転職活動を進める中では「悩みすぎて疲れてしまった」「うまくいかなくてつらい」「どうすればいいのかわからなくなってきた」など、悩みや不安を抱えてしまうケースもあります。組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏が、転職活動でよくある悩みや不安に対処する方法を解説します。転職活動を始めるタイミングから内定後まで、段階別に紹介するので、現在抱えている自分の悩みや不安を解消するために役立てていきましょう。
目次
転職活動で悩む人は多い。転職しなかった人の理由トップ5
転職活動を進める中では、「自分の思うような転職を実現できない」「自分がどうしたいのかわからなくなってしまった」という悩みを抱えた結果、転職しないことを選んだ人もいます。
リクルートが発表した「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」(※)では、「転職活動はしたが、転職しなかった理由」について、以下の回答が上位5位までを占めていました。
「転職活動はしたが、転職しなかった理由」トップ5
1位「転職活動をする時間がない」(33.0%)
2位「賃金や処遇の条件に対して希望に合うものが少ない」(28.2%)
3位「自分に合う業種がわからない」(27.4%)
4位「転職活動をどのようにしたらよいかわからない」(25.2%)
5位「自分に合う職種がわからない」(24.3%)
転職活動を始めても、さまざまな悩みや不安にぶつかることで、転職を実現できないまま活動を終えてしまうケースも少なくないと言えるでしょう。
以降で、段階別によくある悩みと対処法を紹介するので、スムーズに転職を実現するために参考にしていきましょう。
(※)出典:「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」(株式会社リクルート)
転職したいと思ったときによくある悩みと対処法
まずは、「転職したい」と思った最初の段階で、よくある悩みと対処法を紹介します。
転職すること自体が怖くて動けない
漠然とした不安から、「転職活動を始めること自体が怖い」と感じてしまうケースです。しかし、転職活動を始めたからといって、必ずしも転職しなくてはいけないわけではありません。
転職するかどうかを決めずに転職活動を始めてみることで、今の自分の市場価値や採用の可能性がある企業などを把握しやすくなります。また、選考を進める中で「現職の仕事の方が自分に合っている」「現在の職場の方が環境や待遇が良い」と感じた場合は、転職しない道を選ぶこともできるでしょう。
転職活動自体を重く考えすぎず、求人情報を収集することから始めてみるのも一つの方法です。
考えすぎて行動できない
「選考に落ちたらどうしよう」「内定を得られないかもしれない」「今後のキャリアを考えると、転職を選択することがいいのかわからない」「転職活動を始めたらやることが多くて大変そう」など、行動する前に考えすぎてしまうケースもあります。一人で考えすぎてしまうことで、不安が大きくなってしまうことはよくあるものです。
こうした場合は、転職経験のある友人・知人などに相談する方法があります。話を聞いてもらうことで自分の考えを整理しやすくなりますし、転職活動をしたときの状況などを聞くことで、不安も解消しやすくなるでしょう。
また、相談しやすい相手がいない場合は、転職エージェントを活用してみるのもおすすめです。転職活動のプロであるキャリアアドバイザーと面談する中で、気になることを質問したり、キャリアの相談をしたりすることもできるでしょう。
転職したいけどスキルがない
自分のスキルに自信が持てず、転職できないかもしれないことに不安を感じるケースです。こうした場合は、まずはキャリアの棚卸しをして、自分の経験・スキルを整理してみましょう。過去の仕事を振り返ることで、自分の強みを洗い出していくことが大事です。「専門スキルがない」という場合でも、幅広い仕事に役立つポータブルスキルの中から自分の強みを見出すこともできるでしょう。
未経験の業界や職種に興味があるけど、どうせ無理だと諦めている
「未経験だから無理」と思ってしまい、最初から転職することを諦めてしまうケースもあります。しかし、ポテンシャル採用を積極的に行う企業もあるので、転職を実現できる可能性はあります。
まずは自分が目指す業界や職種の求人情報を収集し、未経験者も歓迎している企業を探してみることから始めてみましょう。「経験者採用の求人しか見つからない」という場合は、その業界や職種で求められる経験・スキルを身に付けられる企業に転職してから、再度、チャレンジする方法があります。
「いい会社だけど辞めたい」と感じているため、転職すると後悔しそう
