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転職時のSPIは合否に影響する? 新卒時のSPIとの違いや準備方法まとめ

転職 SPI

企業が採用選考で実施する適性検査のひとつが「SPI」です。SPIの概要や企業がキャリア採用でSPIを導入する背景、合否への影響や受験の際の注意点について、SPI(現在、SPI3)の開発元である株式会社リクルートマネジメントソリューションズの測定技術グループ 研究員 新井一寿氏に伺いました。

SPI3とは?

企業が人材の採用選考を行う際は、応募書類や面接で応募者の能力や人物像を確認しますが、そのほかに「適性検査」と呼ばれるテストを行うケースがあります。SPI3シリーズは、年間15,900社、231万人が受検(2024年3月時点)する代表的な適性検査で、新卒採用だけでなくキャリア採用でも多くの企業で実施されています。

SPI3は大きく2種類の検査があり、仕事をする上で必要な知的能力を測る「能力検査」と、応募者の人物像を把握する「性格検査」がセットになっています。募集職種によっては、「英語能力検査」が加わることもあります。

能力検査

能力検査では、職種の違いを越えて共通して求められる「知的能力」を測定します。SPI3の能力検査には、「言語分野」と「非言語分野」の2種類の問題があります。言語分野では「語彙力や読解力」を、非言語分野では「数的な処理力や論理的思考力」を測定しています。

この能力は、目の前の課題に対して合理的に思考し、効率的に解決する方法を探り計画的に行動するといった、実際のビジネスシーンで求められる力です。暗記や受検対策によって簡単に得点が上がるものではなく、長期における日常的な努力によって培われます。

性格検査

性格検査では、約300問の日常的な行動や考え方に関する質問を通じて、人との接し方や仕事への取り組み方、目標の持ち方などと関係の深い性格的な特徴を測定します。例えば、「A.○○は××だ B.○○は△△だ」など、日常的な行動や考え方についての複数の選択肢に対して、自分がどの程度当てはまるかを答えます。

この検査によって、応募者の性格的な特徴や実施する企業への適応のしやすさを把握することができます。

SPI3の実施形式

SPI3の実施には4つの受検方法があります。どの受検方法になるかは応募先企業によって異なります。

テストセンター

リクルートマネジメントソリューションズが運営する専用会場のパソコンで受検する「リアル会場」、自宅などのパソコンで専用システムを使って受検する「オンライン会場」の2種類があります。

WEBテスティング

オンラインに接続できるパソコンから受検する形式で、指定された受検期間内の都合の良い時間に受検します。テストセンターの「オンライン会場」での受検とは異なります。

ペーパーテスティング

応募先の企業が用意した会場で、マークシートで受検する形式です。

インハウスCBT

応募先の企業に出向いて、企業内のパソコンで受検する形式です。

企業がキャリア採用でSPI3を導入する背景

キャリア採用は即戦力を求める「経験者採用」が多くあるため、企業は職務経歴書に記載された実務経験やスキルを選考基準とするのが一般的です。一方で、欠員募集などの場合は新卒採用よりも選考期間が短くなり、応募書類だけで人物像を判断するのが難しくなります。また、面接担当者によって評価にばらつきが生じる可能性もあります。

こうした課題に対して、SPI3を始めとする適性検査を採用選考に取り入れることで、短時間でも応募者の人物像や募集しているポジションに適した人材であるかを把握することができます。求める人物像や社風とのギャップから、せっかく採用した人材が入社後に早期退職するリスクを回避することが期待できます。

なお、採用だけではなく、SPI3を入社後の育成やフォローアップに活用する企業もあります。即戦力として採用された経験者でも、社風や仕事の進め方に馴染むまでは一定の時間がかかるものです。入社者の上司や同僚にSPI3の結果を共有しておくことで、人物への理解が深まり、質の高いコミュニケーションに繋げることができます。選考用のツールのイメージが強いSPI3ですが、入社後の育成に使用できる報告書も用意しているため、キャリア採用でも導入されるケースが増えています。

新卒時のSPI3との違い

SPI3には新卒採用向けの「U」、キャリア採用向けの「G」という種類がありますが、出題内容は基本的に同じです。ただし、「U」は大学生、「G」は社会人を母集団として得点を算出しているので、点数の出方が異なります。

なお、企業が能力検査に求める正答率はケースバイケースなので、キャリア採用と新卒採用で基準が異なるということはありません。

SPI3は採否に影響する?

