面接では志望動機を必ず聞かれますが、「何を伝えることが大切なのか」「履歴書と同じ内容でいいのか」と悩んでしまう人もいるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が、面接で志望動機を聞かれた際に伝えたいことのポイントや答え方のコツなどを解説します。答え方の例文集やシチュエーション別の例文も紹介します。
面接担当者が志望動機を聞く理由
面接担当者は志望動機を通じて「自社にマッチしているか」「長く働き、活躍し続けられそうな人材か」を見ています。そのため、「自社でなくてはならない理由が知りたい」と考えているでしょう。また、入社意欲の高さや熱意、企業研究をきちんとしているかなども確認し、ミスマッチにならないかどうかを判断しています。
志望動機では何を伝えればいい?
志望動機を聞かれた際には「その会社を志望する理由」を簡潔に伝えましょう。以降で具体的に何を伝えればいいかを解説していきます。
志望動機を答える際に大切なこととは?
具体的には「①なぜこの会社を選んだのか」「②入社してどのようなことを実現したいのか」「③入社後、どのような活躍・貢献ができるのか」を伝えることが大切です。
この会社を選んだ理由を端的に伝えた上で、仕事内容や今後のキャリア、働き方など、転職によって実現したいことや、「なぜこの会社ならそれを実現できると考えたのか」という根拠まで伝えましょう。ほかの会社ではなく、その会社を選んだ根拠や魅力について説得力を持って伝えることがポイントです。さらに、入社後に自分の強みをどう発揮できるのか、活躍・貢献のイメージや意気込みを伝えて締めくくると良いでしょう。
複数の企業に応募する場合でも、使い回しの志望動機を回答するのではなく、「なぜその会社で働きたいと考えたのか。その背景・根拠として、どのような点に魅力を感じたのか」を具体的に伝え、説得力を高めることが大切です。
履歴書と同じことを言ってもいい?
面接は、履歴書や職務経歴書などの応募書類に書かれた内容をベースに進めます。履歴書に書いた内容と違うことを話せば、面接担当者から「一貫性がない」と判断される可能性があるでしょう。
履歴書に書ききれなかった志望動機を面接で伝える場合でも、まずは履歴書に書いた内容から伝えることが大事です。ただし、面接では、より深掘りする質問をされるので、履歴書に書いた内容だけでなく、そこに関連するエピソードなどもしっかり振り返っておくことが大事です。
志望動機と自己PRの違いは?
自己PRでは「自分の強み」を伝えます。これまでの自分の経験・スキルを応募企業でどう活かし、どのような強みを発揮して活躍・貢献できるのかを伝えることがポイントです。
一方、志望動機は「応募企業を志望した理由」を伝えるものです。その企業のどのような部分に魅力を感じ、入社後にどのようなことを実現したい(もしくは、実現できる)と考えたのかを伝えることが中心です。混同せず、簡潔に回答できるように準備しましょう。
ただし、志望動機で伝える要素の一つ、「強みを活かして貢献できること」という部分では自己PRの内容と重なるので、一貫性を持たせることも大事です。
志望動機の答え方のコツ
面接での志望動機の答え方のコツを紹介します。
冒頭で「結論」を伝える
志望動機の言い始めとなる冒頭では「結論=その会社を志望した理由」を簡潔に伝えましょう。面接担当者が把握・理解しやすいように「○○に携わりたいと考えて志望した」「〇〇を実現できると考えて志望した」など、最初に結論を伝えることがポイントです。そこから背景・根拠となる「その会社の魅力」の説明やエピソードにつなげていくと良いでしょう。
背景・根拠として「その会社選んだ理由・その会社ならではの魅力」を伝える
他社ではなく、「その会社を選んだ背景・根拠」を具体的に伝えることが大事です。企業理念や事業内容、商品・サービスなどについて、魅力を感じたり、共感したりしたことについて具体的に話しましょう。
「なぜ他社ではなく、その会社を志望しているのか」について、説得力を持って話すことができれば、企業研究をしっかりと行っていることが伝わり、志望度の高さやマッチしている人材であることをアピールできます。その際、数字やキーワードなども交えたエピソードも合わせて伝えることで、より説得力を増すことができるでしょう。
「入社後、貢献できること」で締めくくる
志望動機の締めくくりでは、入社後にどのような強みを活かして、どういった領域で貢献できるのかを伝え、活躍する姿をイメージしてもらいましょう。自己PRで話す強みと一貫性を持たせる内容とすることがポイントです。締めくくりでは、入社への意気込みや熱意の高さもアピールすると良いでしょう。
また、転職理由を聞かれた際には、今後に目指したいキャリアや達成したい目標など、入社後に実現したいことを回答しますが、こちらとの一貫性も意識することで、「早期離職せず、長く活躍し続けられる人材」であることをアピールできます。
話す長さは1〜2分程度にする
志望動機を話す長さは「1〜2分程度」が適切だと考えましょう。長すぎる志望動機は面接担当者に伝わりにくく、途中で興味を失われる可能性もあるので注意が必要です。「アピールしたいことを全て伝え切らなくては」と考え、一気に話そうとするケースもありますが、面接担当者はより深掘りしたいことについて質問するものなので、焦って全て回答する必要はありません。簡潔にまとめ、わかりやすく話すことを意識しましょう。
1分間に話せる文字数は「300字程度」とされているので、これを目安とし、履歴書に書いた志望動機をベースにした回答を考えると良いでしょう。
口に出して練習することも大事
面接対策として、実際に口に出して練習することも大事です。履歴書に書いたことをそのまま暗記するのではなく、自然に話せるようにしましょう。身振り手振りや話すスピード、トーンなどに注意し、聞き取りやすさ、わかりやすさ、熱量が伝わるかどうかなどを意識して改善することがポイントです。
志望動機が短すぎると面接に落ちる?
