面接選考では、「何か質問はありますか?」と逆質問の時間が設けられることがあります。
逆質問の場では、疑問や不安に思っていることを質問できるだけではありません。逆質問の機会を上手に活用すれば、入社意欲をアピールすることもできるでしょう。
そこで、本記事では逆質問を聞かれる目的や逆質問における注意したいポイント、逆質問例などを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に解説いただきました。
目次
面接で逆質問を聞かれる本当の理由
実際に現場を見てきた著者の経験から、面接で逆質問を聞かれる理由は大きく次の4パターンに分類されます。
- 求職者のことを深く知るため
- 求職者に自社の志望度を高めてもらうため
- 採否に迷っているため
- 定型的な質問として聞いている
【パターン1】求職者のことを深く知るため
面接の場で逆質問が行われる理由の1つとして、求職者のことをより深く知りたいという思いから質問するケースが挙げられます。
逆質問を行うことで、人事担当者からの質問だけでは測れない人柄や価値観、仕事への姿勢を垣間見られることがあります。
またどのような不安を持っているのか、選考に意欲的なのか、など入社に向けた不安や積極性を見極める材料にしているケースもあるでしょう。
人事担当者が逆質問を通じて知りたいと思っている具体的な項目は、次の通りです。
知りたい項目1:自社への志望度
積極的に逆質問を行う応募者の場合、入社意欲の高さを感じるでしょう。
また逆質問の内容が深く、企業研究をしっかり行った上で質問している場合、人事担当者は応募者に対して「志望度が高い」可能性が考えられます。
反対に、全く逆質問がない応募者やホームページをチェックすればすぐ分かるような質問を実施する応募者に対して、人事担当者は、意欲が低い可能性があると判断する場合もあるでしょう。
知りたい項目2:コミュニケーション能力
逆質問では、聞きたい内容を適切に言語化できる能力を測られるケースもあります。
自身の不安や疑問を言語化し、解消する回答を得られるような質問ができている応募者に対して、人事担当者は、コミュニケーション能力を高く評価することでしょう。
知りたい項目3:入社に向けた不安材料
逆質問は、応募者が抱える不安材料を可視化することにも役立つでしょう。
例えば給与に関する逆質問をする応募者に対しては、「内定を出してもより待遇の良い企業の内定を承諾するかもしれない」と考えるかもしれません。
また入社後の配属に関して逆質問する応募者に対しては、「内定時の配属確約が必要かもしれない」といった印象を受ける可能性も考えられます。
入社に向けた不安材料を知ることができれば、選考時に不安払しょくに努めようとする人事担当者もいるでしょう。
【パターン2】求職者に自社の志望度を高めてもらうため
企業の採用担当者は、逆質問を通じて求職者がこれまで知らなかった自社の魅力に気付いてもらえる可能性を期待しているケースもあるでしょう。求職者が新たな魅力を知ることで、志望度の向上につながる場合もあるかもしれません。
志望度向上のために、逆質問が行われる背景
特に何としてでも採用したいと思うような求職者に対しては、どのような情報でも提供したいという心理が働く可能性もあるでしょう。
そのため優秀な人材やターゲットに近い人材に対しては、「自社の優先順位を上げてほしい」という思いから、逆質問を通じて情報提供を行う・マッチ度を図るケースも珍しくありません。
面接担当者が志望度を上げて欲しいと思っている時の具体例
企業が自社の志望度を上げて欲しいと思っている時の状況について、一例を紹介します。
- 応募者が自社の製品やサービスについて熱心に質問し、取り扱い製品やサービス、自社に対しての理解が深まった時
- 応募者が自身のキャリア目標や成長意欲について具体的に語り、それが自社のビジョンや成長戦略と合致している時
- 応募者が自身の強みや付加価値を明確に示し、それが自社にとって有益であることを示せた時
これらは全て共通して、面接担当者・応募者共に「マッチ度の高さ」を感じることのできた時となります。
特に相互理解が進み、お互いのモチベーションが高まるような時、面接担当者にも一緒に働くイメージが醸成されます。そのような時、以降の選考でも通過して欲しいという思いから逆質問を実施する場合が考えられます。
【パターン3】採否に迷っているため
応募者の採否に迷っている場合、逆質問の受け答えを採否の判断基準にするケースもあるでしょう。
どのような観点で採否に迷っているか具体的な項目について、一例を紹介します。
自社の理解度が足りていない
経験や人柄については申し分ないものの、今一つ自社についての理解度が浅いと感じる応募者には、面接担当者は採否の決定を迷う場合が考えられます。
逆質問を通じて応募者の理解度を高めることができたと分かれば、次のステップに進んで欲しいと考えるかもしれません。
