納得できる転職を実現するためには、計画を立てることが大切です。特に働きながら転職活動をする場合は、準備をしっかり行う必要があります。転職活動で必要な「自己分析」「書類作成」「求人探し・応募」「面接対策」の各プロセスについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏がアドバイスします。
転職活動の流れとおおよその期間
転職活動のプロセスを大きく分けると、「事前準備や応募」「面接」「内定」「退職や引継ぎ」の4つに分けられます。転職活動のおおよその期間は、早くても2カ月程度、通常は3カ月程度、長引いて6カ月程度が一般的です。退職していて面接の日程に柔軟に対応できたり、オンライン面接が多かったりすると転職活動期間が短くなる傾向があります。
<転職活動期間の目安>
事前準備や応募 | 約2週間 |
面接 | 約1カ月 |
内定 | 約1週間 |
退職や引継ぎ | 約1カ月 |
転職スケジュールの立て方
転職活動は、退職時期を決めて逆算すると計画しやすくなります。転職活動のスケジュールの立て方について解説します。
就業規則を確認する
退職日を決める前に、就業規則を確認しておきましょう。企業によっては「退職希望日の○日前までに申し出ること」と、退職の申し出期間を設けているケースがあります。また、有給休暇や賞与の支給要件についても確認しておきましょう。
退職時期を決める
就業規則を確認したら、退職時期を決めます。転職先企業が決まる前に退職する場合は、残りの有給休暇日数や引き継ぎなどを考慮して退職日を決めましょう。仕事と並行して転職活動を進めて、内定が出てから退職を申し出る場合は、業務の忙しさや転職活動期間を考慮して、目安となる退職時期を決めます。
逆算してスケジュールを立てる
退職日や退職目安が決まったら、逆算して転職スケジュールを立てましょう。年末年始やゴールデンウィーク、夏季休暇の時期は応募先企業が休みに入り選考が止まってしまう可能性があります。また、業務の繁忙期やプロジェクトの区切りなども考慮し、転職活動期間を設定しましょう。面接日程の調整に時間がかかったり、応募企業の選考が長引いたりして想定よりも時間がかかる可能性があるので、スケジュールには余裕を持たせておくと安心です。
【転職準備】①自己分析・キャリアの棚卸し
転職活動を始める前に、自己分析とキャリアの棚卸しをしておきましょう。転職の軸やアピールポイントが明確になります。
自己分析で明らかにすること
自己分析を通じて自分の強みや得意分野などを整理することで、転職の軸が明らかになります。転職の軸が曖昧なまま転職活動を始めてしまうと、選択肢が多すぎて求人を絞り込めません。また、複数の企業から内定が出た時も、判断基準がないので選べなくなってしまいます。次のポイントに従って、仕事に対する価値観や大切にしたいことを明らかにしておきましょう。
- 仕事において自分が大切にしたいこと
- 自分の強みは何か。その強みを今後どう活かしたいのか
- どのような仕事や環境なら楽しく働けるのか
- 将来どのような自分になりたいのか
キャリアの棚卸しで明らかにすること
これまでの社会人経験を振り返って、時系列で業務内容を洗い出してみましょう。さらに、学んだことや成果が出たことなども書き加えることで、身につけた経験・スキルや実績を明らかにすることができます。キャリアの棚卸しで洗い出した過去の経験は、職務経歴書の作成にも役立つでしょう。
- どのような成果を挙げてきたか
- どのような行動や工夫が成果につながったのか
- どのようなスキルを身に付けたか
- 特に自分が得意とすることは何か
【転職準備】②応募に必要な書類の作成
自己分析やキャリアの棚卸しが終わったら、応募書類の作成を進めます。転職活動では、一般的に履歴書と職務経歴書が必要ですが、クリエイター系の職種では自身の実績をビジュアルなどで伝える「ポートフォリオ」を求められることもあります。
履歴書・職務経歴書の作成
転職活動で必要な応募書類は、履歴書と職務経歴書が一般的です。履歴書が氏名や住所、学歴や職歴といったプロフィールを伝えるための書類であるのに対し、職務経歴書は具体的な経験・スキルを伝えるための書類という違いがあります。
履歴書の書き方
履歴書は市販の履歴書用紙や、インターネットでダウンロードできるテンプレートを利用します。厚生労働省が作成した様式の他に、志望動機や自己PR欄が設けられているものなど、複数のフォーマットがあります。例えば、転職回数が多い場合は学歴・職歴欄が大きいものを、第二新卒で志望意欲や仕事への姿勢をアピールしたい場合は志望動機や自己PR欄が大きいものなど、自身の経歴に合わせたフォーマットを選びましょう。
職務経歴書の書き方
