「入社した会社を短期間で辞めて転職したい。面接で短期間での退職理由を聞かれたら、どう答えればいい?」──そんな疑問について、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
「短期間で退職した理由」を面接で聞かれたときの回答例
前の会社を短期間で辞めることになる(辞めた)場合、面接でその理由を聞かれたら、どのように答えれば納得を得やすくなるのでしょうか。理由別に回答の一例をご紹介します。
「人間関係」が理由の場合
ストレートに「上司や同僚とうまくいかなかった」と答えた場合、面接担当者は「当社に入っても、上司や同僚と合わなければすぐに辞めるのだろうか」「この人のコミュニケーションに問題があったのかもしれない」などと不安を抱く可能性があります。
そこで、「仕事に対する考え方」「チームワーク」などに視点を転換して伝えてみましょう。
<回答例1>
「新しいことにチャレンジできる会社だと思って入社したのですが、私の配属先の上司は保守的で、新しい取り組みに消極的な人でした。そのため同僚たちのモチベーションも低く、私が希望していた、お互いに刺激を与え合って成長できる環境ではありませんでした。社内異動は難しいため、次こそチャレンジが活発な社風の会社で働きたいと思い、御社を志望しました」
<回答例2>
「商品に魅力を感じて選んだ会社ですが、入社してみて、個人主義の風土でメンバー同士の連携がないことに気づきました。そのような組織風土で働いてみて、自分はチームワークで働くことにやりがいを感じることを認識しました。御社はチームワークを大切される社風と知り、応募しました」
「長時間労働」「過酷なノルマ」が理由の場合
ただ「残業が多い」「ノルマがきつい」と訴えるだけでは、それがどの程度のものなのか、面接相手はわかりません。「それは確かに続けるのは厳しかっただろう」と納得を得られるように、具体的な数字や事実を挙げて伝えましょう。状況改善の努力もしたことを伝えれば、説得力が増します。
また、「楽をしたいのだろうか」と思われないように、自身はどのような活動や取り組みに力を入れたいかを併せて語るといいでしょう。
<回答例1>
「1日の労働時間が平均●●時間で、週●回は終電で帰宅している状況です。ムダな作業が多いと感じたので、効率化を図れるツールの導入を提案したのですが、聞き入れられませんでした。私としては、生産性が高い働き方をして、新しい知識や情報をキャッチアップするためにセミナーなどに参加する時間も確保したいと考えています」
<回答例2>
「会社から求められる売上目標のハードルが高すぎると感じています。達成しようとすると、次々と新規開拓を進め、顧客にとって必要のないオプションサービスまで売らなければなりません。このような状況で改めて自分がやりたいことを考えた結果、もっとじっくりとお客様と関係を深め、本当に喜んでいただける営業がしたいと思いました」
「体調不良」が理由の場合
企業側としては「入社後に業務を遂行できるのか」が懸念点となります。「現在は回復していて、業務遂行に支障はない」ことを伝えましょう。
なお、業務遂行とは関連性がない病歴や健康状態について面接で質問をすることは、就職差別にあたるため禁止されています。あまり突っ込んだ質問を受けることはないと思われますが、企業側としてはやはり気になるでしょう。自身の判断により、伝えても差し支えない範囲で状況を説明してはいかがでしょうか。
<回答例>
「突発性の○○を患い、入院することになりました。そのときは先の見通しが立たなかったため、退職しましたが、現在は回復しています。定期的診断も受け、再発の可能性は低いと言われています。御社の業務を行うにあたり、支障はありません」
「家庭の事情」が理由の場合
家族の看病や介護、メンタルケアなど、家庭の事情が理由である場合も、上記の「体調不良」と同様です。就職差別とならないよう、企業側からは具体的な質問はできませんが、実際には気にしている場合もあるでしょう。
会社としてサポートが必要なのかどうかを判断したいと考えているので、自身の判断で、差し支えない範囲で状況を伝えましょう。
<回答例>
「親が急病で倒れ、看病のために退職しました。現在はかなり回復し、定期的にリハビリに通っていますが、その付き添いは兄弟が勤務シフトを調整して対応してくれているので、私がフルタイム勤務を続ける分には問題ありません」
理由によっては、事実をそのまま伝えてOK
以下については、短期間の退職であっても、納得を得やすい理由だと言えます。事実をそのまま伝えて構いません。
- 給与や待遇などの条件が、募集広告や面接時に伝えられた内容と異なっていた
- 業績が急速に悪化し、給与の支払いが遅れるようになった
- 経営方針が突然変わり、事業を縮小・撤退。希望していなかった部門・職種への異動を命じられた
短期間での退職理由を面接で伝えるときのポイント
短期間で退職した理由を面接で伝える際には、次のポイントを意識してください。
ポイント1:嘘をつかない
適当な嘘でごまかしたとしても、面接が進む中で話の内容に矛盾が生じると、不信感を抱かれてしまいます。正直に伝えましょう。
ポイント2:前職に対し、一方的な批判をしない
前の会社に問題があったとしても、すべてを会社のせいにして批判することは避けるべきです。そして、自分なりにどのように改善の努力を試みたのかを伝えてください。
ポイント3:前向きな表現に言い換える
ネガティブな印象を与える言い方を避け、ポジティブに感じられる言い方で伝えましょう。
<言い換え例>
「仕事が面白くない」→「もっとやりがいを感じられる仕事にチャレンジしたい」
「残業が多すぎる」→「もっと生産性を高めて成果を出す働き方がしたい」
「職場の人間関係がギスギスしている」→「チームで協力し、一体感を持って働きたい」
ポイント4:退職理由と合わせ、今後の目標・ビジョンを伝える
「退職理由:2割」+「転職で実現したいこと:8割」を意識して話すことをおすすめします。退職理由がネガティブな内容であっても、その失敗を踏まえ、次の目標を前向きに見据えていることを語れれば、企業側は入社後の活躍をイメージできるでしょう。
なぜ、企業は短期間での退職理由を聞くのか
そもそも、企業はどのような意図を持って、短期間での退職理由を尋ねるのでしょうか。企業が懸念しているのは、主に3点です。
- 入社後、定着してくれるだろうか(またすぐに辞めてしまうのではないか)
- ストレスへの耐性が低いのではないか
- 仕事に対する意欲が低いのではないか
これらの不安を払しょくすることを意識して、今後の仕事に対する目標や取り組み姿勢を伝えてください。
入社後の目標や意欲をアピールしよう
「短期間での退職」をどのように捉えるかは、業界や企業によっても大きく異なります。人材流動が活発な業界や企業であれば、それほど気にされないこともあります。
いずれにしても、企業側が「この経験・スキルを持っていれば、当社で活躍してくれる」「意欲が高く、入社後に成長しそう」と期待を持てば、マイナス印象をカバーすることができます。「これから何を目指すのか」「入社後、どのように貢献したいのか」をアピールしましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。