転職活動の際、面接の自己PRで「柔軟性」をアピールしたいという人もいるでしょう。
この記事では、組織人事コンサルティングSegurosの代表コンサルタントを務める粟野友樹氏に、柔軟性のアピールにおいて評価されるポイントやNGポイント、応募書類への書き方のコツなどについて解説いただきました。
目次
柔軟性とは何か?
企業が求める柔軟性とは「その場に応じて臨機応変な対応ができる」「自分の考えに囚われず、新しい発想を生み出せる」「変化に対応して適切な行動・処置ができる」といったスキルを指します。
ただ相手や物事に合わせるのではなく、判断基準となる軸をぶらさずに意思決定する力といえばわかりやすいかもしれません。以下では、柔軟性について詳しく解説していきます。
企業が柔軟性を重視する理由
中途採用の場合、前職の業務スタイルや仕事の手法にとらわれ、そこで得た成功体験に固執してしまう人も少なくはありません。それにより、新たな仕事に必要なことを吸収できずにパフォーマンスを発揮できないケースや、配属先の職場に馴染めず孤立してしまうケースなども多く見られます。
しかし、多くの企業が中途採用で求めるのは“即戦力人材”のため「早く仕事内容を吸収し、職場の仲間と一緒に働きながら成長していけること」を重視しているのです。「柔軟性」の持つ特徴は、こうした面で評価されやすいと言えるでしょう。
柔軟性と協調性の違い
協調性は柔軟性と混同されがちですが、それぞれ意味が異なります。これらの相違点を理解し、柔軟性を自己PRする際に活かしましょう。
柔軟性とは
軸となる自分の意見を持っており、相手の考えを尊重しつつ意思決定できるスキル
協調性とは
立場や意見の違いを理解したうえで、協力して物事に取り組めるスキル
柔軟性を活かせるシーン
柔軟性を活かせるシーンについては、以下のようなものが挙げられます。自分の経験に照らし合わせて、アピールするエピソードの参考にしてみましょう。
● 既存の手法でうまくいかない点を分析し、新たな方法を考えて状況を打破した。
● 異業界や他部署の考え方を学び、自分の仕事の進め方に取り入れた。
● チームのメンバーの反対意見も取り入れ、プロジェクトを成功させた。
● イレギュラーなトラブルに対応し、顧客の信頼を得た。
● 相手に合わせた柔軟なコミュニケーション力でチームをまとめた。
柔軟性の例文【職種別】
職種別に柔軟性をアピールする例文を紹介します。テンプレートとして参考にしてください。
営業職
前職:食品/飲料系メーカーの法人営業
営業職【履歴書】
前職で訪問営業からオンライン営業への切り替え時、状況の変化に柔軟に対応した経験があります。
先進事例を学び、約20社の顧客への説明と社内向けの講習会によって、オンライン営業の導入効果を上げる施策を取りました。結果として売上減少幅を昨年対比90%と、当初から想定されていた減少幅より抑えて部署全体の業績に貢献しました。
この経験と実績を活かし、大きな環境変化にも自ら考え行動して貴社に貢献していきたいと考えております。
営業職【職務経歴書】
前職で訪問営業からオンライン営業への切り替え時、状況の変化に柔軟に対応した経験があります。
まずはオンライン商談の先進事例を学び、約20社の顧客への説明を実施し、資料もシンプルにしました。さらに社内でロールプレイングを行い、修正・改善を重ねて成功事例をもとに社内で定期講習会も行いました。結果として売上減少幅を昨年対比90%と、当初から想定されていた減少幅より抑えて部署全体の業績に貢献しています。
私の行動は、部長や先輩からも好評を得ることができました。この柔軟な対応と成果を活かし、大きな環境変化にも自ら考え行動し、貴社に貢献していきたいと考えております。
営業職【面接】
新たな環境に対応できる柔軟性が強みです。前職では訪問型の営業が難しい状況となり、オンラインでの営業に手法が切り替わりました。
これまでは顧客への訪問頻度を高め、対面で提案をするという営業手法を取っていました。 泥臭く顧客接点量を確保し、営業成績を上げていく形だったため、オンラインに切り替わることで売上の大幅減少が見込まれました。
こうした環境の変化に対応し、自分が取れる行動をいち早く取ろうと考えました。そこで、オンライン商談の先進事例の研究を行い、必要な情報や機材を入手し、約20社の担当顧客に向けて事前にオンライン商談ツールの使い方の説明を行いました。
