「AI(人工知能)」「機械学習」などの技術を活かしたビジネスが拡大しています。インターネットサービスでのWEBマーケティングやレコメンド機能などをはじめ、製造業でも自動運転技術や工場の異常検知・センシング、金融業界における融資判断・投資判断など、活用分野の裾野が広がってきました。
AI・機械学習のスキルを持つエンジニアにとって、また、これからAI・機械学習のスキルを身につけたいエンジニアにとって、今どんな転職のチャンスがあるのかをお伝えします。
AI・機械学習の実務経験のない方の転職事例
多くのユーザーや消費者を抱え、独自のビックデータを保有する大手ネット企業では、各部門のデータを活用したさまざまなプロジェクトが動いているほか、新進のテックベンチャーでもビジネスモデル開発、サービス開発が活発化しています。
それに伴い、当領域の主要プレイヤーであるデータサイエンティスト・機械学習エンジニア・データアナリストの他にも、、アプリケーション開発エンジニア、ビジネス開発、コンサルタント、営業など、幅広い職種で求人があります。
もちろん経験者の需要は高いですが、まだまだ新しいマーケットで経験者が少ない領域であるため、親和性のある知識・経験を持つ人にもこの分野に携わるチャンスがあります。一例を挙げてみましょう。
サーバーサイドのエンジニアリング経験者
機械学習を活用した機能をシステムやWEBサービスに実装していくようなポジションでは、Python等の特定の言語に限らず、サービス開発経験のある方を採用しています。
インフラ寄りの経験者
データ分析基盤を構築する、分析するためのデータを整備するポジションでは、インフラ寄りの経験者が採用ターゲットとなっています。
DWHやHadoop、大規模データを扱う環境の設計・構築・運用を行ってきた方に、データエンジニア、機械学習エンジニアとしてキャリアアップの道筋が用意されています。
プロジェクトマネージャー経験者
新規事業・サービスの立ち上げプロジェクトも多いことから、データサイエンティストやエンジニア、ビジネスサイドの意思決定者たちをとりまとめられるプロジェクトマネジメント経験者を求める企業もあります。実際、SIerでプロジェクトマネージャー経験+BIツールに関わった経験があり、機械学習については独学で勉強していた方が、データアナリティクス専門企業に採用された事例もあります。
学生時代にAIや統計解析などを学んだ人
現在は異分野やSEとして働いてるが、学生時代に人工知能・機械学習・統計などの分野を専攻していた人も採用ターゲットとなっています。実務経験者だけでなく、素地がある若手を自社でデータサイエンティストに育成する、という方針の企業も見られます。
応用数学の研究を手がけてきたポスドク
研究機関で統計・数理研究を行っていたポスドクの方が、プロダクト開発を手がける会社にデータサイエンティストとして採用された事例があります。この方は、アナリストとしてのデータ分析スキル+ビジネスでスキル・知識を活かしたいというマインドも評価されていました。
経営コンサルタント/ITコンサルタント
「データサイエンティスト」の採用ターゲットには、プログラム実装力はなくても、日々データを扱い、分析してきたコンサルタント経験者が含まれています。データ分析コンサルタントとして、AI・機械学習とビジネスを結びつける役割を担うことが期待されています。
法人向けソリューション営業経験者
セールスやコンサルタントの求人も多数。ネット企業の各種プロダクト、チャットボット(AIを使った自動会話プログラム)、ホワイトカラーの単純業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、文書認識、画像認識、HRTech(テクノロジーを活用した採用・育成・評価・ 配置などの人事関連業務の手法)など、人工知能を活用したさまざまなサービスを手がける企業がセールスやコンサルタントを募集しています。
企業ごとに求める知見は異なりますが、法人向けのソリューション営業経験、ビジネスアナリストの経験が活かしやすいといえます。プロダクトのセールスであれば、SaaS型サービスの営業経験者は高く評価される傾向があります。
Webマーケティング/営業企画経験者