また逆質問の場を提供することで、自社への理解度を図るケースも見られます。逆質問を通じてあまりにも企業研究に欠けると判断された場合、合格を見送られる可能性もあるでしょう。
何かもう1つ合格基準を満たせるようなアピールポイントが欲しい
逆質問を通じてプラスアルファのアピールポイントを求める場合もあるでしょう。
また同じ選考プロセスにいる他の応募者とどちらを合格にするか迷っている場合も、もう1つ合格の決め手となるアピールポイントが欲しいという思いから逆質問を実施することも考えられます。
【パターン4】定型的な質問として聞いている
「定型的な質問として聞いているだけ」というケースもあるでしょう。
しかし定型的な質問として聞いているだけなのか、明確な意図を持って逆質問を行っているのかは、なかなか判断が付かないかもしれません。
自己アピールや不安払しょくのために、ぜひ積極的に逆質問してみましょう。
面接の逆質問における注意したいポイント
逆質問は何でも質問して良いというわけではありません。特に次に紹介する3つの逆質問は避けるようにしましょう。
- 準備不足が感じられる逆質問
- 自信がなさそうと捉えられる逆質問
- 仕事への意欲が感じられない逆質問
準備不足が感じられる逆質問
ホームページや求人情報を見るとすぐに分かるような、準備不足が感じられる逆質問は控えましょう。
【注意したい例】
- 御社の企業理念を教えてください。
- どのような商品・商材を取り扱っていますか?
- 主要取引先にはどのような企業がありますか?
- 今回募集するポジションは○○ですか?
- 勤務地は○○ですか?
自信がなさそうと捉えられる逆質問
自信がなさそうと捉えられる逆質問も、選考の結果に影響を及ぼしてしまう懸念があるでしょう。
言い回しによっては自信がないと捉えられるともあるため、質問の仕方にも注意しましょう。
【注意したい例と言い回し例】
- 先輩・上司から指導してもらえる環境はありますか?
⇒できるだけ早く環境や仕事に慣れたいと思っています。先輩・上司からアドバイスを仰いだり、テクニックや技術を学べたりする環境はありますか?
- ノルマが達成できなかった場合の処遇を教えてください。
⇒営業ノルマの達成に向けて勉強や研修機会はありますか?またノルマが達成できなかった場合、営業職の皆さまはどのように自己研磨に励んでいますか?
仕事への意欲が低いと捉えられる可能性のある逆質問
給料や福利厚生などの逆質問に偏ってしまうと、仕事への意欲が低いと捉えられてしまう場合があります。
自分の望む働き方に沿う職場を探す上では参考になるかもしれませんが、給料や福利厚生面ばかり深堀し過ぎることのないように気を付けましょう。
逆質問はしっかりと企業研究を行い、入社するかを見極めるために気になる点を聞くことが肝になります。無理やり質問をするような行為は控えるのはもちろん、自己アピールにつながる質問内容や質問方法を意識しましょう。
【参考記事】
面接の定番な逆質問例3選
どうしても面接対策の時間が取れなかった人に向けて、ここでは、押さえておきたい定番な逆質問例を3つ紹介します。
- 「求人には『○○業務をお任せしたい』と記載がありましたが、具体的にどのレベルを期待していますか?」
- 「御社が求める1年後のあるべき姿と、3年後・10年後にえがけるキャリアパスを教えてください。」
- 「入社に備え多くの準備をしておきたいと思います。今からでも勉強をしておくことがあれば教えていただけますか?」
入社意欲や熱意の高さをアピールする逆質問例
ここでは入社意欲や熱意の高さをアピールする、逆質問例とポイントをご紹介します。
逆質問例
- ○○サービスを担当するとご説明いただいたのですが、他のサービスに関わる機会はありますか?
- チームで日常的に使用されている業務ツールを教えていただけますか?
- 入社後は、しばらく営業同行をしていただけると聞きました。何日くらいで営業として独り立ちするのでしょうか?
- 15~30分程度で構いませんので、同じチームで働く先輩にお話をお伺いする面談の機会をいただくことはできませんか?
入社意欲や熱意の高さを伝えるポイント
志望企業の商品や仕事内容などに、強い興味・関心を持っていることをアピールする逆質問です。この逆質問は、現場責任者が面接を担当している時に聞くといいでしょう。「自分がその会社で働くとしたら」「このようなことにチャレンジしたい」など、入社後のイメージに結びつけて考えていることも伝えれば、評価につながりやすくなるでしょう。
自分の強みをアピールする逆質問例
続いて自分の強みをアピールする、逆質問例とポイントをご紹介します。
逆質問例
- 職務経歴書には細かく記載していませんでしたが、○○の経験があります。先ほどのお話では、御社の顧客イベントで経験を活かせそうですが、将来的にお任せいただける可能性はありますか?