提案資料もシンプルでわかりやすい形式に変更し、有志の仲間とオンライン商談のロールプレイングを実施しながら修正・改善していきました。
さらに成功事例をもとに、資料作成方法やプレゼン方法などのノウハウをまとめ、社内で定期講習会も行いました。
その結果、当初の想定より売上の減少幅を抑えることができ、昨年対比90%を維持することができています。
この経験を活かして大きな環境変化に直面した際にも、最適な方法を自ら考えて行動し、御社に貢献していきたいと考えております。
事務職
前職:広告代理店/営業事務職
事務職【履歴書】
部門業績低下に危機感を感じ「営業事務」の枠を超えた柔軟な対応で、施策を立案しました。
顧客単価の低下が課題だと感じたので提案の幅を広げ、異なる視点で営業事務から顧客へ商品を紹介するように共有します。その結果、営業事務の売上が部門全体の5%を占める成果を得ることができました。
この経験から学んだ柔軟な発想と行動力を、貴社においても発揮したいと考えております。
事務職【職務経歴書】
「営業事務」の枠を超え、柔軟な発想で業績向上を実現した経験があります。所属部門の業績低下時、私は顧客単価アップの提案が必要だと判断しました。
そこで営業事務としての役割に留まらず、メンバーと共に「1顧客あたり、必ず1つ商品の提案をする」という施策を実施します。初めての取り組みで反響は少なかったものの、提案範囲を広げ、異なる視点で営業事務から顧客へ提案することで営業事務の売上が部門全体の売上5%を占めるようになりました。
顧客と営業職からの評価も得ることができ、自分たちの直接的な貢献を実感しました。この経験を活かし、貴社でも組織目標に向けて柔軟に貢献していきたいと考えております。
事務職【面接】
「営業事務」の業務内容に縛られない、柔軟な発想力や対応力を強みとしております。
所属する営業部門の業績が下がり、目標に到達できないまま4カ月続く状況がありました。
顧客数は伸びていても単価は低下傾向にあり、既存顧客の単価をアップする提案ができていないと考えました。
そこで営業事務は“営業のサポート”ではありますが、できることはないかと考え、営業支援の施策を検討しました。最終的に営業事務が顧客とコミュニケーションする際に「1顧客あたり、必ず1つは営業事務から商品の提案をすること」を1か月間実施することに決めました。
最初は顧客から反響がなく苦労しましたが、営業職が提案できていなかった商品にまで提案範囲を広げ、異なる視点からの提案が評価され、営業事務のチームの成果は部門全体の売上金額の5%を占める結果を得られました。
「営業事務」の業務範囲にとらわれず組織全体を考えて、柔軟な発想で行動することの大切さを学びました。御社に入社後も、組織目標のために何ができるのかを考えて貢献していきます。
面接で柔軟性を自己PRとしてアピールするポイント
柔軟性を面接で上手にアピールするためのポイントをご紹介します。
面接までに背景や考え方を掘り下げておく
面接では自己PRについて深く掘り下げられるものです。「柔軟性」のエピソードでは「上司に言われたから」「何となく、そう思ったから」「会社の方針だったから」などの回答をすれば、主体性がない印象を持たれるでしょう。面接までに自分の経験を振り返り「なぜその行動を取ったのか」「なぜその方法を選んだのか」「それによって、何を得ることができたのか」など、自分の考えを明確にしておくことが大事です。
常に柔軟性ある回答を用意する
面接は流れや面接担当者によって質問の角度や順序が異なります。想定していないことを聞かれ、言葉に詰まってしまえば「柔軟性をアピールしているのに対応できていない」と思われるでしょう。柔軟性を強みとしている人でも、面接で緊張して力を発揮できないことは少なくありません。面接に臨む際には、自分が語りたいことのキーワードをしっかり押さえ、相手と対話しながら柔軟に回答する意識が大切です。
履歴書や職務経歴書の自己PRで柔軟性をアピールするポイント
「柔軟性」をアピールする書き方のコツや、面接までに準備しておきたいことを紹介します。
「柔軟性」を他の表現に言い換える
「柔軟性」はよく使われる言葉でもあるため、誰にでも当てはまりやすいものです。より自分らしくアピールするために、他の言葉に言い換えをすることがポイントです。柔軟性を持つ人が発揮できる2つの力「発想力」と「対応力」を活かした経験を振り返り、自分らしい表現を考えてみましょう。
