転職成功は、企業の採用ニーズや求職者の経験・スキル、応募する求人の選び方や応募書類・面接のテクニックなど、様々な要素が影響して実現するものです。そのため「転職がうまくいかないけど理由や対策が分からない…」と悩む方も少なくありません。
そこで、今回は転職がうまくいかない場合の傾向や改善策を、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
「転職できない」=「人材としてのニーズがない」わけではない
転職活動がうまくいかず、書類選考や面接で不採用が続いてしまうと「自分は社会に求められていない」「資質が足りないのでは」と感じるかもしれませんが、そのようなことはありません。
転職は「企業(の採用ニーズ)」、「求職者(本人)」、「ライバルとなる他の求職者」のバランスで成り立っています。「転職ができない」という場合は、マッチした企業に応募していなかったり、アピールが足りなかったりしているだけなので、転職活動の方法を見直せば転職先が見つかる可能性は高くなります。
何度も不採用が続くと疲労感やストレスが溜まりやすくなりますが、あまり後ろ向きになりすぎず、応募先の選定やアピール方法を工夫することをおすすめします。場合によっては転職活動を一度休止し、リフレッシュする機会を設けるなどして、気持ちの切り替えを図ってみましょう。
「転職できない」転職活動で見直すポイント
転職先がなかなか決まらない場合、どのような傾向があるのでしょうか。転職活動をするうえで改めて確認しておきたいポイントを紹介します。
応募先は適切か?
「転職ができない」転職活動で一番多いのは、応募する企業が適切ではないパターンです。ではどのような原因が考えられるかみてみましょう。
自己分析・転職市場の理解が十分ではない
自己分析は、これまでの経験を振り返り、仕事の強みや得意分野を明らかにするものです。自己分析が十分でないと、自身のスキルや経験にマッチしていない求人に応募したり、自己PRが足りなかったりして、転職活動が難航する可能性があります。また、転職が実現できたとしても入社後にミスマッチを感じたり、強みを発揮できなかったりするリスクもあります。強みを活かして活躍できる環境を得るために、事前にしっかりと自己分析を行っておきましょう。
また、自己分析と同様に大切なのが、転職市場を知っておくことです。業界の求人状況や求められるスキル、ニーズを理解しておくことで、自分の市場価値も分かります。
ちなみに、転職エージェントを利用すると、キャリアアドバイザーが業界のトレンドと合わせて強みの確認をすることができます。
転職に求める条件や優先順位が曖昧
業界や職種、年収や勤務地など、転職に求める条件が定まっていないと転職活動に一貫性がなくなってしまい、正しく判断することができなくなります。また、条件が複数ある場合は優先順位を明確にしておかなければ、応募する求人が極端に少なくなってしまったり、求人を選びきれなくなったりする可能性があります。
転職先にはできるだけ良い条件を求めたくなるかもしれませんが、全ての希望を叶える求人はなかなか見つかるものではありません。条件の良い求人にはライバルとなる他の求職者からの応募も集まります。自分の中で「絶対に叶えたい条件」を明確にすることで、優先順位をつけることができるでしょう。
PRする内容は適切か?
次に、応募先が自分の希望や経験・スキルと合っていても、応募する際のPR の内容が応募先企業とマッチしていないケースも多くみられます。
具体的な原因を紹介します。
転職先が求めるスキルと自身の強みの共通項を見つけられていない
自己分析でキャリアを振り返り自身の強みが分かったら、そのことをそのままアピールするのではなく、企業の求める経験スキルと自分の持つ強みがマッチしている内容を整理してみましょう。
たとえば営業から営業への転職だとしても、現職が個人向け営業で、転職先が法人向けの営業の場合、アピール方法はまったく変わってきます。今までの営業成績をアピールするのではなく、法人向けに生かせるスキルが何なのかをアピールするようにします。「営業プレゼン資料作成ができる」「計画的戦略を立てた営業」など、その企業に合った訴求方法で応募するよう心がけましょう。
応募書類や面接でアピールできていない
せっかく応募先企業にマッチする経験スキルを持っていても、応募書類や面接でアピールが不十分だと、不採用になる可能性があります。応募書類や面接での伝え方が主観的になっていないか、応募企業が求めている人物像にマッチしているかを見直してみましょう。転職エージェントを利用している場合は、キャリアアドバイザーに応募書類の添削や、模擬面接を実施してもらう方法もあります。
転職活動の進め方は適切か?
