面接の流れをあらかじめ理解しておくと、落ち着いて面接を受けることができます。近年は、多くの企業でオンライン面接が導入されています。対面とオンラインの面接の流れやマナーについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏がアドバイスします。
一般的な面接の流れ
一般的な中途採用の面接は、挨拶や自己紹介で始まり、募集の背景や具体的な仕事内容の説明や、志望動機、自己PR、経験・スキル、転職理由などを問われます。最後に“逆質問”と呼ばれる応募者からの質問を受けて面接は終了します。
二次面接以降では、現場責任者から具体的な業務経験や実績の確認、役員クラスからはキャリア観などを聞かれるケースが多くなります。最近はオンラインでの面接を行う企業が増えていますが、オンラインであっても、面接の流れは対面での面接と大きく変わることはないでしょう。
<一般的な面接当日の流れ>
- 挨拶
- 自己紹介
- 採用担当者から募集内容の説明
- 採用担当者からの質問(業務経験、志望動機、転職理由、自己PRなど)
- 採用担当者からの条件確認(希望年収や入社日など)
- 応募者からの質問
対面面接の流れとマナー
対面面接は、オンラインとは異なり受付があります。当日に慌てないように、面接会場への入り方や座るタイミング、荷物の置き方なども理解しておきましょう。
受付
受付で氏名と用件、約束の時間と採用担当者名を伝えて、面接会場に案内してもらいます。企業によっては、入り口に置かれている内線電話や採用担当者の携帯電話に自ら連絡するなど、受付の対応は様々です。事前に案内されている内容を確認しておきましょう。大きいビルの場合は、受付から面接会場に行くまでに時間がかかることもあるので、面接の5~10分前には受付を済ませておくと安心です。コートを着ている場合は、受付に行く前に脱いでおきましょう。
入室
面接室に通されて採用担当者の入室を待つケースと、採用担当者がいる面接室に入室するケースがあります。面接室に案内されて「お掛けになってお待ちください」と言われたら、お礼を伝えて下座に座りましょう。採用担当者が入室したらすぐに立ち、「初めまして、○○(名前)と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします」と挨拶します。「お掛けください」と言われたら「失礼いたします」と言って着席しましょう。
面接室の前に案内されて、すでに入室している採用担当者に名前や「お入りください」と言われた場合は、「失礼いたします」と一声かけてドアを開けます。呼ばれない場合は、ノックをして「失礼いたします」と一声かけて入室しましょう。入室したら椅子の横まで進み、「初めまして、○○(名前)と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします」と挨拶し、「お掛けください」と言われたら「失礼いたします」と言って着席します。いずれの場合でも、鞄は椅子の脇の床に置きましょう。
面接
面接中は採用担当者に対して正面で向き合うように座ります。椅子に深く腰掛けて背もたれに寄りかかり過ぎると、だらしない印象を与えてしまうかもしれません。背筋を伸ばして姿勢の良さを保つようにしましょう。また、緊張したり焦ってしまったりすると、早口になってしまう可能性があります。ハキハキとした話し方を心掛け、できる限り笑顔を交えましょう。
選考が進んで複数の企業の面接を受けるようになると、どの企業で何の説明があったのか分からなくなってしまう可能性があります。面接ではノートなどを持ち込んで、メモを取るようにしましょう。ただし、ノートを出す前に「メモを取ってよろしいでしょうか?」と確認を。また、メモを取ることに集中しすぎると、回答が遅れたり採用担当者と目を合わせて会話できなくなったりします。重要なことだけメモするようにして、対話を優先しましょう。
退室
面接が終わったら応募書類やメモなどを鞄に入れて立ち上がり、「本日はありがとうございました」と面接のお礼を伝えます。退室する際は「失礼いたします」と一言添えて静かにドアを閉めます。コートは面接会場を出てから身につけるようにしましょう。
オンライン面接の流れとマナー
オンライン面接の場合は、事前の通信環境の確認が重要になります。面接前に必ず通信環境や端末の動作を確認しておき、できればスマートフォンや有線LANなど、機器や通信トラブルが発生した時の代替手段を用意しておくといいでしょう。
入室