新卒採用では一度に大勢の応募者の選考を行うことが多いので、面接に進める応募者の優先順位づけのために、書類選考と合わせてSPI3の結果を活用することがあります。

一方でキャリア採用では実務経験が重視されるため、面接において応募者の人物理解のための参考資料として利用されることが多いようです。採用担当者はSPI3の結果と面接を合わせて応募者の人物特性を理解し、自社に合う人材だと総合的に判断すれば採用になる可能性があります。

もしも複数の応募者の選考が進んで評価が拮抗した場合、「同じ基準で客観的に比較できる指標」としてSPI3が利用されることもあるかもしれません。しかし、SPI3は万能ではなく、応募者の人となりを適性検査だけですべて説明することはできません。あくまでも他の要素と合わせて判断されるでしょう。

SPI3を受ける前に準備しておきたいこと

資格試験や学校を受験する際は、合格や高得点を目指して知識や学力を高めるのが一般的です。しかし、SPI3は学力を測定しているわけではないので、事前に記憶したり練習問題を解いたりすれば成績が上がるというものではありません。その理由とおすすめの準備や心構えについて解説します。

参考資料:適性検査「SPI」とは?(リクルートマネジメントソリューションズ)

能力検査の準備

能力検査は、前述の通り知的能力を測定する検査で、問題を正しく理解し処理することが求められます。長期的に培われる力なので、付け焼刃で事前に対策をしても得点結果はさほど変わらないことが実証されています。

そのため、重要なのは本番当日に自分の実力を存分に発揮できることです。パソコンでの受検は「手元で計算して画面上で答える」「次に進むと前の画面には戻れない」といった独特の進め方になるので、あらかじめ受検方法や解答方法を確認しておきましょう。実際に受検する際には、本番前に「説明画面」や「練習画面」が用意されているので、ぜひご活用ください。

また、問題形式を把握していないと、本番で焦って実力が発揮できない可能性があります。事前準備として、どのような問題が出るのかを、以下の記事の問題例を見て確認しておきましょう。

参考資料:

性格検査の準備

性格検査は人となりを把握するための検査なので、事前準備は必要なく自分の正直な気持ちに従って、深く考えすぎずに回答するようにしましょう。

性格検査は類似の質問が何度も出題されるため、「答えが食い違ってしまうのでは?」と不安に感じる方もいるようです。これは、ひとつの性格特性について表現を変えながら多角的に質問することで、特徴の強さを高い精度で測定するための手法です。同じ人物でも答えがぶれることはあるので、「正解は何だろう?」などと考えすぎずに直感的に答えていきましょう。

なお、志望企業が求める人物像に沿うように性格検査の回答を取り繕ったとしても、その後の面接の回答などで検査結果と実際の人柄とのギャップを採用担当者に見抜かれてしまうでしょう。仮に入社できたとしても、社風や仕事内容、職場の雰囲気に合わずに思うように成果が出せず苦労する可能性もあります。企業によって求める人物像は異なるため、自分に最適な仕事や企業を選択するためにも、正直に回答することをおすすめします。

問題数と時間制限への心の準備

基本的なSPI3は、パソコン受検は能力検査と性格検査を合わせて約65分、マークシート受検は110分です。

パソコンによる能力検査は、IRT(Item Response Theory:項目反応理論)という技術を用いた「適応型テスト」を導入しています。適応型テストでは、出題した問題に対する正誤をもとに受検者の能力を推定し、その人に合った難易度の問題を選んで出題するという「視力検査」のような方法で、受検者の能力レベルを測定しています。そのため出題内容・出題数とも受検者によって異なり、能力を精度高く推定できた時点で終了となります。一問ごとに時間制限がありますが、多くの人が十分に解ける時間を設定しているので、出題をよく読み、焦らずに解答していきましょう。

性格検査は全員が同じ内容で、全問を回答する前提で設計されています。問題数は多いですが、時間は十分あるので慌てずに取り組んでください。

SPI3を受ける際に気をつけておくことは?

SPI3は、40年以上にわたりデータを蓄積してきた実績がありますが、その目的は「学歴などの属性を離れた1人ひとりの人物特性を理解し、『個を生かす』採用選考を実現することです。自分の能力や特性にフィットした企業であれば、入社後にイキイキと働き長く活躍することができるからです。

そのためには、SPI3に対して「ありのまま」のスタンスで向き合うことが重要。性格検査で自分を良く見せようと日常の考え方や行動とは異なる回答をしてしまうと、自分に合っている企業なのに「適応しにくい」という検査結果が出たり、適応しにくい企業なのに「適応しやすい」という検査結果が出たりする可能性があります。誤解に起因した転職は、企業と求職者双方にとって幸せなことではありません。

自分の実力や性格的な特性が的確に検査結果に反映できれば、SPI3は自分の持ち味に合った職場とのマッチングの一助になります。また、入社後の職場のコミュニケーションや仕事への適応においても、大きな力になるでしょう。

新井 一寿(HRアセスメントソリューション統括部 測定技術グループ 研究員)

2005年株式会社リクルートマネジメントソリューションズ入社。採用領域のアセスメントや従業員向けサーベイの研究・開発に携わる。その後SPIのコールセンターやテストセンター運営・採点物流のマネジメントを経験し,2017年より現職。SPI3を始めとする適性検査の開発・品質管理や心理測定技術に関する研究を担う。

記事作成日:2020年12月10日
記事更新日:2022年3月31日
記事更新日:2024年10月31日 

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