 |
転職エージェントとハローワークの利用方法
転職エージェントとハローワークの利用方法について、一般的な流れをご紹介します。
転職エージェントを利用する流れ
転職エージェントの利用の流れは企業によっても異なりますが、多くの場合、次のステップを踏んで進みます。
転職支援サービスへ申し込み
↓
担当キャリアアドバイザー・コンサルタントと面談を行い、転職の方向性を共有
↓
求人を紹介してもらう。応募を決意したら、転職エージェントを介して応募
↓
書類選考/面接。キャリアアドバイザーより書類作成・面接対策のアドバイスを受ける
↓
内定/意思決定
↓
在職中の場合は退職の交渉をし、退職が確定したら引継ぎをする
↓
入社
ハローワークを利用する流れ
ハローワークに出向いて求職申し込み手続きを行う場合の流れは以下のとおりです。
ハローワークに出向き、PCで求職情報を入力、もしくは求職申込書に記入
↓
相談窓口で求職申込み手続き・職業相談を行う。
希望があれば、ハローワークインターネットサービスで求職者マイページを開設
↓
求人情報を閲覧し、応募したい企業があれば窓口に伝える
※求人によってはハローワークインターネットサービスからの直接応募も可能
↓
書類選考/面接。職員より書類作成法・面接対策のアドバイスを受ける
↓
内定/意思決定
↓
入社
転職エージェントとハローワーク併用のポイント
転職エージェントとハローワークをうまく併用するためのポイントをご紹介します。
スケジュール管理をしっかり行う
転職エージェントとハローワークを併用する場合、進捗管理システムが異なるため、自身でスケジュールを管理しておく必要があります。
特に働きながら転職活動する場合は、選考が進んで面接が重なるようになると、仕事を調整したり有給休暇を活用したりして面接時間を捻出しなければなりません。
なお、転職活動期間の目安は、事前準備から転職先企業への入社まで3カ月間程度かかるのが一般的です。あらかじめスケジュールを確認し、応募に必要な書類の作成や面接の時間を確保できるようにしておきましょう。
併用することを伝えておく
転職エージェントのキャリアアドバイザーもハローワークの職員も、求職者の状況や希望条件をヒアリングして、サポートやアドバイスを行います。
そのため、併用していることを伝えておいた方が、転職活動の状況が分かるため、的確なアドバイスを受けることができるでしょう。
転職エージェントは転職をサポートしてくれる
転職エージェントによっては、質問に答えるだけで簡単に職務経歴書が作成できるツールや、スマートフォンで手軽にキャリアアドバイザーに連絡できるチャットツールなど、転職活動を効率的に進めることができる便利なサービスを提供しています。
オンライン面談に対応している転職エージェントであれば、申し込みからサービス開始まで足を運ぶことなく利用できる点もメリットといえるでしょう。
※ハローワークについての最新情報などは、ハローワーク(厚生労働省)のサイトをご確認ください。
ハローワーク(厚生労働省)
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。