Webマーケターや営業企画担当者として、数値を分析してコンバージョンを上げるなどのノウハウを蓄積してきた方であれば、マーケティング領域のデータアナリストとして転職する道があります。特定のBIツールの活用経験・スキルを求める企業もあります。
データサイエンティスト・データアナリスト経験者の転職事例
一方で、すでにデータアナリスト・データサイエンティストとして経験を積んでいる方の今後のキャリア構築を考える上では、どの強みを活かし、伸ばしていくか焦点を定めることが重要です。
その指標となるのが、データサイエンティスト協会が挙げる3つのスキルです。
* 「ビジネス力」……課題背景を理解した上で、ビジネス課題を整理し、解決する力
* 「データサイエンス力」……情報処理、人工知能、統計学などの情報科学系の知恵を理解し、使う力
* 「データエンジニアリング力」……データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装、運用できるようにする力
これらの力をすべて兼ね備えている人はほとんどいないと言っていいでしょう。自身の強みはどこにあるのかをしっかり認識し、「その強みを活かせる企業はどこか」という視点で選ぶことで、キャリアアップにつながります。
それぞれどんな会社が向いているのか、大まかな傾向をお伝えしましょう。
「ビジネス力」を活かす
大手ネット企業など、豊富なデータがすでに整備されており、そのデータをさまざまなビジネスに活かす展開をしている企業がフィットします。また、データ分析コンサルティング会社、上流部分でソリューション提供を行う会社でもビジネス力が活かせます。
「データサイエンス力」を活かす
事業会社のR&D組織にニーズあり。「音声認識」「自然言語」など注力分野は各社異なりますが、技術的にハードルが高い部分を将来的にビジネスで活かせるようにアルゴリズムを作っていくようなステージでスキルが活かせます。
「データエンジニア力」を活かす
今後データの活用に力を入れていきたいが、まだ基盤が整っていない企業。特に、ユーザー数が急速に伸びているものの、そのデータを有効活用しきれていないスタートアップ企業では、今後データをビジネスに活用する上で基盤整えていく必要があり、経験が活かせます。
現在、事業会社でデータアナリスト・データサイエンティストとして働いている皆さんからは、「自分の技術力が世の中でどれだけ活用できるのか」「スピードが速い環境下で、自分の知見が陳腐化していないか」といった相談をよくお受けします。
そしてそうした方が、コンサルティング会社や最先端企業に転職していく事例も多くあります。常にご自身の技術の市場価値を客観的につかみながら、適切なタイミングで次の方向性を検討することをお勧めします。
「データサイエンティスト育成スクール」を経てキャリアチェンジする道も
リクルートエージェントでは、データサイエンティストの育成スクールと提携し、データのスペシャリスト人材を世の中に増やしていくプロジェクトを推進しています。
データサイエンティストを目指し、スクールに通ってデータアナリティクスの技術を身に付けたものの、今の仕事では活かせるチャンスがない…という方が大勢いらっしゃいます。
そこで、リクルートエージェントのキャリアアドバイザーがそんな皆さんと対話し、スキルの棚卸し、強みの整理を行います。そして強みを発揮しやすい企業、描くキャリアを叶えやすい企業を選び、ご紹介しています。
今後、技術の進化に伴い、AI・機械学習のビジネス活用やデータサイエンスに対するハードルは下がっていくと思われます。例えば、Googleが開発したライブラリであるTensorFlow、アマゾンウェブサービス(AWS)、GCPで提供している分析機能といったツールを活用することで、ある程度の知見を持った方であれば、簡単にモデルを作り、ビジネス化することが可能になっていくでしょう。
現時点では「ハードルが高い」と感じている方でも、今後は少しキャッチアップするだけで実務に活用できる機会を得やすくなると思いますので、興味があれば飛び込んでみてはいかがでしょうか。
安井 沙織・岩田 昌大
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