今の会社に対して「将来性を感じられない」「仕事内容が合わない」「待遇が悪い」など、何らかの不満を感じたことをきっかけに転職を考える人は少なくありません。しかし、不満の解消だけを目的にした転職は、転職後にまた別の不満を抱き、やむを得ず転職を繰り返してしまう可能性があります。
今回は、仕事・会社に不満がある場合の対処法や、仕事を辞める前に考えておきたいことを組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
目次
みんなが抱えている仕事の不満とは?
厚生労働省が発表している「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、前職を辞めた理由で最も多かったのは、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」でした。
上記の回答に次いで、「職場の人間関係が好ましくなかった」「給料等収入が少なかった」が上位の退職理由となっています。
(※)「その他の個人的理由」「その他の理由(出向等を含む)」 「定年・契約期間の満了」を除く
出典:「令和4年雇用動向調査結果の概況」(厚生労働省)
仕事・会社への不満の対処法
退職を決断する前に、現職で対処できることがないか考えてみることも大事です。ここでは、仕事・会社への不満の理由別に対処法を紹介します。
仕事内容が不満
仕事にやりがいや面白さを感じられない場合は、自分が「どのような状態であれば満足できるのか」を考えてみましょう。例えば「無駄な書類作業が多くて不満」であれば、効率的な作業方法を考えたり、改善案を上司に提案したりすることができます。
また、社内で成果を出している人に、仕事の進め方や面白さを聞いてみる方法もあります。やり方や視点を変えてみることで、これまでと違う感触を得られるかもしれません。
労働環境が悪いことが不満
「残業が多い」など、労働環境に対する不満がある場合は、他のメンバーや他部署と比較してみましょう。自分だけ残業時間が多いのであれば、仕事を多く抱えていたり、進め方に改善の余地があったりするかもしれません。業務量に偏りがある場合は、上司に相談してみましょう。
仕事に慣れていなかったり、方法にこだわりがあったりして進行が滞っている場合は、残業の少ないメンバーに進め方を聞くなどで、仕事のプロセスを見直すことが大事です。所属する組織だけが残業が多いのであれば、上司や人事に相談したり、異動願いを出したりするなどの方法もあります。
給与が安くて不満
給与水準は業界や企業規模によっても異なるので、給与に不満がある場合は、転職サイトや口コミサイトなどで、同業他社の給与と比較してみましょう。同業他社と比べても低くなかったら、給与アップを目指すために社内の評価を上げる方法があります。評価基準を確認した上で、上司との査定面談で、「給与をアップするにはどのような成果を出せばいいのか」を相談してみましょう。
一方、同業他社と比較して給与水準が低いようであれば、給与水準が高い業界や職種への転職などを検討するのも1つの方法です。
人間関係が悪いことが不満
人間関係の不満を改善するには、その相手を観察することから始めてみましょう。どのように接すれば良好な関係を築くことができるのか把握すれば、改善できるかもしれません。
また、改善が難しい場合でも、この先に相手や自分が異動・退職することもあるので、今の仕事を辞めなくても距離を置けるようになるケースもあります。現時点では、仕事として割り切り、できるだけストレスのかからない距離感で接するように心がけましょう。
どうしてもストレス過多になってしまう場合は、上司に相談して関わりの少ない仕事に変えてもらったり、他の組織に異動したりして遠ざかる方法もありますが、転職を検討してみるのも一案です。
社風が合わなくて不満
企業理念、職場や働く人の雰囲気、仕事の進め方など、社風は様々な面に反映されるものです。
自分が抱えている問題を“社風”という言葉でひとくくりにせず、まずは具体的な理由を考えてみることが大事です。
例えば、「自分は仕事のプロセスを大事にしているが、上司は結果のみを評価している」と感じていた場合、仕事のプロセスについてしっかりと上司に伝えることができていない可能性もあります。日頃から密にコミュニケーションしたり、上司に相談してみたりすることで解決できるかもしれません。
人事評価に納得できないことが不満
例えば「同僚の評価が上がる一方で、自分は正当に評価されていない」と感じている場合などは、自己流で仕事を進めているなどが理由で、組織の評価基準をクリアできていない可能性があります。評価基準が明示されている場合は、再度、自分の仕事の進め方と照らし合わせて確認してみましょう。また、上司に直接確認し、評価基準に満たない部分や意識すべきポイントなどについてアドバイスを受けるのも有効です。
ただし、上司との関係に問題がある場合などは、正当な評価をされていないケースもあります。「今後も関係を改善することは難しい」と判断した場合は、異動願いを出すことや転職することを考えてみてもいいかもしれません。
希望に沿うキャリアパスがないことが不満
キャリアパスとは、企業内で目指すことのできる「キャリアの道筋」のことを意味します。
希望に沿うキャリアパスがない場合だけでなく、そもそもキャリアパスが明示されていなかったり、キャリアの選択肢が少なかったりする場合、ロールモデルがいない場合などでも、仕事に不満を抱くケースがあります。
しかし、こうした企業の場合でも、先輩社員の事例を調べてみることで、転職せずに理想のキャリアを実現できる道筋が見つかる可能性もあります。まずは、上司や人事などに、自分が目指すキャリアの実現性について相談してみましょう。
会社に将来性が感じられず不満
