転職は新たなチャレンジをするための重要なステップですが、転職先が合わないと感じてしまう人も少なくないようです。そこで今回は、転職先が合わないと感じる理由と、辞めたいと悩んだときに役立つ対処法について、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
目次
転職先が合わないと感じている人は約6割
せっかく転職できたのに、転職先の企業とは「合わない」と悩んでしまうのはなぜでしょうか。リクナビNEXTが転職経験者にアンケートしたところ、約6割の人が「転職後に職場に馴染めず辞めたいと思った経験がある」と回答しています。
Q.転職後、その職場に馴染めなくて辞めたいと思ったことはありますか?
出典:転職したけど新しい職場に馴染めない…辛い・辞めたいと感じた時のアドバイス(リクナビNEXT)
※リクナビNEXTが2019年5月に実施した「転職経験者に対するアンケート」より(回答数=314人、単一回答)
同調査では、転職先が合わないと感じたと回答した人に、その理由も聞いています。圧倒的に多かった理由は「上司・同僚との人間関係」75.1%、次いで「仕事の進め方」45.3%、「社風」40.8%、「労働時間などの働き方」27.4%と続きます。
Q.転職後に辞めたいと思った理由を教えてください
出典:転職したけど新しい職場に馴染めない…辛い・辞めたいと感じた時のアドバイス(リクナビNEXT)
※リクナビNEXTが2019年5月に実施した「転職経験者に対するアンケート」より(回答数=201人、複数回答)
転職先が合わないと感じる理由別の改善策
「辞めたい」とまでは思わなくても、転職したばかりの時は新しい職場の人たちとすぐには馴染めなかったり、これまでの仕事のやりかたと比較してしまったり、社風や慣れない業務にとまどうことも多いでしょう。
転職先が合わないと感じる代表的な理由に対して、どのように対応すればよいのか、それぞれの対処法をご紹介します。
人間関係が合わない
人間関係が合わないと感じてしまう理由の1つには、自分の意見や感情をうまく伝えられないケースや、相手の言動や態度が自分に合わないケースなど、意思疎通がうまくいっていないことなどが考えられます。
自分の意見や感情を遠慮せずに伝え、オープンな対話を心がけることで、相手との理解を深めることができるでしょう。また、相手の意見や視点に対して理解しようと努めることも大切です。相手に対する共感や理解を示すことが関係性を改善することにつながります。
2つ目の理由としては、価値観や性格の不一致が挙げられます。まずは、相手の異なる価値観や性格を持っていることを受け入れ、意見を尊重したコミュニケーションを取ることをお勧めします。ランチやコーヒーブレイクなどで仕事以外の雑談をしてみることで、お互いの共通点や趣味などの話から関係性が深めていくのもいいでしょう。
仕事の進め方が合わない
転職前にイメージしていた仕事内容が異なっていた場合、違和感を覚えることがあります。転職によって活かしたいと考えていた経験やスキルが活かせるチャンスが少ないと感じた場合も、すぐには適応しにくいこともあるでしょう。
特に、転職先の仕事の進め方が合わないと感じる人は、前職やこれまでの経験から学んだことに縛られている可能性があります。過去の成功体験やノウハウに固執してしまい、新しい職場でのやり方やノウハウを受け入れられないこともあります。
仕事の進め方が合わない場合でも、まずは新しいスキルや知識を得る成長のチャンスと捉えましょう。これまでとは違う視点で仕事に取り組むことで、新たな仕事の面白さを発見することができるかもしれません。
上司から仕事の進め方に対するレクチャーやアドバイスを受けることで改善を図り、社内のトレーニングプログラムを受けることで仕事がスムーズに進めることができます。また、チームメンバーとお互いの役割を明確にし、強みを活かしながら協力し合う姿勢を持つことも大切です。新たな知識・スキルを学ぶ「アンラーニング」の姿勢を意識することをお勧めします。
社風が合わない
転職先の社風が自身の価値観や目標に合わない場合、モチベーションの低下やストレスの増加につながることもあります。例えば、トップダウンの会社であれば、個人の裁量や自主性が重視されず、意見やアイデアを自由に発信することが難しいなど、自己成長につながる機会が少ないと感じるかもしれません。
逆に個人の主体性を重視した社風の場合、組織の人間関係が希薄であったり、チームワークやコミュニケーションが不足していたり、孤立感やストレスを感じることもあるでしょう。ワークライフバランスの欠如や、成果主義を重視する社風に対しても自分とは合わないと感じる人がいるようです。
転職先の社風が合わないと感じた場合は、まず社風と自身の価値観とのギャップを認識することが重要です。そのギャップを埋めるために上司や同僚にサポートを求めたり、アドバイスをもらったりすることで、社風に適応できる糸口が見つかる可能性があります。
給料や待遇などの求人条件が異なっていた
入社前に提示された求人条件と実際の条件が異なっていた場合、まずは転職先に確認を行いましょう。転職エージェントを利用して入社した場合は、エージェント経由で確認してもらうことも可能です。
メールや口頭だけで合意していた場合、後からトラブルになるケースもあるので、労働条件を明記した雇用契約書や労働条件通知書を交わしてもらうように請求しましょう。
「転職先が合わない」場合の対処法
転職したばかりの時期は辞めたいと思っても、職場や仕事に慣れていくうちに辞めたいという悩みも解消される人が多いようです。
Q.辞めたいという気持ちが解消されたのは、入社後どのくらいの時期ですか?
