第二新卒に明確な定義はありませんが、企業が独自の定義を定めている場合は、その定義によります。定義を定めていない場合は、学校(高校、専門学校、短大、高専、大学、大学院)卒業後、おおむね3年以内(学校卒業後すぐに就職する新卒者は除く。また、職務経験の有無は問わない)の人を指します。
本記事では、第二新卒の面接で採用担当者が採否を判断するために見極めているポイントや、よく聞かれる質問と回答例について、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹氏に解説いただきました。
第二新卒の面接で採用担当者はどこを見ている?
ここでは、第二新卒の面接で採用担当者が見ていると考えられる下記4つのポイントについて、解説します。
- 熱意やポテンシャルがあるか
- 前職(現職) の経験やスキルを上手く活かせそうか
- 基礎的なビジネスマナー・ビジネススキルが備わっているか
- 新卒入社した会社と同様に早期退職しないか
熱意やポテンシャルがあるか
応募者が第二新卒の場合、企業の採用担当者は熱意やポテンシャルの有無を見定める傾向があります。その理由として、経験が短くても熱意やポテンシャルの高い人材は、今後の成長が見込まれ、中長期にわたり組織の成長に貢献してくれると考えられるからです。
株式会社リクルートが実施した『企業の人材マネジメントに関する調査 2023』では、第二新卒の採用において、「本人の潜在的成長力や伸びしろ」を重視することが重要であると答えた企業の割合は、半数を超える結果となり、採用活動でポテンシャルを重視する企業が増えている様子がうかがえます。
※出典:『Z世代(26歳以下)の就業意識や転職動向』(株式会社リクルート)
なお、採用担当者は、志望動機や自己PRから熱意やポテンシャルを見定めることもあるため、応募書類に記入する際や面接で伝える際は、しっかり内容を考えておくことをおすすめします。
志望動機では「入社して成し遂げたいこと」「入社後に思い描いているキャリアビジョン」などを交えながら、熱意やポテンシャルをアピールしましょう。また自己PRでは、これまでの経験の中で「自己成長のためにどのような努力を重ねたのか」「困難な状況に対してどのように対処したか」など、将来性や成長性が期待できるストーリーを織り交ぜながら応募先企業が求める人材である旨をアピールしましょう。
前職(現職)の経験やスキルを上手く活かせそうか
第二新卒の面接では、前職(現職)の経験やスキルが上手く活かせるかを確認されているケースもあります。就業期間が短くとも、特定の領域に精通していたり、専門性の高い技術やスキルを保有していたりすれば面接で評価される場合もあるでしょう。
アピールできるスキルや経験、資格などがあれば、応募書類に記載しておきましょう。また志望動機や自己PRなどのタイミングで、求人要件にマッチしている旨を訴求すると効果的でしょう。
基礎的なビジネスマナー・ビジネススキルが備わっているか
第二新卒は、新卒社員とは異なり、就業経験があります。そのため、基礎的なビジネスマナーやビジネススキルが備わっているかも見ているでしょう。書類選考では応募書類の書き方やマナーをチェックされるでしょう。また、面接時には、質疑に対する応対や反応、言葉遣い、立ち居振る舞いから自社にふさわしい人材か判断されます。
ビジネスマナーやビジネススキルに不安がある方は、書類選考や面接で役立つアドバイスを提供してくれる転職エージェントの活用をおすすめします。
新卒入社した会社と同様に早期退職しないか
採用担当者の中には、「自社でも新卒入社した会社と同様に、早期退職するのではないか」といった懸念を持つ場合もあり、慎重に採否を判断すると考えられます。そのため、採用担当者は、早期離職の可能性を見極めるために、様々な質疑を重ねるでしょう。
中でも「前職(現職)を退職した理由」は、納得感のある理由なのか、確認されます。前向きな思考に基づいた退職と判断してもらえるよう、納得感あるポジティブな印象を与えられる理由を用意しておきましょう。
第二新卒の面接でよく聞かれる質問と回答例
本章では、第二新卒の面接でよく聞かれる質問と、質問に対する一般的な回答例やポイントを紹介します。
質問1:自己紹介をしてください
自己紹介を求められる背景として、応募書類と同一人物かを確認する他、下記のような理由があると考えられます。
- 応募者の緊張をほぐすため
- 必要な情報を簡潔に伝える能力を確認するため
- コミュニケーション能力を確認するため
- 応募者の人柄や経歴を把握し、面接で深掘りするポイントを定めるため
第二新卒ならではの自己紹介回答ポイント
面接では、元気な印象を与えられるよう、ハキハキとした回答を心がけましょう。また、冗長になったり伝える情報が不足したりしないよう、下記6つの項目を簡潔にまとめておくと受け答えがスムーズになります。
- 氏名
- 挨拶
- 経歴
- 前職(現職)について
- アピールポイント
- 締めの言葉
第二新卒の自己紹介回答例
○○と申します。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。
