転職を考えつつも、「仕事が忙しくて両立できるか不安」と悩んでいる方も少なくないようです。働きながら転職活動を進めるのは難しいのでしょうか。そこで、働きながら転職活動をするメリット・デメリットや、無理なく働きながら転職する方法などを組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に伺いました。
目次
働きながら転職活動をするかはメリットとデメリットを踏まえて判断する
応募書類の作成、応募する企業の絞り込み、企業研究、面接対策など、転職活動は思いのほか時間がかかるものです。それでも働きながら転職活動をするかどうかは、この後に解説するメリットとデメリットを踏まえて判断するといいでしょう。退職してから転職活動を始める場合は、「ブランク(離職期間)」が生じます。その間は収入がなくなるので、生活の不安を抱えることになります。もちろん、雇用保険に加入し支給要件を満たしていれば基本手当などが支給されますが、給付額や給付期間には限りがあります。
働きながら転職活動するメリット
働きながら転職活動する代表的なメリットを3つ解説します。
収入面が安定している
離職期間が発生しないので、収入面が安定するのが大きなメリットです。前述した通り、雇用保険の基本手当を受給することも可能ですが、給付額や給付期間には限りがあるので、収入が安定します。特に、ローンの返済や家賃、保険など毎月決まった出費がある場合は、貯蓄がないと支払いが難しくなってしまいます。給与・賞与など安定的に収入があることで、生活資金に困らず、気持ちに余裕を持って転職活動を進められます。その結果、焦って妥協することなく、納得のいく企業を選べる可能性が高いと言えるでしょう。
ブランクが発生しない
退職してから転職活動を始める場合、次の転職先が決まるまでの期間がブランクとなります。やむを得ず離職する場合を除き、転職先がなかなか決まらずブランクが長くなった場合は、企業から「この間は何をしていたのだろう」「転職先が決まらない理由があるのだろうか」と懸念される可能性があります。面接で聞かれる機会も増えるので、明確な退職理由を伝える必要があります。働きながら転職活動をすると、ブランクが生じないのがメリットです。
転職活動を中止できる
退職は不可逆性が高い決断です。転職活動をして自分の経験・スキルのニーズを理解し、置かれている環境を見つめ直した結果、「今の会社にとどまる」という選択をすることも、退職していなければ実現可能です。内定が出たとしても、現職と内定企業を冷静に比較して選択できる点もメリットと言えるでしょう。
働きながら転職活動するデメリット
メリットがある一方で、デメリットも考えられます。働きながら転職活動をするデメリットについて紹介します。
会社に知られる可能性がある
転職活動は、基本的に所属企業に伏せて進めますが、「普段と服装が違う」「休みが多くなった」「よそよそしい」などの理由から、周囲に知られてしまう可能性があります。所属企業からの評価によっては、引き留められてスムーズに退職できなくなるケースも考えられます。
時間に余裕がなくなる
情報収集から求人検索、面接など転職活動はやることが多いため、働きながら進めると時間に余裕がなくなることもあるでしょう。特に、忙しい職場で働いている場合は、転職活動と両立するのが難しいかもしれません。スケジュール管理を徹底し、仕事も転職活動も効率化するなど、両立するための工夫が必要になります。
面接などの日程調整が難しい
時間に余裕がなくなるだけでなく、面接などの日程調整も難しくなります。基本的に面接は平日の日中に行われるため、平日が仕事の場合は有給休暇を活用するなどして対応しなければなりません。日程調整が難しい場合は、業務時間外の早朝や夕方、昼休みに面接を実施できるか相談するなど、働きながら面接を受けられる方法を考えてみましょう。
退職日・入社日に制限がある
内定後に退職交渉を行うため、企業側が希望する入社時期に応じられない可能性があるというデメリットもあります。引き継ぎに時間を要して、有給休暇を全て消化できないまま退職日を迎えるというケースもあります。なお、企業が採用を急いでいる「急募求人」の場合、すぐに入社できる人が採用されることも考えられます。
無理なく働きながら転職する方法は?
無理をしないで働きながら転職する方法はあるのでしょうか。5つのヒントをご紹介します。
オンライン面接を活用する
採用活動の効率化や距離が離れていても面接を実施できるため、オンライン面接を導入する企業も多い傾向にあります。移動時間を省ける分、面接を受けやすくなるので、オンライン面接はフル活用しましょう。
有給休暇や長期休暇を活用する
働きながら転職活動をする人の多くは、有給休暇を活用しています。有給休暇を取得した日に、複数企業の面接を入れられるように調整すると効率的です。「この日なら有休を取得して面接に伺えます」と事前に採用担当者や転職エージェントに伝えておけば、調整してもらえるかもしれません。同じ日に2回分の面接(2次面接と3次面接など)を設定してもらえることもあるため、交渉してみましょう。
転職活動の方法を工夫する
企業は様々な方法で採用活動を行っているので、転職活動の方法を工夫することで効率化できます。例えば、転職イベントや合同説明会を活用して、情報収集や企業研究を1日で済ませる、スカウト機能を持つ転職サービスを活用してオファーを待ち、求人検索や応募に費やす時間を減らすなどの方法が挙げられます。
転職エージェントを活用する
転職エージェントを活用するのも、働きながら転職活動をする場合に有効です。希望条件などを伝えることで、マッチする求人を紹介してもらえるので自分で探す手間を省けます。日中にメールや電話ができなくても、転職エージェントに面接可能な日時を伝えておけば、企業と調整して面接日程を決められるので、一人で転職活動を行うよりもスピーディに進めやすいでしょう。
働きながら転職活動する上での注意点は?
働きながら転職活動をする場合は、気をつけておきたいこともあります。転職活動のポイントをご紹介します。
ゴールの期限を決めて活動する
働きながら転職活動をしていると、時間に余裕がなくなり転職活動を中断することになったり、時間の経過とともに転職活動の優先順位が下がり長引いてしまったりする可能性があります。転職で実現したい目標を明確にして、「3ヵ月以内」「半年以内」など、ゴールの期限を決めておくことをおすすめします。
選考結果を振り返り課題を明らかにする
選考結果を分析して転職活動の課題を明らかにすることで、効率的に進められます。例えば、選考の通過率を振り返って希望する条件や業界・職種の幅を広げる、面接での企業の反応を見てアピール要素を変えるなどが挙げられます。転職活動で得たことを、次の転職活動に活かすようにしましょう。
会社の端末やメールアドレスで転職活動をしない
会社から貸与されたPCやスマートフォンで転職サイトを閲覧したり、転職サイトへの登録や応募先企業とのやりとりに会社のメールアドレスを使用したりするのは控えましょう。
また、スケジュール管理ツールを使ってメンバーに共有している場合は、非公開のスケジュールが多いと「この時間は何をしているのか」「この予定は不自然では」など、不信感を抱かれることもあるため配慮が必要です。
働きながらの転職活動は転職エージェントに相談を
働きながら転職活動をする場合は、転職エージェントのサポートを受けることでスムーズに進みやすくなります。応募書類を添削してもらうことで書類選考の通過率を改善し、面接で重視するポイントを確認して面接対策を行うこともできます。両立に不安がある場合は、仕事の状況を具体的に伝えて、転職活動のゴールを相談するといいでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2022年12月21日
記事更新日:2024年7月16日