転職活動の場合、新卒採用と異なり、求人の出る時期や面接の進行が企業によってバラバラなので、スケジュールを自分で組み立てる必要があります。ここでは転職活動が滞るパターンの進め方について解説します。
応募する企業を厳選しすぎている
求人を厳選して1社ずつ応募し、書類選考や面接の結果が出てから他の求人に応募していると、転職活動が長引く可能性が高くなります。選考は他の求職者との相対評価です。経験・スキルがマッチして最終面接まで進んだとしても、他にもっと評価の高い求職者がいた場合は、最終面接が終わった後に「採用見送り」となるケースもあります。
1社ずつ応募していると、応募から最終面接まで1カ月近くの時間をかけて、駄目だった場合はゼロスタートです。また、1社の選考結果を待っている間に、他の魅力的な求人の採用枠が埋まってしまうかもしれません。
応募する求人は厳選しすぎず、少しでも希望に合致し興味関心があれば「面接で話を聞いてから判断する」くらいの気持ちで臨むようにしましょう。
遅刻するなど時間管理ができない
遅刻や面接日の日程変更を頻繁に行ってしまうと、企業側の心証に影響が出る可能性も出てきます。通常、企業側は採用選考スケジュールを立ててそれに沿って候補者との面談を設定しており、面接官は予定を調整して時間を空けています。応募者としても余裕をもった時間管理を心掛けたいところです。
予定が重なってしまった場合はできる限り面接を優先したほうがいいですが、どうしても遅れる場合や日程を変更しなければならない場合は、丁寧に謝罪をして申し出ましょう。
転職を成功させるためのポイント
「転職できない」転職活動から「成功する」転職活動にするためには、何をしたらいいのでしょうか。具体的にみてみましょう。
自己分析し、転職の方向性を定める
「やりたい仕事」や「好きな仕事」が「得意な仕事」とは限りません。「転職活動がうまくいかない」と感じた場合は、自分のキャリアをもう一度振り返り、転職市場をしっかりと理解したうえで、転職の方向性を見直してみましょう。
また、入社後に実現したい「転職の目的」を明確にしておくことが重要です。転職の目的が“現職の不満解消”になってしまうと、面接で転職理由を問われた際に、採用担当者から「入社後の活躍の可能性」や「定着性」を疑問視されてしまいます。転職活動を通じて何を実現したいのか、前向きな目的を考えておきましょう。
選考過程を分析し、原因を特定する
転職活動は「書類選考」「面接」と進みますが、書類選考が通過しないのであれば、「応募求人を見直す」「応募書類を見直す」、または「応募する求人を増やす」のいずれかが解決策となります。面接が通過しないのであれば、「自己PRの伝え方を見直す」「実現したい内容と企業の方針を確認する」「カルチャーマッチの観点を取り入れる」などの改善が必要になります。
転職エージェント経由で不採用となった場合は、ある程度の不採用理由を教えてくれるケースもあるので、ヒアリングを通じて次回に生かすことができます。
応募数を増やして確率を上げる
応募する求人が少ない場合は、転職サイトや転職エージェント、知人の紹介(リファラル採用)など、応募する手段を増やすという方法もあります。
希望する条件の全てにマッチしていなくても、面接時に具体的な話を聞くことで、転職の目的や価値観が変化することもよくあるケースです。少しでも興味関心があれば複数の企業に並行して応募しておくことをおすすめします。求職者の視野や選択肢も広がり、面接のスキルアップにもつながります。
第三者からのアドバイスも参考にする
ひとりで転職活動をしていると、視野が狭くなったり孤独を感じてしまったりすることもあります。そこで、家族や知人、転職エージェントなど、第三者にアドバイスを求めることによって、転職活動の幅が広がる可能性があります。
特に転職エージェントのキャリアアドバイザーは、豊富な転職支援実績で培った転職活動のノウハウを持っています。求職者に合った求人の選び方や応募書類の作成方法や添削、面接のアドバイスを受けることで、新たな道筋が開けるかもしれません。
転職活動に役立つ資格を取得する
今持っているスキルを底上げするためにプラスαで資格を取得したり、未経験や異業種への転職であれば、その業界に関連する資格を取得しておくと、前向きな姿勢が評価される可能性が高いでしょう。
それでも転職できないときどうする?
転職エージェントを活用する
1人で転職活動をしてもうまくいかない場合は、転職エージェントを活用することをおすすめします。経験豊富なキャリアアドバイザーが求職者に第三者目線でアドバイスしてくれるので、自分では気付かなかった強みを確認することができます。
また、面接日調整や企業とのやり取りを代わりに行ってくれるので、在職中で忙しく、なかなか自分で応募まで進まないという方にはおすすめです。
ハローワークや公共職業訓練を活用する
ハローワークや公共職業訓練を活用する方法もあります。この場合、実際に居住地管轄のハローワークで登録をし、求人検索をして希望するものがあればその場で紹介してもらえます。
また、公共職業訓練に通ってスキルアップを目指すことも可能です。ネットで検索するとさまざまなものがあるので、自分に合うものを探すことができるでしょう。
現職中の場合は転職活動を休止して時期を改める
「転職できない」不安を募らせて面接を受けていても、その自信のなさが面接官にも伝わり結果的にうまくいかないこともあります。在職しながら転職活動をしている場合であれば、一旦、転職活動そのものを休止することもひとつの方法です。在職企業でさらにスキルを培い経験を積んでから転職活動を再開するパターンもあります。
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約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。