「転職したいが自分に自信がなく、一歩を踏み出せない……」。そのようなときは、まず自信を持てない原因の分析から始めてみましょう。自信を持てない要因とその対処法について、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏にアドバイスをいただきました。
なぜ自信がないのか?転職に自信が持てない原因は?
転職に臨む際、一口に「自信がない」といっても、その要因は人それぞれです。まずは自身の気持ちに、客観的視点で向き合ってみましょう。自信を持てない原因としては、一般的に次のようなケースが多く見られます。
経歴やスキルに自信がない
「社会人経験が短い」「これといった専門性がない」「アピールできるような成果や実績がない」「役職に就いたことがない」など。このように経歴・スキルに自信が持てないと、企業に応募しても「評価されないのではないか」「採用してくれる企業があるのだろうか」という不安を抱きがちです。
自己評価が低い
理想や目標が高すぎる人、仕事において「完璧でありたい」という思いが強い人は、自身を過小評価してしまうことがあります。第三者から見ればきっちりと業務を遂行できているのに、「もっとできなければだめだ」と自分にプレッシャーをかけすぎているケースが見られます。
高い目標を掲げるのは良いことですが、背伸びをしすぎてしまうと、成長実感や充実感、自信を得にくいと言えます。
他者と比較している
他者の影響を過度に受けてしまうパターンです。例えば、学生時代の友人で活躍している人、取引先で実績を出している人、メディアに出ている同世代の人、社内で成果を挙げて評価されている人などと比較し、自分が劣っていると感じてしまうのです。
SNSによって他者の活動状況の発信が目に入りやすくなっているため、ついつい他者と比較して焦りを感じる人が増えています。
面接が苦手である
転職活動のプロセスの中でもっとも緊張する場面である「面接」に対し、不安や恐怖心を抱いている人も少なくありません。
もともと人前で話すことに苦手意識を持っていると、「途中で頭が真っ白になってしまうのでは」「面接担当者と目を合わせるのが怖い」など、自分をアピールすることに自信が持てないようです。
一方、人と話すことが苦ではない人であっても、「面接でどんなことを聞かれるんだろう」という不安があると、うまく答えられるかどうか自信を持てないものです。
ただ漠然とした不安がある
初めて転職活動をする場合は、「そもそも転職活動のやり方を知らない」「どのように進んでいくか分からない」ため、漠然とした不安から自信を持てていないケースも多いようです。
転職に自信がないと悩んだときの対処法
転職活動を始めるにあたって自信が持てないときは、次の対処法を試してみてください。
自分の経験・スキルの市場価値を調べる
自分の経験・スキルが転職市場においてどのように評価されるのか、「市場価値」を調べてみましょう。自社内では「誰もができて当たり前のこと」であっても、社外に出れば高く評価されるケースは多数あります。
また、自社内での業績は同僚と比べて低めであっても、「手法を知っていること」が他社から求められたり、「これだけの経験があれば十分」とプラス評価されたりする可能性もあるのです。自分の経験が社外でも通用することが分かれば、自信を持てるでしょう。
自分の経験・スキルの市場価値を正確につかむには、まず、「キャリアの棚卸し」から始めましょう。これまで担当してきた業務を細かく洗い出すことに加え、成功した経験や身に付けたスキルなども整理してみてください。
市場価値を診断するには、転職エージェントを活用するといいでしょう。また、転職サイトのスカウトサービスに経歴を登録しておくと、企業や転職エージェントなどからスカウトの声がかかることもあります。どのような業界・企業が自分のキャリアを評価してくれるのかがつかめます。
自分の強みや長所を書き出してみる
「専門性がない」「アピールできるほどの成果や業績を挙げていない」と悩んでいる場合、これまでの経験を振り返り、次のポイントを書き出してみましょう。
- 小さくても成果を挙げたこと、ほめられたこと。その成果を挙げられた要因
- 日々の仕事に取り組む際に心がけていること、大切にしていること
- 自分なりに創意工夫したこと
- 上司から指示されなくても、主体的に考えて行動したこと
