転職をすると、仕事内容や人間関係、職場環境などがガラリと変わるため、入社直後はストレスを感じる方も少なくないようです。そこで、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏に、転職した会社にストレスを感じたときのアドバイスを伺いました。
転職経験者が感じた「転職直後の気持ちの変化」とは?
転職した会社にストレスを感じる人はどのくらいいるのでしょうか。リクルートで実施した「転職に関するアンケート(※)」で、転職後の気持ちの変化や職場への対処法などを調査した結果をご紹介します。
転職直後は慣れない環境に戸惑う人が約6割
アンケート調査では、「転職後、その職場に馴染めなくて、辞めたいと思ったことはありますか?」という質問に対して、64%の方が「はい」と答えています
【転職後、その職場に馴染めなくて辞めたいと思ったことはありますか?】(回答数=314人、単一回答)
転職先を辞めたい理由の約7割以上が「人間関係」
辞めたい理由も聞いてみたところ、「上司・同僚との人間関係」が75.1%と多数を占め、次いで「仕事の進め方」(45.3%)「社風」(40.8%)「労働時間などの働き方」(27.4%)という結果となっており、慣れない環境にストレスを感じていることが分かります。
【転職後に辞めたいと思った理由を教えてください】(回答数=201、複数回答)
約半数は時間の経過とともに辞めたい気持ちが解消
転職して間もなく「辞めたい」と感じる人は多いものの、新しい職場への違和感は時間の経過とともに徐々に薄れていくようです。「その後、辞めたいという気持ちは解消されましたか?」の問いに、46%が「はい」と答えています。
【辞めたいと思う気持ちは解消されたか】(回答数=201、単一回答)
解消された期間を聞くと、「辞めたいと思っていたのは3カ月以内まで」という回答が45.7%と約半数を占め、「3カ月~半年未満」が32.6%という結果に。2週間や1カ月で解消されたという人も約20%いました。
ルール把握や質問、相談などのコミュニケーションで徐々に解消
解消された理由については、「職場のルールを把握するようにした」(34.8%)、「わからないことがあれば周囲に聞くようにした」(31.5%)、「上司・同僚と積極的にコミュニケーションをとるようにした」(26.1%)という回答が上位を占めています。
転職者自身が新しい職場に溶け込もうと能動的に取り組むことで、職場独自のルールや環境に慣れ、周囲から受け入れられていることを実感でき、その結果、辞めたいという気持ちが解消されていったと考えられます。
【辞めたいという気持ちが解消された理由を教えてください】(回答数=92、複数回答)
ストレスを感じる理由別の対処法
どうしても入社した企業に馴染めず、次の企業を見つける前に短期間で辞めてしまうと、空白期間が発生したり、応募した企業から定着性に不安を抱かれたりして、転職活動が難航する可能性があります。また、ストレスを抱えたまま転職活動を並行するのも、心身ともに負担が大きくなるでしょう。
前述のアンケート調査によると、時間の経過とともに「辞めたい気持ち」が解消されたケースが約半数を占めています。転職先を辞めてしまう前に、現職で改善できることがないか探ってみましょう。ストレス理由別の対処法をご紹介します。
人間関係のストレス
人間関係のストレスは、たとえ転職したとしても次の職場で発生する可能性があります。また、多くの企業で人事異動があり、時間の経過とともに人間関係は変化していきます。そのため、人間関係のストレスは、まず現状の改善を試みた方が良さそうです。
アンケートの回答にもあるように、職場で積極的にコミュニケーションを図り、信頼関係の構築から始めてみましょう。うまく信頼関係を築くことができない場合は、ストレスを感じている人物と上手にコミュニケーションを取っている人を探して、関わり方の参考にするという方法もあります。それでもうまくいかない場合は、上長に相談して仕事で関わる機会を減らしてもらうなどして、ストレスを回避しましょう。
仕事内容へのストレス