○○大学○○学部を卒業後、株式会社○○にて営業職として2年間勤務してまいりました。現職では新規顧客開拓や既存顧客のフォローを担当し、昨年度は新規契約数を前年比150%に伸ばす成果を残しました。さらなる成長と新たな挑戦を求め、貴社の多様な商品ラインナップとグローバルな展開に魅力を感じて応募いたしました。これまでの経験を活かし、貴社の成長に貢献したいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
質問2:自己PRをしてください
採用担当者は、自己PRで次のような項目について見定めたいと考えています。
- 採用ターゲットに近い人材か
- 考え方や人柄は自社の社風や風土とマッチしているか
- 想定している業務に合っている人材か
- 応募書類と内容が一貫しているか
第二新卒ならではの自己PR回答ポイント
就業期間の短い第二新卒は、スキルや知識よりもポテンシャルが重視される傾向にあり、仕事に取り組む姿勢やマインド、性格における強みや長所をアピールすると良いでしょう。自己PRを伝える際は、応募先企業が求める人物像をイメージしながら、下記4つの項目を流れに沿って簡潔にまとめましょう。
- 応募先企業が求める人材と親和性の高い強みを伝える
- アピールする強みの根拠となるエピソードを伝える
- 強みを活かしどのような成果・実績を残したのか伝える
- 応募先企業でどのように強みを活かせるのか伝える
第二新卒の自己PR回答例
私の強みは、コミュニケーション能力とチームワーク力です。前職では、チームでの新規プロジェクト立ち上げに参加し、部門間の調整役として尽力しました。部署を越えた協力体制を築くことで、意思疎通に認識のズレや相違がなくなり、プロジェクトを予定より2週間早く完了させることができました。
貴社でもこの自分の強みを活かし、組織全体の効率化と成果向上に寄与したいと考えております。
質問3:前の会社の退職理由を教えてください
第二新卒の面接で退職理由を問われる背景には、採用にあたって下記懸念点をクリアにしておきたいという思いがあるでしょう。
- 退職理由と志望動機に一貫性があるか
- 仕事への熱意はあるか
- 自社でも前職(現職)と同様にすぐに退職しないか
第二新卒ならではの退職理由回答ポイント
先述の通り、第二新卒の面接では、採用担当者が抱く「自社でも早期離職をするのではないか」という不安を払しょくすることが大切です。そのため、退職理由を述べる時は、退職するきっかけとなった要因や背景と一緒に、転職によって実現したいビジョンも伝えることがポイントです。
しかし、前職(現職)に対する批判が混じっていたり、ネガティブな印象を与えたりする退職理由の場合、仕事への意欲が希薄な人、他責思考が強い人と捉えられてしまう懸念もあります。前職(現職)への批判めいた発言は控え、ポジティブに捉えてもらえるような言い回しを意識しましょう。
第二新卒の退職理由回答例
前職では、営業職として新規顧客開拓や既存顧客のフォローを担当しておりました。業務を通じて営業スキルを磨くことができましたが、さらに○○に関しての専門的な知識や高度な営業スキルを習得し、より大規模なプロジェクトに挑戦したいと考え、転職を検討するようになりました。
貴社は業界をリードする革新的な取り組みと積極的なグローバル展開を実施していることで知られており、ここで自分の力を試し、成長したいと考えております。
質問4:当社を志望した理由を教えてください
面接では「自社でなければならない理由」を確認するために、志望動機が問われます。
自社でなければならない理由が明確であるほど、採用担当者は、入社意欲や長く就業する意思が強いと判断できます。また、自社の事業や理念などについてもしっかり理解を深めているか、志望動機の回答から見定めているケースもあるでしょう。
第二新卒ならではの志望理由回答ポイント
面接で志望動機を答える際は、退職理由と整合性のある一貫した内容であることが大切です。転職理由と関連付けるイメージで志望動機を考えてみましょう。
また前述の通り、志望動機は「自社でなければならない理由」が伝わる内容に仕上げることがポイントです。応募先企業の事業内容や求める人材、経営者の理念や組織風土などを調べ、退職理由と絡めてどのような強みや魅力に惹かれたのか、どの部分から自分の強みを活かして貢献できると思ったのか、分かりやすく整理して伝えましょう。
第二新卒の志望理由回答例
貴社を志望する理由は、業界をリードする商品開発力と積極的にグローバル展開を推進する姿勢に強く惹かれたからです。前職では新規顧客開拓に注力し、顧客のニーズを深く理解する能力を培いましたが、さらに高いレベルで自分のスキルを試したいと考えました。
貴社の多様な製品ラインナップとグローバルな展開は、私の強みであるコミュニケーション力と柔軟性を最大限に活かせると確信しております。貴社の一員として、新しい市場開拓と顧客満足度向上に貢献し、共に成長していきたいと考えております。
質問5:何か質問はありますか?(逆質問)
企業が逆質問を行う背景には、大きく次の2つの理由があると考えられます。
- 自社への入社意欲や興味・関心を確認するため
- 応募者の不安や疑問を解消するため