事前に採用担当者から案内されたオンライン面接のアドレスにアクセスし、採用担当者の入室を待ちます。面接時間の2~3分前にはURLをクリックして待機し、音声や背景などを確認しておきましょう。オンライン面接は、URLにアクセスしたら待機状態となり、採用担当者が入室して承諾するとオンライン面接が始まるケースが一般的です。採用担当者が入室したら、「初めまして。○○(名前)と申します。本日はよろしくお願いいたします」と挨拶しましょう。
面接
面接で聞かれる質問や流れは対面と変わりません。ただし、オンラインの場合は声が聞き取りにくくなったり、対面ほど表情が鮮明に見えなかったりします。ハキハキと大きな声ではっきりと話し、対面よりも表情を豊かにすると伝わりやすくなるでしょう。オンライン面接は画面越しで印象が決まってしまうので、相手からどのように見えるのかを、事前にオンラインツールを使用して確認しておくといいでしょう。
退室
面接が終わったら「本日はありがとうございました」と面接のお礼を伝えて一礼します。採用担当者がオンライン面接を終了するまで待つのが基本ですが、なかなか終了しない場合は「では失礼いたします」と一言添えて退室しても問題はありません。
面接で聞かれやすい質問と答え方のポイント
面接で聞かれやすい質問は、面接当日に慌てないように事前に回答を準備しておきましょう。面接で聞かれやすい質問と答え方のポイントをご紹介します。
自己紹介
面接の冒頭では、アイスブレイクを兼ねて自己紹介を求められるケースが一般的です。自己紹介は1分程度で話せるように事前に準備しておきましょう。採用担当者によっては、自己紹介から質問を掘り下げていくケースもあるため、アピールしたい要素を自己紹介に盛り込んでおくと会話がしやすくなるでしょう。
答え方のポイント
- 氏名と挨拶(卒業学校名や入社年度なども入れると良い)
- 現職または前職について(社名・部署・職種など)
- 職務経歴・実績(アピールしたいことを中心に)
- 締めの言葉(入社への意気込みなどを語る)
自己紹介の例文
御社のサービスは前職でも使用しており、誰もが理解しやすいUIに魅力を感じていました。これまでの法人営業の経験を活かして、御社のサービス拡大に貢献したいと考えております。本日は、どうぞよろしくお願いいたします」
業務経験
これまでの業務経験・スキルを掘り下げて、募集している仕事にマッチした成果を出せるか確認する質問です。業務経験は、職務経歴書に記載されている内容をもとに具体的に質問されますが、現場責任者が面接する場合は、さらに踏み込んで聞かれることが多いでしょう。
異業界・異職種の仕事に応募する場合は、面接担当者が理解しやすいように業界用語や専門用語の使用は避け、抽象度を上げて説明しましょう。
答え方のポイント
- 応募する仕事に活かせる経験・スキルを中心に伝える
- 担当プロジェクトや成果は数値を交え規模が分かるようにする
- キャリアチェンジの場合は専門用語を控える
業務経験の例文
「約20社の既存顧客を担当し、年間15~20社程度の新規顧客を獲得しています。1社あたり平均XX~XX万円の取引額で、月間XX万円が営業目標です。所属する部署では私が1番高い営業目標で、リーダーとして4~5名ほどの若手の教育も担当しています。
担当顧客の多くは○○領域ですが、新規で○○や○○などの領域も経験しています。御社のIRページを拝見したところ○○領域の売上が堅調で、今後も拡大されるとのことなので、前職の経験が活かせると自負しております」
志望動機
志望動機を通じて、採用担当者は「定着性(長く働いてくれそうか)」「活躍可能性(入社後に成果を出してもらえそうか)」「入社意欲(意欲が高いかどうか)」などを確認しています。前職の不満や転職理由が応募企業で解決できること、これまでの経験・スキルを活かすことができること、そして入社への高い意欲があることをアピールしましょう。志望動機を作成する際は、転職理由や自己PRとの一貫性も重要なポイントです。
答え方のポイント
- 志望理由は、他社にはない要素を伝える
- 前職(現職)では実現できない志望理由になっている
- 転職理由や自己PRと一貫している
志望動機の例文
転職理由
志望動機と同様に、採用担当者は転職理由を通じて「定着性(同じ理由で辞めてしまわないか)」「活躍可能性(転職理由を実現できそうか)」などを確認しています。「転職理由=退職理由」と捉えている方もいるかもしれませんが、転職理由とは「転職で実現したいこと」です。前職を辞めた理由は転職のきっかけに過ぎないため、全体の2割程度に納め、転職で実現したいことを中心に構成するのがポイントです。
