転職の悩みのひとつが「タイミング」です。転職にベストなタイミングはあるのでしょうか?そこで、転職のタイミングや年間を通じての傾向などを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
転職のベストタイミングは人それぞれ
転職活動はできる限りベストなタイミングで始めたいところですが、これまでのキャリア、現職の状況、転職市場、希望する企業の募集時期など、タイミングを決める要素がたくさんあるため、ベストタイミングは人によって異なります。
転職のタイミングをはかりたい場合は、自分が置かれている状況と希望条件などを整理し、後述する「見極めポイント」や「慎重に判断した方がいいケース」を参考にして、総合的に判断しましょう。
転職に最適な時期は?
年間を通して、転職に最適な時期はあるのでしょうか。求人が多い時期と、ボーナスを受け取って転職するパターンについてご紹介します。
4月入社を目指す1~3月
多くの企業は4月に新年度が始まるため、新しい期に向けて1~3月に採用が活発化する傾向があります。また、企業によっては異動者や新卒が着任する4月に向けて採用を行い、教育研修をまとめて行うケースもあります。そのため、1~3月は求人が多く転職活動に適した時期である上に、期初で組織体制が新しくなるタイミングなので、環境に馴染みやすいとも言えるでしょう。
10月入社を目指す7~9月
1~3月の次に求人が多いのは7~9月が考えられます。これは、年間で採用計画を立てている企業が、4月入社の上半期の採用を振り返って、10月に向けて採用を充足しようとするためです。また、期末の3月に退職した従業員の欠員募集という側面もあります。4月の新体制で新たな人材ニーズが明らかになって、追加で採用活動を行うケースもあります。
ボーナス後の7~8月、1~2月
ボーナスを受け取ってから辞めたい場合は、査定対象期間に在籍していることが条件になるため、査定対象期間以降に退職願を出すと言ったスケジュールで考えましょう。ボーナスを受け取って転職したい場合は、必ず就業規則を確認し、ボーナスの受給条件を調べておききましょう。
転職のタイミングを見極めるポイント
転職のベストタイミングは人それぞれですが、見極めるポイントがあります。転職する人の理由に多く見られる5つのポイントをご紹介します。
成長実感を得たい
現職の仕事にやりがいを感じなくなり、社内を見渡してみても成長できそうな仕事が見つからない場合に、転職を検討し始める方が多いようです。ルーティンワークなどで専門スキルが身につかず「成長実感がない」と考える方だけでなく、20代後半はリーダークラス、30代ともなるとマネジメントクラスにキャリアアップしたくなる時期。社内にリーダー・マネジメントポジションがない場合は、転職して新たな経験を身につけた方が早いかもしれません。
キャリアチェンジしたい
キャリアチェンジを考えている場合は、まず自社で異動や出向などの手段でキャリアチェンジを実現できないか検討しましょう。自社でのキャリアチェンジが図れない場合は、転職が選択肢になります。キャリアチェンジは、若手だとポテンシャルを評価されて未経験でも比較的転職することが容易ですが、社会人経験が長くなるにつれて即戦力となる経験・スキルを求められるようになります。そのため、キャリアチェンジをしたい場合は、早めに転職するかどうかを見極めることが重要です。
環境を変えたい
自分が置かれている環境を変えたい場合も、転職のタイミングかもしれません。プロジェクトがひと段落した時や、大きな成果を出して「やり切った」と実感できた時などに、環境を大きく変えるのもキャリアの選択肢のひとつです。区切りが良いので、成果をアピールしやすく、引き継ぎも進めやすいでしょう。業界や職種を変えて新たな専門知識・スキルを身につけたり、企業規模を変えて役割や立場を変えて裁量を広げたりするなど、新たな成長ステージに向かって歩みを進めましょう。
所属企業の方針が変わった
所属企業の方針変更も、転職タイミングのひとつです。仕事への満足度は、待遇や職場環境、仕事内容だけでなく、企業や事業の方針が自分の志向と合っているかも重要なポイント。事業方針が変わり、モチベーションが保てなくなった場合は、転職するかどうかを慎重に判断しましょう。事業方針は、転職後の企業でも変更する可能性はあるため、自分のやりたいことや理想ばかりを追い求めてしまうと、転職を繰り返してしまうかもしれません。自己分析を通じて、自分が大切にしていることや価値観を明らかにして、冷静に判断しましょう。
現在の仕事に強い不満がある