これらは自分の「強み」「長所」と言えます。専門性や高い実績がなくても、応募書類や面接でこれらをアピールすることで高く評価され、採用に至るケースは多々あります。
転職活動でアピールするためには「言語化」しておくことが大切です。自分の特性をうまく言葉で表現できない場合は、次のワードから当てはまるものをピックアップしてみてはいかがでしょうか。
決められたことをやり抜く力/忍耐力/継続力/粘り強さ/実行力/活動意欲/集中力/ストレス耐性/主体性(自分で考え行動できる力)/挑戦心・チャレンジ精神/改善・成長意欲/前向き志向/学ぶ姿勢/度胸・本番に強い/感情をコントロールする力/タフさ(精神力)/使命感・責任感/目標指向性・達成意欲/パッション(情熱)/探究心/どんな仕事でも面白みを見つける好奇心/変化対応力・柔軟性
親しみやすさ/気配り・ホスピタリティ/チャーム(可愛がられる要素)/素直さ/誠実さ/真面目さ/約束を守る/協調性・チームワーク力/指導・育成力/働きかける力(巻き込み力)/わかりやすく伝える力/傾聴力/プレゼンテーション力/理解力/調整・交渉力
論理的思考力/物事の本質を突き止める力/課題発見力/企画力/計画力/想像力/提案力/分析力/広い視点で捉える力/正確性/スピード/PCスキル/文章作成力/計算能力
なぜ転職したいのか「理由と目的」を整理する
漠然と転職を考えている状態であれば、転職の理由と目的を整理し、明確化してみましょう。
転職を考え始めた理由については、多くの場合「不満」や「この先への不安」なのではないでしょうか。それらについて、「このまま今の会社にいて解消できるか」を考えてみてください。
解消できないのであれば、転職の目的を言語化してみます。「転職先企業で何を実現したいのか」ということです。このとき、転職による目先の変化だけでなく、5年後・10年後などにも目を向け、自分がどうなっていきたいのかをイメージしてみましょう。
このように目的や目標が明確になれば、「『自信がない』なんて言っている場合じゃない。動かなければ」というモチベーションが高まるでしょう。
上司や同僚、友人など、周囲に相談してみる
自分1人で考えているだけでは、いつまでも迷路から抜け出せないかもしれません。自分に自信を持てない場合は、上司・同僚・友人などに「僕(私)の強みや長所はどこだと思うか?」などと聞いてみるのも一つの手です。
自分では想定していなかった答えが返ってくるなど、自分のアピールポイントに気付けるかもしれません。
転職経験談を参考にする
他者の転職経験談を聞いたり、転職事例を知ったりすることで、「自分の経験・スキルも評価される可能性がある」「自分もこんな転職ができるかもしれない」と、希望を持てることもあります。自分に近いキャリアの人がどんな転職を果たしているかを調べてみてはいかがでしょうか。
また、「転職活動のやり方が分からない」など、活動全般に対する不安から自信を持てない人も、リアルな転職経験談を聞くことで活動のイメージが湧いてくるでしょう。
不安がなくなるまで「準備」する
特に「面接」に対して自信がない場合、「準備する」ことで自信が持てるようになります。面接で聞かれる定番の質問に対し、どのように答えるかを整理して書いてみましょう。
面接では、話し方の上手・下手は気にされていないことも多いものです。「自分の言葉で、真摯に伝えようとしている」姿勢が好印象を与えますので、「これだけは伝えたい」というポイントをしっかり押さえておくだけでもよいのです。
準備をするほど不安はなくなるものですので、自信を持てるレベルまで準備をしましょう。
転職エージェントを活用して相談してみよう
自信を持つためには、やはり「自分の強み」を自覚することが大切です。しかし、自己分析をしようとしても、1人ではうまくできないことも多いものです。
そんなときは転職エージェントに相談し、「キャリアの棚卸し」を手伝ってもらってみてください。転職市場に精通したプロの目で「強み」を診断してもらえば、自信につながるでしょう。
転職エージェントに「パートナー」として転職活動に伴走してもらうことで、「これでいいのだろうか」と迷うことなく活動を進めていくこともできるのではないでしょうか。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。