転職活動をするにあたり、すでに何度も転職を繰り返している方は「選考でマイナスイメージを持たれるのではないか」と不安を抱くようです。面接で「転職回数が多い理由」をどう伝えるかについて、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
面接で「転職回数が多い理由」を聞かれた時の回答例
企業側は、転職回数が多い人に対して、「飽きっぽいのでは」「忍耐力がないのでは」といった懸念を抱くケースが多いようです。
そうしたネガティブなイメージを払しょくし、「入社したら活躍してくれそう」と期待を持ってもらうためには、転職回数が多い理由を聞かれたとき、次のようなポイントを意識して回答しましょう。自身の状況に合わせ、複数を組み合わせて伝えてください。
ポイント1:「前向きな理由があった」ことを伝える
目的意識を持って転職し、ステップアップしてきたのであれば、プラスの評価を得られることもあります。「○○の経験を積みたかった」「○○のスキルを磨きたかった」「○○にチャレンジしたくなった」など、向上心からの転職であったことを伝えましょう。
【回答例】アパレル販売
「アパレル販売スタッフとして、様々なブランドを経験したいと考え、複数のアパレルメーカーに勤務しました。ECサイトの運営を担当したことで、EC分野で専門知識を磨きたいと考え、IT企業へ転職。さらにECサイト構築だけでなく、販売戦略の策定やブランディングも担えるようになりたいと考え、直近の企業に転職しました」
ポイント2:「一貫した軸があった」ことを伝える
勤務してきた企業の業種・職種が多岐に渡ると、「飽きっぽい人なのかもしれない」と思われる可能性があります。しかし、一貫してこだわった「軸」があれば、それを伝えましょう。仕事において「大切にしていること」が応募企業にマッチしていれば、プラスに評価される可能性があります。
【回答例1】営業職
「営業の仕事が好きで、営業スキルを高めたくて様々な商材を経験してきました。それにより、お客様のニーズを引き出す力、提案力を磨けたと思います」
【回答例2】業種・職種が多岐に渡る場合
「経験してきた業種・職種はバラバラですが、『困っている人を助け、問題を解決する』仕事にこだわって選んできました。御社の○○サービスも、まさに困っている人に喜ばれるものだと確信し、志望いたしました」
ポイント3:目的がなかった場合、正直に伝える
前向きな目的やこだわりがあったわけではなく、何となく転職を繰り返してきた場合、無理に取り繕おうとすると見透かされる可能性があります。正直に話した上で、客観的に自己を振り返っての分析も添えるといいでしょう。
【回答例】目的やこだわりがとくになかった場合
「今振り返ると、応募先企業の研究や自分のキャリアを深く考えるといったことをしきれず、転職を繰り返してきてしまったのではないかと反省しております。しかし、それではいけないと気付き、今回の転職活動には、やりたいこと・目指したいことをじっくり考えた上で臨んでいます」
ポイント4:転職理由となった不満を、ポジティブに言い換える
転職理由が「不満」だった場合、そのまま伝えると「嫌なことがあるとすぐに逃げ出す人なのだろうか」という印象を与える恐れがあります。転職を決めたきっかけが不満であったとしても、次の転職先を探しているときには希望や期待を持っていたはず。転職の目的をポジティブに言い換えましょう。
【回答例1】仕事が単調でつまらなかった場合
「新しいアイデアをどんどん試せるような風土の企業で働きたいと考えました」
【回答例2】商品が売れずモチベーションが落ちた場合
「より自信を持って顧客に提案できる商品を扱いたいと思いました」
キャリアコンサルタントが明かす、転職回数が多くても採用されるコツ
転職回数が多くても採用されている事例は数多くあります。転職成功率を高めるためのポイントをお伝えします。
転職回数を気にしない業界・企業を選ぶ