職務経歴書は具体的な職歴や経験・スキル、自己PRを伝える書類です。履歴書の職歴欄では伝えきれない業務内容や実績などを記載するため、選考に影響する重要な書類です。履歴書と違ってフォーマットが決まっていないため、採用担当者が読みやすい内容にまとめることが基本です。冒頭で職務経歴の要約を入れて、職務経歴や実績、これまでに得たスキルや自己PRを記載します。
志望動機や自己PRの作成
履歴書によっては、志望動機や自己PR欄が設けられているフォーマットがあります。入社意欲や自分の強みをアピールできる項目なので、志望動機や自己PRを作成しておくと良いでしょう。
志望動機の作成
履歴書のフォーマットによっては、志望動機が入っていないものもあるので、応募書類の段階で必要なわけではありません。ただし、面接では必ずと言っていいほど聞かれる項目なので、面接までには考えておきましょう。
自己PRの作成
職務経歴やスキルだけでは、応募者の人柄は伝わりません。仕事に対してどのようなこだわりを持ち、どのような強みがあるのかを自己PRで伝えることで、企業の採用担当者が応募者の人物像をイメージすることができます。そのため、自己PRはできるだけ具体的なエピソードを盛り込み、成果は数値を交えて伝えるようにしましょう。
【転職準備】③求人探し・応募
応募書類の作成が終わったら、実際に求人を探して応募してみましょう。求人を探すためには、応募する業界・職種の情報収集が必要です。情報収集をしながら興味を持った求人に応募し、面接で聞いた話を求人探しに活かすことで、求人選びの精度が高まっていくでしょう。
求人の探し方
求人は様々な方法で探すことができます。複数の方法を組み合わせて活用することで、選択肢が広がるでしょう。
- 転職サイトや求人誌などで求人を検索する
- ハローワークに相談する
- スカウト機能を持つ転職サービスに登録し、オファーを待つ
- ビジネスSNSに登録し採用情報を探す
- 転職エージェントから紹介を受ける
- 合同転職イベント・企業の説明会に参加する
- 興味がある企業の採用ページを確認する
- 友人・知人に紹介を依頼する(リファラル採用)
効率的な応募方法
求人に応募する場合は、企業を絞り込み過ぎないようにしましょう。1社1社応募していると、転職活動が長期化する可能性があります。また、入社する企業は複数の内定先から比較検討して選ぶことで、納得感が高まることが多いでしょう。応募する企業を絞り過ぎると、複数社から内定を得ることが難しくなることもあります。そうすると比較検討ができなくなるので、求人に応募する際はできる限り時期を揃えてまとめて応募し、書類選考の結果を見ながら応募数を調整すると、長期化を防ぎ納得できる選択をすることができるでしょう。
【転職準備】④面接対策
書類選考が通過したらいよいよ面接対策です。面接で聞かれやすい質問や採用担当者が面接でチェックしているポイントを把握し、事前に準備しておきましょう。
面接で聞かれやすい質問
面接で聞かれやすい質問は、回答を事前に準備しておくことで緊張せずに話すことができます。回答を準備する際は、求人や企業の採用ページなどを確認し、企業研究を深めておきましょう。
- 自己紹介
- 自己PR
- 志望動機
- 転職(退職)理由
- 経験・スキル・実績
- 長所・短所
- 逆質問(何か質問はありますか?)
採用担当者がチェックしているポイント
企業の採用担当者が面接で確認しているポイントは、大きく分けて3つあります。ポイントを意識して伝えるようにしましょう。
- 能力・資質・経験(CAN):能力・資質・経験が採用したい人物像と一致するか
- 意欲・意気込み・将来性(WILL):本気で新しい仕事に取り組もうとする気持ちが感じられるか
- 社風に合うか(CULTURE):仲間として迎えたときに前向きに働ける人か、仕事における価値観や目指す方向性にギャップがないか
面接でうまく話すコツ
面接前に、鏡やパソコン・スマートフォンのカメラ機能、動画撮影などの方法で、話している様子をチェックしておくという方法があります。話し方のクセや表情、テンポなどを客観的に観察できるので、改善点が分かるかもしれません。また、面接は回数を重ねると段々うまく話せるようになるものです。求人では気づかなかった魅力を知る可能性もあるので、応募する企業を絞り過ぎず、複数の企業の面接を受けるといいでしょう。
転職活動やることリスト
転職活動で準備しておくことをチェックリストにしました。進捗状況を確認しながら、転職活動を進めましょう。
□ 求人情報の収集・比較検討
□ 業界研究・企業研究
□ 応募書類の作成(履歴書・職務経歴書など)
□ 応募
□ 面接対策
□ 面接準備(服装や持ち物、オンラインの場合の環境準備など)
□ 労働条件通知書の条件確認
□ 退職交渉
□ 引き継ぎ・退職手続き
□ 入社手続き
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2022年3月31日
記事更新日:2023年2月28日
記事更新日:2024年7月16日 リクルートエージェント編集部