「現職の会社に大きな不満はないけれど、なんとなく辞めたい」と思っている場合は、なぜ今の会社を辞めたいのか、転職することで何を実現したいのかを考えてみることが大事です。
その上で、今の会社でもやりたいことを実現できる方法はないかを考えてみましょう。やりたいことができる部署に異動できるチャンスや、挑戦したいプロジェクトに参画できる方法がないか探してみたり、社内のキャリアパスなどを調べてみたりすることがポイントです。「転職しないと実現できない」と感じたら、あらためて転職することを検討してみると良いでしょう。
転職活動を始める際によくある悩みと対処法
次に、実際に転職活動を始めるにあたって、よくある悩みと対処法を紹介します。
何から始めればいいのかわからない
転職の全体像がわからず、何をすればいいのかわからない場合は、転職活動の流れや必要な準備などを把握しましょう。スケジュール感なども把握した上で、転職活動の計画を立てることから始めることがおすすめです。
転職活動をする時間がない
在職中の転職活動の場合は、現職の業務と転職活動を並行することが必要なため、「忙しくて時間がない」と考え、転職活動そのものを諦めてしまうケースもあります。
こうした場合は、繁忙期を避けて転職活動を始めるなど、計画性を持つことが大事です。転職準備から内定・入社までの期間の目安は、3カ月程度なので、転職したい時期から遡って計画を立てると良いでしょう。
また、忙しくて転職準備を進める時間がない場合は、転職エージェントに相談するのも方法です。希望に合う求人を紹介してもらえるだけでなく、自己分析やキャリアの棚卸しなどのサポートを受けることができるでしょう。また、応募書類の作成や面接対策、企業との面接日程の調整などのサポートを受けられる転職エージェントもあります。仕事が忙しくても、何をすればいいのか把握しやすくなり、転職活動を進めやすくなるでしょう。
求人情報が多すぎて、応募したい企業の探し方がわからない
求人情報を調べた結果、「情報が多すぎて、探しきれない」「自分の希望に合う求人を見つけることができない」というケースもあります。こうした場合は、自己分析・キャリアの棚卸しを行い、自分が実現したい転職の方向性を定めることが大事です。その上で、応募する求人の判断基準を決め、希望条件に優先順位をつけておきましょう。自分が目指す転職に対する判断軸を持っておけば、目の前の情報に左右されにくくなります。
また、希望に合う求人を得られる可能性がある情報源に絞っていくこともポイントです。求人情報を入手する方法としては、転職サイト、求人誌、ハローワーク、スカウトサービス、ビジネスSNS、転職イベント、リファラル(社員による紹介)、企業サイトの採用ページ、アルムナイ(定年退職者以外の退職者を対象とした採用)などが挙げられます。「どれに絞ればいいのかわからない」という場合は、転職エージェントに相談してみるのも方法です。
希望に合う求人が見つからない
仕事内容や給与、ポジション、ワークライフバランス、福利厚生、働き方、社風、職場の人間関係など、自分の希望にマッチする求人や企業が見つからずに悩むケースもあります。
こうした場合は、希望条件に優先順位をつけることが大事です。全ての希望を満たす求人はなかなか見つからないものなので、自分が大切にしたい希望条件についてしっかりと考えましょう。
また、転職市場の相場観や自分の市場価値を客観的に理解することも重要です。今の自分の経験・スキルで、採用の可能性がある求人にどのようなものがあるのかを把握していきましょう。
自分に合う業種や職種がわからない
「転職はしたいけれど、何がしたいのかわからない」「自分の強みを活かせる仕事がわからない」という場合は、自己分析とキャリアの棚卸しをきちんとやることが大事です。
自分が何に興味を持ち、どのようなことにやりがいを感じるのか、過去を振り返ってみましょう。好きなこと、熱中したこと、得意なこと、人から褒められたことなどを洗い出し、自分はどのような仕事がしたいのか、どのような領域で活躍できるのかを考えることから始めると良いでしょう。
転職準備でよくある悩みと対処法
転職準備を具体的に進めていく中で、よくある悩みと対処法について紹介します。
応募書類の書き方がわからない
一般的に、転職活動に必要な応募書類は、履歴書と職務経歴書の2点です。履歴書には、これまでの職務経歴を全て記載します。職務経歴書では、職務・業務の経験を伝えると同時に、応募企業や応募職種に対してアピールできる強みを伝えることが大事です。
具体的な書き方は、厚生労働省で案内している履歴書・職務経歴書の記載方法や、転職のノウハウ記事などを参考にすると良いでしょう。また、履歴書・職務経歴書には、無料でダウンロードできるテンプレートを活用することもできます。職務経歴書の書式は自由なため、より自分をアピールできる書式を選ぶこともポイントです。