出典:転職したけど新しい職場に馴染めない…辛い・辞めたいと感じた時のアドバイス(リクナビNEXT)
※リクナビNEXTが2019年5月に実施した「転職経験者に対するアンケート」より(回答数=92人、単一回答)
3カ月は様子を見る
リクナビNEXTの調査によれば、辞めたいと思っていたのは3カ月までという回答が約半数(45.7%)、3カ月から半年程度で解消されたという回答も約3割(33.0%)を占めています。
転職後3カ月は、上司や同僚と積極的にコミュニケーションを取って関係性の向上を図り、仕事の進め方や社風などの理解を深め、環境の改善を試みるようにしましょう。
上司に相談する
転職先の会社と「合わない」と感じていることとその理由を、上司に打ち明けて対処法を相談するのも一つの手です。自分だけで解決できないことのサポートやアドバイスを受けることが期待できますし、悩みやストレスを吐き出すことで身持ちも楽になるでしょう。
人事に異動を相談する
どうしても職場の雰囲気に馴染むことができず、やりたい仕事が別部署であればチャレンジできる場合、人事に相談したり、異動願いを出したりする選択肢もあります。入社する際の採用担当者と相談してみるのもいいでしょう。
転職先がどうしても合わない場合は転職してもいい?
転職先と合わない原因を探り、馴染む努力をしたにもかかわらず状況が改善しない場合、これ以上苦しい思いをするよりは、早く転職したいと考える人もいるでしょう。
しかし、「転職先に馴染めず、すぐ辞めてしまう」「転職を繰り返している」というように、定着性に疑問を持たれる可能性もあります。まずは、転職後すぐに退職して、転職するメリット・デメリットを理解した上で判断するようにしましょう。
転職後すぐに退職して、転職するメリット
転職後どうしても職場に馴染めず、自分の望んでいた仕事ができない環境にいても、能力やスキルが発揮できず、今後の成長が望める可能性は低いため、転職を検討することも一つの選択肢です。期待できるメリットとしては、以下が挙げられます。
合わない職場や仕事から離れることで、体調悪化を防げる
仕事のストレスや不満が体調に影響を及ぼし、心身の健康やパフォーマンスに悪影響を与える可能性がある場合、早めに退職することで体調悪化の深刻化を防ぐことができます。
自分に合った仕事を見つける機会が生まれる
同じ失敗を繰り返さないように、自分と合わなかった原因を明確にし、次がミスマッチとならないように自身が目指すキャリアを言語化して書き出すなど、まとめておくにしましょう。また、活かしたい経験や身に着けたいスキルなどがある場合は、それらを積極的に伝えるように心がけることも大切です。
新たな挑戦や学びの機会が得られる
転職することで新たな仕事に挑戦し、身につけたいと思っていたスキルや知識を得られる可能性があります。経験の幅が広がり、新たな挑戦や学びの機会が得られるかもしれません。
転職後すぐに退職して、転職するデメリット
転職後すぐに退職してしまうことには、もちろんデメリットもあります。マイナス面もあることを理解した上で、転職活動に挑むようにしましょう。
採用担当者にマイナスイメージを与える可能性がある
転職後すぐに辞めてしまったことを、応募先企業の採用担当者に「職場に馴染む努力をしないタイプなのかもしれない」「忍耐力がないのではないか」と思われてしまう可能性は少なくありません。企業が採用を決める判断基準には、長く定着して活躍してもらえるかどうかといった観点もあるからです。
前職を辞めた理由を伝える際は、不満や責任転嫁ではなく、不満をポジティブに変換して伝えたり、今後の成長意欲などを伝えたりすることが重要なポイントとなります。
すぐに転職先が決まらず、ブランクができてしまう可能性がある
次の転職先が決まる前に退職した場合、退職してからの転職活動が長引き、ブランクができてしまうケースもあります。「安定した収入がなくなる」リスクや長いブランク期間は企業に懸念を抱かれ、転職活動が不利になる可能性もあります。
【参考記事】
転職先が合わないと感じたら転職エージェントに相談してみよう
転職エージェントは、これまでの経験やスキルを適切に評価し、仕事内容や職場との相性や、希望する諸条件などを考慮した上で、キャリアコンサルティングを行います。
今後のキャリアの方向性や企業とのマッチングなどに悩んでいる場合は、転職エージェントによる客観的な視点でのアドバイスやサポートを活用することも役立つでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。