柔軟性の言い換え例
1. 発想力
・既存の手法にとらわれない発想を活かし、顧客に多様なアプローチができる。
・世の中の変化をキャッチし、新たな企画を発想できる。
・業界の常識にとらわれず、多様な業界の視点を取り入れて仕事に活かせる。
2. 対応力
・臨機応変に要望に応えていく顧客対応力がある。
・相手の立場や意見を尊重し、柔軟にプロジェクトを取りまとめていける。
・人の意見を取り入れて、成長していくことができる。
・新たな環境や人間関係に素早く適応し、スムーズに仕事を進められる。
具体的なエピソードを入れる
エピソードでは抽象的な表現をせず、より具体的に伝えることが大事です。柔軟性を活かして取り組んだ経験を軸に、どんな意志や考えを持ち、どう行動し、どんな成果をあげることができたのかを理解してもらうことがポイントです。「状況」「課題」「意志・行動」「結果」までしっかりと書きましょう。
志望職種で活かせる点を伝える
自分が志望する職種の働き方を想定し、そこでどう柔軟性を発揮できるのかをアピールしましょう。自己PRの締めの文章では「入社後にどんな活躍・貢献ができるのか」をイメージしてもらうことがポイントとなります。応募先企業の仕事内容と自分が持つ強みについて重なる部分を書くことが大切です。
柔軟性をアピールするときの注意点
自己PRで柔軟性をアピールしても「周囲に流されやすいのでは」など、ネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。柔軟性をアピールして好印象を与えるための注意点もご紹介します。
柔軟性がアピールできる企業か確認する
柔軟性は多くの職場で重視されるスキルですが、全ての企業で高評価を得られるわけではありません。あらかじめ決められた業務を正しい手順で進めることが求められる企業では、柔軟性よりも「真面目さ」などをアピールした方がよいでしょう。企業のビジョンや働き方、求められている人材像などから、柔軟性が必要とされるかどうかを判断することが大切です。
すぐに転職するのではと思われないように気を付ける
柔軟性をアピールすると「周囲に流されやすく、主体性がない性格なのでは」と思われてしまい、すぐに転職しそうだと評価される可能性もあります。採用担当者はできるだけ長く働いて活躍できる人材を求めています。そのため成果が出るまで時間のかかる業種や、ひとつのプロジェクトに長く携わる職種の場合は、忍耐力や継続力を持っていることもアピールすると効果的でしょう。
柔軟性をアピールするメリット・デメリット
柔軟性を自己PRで使う場合のメリットとデメリットを説明します。面接で柔軟性をアピールしたいと考えている人は目を通しておきましょう。
柔軟性をアピールするメリット
面接で柔軟性をアピールするメリットは下記の3つです。
- 臨機応変さを印象付けることができる
- 人当たりが良さそうなイメージを持たれやすい
- 仕事をすぐに吸収し、早期に活躍する姿を想像してもらいやすい
柔軟性というと、一般的には「柔和」「話しやすそう」といった人柄の良さが伝わります。さらに「柔らかい考えの持ち主」というイメージから、仕事でも状況に応じて行動できそうだという評価につながるでしょう。
柔軟性をアピールするデメリット
柔軟性のアピールが悪い方向に作用するリスクも存在します。
- 周囲に流されやすいと判断される可能性がある
- 優柔不断だと思われる可能性がある
自分の意見や考えがなく、上司の指示や顧客の要望に対応したのみの場合は「主体性がなく受け身」「自分の意見がなく、人の意見に流されやすい」と評価される可能性があります。自分の意見や行動を軸にしたエピソードを伝えることが大事です。
転職の自己PRで悩んだらエージェントに相談しよう
「柔軟性」の自己PRは、ほかの応募者にもよく使われるアピール内容でもあります。具体例を用いるなど、面接担当者への伝え方を工夫しましょう。参考例文はもちろん、自己PRを作成する際のポイントなどもわかりやすく解説しましたので、必要な部分を参照し活用してください。
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約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2022年12月23日
記事更新日:2023年11月28日 リクルートエージェント編集部