「仕事を辞める」と決めたら、退職までどのように進めたらいいのでしょうか?仕事を辞める際に考えておくことや、退職意思の伝え方、円満退職のポイントを人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
「仕事を辞める」際に考えておくこと
「仕事を辞めたい」と思ったら、考えておきたいことが3つあります。勢いで退職の意思を伝えずに、あらかじめ要点を整理しておきましょう。
今後の方向性を明確にする
「なぜ辞めたいのか?」と「今後どうしたいのか?」を明らかにしてきましょう。例えば、「職場の上司と合わないから辞めたい」という退職理由だとすると、転職した職場でも同じような理由で辞めたくなってしまう可能性があります。異動などで相性の合わない上司と仕事をするかもしれないからです。転職理由は面接でも必ず聞かれる項目です。「辞めたくなった理由」を明確にして、退職後、どのような働き方を実現したいのかを考えてみましょう。しっかりと考えることで、会社を辞めずに実現できる道もあるかもしれません。
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転職活動のタイミングを決める
転職活動する場合は、辞めてから転職活動を行うのか、それとも在籍中に転職活動するのかを決めましょう。「家庭と両立しながら仕事を探したい」「仕事を探しながら資格の勉強をしたい」など、長期で考えている場合は失業手当の受給条件も確認しておきます。ただし、次の会社に入社するまでの間に実現したいことなどがある場合を除き、できるだけ在籍中に転職活動を始めることをお勧めします。企業がブランク期間を懸念する可能性があることや、収入の面で生活が不安定になりやすいからです。
転職スケジュールを設定する
転職活動にかかる期間の目安は、一般的に「情報収集~書類作成」で2週間、「応募~面接」で1~2カ月、「内定~入社」までは1~3カ月程度です。そのため、転職活動は3カ月間程度を考えておくのが目安です。就業規則や有給休暇の残日数なども確認し、いつまでに退職を伝えなければならないのか、スケジュールを設定しましょう。なお、退職交渉や業務の引き継ぎに予想以上の時間がかかることがあります。スムーズに転職するために、退職しやすい時期から逆算してスケジュールを立てるといいでしょう。
退職意思の伝え方とタイミング
退職の意思は、まず上司に伝えます。上司以外のメンバーに退職することを伝えるのは、上司と相談して退職日が正式に決まった後にしておきましょう。
上司への伝え方とタイミング
退職の申し出に関しては、就業規則で期間が定められているケースが一般的です。就業規則を確認し、引き継ぎや有給消化などの期間も含めて退職を伝える時期を決めましょう。退職希望日の1カ月半前程度が目安です。
退職の意思を切り出す相手の都合や予定を確認し、退職の話は伏せて「お話したいことがあるので、ご都合のよい時に少しお時間をいただけませんか」と打診しましょう。退職については、対面で理由とともに伝えた方がスムーズだからです。なお、退職の話は、二人だけで会話できる会議室やオンライン面談をお勧めします。“退職交渉”ととらえ、冷静に話ができる場を設けるようにしましょう。
【退職の切り出し方】いつ・どう伝える?注意点や準備することマニュアル
退職の意思は何カ月前に伝えたらいい?
退職願・退職届・辞表の違いと書き方
退職届は、退職願が受理され正式に退職日が確定した後に提出する書類です。所属している会社によって、提出方法や期限に規則がある可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
退職に関する書類の違い
退職願:退職を願い出る場合に使用。承諾されたのちに退職が決定する
退職届:退職を通告する場合に使用。退職の意思を明確に伝える
辞表:会社役員や公務員が辞める際に使用
円満退職のポイント
心置きなく次の職場で働くために、円満退職を心掛けましょう。スムーズな退職のポイントをご紹介します。
無理のないスケジューリングを
「上司に退職の意思を伝えたら、想定外の引き止めにあい退職日が延びてしまった」「ギリギリで退職したため引き継ぎが十分にできなかった」など、余裕のないスケジュールはどこかで無理が生じるものです。場合によっては有休消化ができなかったり、次の職場に迷惑をかけてしまったりするおそれもあります。予定外の事象が発生した場合を考慮し、退社日や最終出社日の数日前にすべて完了するようなスケジュールを設定しましょう。
会社への不平不満は避ける
たとえ不満があって退職する場合も、退職理由として直接伝えないようにしましょう。心証が悪くなり円満退職とならなくなったり、「不満な点を改善するので、退職しないでほしい」と引き止めの口実につながったりするからです。退職理由を聞かれた場合は、「転職先で実現したいことがある」など前向きな理由か、「家庭の事情」など個人的な理由にしておくと、受け入れてもらいやすくなります。
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引き継ぎは丁寧に
円満退社するためには、上司や同僚などにできる限り迷惑をかけずに引き継ぐことが大切です。対応していた業務やプロジェクトの内容・取引先の情報・過去に発生したトラブルとその経緯などを、引継書として分かりやすくまとめます。また、取引先などへの挨拶周りなども発生することもあるので、どのような形で退職の連絡・後任の紹介などを行うか、上司などと相談しましょう。
仕事を辞めるときのQ&A
「仕事を辞めたい」時のよくあるご質問にお答えします。
Q.人間関係が理由で辞めたいと考えています。転職した方がいいのでしょうか?
A.人間関係が原因の退職は、退職理由でも上位に挙げられます。ただし、一時的な感情で転職するのはキャリアのロスになり、また次の転職先でも再び人間関係で悩む可能性もあります。冷静になって「考え方を切り替える」「接し方を工夫する」「周囲に相談する」という方法で、自分が置かれた状況を改善する手立てを探してみましょう。
【仕事を辞めたいと思ったら】人間関係の悩みは「考え方・接し方・相談」で改善を
Q.「仕事を辞めたい」と考えているのですが、今が辞めどきかどうかの判断がつかなくて困っています。
A. 「辞めるタイミング」を計る観点はさまざまありますが、「キャリア」「転職市場」「待遇」の3つの観点でチェックしてみましょう。最終的には「本人の気持ち」が決めるもの。自身の希望にピッタリ合う企業とご縁があったら、それが最高の辞めどきとも言えるでしょう。
仕事の「辞めどき」とは?判断する方法をキャリアアドバイザーが解説
Q.「仕事を辞めたい」と言い出せません。退職交渉のポイントはありますか?
A. 退職交渉は、「退職を認めていただく」のではなく、「なるべく迷惑をかけることのないよう、退職スケジュールを相談する」といったスタンスで臨むことが大切です。「辞めたいと考えている」「退職について相談したい」といったあいまいな言い方をすると、相手は「説得の余地がある」と思うものです。強く引き止められ、退職交渉が長引いてしまうことにもなりかねないため、「すでに決意が固まっている」ことを伝えてみましょう。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
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