(※)出典:ハローワーク インターネットサービス「履歴書・職務経歴書の書き方」(厚生労働省)
【参考記事】
何社に応募すればいいのかわからない
応募企業を選ぶ際に、「何社に応募すればいいのか」「1社ずつ進めるべきなのか」と悩んでしまう人もいますが、転職活動では、1社だけに絞り込まず、複数社の選考を並行すると比較検討できるため、より納得感のある転職活動ができる可能性があります。
選考過程でよくある悩みと対処法
選考過程においてよくある悩みと、対処法について紹介します。
書類選考に通過できない
書類選考になかなか通過できず、「どうすればいいのかわからない」と悩んでいる場合は、応募企業の求める経験・スキルと、アピールしていることがズレている可能性があります。まずは、企業研究をしっかり行い、自分の経験・スキルや発揮できる強みとマッチする部分を探すことが大事です。その上で、応募書類でアピールする内容を修正・改善することが選考通過のポイントになります。
また、応募企業そのものがマッチしていないケースもあるので、見直してみることも大事です。求める人材像などを確認し、自分の経験・スキルが採用の水準を満たしているかどうかを考えてみましょう。採用の水準を満たしていないと感じた場合は、再度、希望条件を見直し、採用の可能性がある企業に応募してみると良いでしょう。
面接選考に通過できない
面接選考に通過できず、「落ち続けることがつらい」「もう疲れた」「転職活動をやめたい」と悩んでしまうケースもあります。しかし、書類選考を通過しているので、「採用の水準を満たしていながらも面接で自分をアピールしきれていない」という可能性があります。
こうした場合は、面接対策をしっかりと行うことが重要です。転職の面接でよくある質問に対する回答内容を簡潔にまとめた上で、口に出して回答する練習をしましょう。また、転職エージェントでは、模擬面接を行うなど、面接対策のサポートをしているケースもあります。プロの視点で客観的なアドバイスを受けながら改善していけるので、活用してみるのも良いでしょう。
転職活動がうまくいかずに悩んでいるけれど、だれに相談したらよいかわからない
まずは、周囲の友人・知人の中で転職を実現した人を探し、話を聞いてもらうと良いでしょう。自分が希望する業界・職種に転職した友人や、現職の職場から転職した同僚がいた場合は、より具体的な相談がしやすいかもしれません。
どうしても見つからない場合は、友人などに紹介してもらう方法もあります。また、転職のプロである転職エージェントに相談することもおすすめです。
転職活動に疲れてしまい、どうすればいいのかわからなくなった
転職活動がうまくいかずに疲れてしまった場合は、一時中断する方法もあります。特に、在職中に転職活動を進める場合は、定期収入があるので、「無理に転職活動を頑張らなくても良い」と考えることもできるでしょう。
また、転職活動を続けること自体がストレスになっている場合は、「体力や気力が回復してからまた再開することもできる」と考えることも大事です。新卒の就職活動と違い、中途採用は常に行われているので、タイミングをずらすことで自分にマッチする求人が見つかるケースもあります。焦らずに自分のペースで進めていきましょう。
やることが多く、転職活動が大変すぎてつらくなった
転職活動は、準備から書類選考・面接選考・内定まで、段階に応じてやることが多いため、「大変すぎる」「つらいからやめたい」と感じてしまうケースもあります。特に、在職中の場合は現職の仕事と転職活動を並行するため、より大変さを感じやすいと言えます。
効率的に転職活動を進めるために、転職エージェントを活用するのも一つの方法です。先にも述べた通り、転職準備から求人の紹介、面接日程の調整、面接対策などをサポートしている転職エージェントもあります。次にやるべきことを教えてくれたり、何をすればいいかわからない時に相談できたりする転職エージェントもあるので、活用することで転職活動の大変さを軽減できるでしょう。
転職活動に集中しすぎて、今の仕事に身が入らない
在職中に転職活動を進める場合は、現職の仕事に身が入らなくなるケースもあります。「次の仕事が決まっていないけれど、より転職活動に集中するために会社をやめた方がいいのではないか」と考える人もいますが、定期収入がなくなることで、焦ってミスマッチの会社を選んでしまうケースもあるので注意しましょう。
仕事に身が入らないことで悩んでいる場合は、転職活動のToDoリストを作成する方法があります。転職活動の準備や対策について「明日、何をやればいいのか」を決めておき、「今日はこれだけの時間をかけて、これをやればいい」という予定を把握していれば、業務時間中は仕事に集中しやすくなるはずです。
内定後によくある悩みと対処法
内定後によくある悩みと、対処法を紹介します。