転職回数の多さを気にするかどうかは、業界・企業によって異なります。人材流動が比較的多い業界(IT・飲食・不動産など)や外資系企業などでは、それほど気にされないケースも多いようです。また、転職を重ねた経験を持つ経営陣が率いるベンチャー企業などでも、マイナスと捉えられない傾向が見られます。
中小・ベンチャー企業などでは、1人が複数業務を兼務することも多いため、複数企業で幅広いスキルを身に付けた人がむしろ歓迎されるケースもあります。
職務経歴書の書き方を工夫する
転職回数が多い人は、職務経歴書の記載量が多くなるため、「強み」が伝わりづらくなることがあります。そこで、書き方を工夫することをおすすめします。
一般的な職務経歴書では、時系列で古いものから、あるいは直近のものから、所属企業・所属部門・担当職務内容を並べて記しますが、転職回数が多い場合、「キャリア式」を用いるのも有効です。
これは、経験内容を「職務分野」別にまとめる書き方。冒頭で、応募先企業に関連する業種・職種の経験内容を厚めに記載し、それ以外の職務経歴は後半に簡潔にまとめます。この方法であれば、応募先企業は「自社で活かせそうな経験・スキル」に注目しやすくなります。
転職経験を通じて得たスキルをアピールする
転職を繰り返し、複数の企業を経験したからこそ学んだこと、身に付いたこともあると思います。それが応募先企業で活かせることをアピールしましょう。
例えば、「複数の企業を経験してきたので、様々な仕組みや手法を学ぶことができました。それぞれの企業の優れた部分を取り入れ、御社の業務改善に貢献したいと思います」といったように伝えます。
なお、転職回数が多くても、その中に長く勤務した業界・企業があり、その経験が応募先企業で活かせるのであれば、その部分を中心にアピールするといいでしょう。
転職回数が多くても転職を成功させた実例
転職回数が多くても、高い評価を得て採用された事例をご紹介します。
<実例>7回の転職で得た幅広い経験がプラス評価されたAさん
Aさん(30代後半)は、7回の転職を経験。「IT業界」は一貫しており、SE・プリセールス・プロジェクトマネジャーなど複数の職種・ポジション、また大手企業とベンチャー企業の両方を経験しました。
2年スパンでの転職でしたが、その都度、最新トレンドをキャッチアップ。知識と経験の幅広さが評価され、直近の転職では新規事業部門の立ち上げ責任者を任されました。
<実例>実力が評価され、外資系企業に採用されたBさん
Bさん(30代半ば)の転職回数は4回。広告代理店、ネット企業、マーケティング支援企業などを渡り歩いてきました。業種は異なりますが、いずれの企業でも高い営業力を発揮して実績を挙げています。
また、最近ではマーケティングの知見も身に付けていました。さらに人脈構築力、新規開拓の自走力が評価され、直近では外資系企業に迎えられました。
企業が「転職回数が多い理由」を聞く意図
「なぜ転職を繰り返してきたのですか」──企業が応募者にそう尋ねるのは、上記でも挙げた「飽きっぽいのではないか」「忍耐力に欠けているのではないか」「対人コミュニケーションや人間関係がうまくないのだろうか」などの懸念点について確認する意図があります。また、「自社で採用しても、またすぐに辞めてしまうのではないか」と考えるため、応募者の受け答えから、「自社で長く活躍してくれそうか」を探ろうとしているのです。
相手企業を安心させ、入社後に活躍できるイメージを持ってもらうためにも、ここでご紹介したポイントを踏まえて面接対策をしてください。
「環境変化に適応してきた」人が評価される時代
転職回数が多いことを後ろめたく感じる方も多いのですが、様々な企業や仕事を経験してきたからこそ、学べていることも多いと思います。
近年は、ビジネス環境の変化のスピードが速いため、1つの会社で同じ仕事を長く経験してきた人よりも、異動や転職によって「環境変化に適応してきた」人を評価する企業も多く見られます。
経験から何を身に付けたか、それを今後どう活かしていきたいのかを整理・言語化して、面接でアピールするといいでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。