「転職活動をしていて面白そうな会社を見つけたけれど、世間での評判はどうなんだろう?」「転職を考えている企業があるけれど、インターネットで良くない評判を見た。実際にはどうなんだろう?」──そんな疑問に転職先を悩む方は多いようです。
そこで今回は、転職しようと思っている会社の評判に入社を悩む相談者に、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏が判断のポイント、企業の実態をつかむ情報収集方法をアドバイスします。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
【転職相談】クチコミサイトの良くない評判に入社を悩んでいます
転職活動をして、あるIT企業から内定を得ました。けれど、クチコミサイトを見たら悪いことが書かれていて、どうやら評判が良くないようです。自分としては面接を受けてみて、いい会社だし、自分に合っていると思ったのですが……入社を決断して本当に大丈夫でしょうか?
転職エージェントのキャリアアドバイザーは、転職希望者の皆さんが応募を検討している企業や選考中の企業について、「インターネットでこう書かれていた」「SNSでこんなことがつぶやかれていた」「知人がこう言っていた」など、不安の声をお聞きすることがよくあります。
しかし、その「良くない評判」の中身が、転職エージェントが把握している実態と異なっていることもあります。そこでまずは、インターネットの書き込みや友人・知人から聞いた「良くない評判」が真実なのかどうか、判断するために着目すべきポイントをお伝えします。
「評判」の真偽を判断するための3つのポイント
【Point1】一部のことなのか、全体に共通することなのか
悪い評判の内容が事実であったとしても、それがその会社の全てとは限りません。
特に企業規模が大きくなるほど、部門ごとに、仕事の進め方、労働環境、上司のマネジメント方針などが全く異なっていて当然です。
また、同じ職種であっても、正社員・契約社員・派遣スタッフ・業務委託・インターンシップなど、様々な雇用形態の人がいます。立場によって視点が変わりますので、その前提を理解した上で情報を見ることが大切です。
【Point2】「現在」も同じ状況なのか
過密スケジュールや残業の多さなどから、職場を「ひどい」「キツい」と評する人もいます。ただし、噂の発信元である人がそれを体験したのがいつの時期なのか、定かでない場合もあります。最近インターネットに書き込まれたことでも、その人が体験したのは何年も前であるかもしれません。
近年は、優秀な人材獲得のために労働環境の改善に力を入れる企業が多く見られます。特にIT業界では、優秀なエンジニアを確保するため、働きやすい制度や環境を整える動きが活発。以前に比べてかなり労働環境が改善されているケースも少なくありません。「現在の状況」を確認してみてください。
【Point3】ネガティブなクチコミが存在することを理解する
会社の社風になじめなかったり、成果を挙げられなかったりと、会社に居づらくなって退職した人が、憂さ晴らし的にその会社の悪口を言うこともあるようです。しかも、発信者の主観により、大なり小なり誇張されていることもあるようです。
その情報が、主観的なものなのか、客観性を持ったものなのか。見極めるのは非常に難しいため、一定数、ネガティブなクチコミは存在することを理解しておくことが大切です。
「自分にとって、どうなのか」が重要
インターネット上の良くない評判が事実であったとしても、その会社で「仕事がキツイ」と感じている人がいる一方で、その会社で「生き生きと楽しんで働いている人」も確実にいるはずです。そうでなければ企業は存続することも、存在することすらできないでしょう。
実際「仕事がキツイ」と言われている会社で働く人からは、こんな声が聞かれます。
「仕事がキツイのは、それだけ会社が成長していて忙しいから。勢いがある会社で働けることはやりがいがあるし、会社の成長とともに自分も成長できていると思います」
悪い評判を発信した人にとっては辛い職場でも、もしかするとあなたには向いているかもしれません。少しでもその会社に興味を持ったのであれば、面談させてもらうなど、志向に合った職場であるかどうかを自分で確かめることが大切です。
面談をせずとも、例えば「●●部署の月の平均残業時間は●時間、繁忙期はこの1.3倍になる」といったように、「自分の基準」で判断できる客観的な情報を取りに行くことで、より納得度の高い判断ができると思います。
評判を検証し、正しい情報を手に入れる方法は?
会社の評判の真偽を確かめるためには、次のような手段があります。
その会社で現在働いている人に話を聞く
友人・知人をたどっていけば、その会社に勤務している人が見つかるかもしれません。紹介してもらい、話を聞いてみるといいでしょう。
友人のネットワークの中にいなくても、SNSで社名などの検索をかければ、その会社で働く人を発見できる可能性があります。ダイレクトメッセージを送り、「あなたの会社に興味があり、応募を考えています。一度お話を聞かせていただけませんか」などと相談してみるのも一つの手です。
面談を通じて、「現場で働く人」とも話をさせてもらう
求人に応募しているのであれば、面談を受けてみてください。事前に評判を目にして気になっていることがあれば、実際はどうなのかを聞いてみましょう。
ただし大手企業の場合、人事担当者が語る内容と現場の実態にギャップがあることもあります。部門や担当職務によって、現場の状況は大きく異なるはず。「配属予定の部署のメンバーの皆さんと話をさせていただけますか」と掛け合ってみてください。
現場の人と直接話すことで、評判の真偽を確かめられるだけでなく、その部署の雰囲気に自分がフィットするか、その人たちと一緒に働きたいと思えるかも判断できるはずです。
転職エージェントから情報を入手する
転職エージェントは、求人企業の離職率などのデータ、労働環境、風土などについて詳しい情報を持っていることがあります。その会社に転職した人から「働いてみての感想」を聞いていることもあります。気になっていることがあれば訊ねてみてください。
仮に、その場で答えが返ってこなくても、あなたに代わって企業に確認してくれます。
このように、どんな立場・状況の人が提供したのか、いつの時期に言及したのかなど、明確にわからない情報に対して情報に対して不安を抱くのではなく、その会社の現状を知っている人から情報を入手しましょう。そして何より、自身の目で確かめ、自身の感覚や価値観を軸に判断することをお勧めします。
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