職場の雰囲気や人間関係が不安
「内定先の職場の雰囲気が自分に合うだろうか」「人間関係が悪い職場だったらどうしよう」などの不安を抱えているために、内定承諾するかどうか悩んでしまうケースもあります。
こうした場合は、内定先の採用担当者に相談し、職場見学や先輩社員との面談を設定してもらう方法がおすすめです。職場の雰囲気や働く社員の姿を直接見たり、先輩社員に話を聞いて人柄や雰囲気などに触れてみたりすることで、自分との相性を判断しやすくなります。
「転職3カ月の壁」が気になってしまう
「転職3カ月の壁」とは、転職してから3カ月前後のタイミングで、何らかの理由で仕事を辞めたくなってしまう現象のことを指します。転職先の仕事の進め方や職場の人間関係に馴染めなかったり、なかなか成果を出せなかったりすることで後悔するケースは少なくないため、「自分もそうなるのでは?」という不安を感じてしまう人もいます。
しかし、新しい仕事や人間関係に慣れるまでには一定の期間を要するものであり、仕事を習得し、地道に成果を出していけば周囲から評価を得られるようになります。目の前の仕事に集中して3カ月前後が過ぎる頃には、「逆に、仕事が楽しくなった」というケースも少なくはないでしょう。転職先に馴染み、自分が思うように活躍するためには、一定の期間は必要だと考えて取り組むのも一つの方法です。
転職先が合わず、半年や1年でやめたくなって後悔することが怖い
「前の職場の方が良かったと感じて後悔したくない」「半年や1年で辞めたくなって、また転職を繰り返すのが怖い」などの悩みを抱える人もいます。
内定を得た後に、現職にとどまる可能性について検討していない場合は、転職後に「やっぱり転職しなければ良かった」と思ってしまう可能性があります。
後悔しないためにも、内定承諾をする前に、内定先の企業と現職の会社をさまざまな角度から比較検討しましょう。自分自身で納得した上で決断することが大事です。
働きながら転職活動する場合に、ストレスを溜めずメンタルを保つ方法
「働きながら転職活動を進めるのは大変そう。自分にできるか不安…」という人もいるでしょう。ストレスを溜めず、メンタルを保つ方法を紹介します。
友人やパートナー、家族などに話を聞いてもらう
転職活動でストレスが溜まった場合は、その気持ちを誰かに聞いてもらうことも大事です。友人やパートナー、家族など、身近な関係性の人に話すことでストレスを発散できるかもしれません。また、共感してくれたり、励ましてもらったりすることで転職活動を続けていくメンタルを保ちやすくなるでしょう。
自分なりに目標設定し、達成感を得る
転職活動を一気に進めようとすれば、ストレスが溜まってしまう可能性もあります。自分なりに「転職活動でやること」の目標を設定し、一つひとつクリアしていけば、達成感を得やすくなります。「今週中に応募したい企業を1つ見つける」「明日中に面接でよくある質問の回答を一つまとめる」など、小さな目標達成を積み重ねていくと良いでしょう。
期限を設定することで乗り切ることもできる
在職中に転職活動を進める場合、「いつまでに転職するか、期限を設けなくてもいい」と考える人は少なくないでしょう。しかし、それによって転職活動が長引き、疲れてしまうケースもあります。
転職活動を始めるにあたって、「3カ月は集中して取り組む」など、自分の中で期限を設定することも大事です。終わりが見えることで、「この期間だけ頑張ろう」というモチベーションを保ちやすくなるでしょう。
食事や睡眠、運動などで休養とリフレッシュを心がける
忙しいときは、食事や睡眠などがおろそかになりがちです。食事の面では、栄養バランスを意識しつつ、ストレスが溜まったと感じたら自分の好きなものを食べるなど、メリハリをつけることも大事でしょう。適度な運動を取り入れてリフレッシュすることも必要です。
また、ストレスが溜まっていると、動画やテレビなどを見て夜ふかししてしまうケースもありますが、睡眠時間を減らせば、体力・気力も低下しやすくなります。しっかり休養を取るように意識すると良いでしょう。
転職活動で悩みすぎて疲れたら転職エージェントに相談しよう
転職エージェントでは、転職支援のプロであるキャリアアドバイザーから客観的なアドバイスをもらえます。転職活動の進め方や準備のポイントなどを聞くことができたり、応募書類や面接でアピールする内容の改善点などを教えてもらったりすることもできるでしょう。「どうすればいいのかわからなくなった」「考えすぎて行動できない」というとき、やるべきことや進む方向性が見えやすくなるはずです。
一人で悩み続けて疲れている場合は、転職エージェントに相談することも視野に入れてみると良いかもしれません。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。