答え方のポイント
- 退職理由は2割程度に納め、転職で実現したいことを中心にまとめる
- 思いつかない場合、退職理由をポジティブに変換する
- 応募企業で転職理由が実現できることを伝える
転職理由の例文
自己PR
企業の採用担当者は、自己PRを通じて応募者の強みやこだわりを明らかにし、仕事内容や求める人物像にマッチしているかなどを確認しています。履歴書や職務経歴書に自己PRを記載している場合は、記載した内容に沿った自己PRを面接でも伝えましょう。なお、自己PRと志望動機を混同する方もいるかもしれませんが、“過去”の経験から自身の強みを伝えるのが自己PRで、“未来”に実現したいことを伝えるのが志望動機、と理解しておくと分かりやすいでしょう。
答え方のポイント
- 過去のエピソードを交えて具体的に伝える
- 成果や実績は数値も入れて規模感を伝える
- 転職理由や志望動機との一貫性を意識する
自己PRの例文
現職では、中小企業を対象にしておりますが、企業によってITへの理解や導入状況は様々です。ITに苦手意識を持つ方もいるので、担当者や現場メンバーのヒアリングは専門用語を使わずに丁寧に行うようにしていました。また、サービスを導入すると誰がどのように嬉しくなるのかを言語化・数値化することを心掛け、費用対効果を明らかにすることで、社内で説得を得て決裁しやすくしました。その結果、年間15~20社程度の新規顧客を獲得し、新規営業賞もX回いただいています。御社でもITの力で顧客課題の解決に寄与したいと考えております」
逆質問
面接の終わりに、採用担当者から「何か質問はありますか?」と聞かれるのが「逆質問」です。疑問を明らかにするだけでなく、採用担当者に対して意欲や熱意をアピールするチャンスにもなります。ホームページを見ればわかるような質問はできるだけ避け、面接で説明されたことに対する疑問や、業務に関する不明点などを聞くようにしましょう。
なお、逆質問で年収や業務時間など、待遇や条件面ばかりを聞いてしまうと、「待遇や条件しか求めていない」という印象を与えてしまう可能性があります。もちろん、働くうえで待遇や条件は非常に大切な要素ですが、まずは事業や仕事内容に関する質問などを通じて意欲を伝えた上で条件面の話題を振るなど、聞き方には配慮が必要です。
答え方のポイント
- 疑問や不安は逆質問で解消しておく
- 求人やホームページなどを見たらすぐに分かる質問は控える
- 待遇や条件面の質問のみに集中しない
逆質問の例文
面接の身だしなみと持ち物
面接の身だしなみの注意点と必要な持ち物について解説します。
身だしなみ
応募企業が「服装自由」や「私服OK」などとしていない限りは、面接ではビジネススーツを着用するのが一般的です。体型にフィットしていて、清潔感のあるスーツを選びましょう。普段スーツを着ない業界・職種で、以前に購入したスーツを面接で着ようと考えている場合は、体型が変わっている可能性があるため早めに試着しておきましょう。
髪型やメイクも基本的に清潔感が重要です。派手すぎる髪型やメイク、アクセサリーはビジネスシーンでは違和感が生じ、面接で威圧感を与える可能性があります。服装や髪型の目安が分からない場合は、採用ページなどで応募する企業の従業員の雰囲気を掴んでおきましょう。
持ち物
面接では応募書類をやり取りする可能性があるため、A4サイズの書類が入る鞄が適しています。応募する企業によって面接で必要な持ち物は異なりますが、代表的な持ち物をご紹介します。
<基本的な持ち物>
- 鞄
- 財布
- 携帯電話
- ノート・メモ帳(パソコン)
- 企業が指定した応募書類
- ハンカチ・ティッシュ
- 面接会場までの地図
- 採用担当者の連絡先
<あると便利な持ち物>
- 折り畳み傘
- 充電器
- 予備ストッキング
- 鏡
- 腕時計
面接までに模擬面接を行っておこう
面接に慣れていないと、当日に緊張してうまく話せず、回答に詰まってしまう可能性があります。面接が決まったら、鏡の前や動画撮影などでよく聞かれる質問に答えてみて、話し方のクセや表情もチェックしましょう。もし身近に採用関連業務の経験者がいる場合は、模擬面接をしてもらえないか相談してもいいでしょう。転職エージェントでは面接対策セミナーや模擬面接を行っているケースもあるので、面接対策について相談するという方法もあります。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。