「アルバイトから正社員を目指したい」と思ったとき、一人で転職活動することに不安を感じたなら、転職エージェントを活用してみる方法もあります。しかし、「そもそも転職エージェントが何をしてくれるのかがわからない」「アルバイトからの転職もサポートしてもらえるんだろうか」と思っている人もいるでしょう。そこで今回は、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、転職エージェントを活用するメリットや、上手に活用するコツについて聞きました。
アルバイトからの転職でも、転職エージェントに相談できる?
まずは、転職エージェントがアルバイトから正社員への転職希望者に対し、実際にどんなサポートをしてくれるのかを解説します。
転職エージェントはアルバイトからの転職も支援する
アルバイトでも転職エージェントに登録できますし、転職支援を受けることは可能です。登録後は、キャリアアドバイザーとの面談に進み、要望や条件に合う求人を紹介してもらう流れとなっています。
求人の紹介では、求職者の希望だけでなく、これまでの経験や身に付けたスキルなどがマッチしていることが大事であり、かつ、アルバイトから正社員への採用も可とする求人そのものが少ない状況もあります。登録の際には、できる限り詳細に経験・スキルを書き込んだ方が、マッチングの可能性を高めることができるでしょう。これまでのアルバイト経験の中で責任を任されたことや、身に付けたスキル、周囲に評価された能力、取得した資格などをしっかり書くことをお勧めします。
アルバイト経験だけでも正社員になれる求人を見つけられる?
第二新卒などの若手世代に対し、現時点での経験やスキルより、その後の成長に期待してポテンシャル採用を行う企業は少なくありません。一般的には「新卒で入社して3年未満の求職者」を第二新卒と捉える傾向があり、新卒で入社した企業を短期間で辞めてアルバイトをしている場合もこれに当てはまります。アルバイト経験のみしかない若手世代の場合も、第二新卒と同様に見なす企業もあるため、正社員として採用してもらえる可能性はあるのです。
また、転職エージェントは、転職市場に精通しているプロのため、未経験者を歓迎する業界や企業、過去にアルバイトから採用された事例なども知っています。相談してみることで、アルバイトから正社員採用してもらえる可能性がある業界や企業の傾向を教えてもらえますし、マッチしそうな求人があれば紹介してもらえるでしょう。
転職エージェントを活用する7つのメリット
ここでは、転職エージェントを活用する際のメリットについて紹介します。
1.アルバイトのみの職歴でもアピールできる強みが見つかる
1人で転職活動を進める中、「企業に何をアピールすればいいかわからない」と悩んでしまうケースはよくあるものです。特にアルバイトの場合は、経験している仕事の範囲が限られているケースも多いので、「アピールできることが少ない」と思ってしまう人は少なくないでしょう。しかし、誰しも何らかの成功体験や強みを持っているはずです。転職エージェントでは、キャリアアドバイザーが求職者の様々な経験を掘り下げる支援をしてくれます。アピールできるポイントを引き出してもらう中、自分の強みを発見することができるでしょう。
2.履歴書、職務経歴書などの作成サポートもしてくれる
転職エージェントでは、企業に提出する応募書類の作成もサポートしてもらえます。「そもそも履歴書、職務経歴書の正しい書き方がわからない」という人も安心できるでしょう。また、客観的な視点で書くべき経験や強みのアドバイスをくれますし、説得力を増すエピソードを添える手法なども教えてもらえます。応募先企業によりアピールできる書類を作成できるでしょう。
3.自分にマッチする業界・企業・職種を一緒に探してくれる
転職エージェントは、どんな業界・企業・職種にマッチするのかを一緒に考え、求職者の職業適性も考えながら、採用してもらえる可能性がある求人を探してくれます。また、転職先に希望する条件などの相談にも乗ってくれるでしょう。
4.転職エージェントは独自の求人情報も持っている
転職エージェントは、様々な企業と信頼関係を築いているため、独自の求人を持っていることが多くあります。転職サイトやハローワークと違い、一般に公開されていない情報を持っているので、選択肢を広げられる可能性もあるでしょう。
5.求人情報からは見えてこない内部の情報にも詳しい
転職エージェントは、社風、働き方、具体的な教育体制やキャリアステップなど、企業の内部事情にも精通しているので、自分によりマッチする企業や仕事を探すことができます。また、未経験者採用に積極的な業界や、アルバイトから正社員に採用された人材がたくさんいる企業なども把握しているので、採用の可能性が高い求人についてアドバイスをもらえるでしょう。さらに、ビジネスマナーなどを含めた教育・研修体制が整っているかどうかも教えてくれるので、業界経験や社会人経験がない人でも安心できるでしょう。
6.面接の練習もしてもらえる
キャリアアドバイザーが面接の練習もサポートしてくれますし、応募先の企業に合わせた面接対策などもしてくれます。面接で話す内容へのアドバイスはもちろん、言葉遣いや立ち居振る舞いなども指導してもらえるので、社会人マナーに自信がない人も安心できるでしょう。また、ビジネスマナーを踏まえた服装や髪型などについても指導してもらえます。
