ワークライフバランスや待遇面の向上によって「長く働ける会社」を探している方は少なくありません。履歴書に記載する志望動機が「長く働きたい」という理由はアピールになるのでしょうか。履歴書の志望動機の考え方について、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
目次
採用担当者が志望動機で判断しているポイント
企業が志望動機から確認しているポイントは、主に「定着性(当社に定着し長く働いてくれそうか)」「入社後活躍(強みを活かして活躍してくれそうか)」「意欲(当社への入社意欲が高いか)」です。
この企業が知りたい3つのポイントをうまく盛り込み、志望動機としてまとめることが重要です。しかし、履歴書の志望動機欄はスペースに限りがあります。志望動機は面接でも聞かれる重要な項目なので、3つのポイントで志望動機を作成し、履歴書用に短い文章に構成し直すと良いでしょう。
「長く働きたい」を志望動機として伝える場合の言い換え方
「定着性」「入社後活躍」「意欲」の3つのポイントに従って、志望動機の作成方法をご紹介します。
定着性:この会社なら前職での不満が解消できると伝える
「長く働きたい」と考えた理由は何でしょうか。転職を決めたきっかけを振り返ってみましょう。
例えば「残業が多すぎて適切な業務時間の会社で長く働きたい」という理由の場合、なぜ残業が多くて転職を考えるようになったのかを掘り下げてみます。「無駄だと感じる会議が多い」「IT化されていない職場で、紙文化が強く非効率だった」など、残業の原因や不満を洗い出してみましょう。退職のきっかけになった不満を裏返して考えると「業務効率を高めたい」「ITを活用し、効率を重んじる職場で働きたい」という転職理由になります。
「長く働きたい」と考えるに至った背景を分析し、自身にとっての「長く働ける会社」とはどのような状態なのかを明確にすることが、志望動機作成の第一歩です。
入社後活躍:今までの経験、スキルが活かせると具体的にアピールする
採用担当者に「入社後にすぐに活躍してくれそう」と思わせるには、応募する企業や求人内容との共通点を見つけ「これが活かせる」とアピールすることが大切です。確実かつ早いのは、求人情報を読み込むことです。求める人物像の中には、募集職種のコアスキルとなるキーワードが載っているでしょう。それが自分のスキル、強みに合うかどうか確認し、合うようならば前面に押し出してアピールします。
もし、企業が求めているコアスキルと自身のスキルがあまりマッチしていないけれど、志望度が高いという場合は「仕事の進め方」や「大事にしていること、優先していること」を確認するといいでしょう。こちらも求人情報やホームページなどに載っている場合が多いですが、ピンと来なければ「5W1H」の観点で確認し、応募企業・応募求人と自分との接点を見つけましょう。
意欲:会社の理念や戦略、方針に共感していることを伝える
志望意欲を伝えるポイントは「応募企業固有の志望動機になっているか」です。同じ業界のほかの企業にも通用する内容だと「当社への入社意欲が低いのではないか」と不安視される可能性があります。
求人情報だけでなく、業界や企業に関するニュースや企業のホームページを読み込むなどして、共感できる点を探してみましょう。例えば前述の「前職は残業が多かったので、長く働ける会社で働きたい」という退職理由であれば、応募する企業の採用ページなどに1日のワークスタイルが紹介されていたり、生産性向上のためのIT導入事例が掲載されていたりするかもしれません。
「長く働きたい」ときの志望動機の伝え方における具体例
初めから履歴書用にまとめるよりも、面接用の回答を考えてから要点を絞った方が網羅性の高い志望動機となります。採用担当者に「会って話を聞いてみたい」と思わせる志望動機を目指しましょう。
志望動機例文(面接用)
まずは面接での伝え方について解説します。
OK例
広告代理店で5年間、法人営業に携わってきました。顧客第一の姿勢が認められ、幸いにも営業成績は良く、年間トップの実績を挙げた経験もあります。しかし「営業は足で稼ぐ」「朝礼で気概を伝える」など、営業方針に合理性が欠けており、業務を効率化できないのが悩みでした。顧客接点を増やし提案の質を高めるには、ITなどを活用して営業外の業務を減らし、営業効率を上げることが重要だと考えています。
御社のWebサイトにはチャットボットやデモ画面など、オンラインを活用した営業機会が設けられており、全社を挙げてIT化を図っている点に興味を覚えています。これまで法人営業として現在約30社を担当し、顧客接点を増やして一から信頼関係を築いてきた経験は、顧客第一主義を貫く御社においてもすぐに活かせると考えております。
【伝え方のポイント】
定着性:前職は非効率であったが、この企業ではIT化が進んでいる。
入社後活躍:顧客との信頼関係構築力を活かせる。
意欲:全社を挙げてIT化を図っていることに共感。
NG例
広告代理店で5年間、法人営業に携わってきました。しかし「営業は足で稼ぐ」「朝礼で気概を伝える」など、営業方針に合理性が欠けており、業務を効率化できないのが悩みでした。これでは業績に限界があり長く働けないと感じ、転職を決意しました。
私は今回の転職で長く安心して働ける職場を望んでいます。したがって、御社に入社することを志望しました。
こちらの表現では「長く働きたい」という理由だけで、この企業に応募したように聞こえてしまいます。良い例のように「なぜ長く働きたいと感じるようになったのか」を深掘りして志望理由を伝えましょう。
また「長く働きたい」だけでは「なぜこの企業に応募したのか」という点が弱くなります。転職を決意した理由が応募先企業で解決できる理由を明確に伝えることが大切です。
志望動機例文(履歴書用)
次に履歴書に書く際の表現方法について解説します。
OK例
広告代理店で5年間、法人営業に携わってきました。前職では営業外の業務が多いのがジレンマでしたが、IT化を推進している貴社で業務の効率化を図りながら、顧客第一主義の営業活動で成果を出したいと考えております。
【伝え方のポイント】
定着性:前職は営業外の業務が多かったが、この企業では効率化が進んでいる。
入社後活躍:前職の経験と顧客第一主義をアピール。
意欲:IT化の環境で前職の経験を活かし成果を出す。
NG例
広告代理店で5年間、法人営業に携わってきました。前職では営業外の業務が多いのがジレンマで、長く働けないと感じました。御社であれば長く働ける環境であると考えております。
この表現では前職の不満を伝えるだけになってしまい、応募先企業に良い印象を与えることができません。面接と同様に「なぜ長く働きたいと感じるようになったのか」を深掘りして志望理由を伝えましょう。
「長く働きたい」を志望動機として伝える場合の注意点
採用企業は「長く働いてもらう」ことを大前提で考えています。そのため「長く働きたい」という理由だけの志望動機では不十分です。入社後の活躍の可能性や入社意欲を掴むことができず「長く働くことができれば自社でなくてもいいのでは?」と判断されてしまいます。
書類選考でプラスに働く志望動機にするためには、例で挙げたように「長く働きたい」理由を明らかにして「定着性」に繋げ、さらに「入社後活躍」「意欲」をプラスするようにしましょう。
志望動機の書き方は添削サポートが受けられる転職エージェントの利用もおすすめ
長く働きたいことを深掘りしても、自分が転職を決めた理由がなかなか見つからないことがあるかもしれません。そのときは転職エージェントを利用することもおすすめです。転職エージェントは志望動機の書き方から面接での伝え方まで、あらゆる面でサポートしてくれます。自分だけでは見つけられなかった本当の転職理由が見つかることもありますので、ぜひ転職エージェントの利用を検討してみてください。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。