- 学生時代に語学留学の経験があり、現在も英会話教室に通っています。中長期計画では海外展開も視野に入れているとのことでしたが、具体的にどのような事業計画を策定されているのでしょうか?
自分の強みを伝えるポイント
自分の強みをシンプルに伝えた上で、応募企業の仕事や組織、事業において「どのように活かせるのか」「どういった場面で活躍できるのか」を確認することで、アピールにつなげることができるでしょう。
この質問は、人事または現場責任者が面接を担当している時に聞くといいでしょう。
その際、仕事の進め方や事業展開の方向性などを調べていることも伝えれば、「企業研究をきちんとしている」という評価につながりやすいでしょう。応募企業の働き方や事業内容、組織体制などを想定し、自分の強みと重なりそうな場面について詳しく深堀りをすることがポイントです。
興味関心や共感をアピールする逆質問例
興味関心や共感をアピールする、逆質問例とポイントをご紹介します。
逆質問例
- 御社には「○○○」という行動指針があります。これを体現している従業員のエピソードを教えてください。
- テレワークが中心とのことですが、コミュニケーションを図る機会はありますか?
- 御社の「○○○」という理念に共感しています。今後、○○分野を伸ばす計画はありますか?
- 御社はフラットな組織風土が魅力ですが、他部門との関わりはどの程度ありますか?
- 若手社員に求める姿勢や気構えとして、「どうあってほしい」という思いはありますか?
興味関心や共感を伝えるポイント
応募企業の文化や理念、働き方、制度などに合致した資質を伝えることで「企業文化とマッチする人材であること」「企業が求める人材像に重なる人材であること」をアピールできることもあるでしょう。ぜひ、人事担当者もしくは役員クラスが面接を担当している時に質問してみてください。
面接の場で避けたい逆質問・注意したいこと
最後に、面接の場で控えたい逆質問・注意したいことを紹介します。
- 特にありません
- 調べたらすぐに分かること
- すでに面接担当者が説明したこと
- 待遇や福利厚生の質問に偏る
- 漠然・抽象的な質問
- 面接時間への配慮が足りない
緊張から無意識に上記質問・行為をすることがないよう、留意しましょう。
特にありません
「特にありません」という回答は、「志望度が低い」「自社に興味がない」と捉える面接担当者もいます。
逆質問から話題が広がり思わぬアピールや企業理解が深まり、双方納得感のある面接になることも珍しくありません。
どのようなシーンでも活用できる定番の逆質問を最低1つは用意しておくと安心でしょう。
調べたらすぐに分かること
求人や企業の採用ページに掲載されている情報など、調べたらすぐに分かることを質問するのも避けましょう。「企業研究をしていない」「志望度が低い」といった判断をされる可能性があります。
すでに面接担当者が説明したこと
面接ですでに説明されていることを繰り返して聞くと、「話をきちんと聞いていない」とみなされる可能性があります。
特に複数社の面接を平行して受けている場合、どの企業でどのような説明をされたのか分からなくなってしまうことも珍しくありません。失礼な逆質問を避けるためにも、面接でのやり取りは後日メモをしておくと安心でしょう。
待遇や福利厚生の質問に偏る
待遇や福利厚生の質問に偏る聞き方は、避けたほうが無難です。
「条件面のみに興味がある」と判断され、仕事とのミスマッチを懸念される場合もあります。待遇や福利厚生についていくつか質問したい場合は、業務に関する逆質問も絡めるようにしましょう。
漠然・抽象的な質問
「御社の将来性を教えてください」「どのような人が働いていますか?」など、漠然とした質問も避けましょう。場合によっては「企業研究をしていない」「仕事やキャリアなどに対する明確な考え方を持っていない」と判断される可能性があります。
質問の意図をきちんと説明し、具体的に何を知りたいのかまで伝えることが大事です。
面接時間への配慮が足りない
面接時間を過ぎないよう配慮も必要です。質問は2〜3点を目安とし、残り時間に応じて切り上げるようにしましょう。
どうしても時間が足りない時は、次のような方法も一案です。
「恐れ入りますが、他にも2点聞きたいことがあります。後ほどメールで質問してもよろしいでしょうか?」など、状況に応じて質問方法をメールに切り替えることで、配慮ある人物と捉えてもらえる可能性があります。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年10月02日
記事更新日:2024年11月30日 リクルートエージェント編集部