伝えたい要素をきちんとアピールできていれば短くても問題はありません。しかし、短い志望動機の場合でも、伝えたい要素を話すためには1分〜2分程度は必要になるものです。30秒で話終えるなど、短すぎる回答の場合は、きちんと要素を盛り込めていない可能性があります。
例えば、「結論だけしか伝えていない」「その会社の魅力について具体的に話せていない」「エピソードがなく、その会社に魅力を感じた部分に対し、自分自身とどのような接点があるかを全く伝えていない」などのケースが挙げられます。こうした場合、「企業研究を全くしていなのでは?」「入社意欲が感じられないため、志望度が低いのでは?」などの懸念を持たれる可能性があります。志望動機があまりにも短すぎる場合は、再度、回答内容を見直してみた方が良いでしょう。
また、「志望動機をしっかりと考えないまま面接に臨んだことで、回答できる要素が少なく、短くなってしまった」というケースもあります。しかし、面接では、回答したことについてより深掘りする質問をされるので、きちんと答えられるように準備しておくことが大事だと考えましょう。
1次面接と最終面接では志望動機を変えた方がいい?
一般的に、1次面接は人事担当者や現場の若手社員などが担当し、2次面接以降は現場の責任者や経営層などが担当するケースが多いと言えますが、相手や選考段階に応じて回答内容を変える必要はありません。むしろ、1次面接と最終面接で回答内容を変えた場合は「一貫性がない」と判断される可能性があります。
ただし、面接選考が進むにつれ、面接担当者はより深掘りした質問をしてくるものであり、人事担当者と現場の責任者、経営者では、質問の観点も違ってきます。それぞれの質問に的確に回答することが大事です。面接担当者のポジションによっては、現場の業務内容や事業内容、業界展望や今後の会社の展望への考え方などについても深掘りして聞かれる可能性があるので、しっかり準備しましょう。
また、面接選考が進む中で得た情報を志望動機に追加して変化させていくことについては問題ありません。志望動機の軸は変えないことが前提ですが、例えば、「1次面接の担当者からこのような魅力があることを聞き、より興味を持った」というように、追加情報を盛り込むことで志望度が高まっている様子が伝わり、アピールにつながる可能性があります。
志望動機の答え方例文集【職種別・シチュエーション別】
志望動機を回答する際の参考にできる答え方の例文集を紹介します。
職種別の志望動機の例文
職種別の関連リンクを紹介するので、志望動機を回答する際の参考にしてみましょう。
シチュエーション別の志望動機の例文
シチュエーション別の例文を紹介するので、自分に重なるものを参考にしてみましょう。
同業・同職種に転職する場合の例文
●IT業界・営業職の例文
御社の「中小企業を支援するプロダクトで、生産・販売現場の非効率を解消し、日本の産業を支えていく」というミッションに共感し、志望いたしました。
現職では、大手企業向けのセールス・マーケティング領域におけるITプロダクトの営業を担当しております。ITの力で無駄をなくし、ビジネスの生産効率を高めることに意義を感じていますが、非効率な部分が多く残る中小企業に特化することで、より社会的なインパクトを与えられると考えました。御社のプロダクトは提案の幅が広く、多様な業界の中小企業を支援できると感じました。
前職で身につけた提案力・課題解決力を活かして、より大きな案件の獲得や顧客の業績向上に貢献したいと考えております。
同業・異職種に転職する場合の例文
●人材業界・営業から人材業界・経理職を目指す例文
御社を志望したのは、人材業界の中でも新しい分野に取り組む企業である点と、セミナーなどの展開を通じて顧客に誠実に向き合うスタンスに魅力を感じたためです。
これまで現職で営業を担当する中、私は常に新しい営業スタイルに取り組むことを大事にしてきました。数値管理徹底など数字を通じた営業力の強化に注力し、現在までに独学で簿記2級を取得し、1級取得に向けた勉強も進める中で「より共感できる企業の成長を内側から支えていきたい」と考えるようになりました。
営業現場を深く理解している強みを経理領域に活かしてビジネスを支え、将来的には、財務面や管理会計などの分野にも挑戦して、御社の事業成長に貢献していきたいと考えております。
異業界・異職種に転職する場合の例文
●小売業界・販売職からIT業界・ITエンジニアを目指す例文
顧客体験や満足度を高める御社のプロダクトに魅力を感じ、自分もその一端に携わりたいと考えて志望いたしました。
現職で販売職を務める中で御社のアプリを利用し、顧客体験や顧客満足度が大幅に変化する経験をしました。プロダクトが持つ力の大きさを実感し、小売の最前線で積んだ経験を活かして、より多くの顧客の満足度を高める仕事に携わりたいと考えました。現在までに○○や○○などの言語を独学で学び、ITスキルの習得努力を継続しております。
御社に入社後は、現職での現場経験を活かしながら、より顧客目線・顧客体験を重視したプロダクト開発に貢献し、業績向上を目指していきます。いずれはプロダクト改善などでも力を発揮したいと考えております。
転職エージェントでは面接対策もサポートする
転職エージェントでは面接対策はもちろん、自己分析やキャリアの棚卸し、応募書類の作成、企業情報の提供などのサポートも受けることができます。自己PRや転職理由などと一貫性のある志望動機を作ることに役立つ上、面接での答え方に不安がある人も、客観的なアドバイスを受けて改善につなげることができるでしょう。転職エージェントを活用してみるのも一つの方法としておすすめです。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。