会社の将来性に不安を感じている場合は、自分の市場価値を高めておくことが大事です。将来的に転職しやすいように、業務に必要とされるスキルを磨いたり、マネジメントスキルや専門知識を身につけたり、副業や経験・スキルを活かした社会貢献活動などを通じて新たな経験を積んだりする方法があります。また、今後、伸びそうなビジネスに関わる部署やグループ会社があれば、異動願いを出して経験・スキルを積むという選択肢もあります。
「仕事の不満ばかり言ってしまうことに疲れた…」改善のための対策
仕事の不満ばかりを言ってしまうことが、自分自身にとって大きなストレスになっている可能性もあります。不満を募らせ続ける日々に疲れてしまった人に向けて、改善のための対策をいくつか紹介します。
休暇をとって一時距離を置く
過剰なストレスによって、心身ともに疲弊している場合は、不満に対処することもできないものでしょう。こうした場合は、有給休暇などを取得し、一時的に仕事から距離を置くことでリフレッシュすることが大事です。体力が回復すれば不満解消に向かう取り組みもしやすくなるでしょう。また、長期休暇をとって、今の不満や今後の対処法を整理する方法もあります。
部署異動などの希望を出す
希望の仕事ができる部署への異動願いを出したり、チーム替えなどの希望を伝えたりすることで、環境そのものを変えられる可能性もあります。異動が難しい場合は、社内公募などで他部署に異動したり、新たなプロジェクトに参画したりする方法を探してみましょう。
スキルアップと実績づくりに集中する
会社への不満を解消することより、自分のスキルアップや実績づくりに集中する方法もあります。評価を高めることで発言権が大きくなったり、責任あるポジションに抜擢されて不満な部分の改善に取り組めるようになったりする可能性もあります。また、スキル・実績を積み重ねておけば、転職活動でアピールできる材料を増やすこともつながります。
転職活動を始めてみる
在職中に転職活動を始め、不満を解消できる仕事や企業があるか探してみることもおすすめです。情報収集をする中で、転職市場の相場観や自分の市場価値、採用の可能性がある企業などを知ることができるでしょう。
今の会社・仕事よりも不満を感じずに働ける環境が見つかるケースもあれば、「今の会社の方が、条件がいい」と感じて納得度が高まるケースもあります。
また、転職エージェントに相談してみることもおすすめです。希望にマッチする求人を紹介してもらえるだけでなく、キャリアの棚卸や自己分析のサポートを受けられることもあります。自分の不満点を整理したり、不満を解消できる企業選びの軸を明確にしたりすることにも役立つでしょう。
仕事・会社への不満を上司に伝える際の注意点
上司に仕事や会社に対する不満を伝える際には、以下の注意点を踏まえておきましょう。
事実ベースで伝える
仕事や会社への不満を伝える場合、「客観性がない」「感情的になっている」などと受け取られると、公平に話を聞いてもらえなくなる可能性があります。きちんと聞く耳を持ってもらうためにも、あくまで事実ベースで伝え、客観的に状況や問題点を説明するように意識しましょう。
不満だけでなく、改善策も提案する
不満のみを伝えた場合、「不満を言うばかりで、自分で解決する努力をしていない」「トラブルにつながりそうな人材」という印象を持たれてしまうケースもあります。自分なりに不満解消のために解決すべき課題や改善策を考えておき、提示することが大事です。
上司が常に忙しい場合の注意点
忙しい上司の場合、しっかり時間を取ってもらえなかったり、きちんと対応してもらえなかったりすることもあるでしょう。こうした場合は、定期面談など、1対1でじっくり話ができるタイミングを狙って相談してみる方法があります。
直属の上司に不満がある場合の注意点
直属の上司に不満がある場合、関係性によっては本人に直接伝えない方がいい可能性もあります。思いをぶつけても信頼関係が崩れない場合を除いては、上司のさらに上の立場の人物に相談した方が解決の糸口が見つかりやすく、トラブルにも発展しにくいと言えるでしょう。
仕事・会社への不満で退職する場合の「退職理由」の伝え方
退職する場合には、まず、上司に退職の申し出を行い、退職時期の相談をするのが一般的です。その際、具体的な退職理由を聞かれる可能性が高いでしょう。スムーズに会社を辞めるためにも、退職理由の伝え方で意識したいことを紹介します。
退職理由で不満は伝えない
退職理由を聞かれた際、現職の仕事や会社への不満をそのまま伝えた場合、上司が感情的になり、トラブルに発展するケースがあります。退職するまでの間、会社に居づらくならないようにするため、退職理由で不満を伝えることは避けた方が無難です。
退職理由は前向きな内容にする
退職理由を伝える際には、「転職によって実現したいこと」など、前向きな内容にすることが大事です。ポジティブかつ、強い意志を感じさせるような退職理由を固めておけば、引き止めなどもされにくくなるでしょう。
お世話になった感謝の気持ちも伝える
これまでお世話になったことに対し、感謝の気持ちを伝えたり、お礼を述べたりすることも意識しましょう。スムーズに転職するためにも、円満退職を心がけることが大事です。
職場のハラスメントを訴えたい。どこに相談すればいい?
パワハラ、セクハラなど、職場の上司や同僚から不当な扱いを受けている場合は、人事や社内の相談窓口などに相談する方法があります。「社内では相談しにくい」という場合は、厚生労働省が設置している「ハラスメント悩み相談室」や、各都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどでも、ハラスメントに関する相談を無料で受け付けているので、活用してみるのも一案です。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2023年09月14日
記事更新日:2024年07月16日 リクルートエージェント編集部