7.企業とのやりとりもしてくれる
面接日程の調整なども含め、キャリアアドバイザーが企業との間に入ってやりとりしてくれます。「社会人マナーに不安があるため、電話やメールのやりとりにも自信がない」という人も安心できます。内定後には、入社までの段取りや各種手続きなどのフォローもしてくれるでしょう。
転職エージェントを上手に活用するコツ
最後に、転職エージェントを活用する際、アルバイトから正社員を目指す人がどんなことに注意すればいいかを紹介します。アルバイトから正社員に採用された事例や、転職エージェントに相談する際に準備しておきたいことなどを参考にしてみましょう。
アルバイトから正社員採用された4人の事例を参考にしよう
アルバイト先で経験した仕事内容やプライベートで続けていた活動内容が、採用の判断にプラスの影響を与えるケースは少なくはありません。こうした経験・活動の内容から求職者にどんな強みや素養があるのかを推測できますし、求人に対する職業適性があるかどうかの判断材料にもなります。転職活動の際には、キャリアアドバイザーに、こうした部分をしっかり伝えた方が、転職支援をしてもらいやすくなるでしょう。
アルバイト経験やプライベートの活動が評価されて正社員に転職した4人の事例を紹介するので、参考にしてみましょう。
【Aさんのケース】カフェの店員からエンジニアに転職
Aさんは、カフェ店員のアルバイトをしながら自主的にプログラミングスクールに通った後、エンジニア職に転職しました。実務経験がなくても、自ら学ぶ努力や成長意欲が評価され、今後の伸びしろに期待して採用されたケースといえるでしょう。
【Bさんのケース】保険会社アルバイトから経理職に転職
保険会社でアルバイトし、保険料の試算や書類作成などに携わっていたBさんは、経理職として正社員採用されました。アルバイトでも、数字を扱い、正確性を求められる業務を経験していたため、経理の仕事に職業適性があると判断されたケースです。
【Cさんのケース】ミュージシャン志望から営業職に転職
ミュージシャンを目指しながら楽器店で働いていたCさんは、営業職として正社員採用されました。Cさんの人柄の良さや、それまでミュージシャンを目指してきた生き方・考え方に芯が通っている点、ライブ活動などで観客やライブハウスのスタッフと関係性を築いてきたコミュニケーション力が評価され、「未経験でも入社後に成長・活躍できる」という判断につながりました。
【Dさんのケース】制作会社アルバイトから営業職に転職
TV番組の制作会社でアルバイトしていたDさんは、営業職に転職しました。体育会系的な厳しい上下関係の中、徹夜作業も当たり前というハードな業務をこなしてきた点が評価されました。厳しい環境にもくじけない打たれ強さや、タフな仕事もやり遂げる責任感の強さがあることから、「営業職に対する職業適性がある」と判断されました。
やりたい仕事や働きたい企業のイメージを持とう
アルバイトから正社員を目指す人の中には、「正社員になれるならどんな仕事でもいい」と考えてしまうケースもあります。しかし、「何でもいい」とすれば、キャリアアドバイザーにも本気度が伝わりませんし、マッチする求人を探すこと自体が難しくなります。自分なりにどんな仕事があるのかを調べ、やりたい仕事のイメージを持つことが大事です。
具体的な条件を決めなくてもいいので、「どんな会社で働きたいのか」「将来どんな仕事がやりたいのか」などのビジョンを明確にしておきましょう。現時点では転職が難しい仕事の場合でも、キャリアアドバイザーが客観的なアドバイスをくれるはずです。「まずはこんな仕事で経験を積み、それから転職を目指すといい」「こんな資格を取得すると、より評価につながる」などのアドバイスをもらうことで、自分の目指すキャリアに近づく方法が見えてくるでしょう。
本気度を伝えて、キャリアアドバイザーを味方につけよう
アルバイトから正社員への転職を目指す場合は、「絶対に転職したい」という強い思いを伝えることも大事です。正社員採用の求人では、正社員として社会人経験がある人材の方が、スキルや経験の面でマッチしやすいものです。キャリアアドバイザーは常に複数の求職者を担当しているので、よりマッチする人材から紹介していくものだと考えた方がいいでしょう。
しかし、キャリアアドバイザーも人間なので、転職への強い思いや覚悟を伝え、真剣に取り組んでいることを理解してもらえば、より親身になってもらえるはずです。キャリアアドバイザーを味方につければ、「正社員の経験がない場合は選考の対象外」とする求人の場合でも、「人柄が良く、覚悟を持って成長していける人物なので、面接選考をしてもらえないか」など、企業に働きかけてもらえるでしょう。
新卒入社で早期離職し、アルバイトしていた場合の注意ポイント
新卒採用で入社した会社を早期離職した場合は、キャリアアドバイザーに理由や背景をきちんと伝えることが大事です。企業は長く活躍してくれる人材を採用したいと考えているものなので、あまりにも短期間で離職している場合は、「またすぐに辞めるのでは?」などの懸念を持たれる可能性があります。しかし、退職理由に筋が通っていれば、キャリアアドバイザーが企業にそれを伝え、面接選考に進めるようにフォローしてくれるでしょう。