現職に強い不満があり、工夫や改善を図っても不満が解消しない場合も、転職の見極めポイントと言えます。ただし、不満だけを理由にして転職してしまうと、転職先で新たな不満が生じた時に、また転職をしたくなってしまうかもしれません。不本意な転職を繰り返さないために、不満の裏側にあるポジティブな気持ちまで言語化することが大切です。例えば「縦割りで融通の利かない企業体質が不満だった」という不満は、言い換えると「他の部門とも柔軟に連携して成果を出したい」という思いの表れかもしれません。
必ず、不満の裏側にある自分の気持ちを明らかにして、その思いが実現できる企業を選びましょう。
慎重に判断した方がいいケース
一方で、転職を慎重に判断した方がいいケースとは、どのような事情が挙げられるのでしょうか。よくある5つのケースをご紹介します。
大きなプロジェクトの途中
プロジェクトの途中で転職することは可能です。ただし、プロジェクト中に転職活動する場合は、成果や結果が出ていないためアピール力に欠けてしまうかもしれません。また、プロジェクトでの役割によっては、途中で転職することについて「責任感が欠けているのでは」などと、応募企業からの評価に影響する可能性があります。特にプロジェクトマネジャー、プロジェクトリーダーなど責任者の場合は、できるだけ区切りの良いタイミングで転職活動をするか、採用担当者が納得できる転職理由を用意しておきましょう。
昇進や昇給を控えている
マネジャーなどに昇進する可能性が高く、現職で価値のある経験が積めるのであれば、現職で実績を積んでから転職をした方が選択肢は広がります。また、転職を見送って昇給してから転職を検討するという方法もあります。
なお、現職での昇進・昇給の予定を利用して、転職の条件交渉を有利に進めようとするケースがありますが、実績がない「予定」の状態では評価に影響しないと考えておきましょう。
転職して間もない
例えば、「入社したら聞いていた雇用形態と違った」「実態は経営不振で聞いていた給与は見込めないことが分かった」など、客観的に納得できる理由があれば、転職して間もない状態でも、転職で大きく不利になることはないでしょう。ただし、一般的に短期間で転職した経歴があると、「すぐに辞めてしまうのではないか」「新しい環境に馴染みにくいのでは」などの懸念を持たれてしまう可能性があります。短期間で次の転職活動を始める前に、現職で改善できることがないか探ってみることをおすすめします。
結婚や出産を考えている
結婚や出産を控えている場合は、自分だけで決めずに家族やパートナーに説明し、賛同を得ておきましょう。特に出産に関しては、育児をしながら安定して働けるタイミングを見極めることが重要です。また、一定の在籍期間がないと育児休業を取得することができない企業も多いので、中長期的な視点で慎重に検討しましょう。
住宅ローンを検討している
転職した直後は住宅ローンが組みにくくなります。一般的な金融機関の審査は、2~3年は企業に在籍していることが条件になるからです。金融機関や条件によっては基準が緩和される可能性もありますが、できれば転職前に住宅ローンの手続きを済ませておくことをおすすめします。また、転職直後はすぐにボーナスを受け取ることができなかったり、試用期間中だったりして、思ったよりも収入を得られない可能性があります。ローンを滞りなく返済できるかどうかを、きちんと確認しておきましょう。
転職を考えた際の流れ
転職を検討してから入社までの流れをご紹介します。
- 就業規則で退職の申し出の期限を確認しておく
- 転職活動を始め、応募先から内定を得る
- 内定企業の労働条件を確認し、内定承諾する
- 在籍企業の上司に退職の意思を伝える
- 退職日を決め、退職届を提出する
- 後任が決まったら引き継ぎを行う
- 退職手続きを行い、在籍企業に返却するものをまとめる
- 入社に必要な書類を準備し提出する
転職のタイミングに迷うなら転職エージェントに相談を
担当している仕事やプロジェクト、家庭の事情、キャリアプラン、転職市場の動向など、転職には様々な要素が重なるため、いつがベストタイミングなのか迷ってしまう方も多いでしょう。もし転職のタイミングに迷ったら、転職エージェントに相談してみることをおすすめします。転職エージェントのキャリアアドバイザーは、数多くの転職支援を通じて、多くの転職成功事例を知っています。過去の実績や転職市場の動向、面談を通じて経験・スキルや転職に求める希望などを総合して、転職のタイミングに関する適切なアドバイスを受けることができます。面談はオンラインでも行っているので、迷った場合は遠慮せず相談してみましょう。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。