入社して間もないうちは、慣れない仕事やこれまでと違う進め方にストレスを感じる方も多いようです。仕事に慣れてくれば、進め方を変えたり、興味のある仕事に手を挙げたりすることもできるでしょう。仕事を覚えて安心して任せてもらえるようになるまでは、分からないことはすぐに確認し、困っていることがあれば相談するなど、周囲の力を借りながら進めます。仕事の成果が出始めると、達成感や成長実感を得ることができるため、ストレスも軽減していくでしょう。
社風に対するストレス
社風は、企業の歴史や従業員規模、業界や経営者の思想などで異なります。数値化したり目に見えたりするものではないため、好みにピッタリ合う社風の企業を見つけるのは難しいものです。また、社風の多くは長所と短所を併せ持っています。例えば「ワンマン経営」も、短所では「独善的、属人的」と言えますが、長所では「意思決定が速い」と言えるでしょう。
これまでストレスになっていた社風の短所も、捉え方次第で長所が見えてくるかもしれません。「ハラスメントが横行する」「ガバナンスが脆弱」など、企業体質として不適切な状態でないのであれば、社風の何がストレスになっているのかを明らかにして、ポジティブな側面がないか考えてみましょう。
ストレスを減らすためのアドバイス
ストレスを減らすために、今すぐにできることはないのでしょうか。ストレス解消のためのアドバイスをご紹介します。
相談できる人を見つける
転職した直後はまだ職場に打ち解けていないため、一人でストレスを抱え込んでいる可能性があります。まず、上司やメンター、同僚や同時期に入社した中途入社者など、相談できそうな人を見つけましょう。誰かに相談することで、解決策が見つかったり、考えすぎていたことに気づいたり、背景を知ることができたりと、何らかの発見を得ることができるかもしれません。職場で相談できる人が見つからない場合は、家族やパートナー、友人など、気の置けない人に話をするだけでも、ストレスを軽減することができるでしょう。
転職理由を振り返る
転職理由を振り返ってみて、現在の企業で転職理由が実現できているか考えてみましょう。例えば、転職理由が「残業を減らし、ワークライフバランスを整える」だったとして、現在の企業で実際に残業が減ってプライベートの時間も確保できていて、「仕事の進め方にストレスを感じている」状態だとします。この場合、少なくとも転職理由は実現できていることになり、また、すべての希望条件を満たす転職先はなかなか見つかるものではないため、まず現在の環境でストレスを軽減できないか検討してみましょう。
一方、現在の企業で残業が減らず長時間労働が常態化しているのであれば、転職理由が実現できていないことになります。その場合は、転職を含めて今後のキャリアの方向性を考え直してみましょう。
短期的な目標を定めてみる
慣れない環境でのプレッシャーが、ストレスに繋がっているのかもしれません。特に即戦力を期待されて採用された場合、人間関係や仕事などで少しつまずいただけでも、「早く成果を出さないといけないのに…」と焦りや不安を覚えるものです。また、自らに高い目標を課している可能性もあるので、目に見える成果が出るようになるまでは、クリアしやすい短期的な目標を設定し、モチベーションをコントロールしてみましょう。
例えば、「1週間かけて過去の資料に目を通しておく」「1カ月後までにチーム全員とランチに行く」など、自主的に設定した短期的な目標をクリアすることで、達成感を覚えることができます。達成感を積み重ねるうちに、焦りや不安によるストレスを解消することができるでしょう。
最後に
転職直後は環境が大きく変化するため、ストレスを感じやすくなります。ストレスをひとりで抱え込んで無理をすると、心身の健康に影響を及ぼす可能性が高くなります。転職後にストレスを感じたら、できるだけ早めに上司や同僚などに相談し、無理のない範囲で改善を図りましょう。
(※)【調査概要】2019年5月30日~5月31日 株式会社ジャストシステム「転職に関するアンケート」 調査対象:転職を経験したことのある男女331名
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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。