入社意欲が高いほど、入社後についてイメージするため、自然と疑問や不安も生じるでしょう。入念に企業研究をした上で生じる的確な逆質問をすることで、入社意欲や興味・関心が高いと判断してもらえるでしょう。また、企業は、逆質問を通じて応募者の不安や疑問を解消し、選考辞退や入社後の早期離職を防止したいといった思いもあります。
第二新卒ならではの逆質問回答ポイント
第二新卒では、ポテンシャルを重視されることが多いため、入社後のイメージが描けている旨をアピールしやすい業務内容や職場環境に関する逆質問を用意しておくと良いでしょう。
反対に、既に説明された事項やホームページに記載されているような調べたらすぐに分かる内容に関する質問は、「話を聞いていない」「自社への関心が薄い」とみなされる懸念があるため、控えましょう。
第二新卒の逆質問回答例
貴社の中長期計画には「20XX年を目処に○○事業において、アジア圏から海外展開を開始する」との記述がありましたが、具体的にはどのような事業戦略を描いているのでしょうか。学生時代にオーストラリアに1年間留学した経験があり、海外事業を展開する暁には当時の海外生活の経験、自身の語学力が活かせると思っています。海外事業に携われる可能性なども、ご教示いただけますと幸いです。
第二新卒特有の面接で聞かれる可能性がある質問
ここでは、第二新卒特有の面接で聞かれる可能性がある質問をまとめました。
面接に臨む前は、目を通しておきましょう。
質問1:新卒入社した会社は希望通りの会社でしたか?
新卒で入社した会社は当初の希望通りであり、たくさんの学びと成長の機会を得ることができました。しかし、働くうちにさらに専門的なスキルを磨き、より大きなプロジェクトに挑戦したいという新たな目標が生まれました。
貴社のスピード感のある事業成長と、国際的に広く事業を展開しているスケールに強く惹かれ、応募を決意しました。
本質問は、希望通りの会社に入社したのに、なぜ転職するのか、退職の要因やきっかけを知りたいといった背景があると想定されます。
この質問に対しては、まず希望通りだったか否かを端的に回答すると共に、なぜ転職するに至ったのか理由を交えながら回答しましょう。なお、回答する際は、ネガティブな印象を与えないような言い回しを意識しましょう。
質問2:前職(現職) で最もつらかった仕事は何ですか?
最もつらかったことは、クライアントから厳しいクレームを受けた時です。クレームの内容が深刻で、解決に向けた対応策を模索するのが大変でした。問題解決には、まずクライアントとの信頼関係を再構築することが重要だと考え、誠実な対応と迅速なアクションを心がけました。また、内部での原因分析を徹底し、○○といった改善策を提案しました。
結果として、クライアントの信頼を取り戻し、関係改善につなげることができました。
つらかったことを問う理由は、困難に直面した時にどのような行動を取るのかを知りたいといった背景があります。また、回答の内容から応募者の人間性や人柄、適応力、仕事への考え方・マインドなども見極めたいと考えている可能性もあるでしょう。
ただつらかった仕事の内容や状況を伝えるだけではなく、どのようにして乗り越えたのか、どのようにして状況を改善したのかも併せて伝えましょう。
質問3:前職(現職) とは違う仕事ややりがいがない仕事を任されたらどうしますか?
前職とは異なる仕事や、やりがいがないと感じる仕事を任された場合、それを新しい挑戦と捉え、積極的に取り組む姿勢を持ちます。例えば、業務に必要なスキルや知識を自主的に学び、改善提案をすることで、自分の成長の機会とし、最終的には業務の効率化や成果向上に貢献したいと考えています
この質問では、下記に関する能力の有無や姿勢を見極められていると言えるでしょう。
- 思わぬ事態に直面した時の対応力や課題解決力の有無
- いかなる状況でも成長し続けられるマインドがあるのか
- 自分なりに状況を好転できる行動が取れるのか
「どのような姿勢・マインドで取り組むのか」「どのようにして状況を好転させるのか」を中心に、具体例を交えながら伝えると説得力が増すでしょう。即答しづらい質問ですが、沈黙してしまう事態は避けたいため、事前に回答を用意しておきましょう。
質問4:似たような企業が他にもある中で、なぜ当社なのですか?
事業だけに限ると、同様の事業を展開している会社は他にもあります。しかし、私は、貴社の企業文化や社風に強く惹かれ応募しました。オープンで協力的な環境や、社員の成長を支援する取り組みが、私の価値観と一致していると感じています。
学生の頃からラグビーやサッカーなどチーム競技に取り組んできた私としては、貴社のようにメンバーが互いを支え合いながら成長できる環境は、非常に魅力的に映りました。
「なぜ当社なのですか?」と問われた際は、「自社でなければならない理由」が明確に伝わる回答であることが大切です。他社でも当てはまる理由は、避けたほうが無難でしょう。
応募先企業が強みとしていることや魅力として発信していることをサーチし、どのような点に惹かれたのか回答できるようにしておきましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。