結婚や育児、介護など「家庭の事情」で退職したい場合は、どのように伝えたらいいのでしょうか。また、プライベートな話を、上司にどこまで伝えたらいいのでしょう。そこで、退職理由が「家庭の事情」の場合の考え方や伝え方を、採用コンサルタントの粟野友樹さんにお伺いしました。例文もあわせて参考にしてみて下さい。
退職理由が「家庭の事情」は問題ない?
「家庭の事情」とは、結婚や育児、家族の転勤や転職、病気や介護など、家庭に関する事情で仕事が継続できなくなった場合が該当します。退職理由として上司に伝えるのは、全く問題ありません。
「家庭の事情」は、詳しく話を聞くこと自体がプライベートに踏み込むことになるため、深く掘り下げるのをためらう方が多い傾向があります。また、事情を詳しく聞いたとしても、会社として対処できることに限りがあるため、待遇の改善やキャリアアップなどの退職理由と比較すると、「引き留められにくい」と言えます。もし退職理由が「家庭の事情」で、「引き留めなどの退職交渉が煩わしい」「スピーディに会社を辞めたい」と考えている場合は、開示できる範囲で「家庭の事情」が退職理由である旨をストレート伝えた方がいいでしょう。
「家庭の事情」はどこまで伝える?
家庭の事情はプライバシーの観点から、あまり知られたくないケースもあるでしょう。家庭の事情が退職理由だった場合の、伝え方を解説します。
原則として細かく伝える必要はない
退職理由は、状況を具体的に説明する必要はありません。「親の介護のため」「パートナーの転勤のため」など、退職の背景が分かる程度に端的に説明すれば十分です。なお、職場にはあまり知られたくない場合は、「具体的な説明は控えたいのですが、家庭の事情で退職を考えています」「詳しくはお話しできないのですが、家庭の事情で退職を希望しています」などと伝えましょう。または、「他の方には伝えないでほしいのですが」「ここだけの話なのですが」など、一言申し添えてから詳しく説明するという方法もあります。
事情を説明することで協力を得られる可能性もある
例えば「家族が通院することになり、サポートが必要になった」「パートナーの仕事の関係上、現在の勤務時間で働くことができない」など、具体的な事情を伝えることによって、現職を継続するための対策を考えてもらえる可能性もあります。「家族のサポートが必要な期間は休職扱いとし、回復したら復帰する」「テレワークにして通勤時間をなくし、さらに時短勤務とする」など、勤務先から解決策を提示されるかもしれません。もし、職場に特段の不満はなく、家庭の事情によってやむなく退職を考えている場合は、退職の意を伝える前に、事情を話して現職に残る道がないかを相談してみましょう。
【事情別】退職理由例文
勤務先に退職を伝える場合は、どのように伝えたらいいのでしょうか。そこで、家庭の事情の内容別に、例文をご紹介します。
「親の病気」が退職理由の場合の例文
突然のご相談となり申し訳ございませんが、退職を考えております。実は半年前に母が病気になり、父は仕事と母の面倒と家事で手一杯になってしまったため、私のサポートが必要という判断になりました。母の通院に付き添い、家事も行わなくてはならないため、残念ながら勤務を継続するのは難しそうです。勤務退職日は、できれば○月○日を希望しておりますが、後任への引き継ぎもあるので、日程はご相談させてください。
「家庭との両立」が退職理由の場合の例文
お時間を取っていただきありがとうございます。突然ではありますが、○月○日をもって退職させていただきたいと思っています。仕事自体は大変やりがいがあり楽しく働いていたのですが、担当している案件が多く、残業が発生する日もあります。これまでは残業も可能だったのですが、家族が最近家業を継ぎ、聞いていたよりも忙しく毎日夜遅く帰ってきます。家庭との両立をするためには、「自分の仕事をセーブした方が良い」という結論になりました。つきまして、引き継ぎや最終出社日についてご相談させていただけないでしょうか。
「パートナーの転勤」が退職理由の場合の例文
お時間いただきありがとうございます。突然のご報告になりますが、パートナーが○○県に転勤が決まったため、退職させていただきたいと考えております。急な話で会社にご迷惑をおかけするのも申し訳ないので、先にパートナーが○○県に引っ越し、自分は仕事の目途がついて引き継ぎが完了した段階で引っ越そうと思っています。そのため、特に退職日に希望はありません。退職日はいつ頃にしたらよろしいでしょうか?
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。